鈴木喬(経営者)の名言

鈴木喬(経営者)のプロフィール

鈴木喬、すずき・たかし。日本の経営者。エステー社長・会長。東京出身。一橋大学商学部卒業後、日本生命保険に入社。法人営業部第一課長、総合法人業務部次長を経て、エステー化学(のちのエステー)に出向。企画部長、取締役営業本部首都圏営業統括部長、常務営業本部マーケティング部長、専務などを経て社長に就任。経営合理化と新商品開発により同社をさらに成長させた。「消臭ポット」「消臭力」「脱臭炭」などをヒットさせた。

鈴木喬(経営者)の名言 一覧

世の中の状況と自分の会社の状況は別。みんなが同じ方向に動いていたり、へばっているときこそ、成長のチャンス。


不景気になったからって、グーグルやアマゾンのような企業はひっくり返らない。消費者が本当に欲しいサービスや商品を作っていれば景気は関係ない。


エステーには「4気」という言葉があります。「景気より天気、天気より元気、元気より人気」。だから、もとから景気を相手にしない商売を考えています。


仕事を離れて楽しいことやバカバカしいことをやらないと、アイデアなんて出てこない。会議や書類仕事など目先の作業をしながら、長期的な展望なんて考えられませんよ。


3分考えても結論の出ないことは、3年考えても結論は出ない。


少しバカになるぐらいのほうが、視野が広がり、新しい発想ができる。


失敗はつきもの。大事なのは、致命傷にならないように、できるだけ小さな失敗にすること。それを繰り返すうちに、この先どんな動きになるかも読めるようになってくる。


結局、自分の頭で考えるしかない。どこかからコピー&ペーストしてきたようなアイデアでは、競争相手と同じなので、勝てるわけがない。もう一手、二手、三手先を読んで、競争相手がやらないことを考えないといけない。


トップの仕事は決断業。上に立つ人は、いろいろなことを自分の頭で考えないといけない。そのためには、一人になる時間が大切。時には山の中にでも行って、じっくり考える時間をつくることも重要。


非常時になったら、心を鬼にしなければ、生き残れないことだってある。


ビジネスの世界も政治と同じで、きれいごとだけでは済まない。しかも、バブル崩壊後の日本経済は、ずっと非常時みたいなもの。清濁併せ呑まなければ、企業経営はやっていられない。


先手必勝で、相手の度肝を抜かなきゃケンカには勝てない。


日本の皆さんに会社を育ててもらった恩義がある。日本人が困ったときにお役に立とうとするのは当然のこと。ときにはソロバン勘定よりも心意気が大事なこともある。


頭なんて、帽子を被るか、人前で下げるか、それくらいしか使い道がないですよ。頭の下げっぷりのいい人は、とにかく人に可愛がられる。わざとチョンボをやって頭を下げて、相手の懐に入っていく強者もいますからね。


昔から誇大妄想なんですよ。小さいときから、「俺が世界で一番だ」ってかたく信じ込んで、大ボラを吹いて自己暗示をかけ続けてきた。


平凡な人間が勝つためには、まず人が戦わない、戦ってもこちらが主導権を握れる場所をまず選ぶのが定石。


ルーティンをこなしているだけでは、前には進めない。


中堅でも老舗でも、常に新しいことにチャレンジしなければ、会社は錆びついてしまう。同じことをやっていると、腐ってしまう。


商品開発のキーワードは「聞いて分かる、見て分かる、使って分かる」。まずは「アイデアありき」で走り出すことが大切。


難しいところに行く方が楽。ダメだと思うところが、実は穴場。


経営者はバクチを打つもの。未来は誰も読めませんから。バクチに勝ったヤツが名経営者。負けたヤツは落伍者。


経営者の心意気が大事。くよくよしても始まらない。前に進むことが必要。


3分考えて結論が出ないということは、普段の考えが足りない証拠。


ロングセラーが生まれないのはみんな、新商品を作り過ぎるからなんです。それで自分の敵が自分になる。


基本方針は、お客様を創造し、維持・拡大していく。エステーはモノなんか作っていません。お客様をつくり、リピーターをつくる。


一度坂を転がり出したら止めるのは大変。営業も販売店も売らなくなる。


ロングセラーが行き詰まったら、スパッと諦めることも大事。


撤退は会議で決めてはダメです。論争していたら、時間ばかり食ってしまいます。撤退を決めるのは大将の仕事です。


普通のことをやっていたら、うちはつぶれる。


人間、大事なのは運と勘と度胸だ。


同じことばかりやっていては、アイデアは出てこない。


新商品はアイデアが肝です。他社のマネでは、価格競争になってしまいますから、儲かりません。それに、人のマネなんて悲しいじゃないですか。


どうせ現実は何が起こるか分からないのだから、市場調査に時間をかけて出遅れるより、転んだときの備えをした上で、とにかくまず走ってみたほうがいい。


成功は「たまたま、偶然」の結果であることも多いものですが、失敗には必ず失敗につながった理由がありますから、学べることがたくさんあります。


人間、失敗しないとカンは磨かれません。同じ体験でも、成功より失敗のほうが、身に染みる分、血肉になります。


細く長くやるのが商売の原点。ブームのときだけ買ってくれる一見さんは相手にしないぐらいのつもりでいるのが、商売を続けるコツ。


損切りはさっさとやる。見込み違いだと分かったら即撤退、「見切り千両」です。


「この商品を絶対に売ってのける」というトップの意気込みの強さが命運を分ける。


業界の枠にとらわれず、幅広く興味をもち情報収集することで、「これまでにない商品」をつくる糸口が掴める。


マーケティングのデータは、アイデアが有効かどうかの裏付けの一つにはなりますが、データからアイデアが生まれるわけではない。


成功体験が多すぎると、方向転換ができないんです。私が大ナタを振るえたのは、よそから来た人間だったからでしょう。


今までやっていたことは全部間違い。ガラガラポンですべて変える。これからは太陽が西から昇ると思え。
【覚え書き|エステーの経営再建着手時の発言】


制作チームが萎縮しないよう、余計な雑音から守るのがトップの役目。


常識を壊すんだから、イノベーションとは要するに喧嘩。


失敗の数が運を呼ぶ。


運なんていうのは打席に立った数なんです。僕も「消臭力」「脱臭炭」「米唐番」というヒット商品を出したけど、それだけ失敗も重ねている。


仕事で命までは取られないんだから、やりたいことをやればいい。そしたら度胸も付くし、運も回る。


大ぼら吹きと言われるくらいでちょうどいい。誇大妄想と思われても、根拠なき確信を持つことが大切。


今の若い人は、優秀で体力もあるし、ITもできて礼儀正しい。唯一、欠けているのは自信というか、根拠なき確信なんですね。


大切なのは自信を持つこと。自分は運が強いと思い込むこと。


日本人の自信喪失の原因は勉強し過ぎなんだよな。日本ほど活字を読む国はない。だからみんな人の意見を信じ過ぎるんですよ。


規模が小さいことは、むしろ強み。特に先行きの不透明な現代は、身軽で、小回りが利く会社こそ、強さを発揮できる。


大企業を上回るスピード経営は、トップがリーダーシップを発揮しやすい、小さくてシンプルな組織から生まれている。


時間は皆、平等に与えられている。その中で、いかに速くことを成し遂げるかが、勝負を分ける。


私たちは多数の技術を開発しては、引き出しにしまってきた。そして市場の変化に応じていつでも取り出せるようにしている。


経営者の中には、大きな相手を前に萎縮する者がいるが、縮こまっている場合ではない。今こそ自分たちの強さを発揮する時ではないか。


実際に自分が現地に行って、見て、触って、経験することで、情報収集の肌感覚が身につきますし、経営者にとって大切な「大局観」や「勘」を養うことにもつながります。


勉強しすぎると、逃げ口上がうまくなる。しかも世の中が見えすぎて、バクチを打たなくなる。


勘がないと決断できない。どんなデータを見てもダメ。


独裁はいけないかもしれないけれど、独断専行の部分がないと経営はうまく回らない。怖れられるぐらいでないと、改革なんてできない。


反対意見が多いことほど、実行する価値がある。


算盤勘定だけで会社は経営できない。


「タヌキ」でないと、経営者は務まりません。


大きな賭けに出たければ、それに見合った財務内容を整えてからにすべきです。身の丈を超えた博打は厳禁です。


朝令暮改は何も悪いことではありません。むしろ自分の間違いを認められずに、そのまま突っ走ることの方が、よほど間違っている。


社員が売れると信じ込んでくれないと、小売店のバイヤーもそう思ってくれるはずがない。


フタを開けてみれば、見込み通りに売れない時があります。撤退を決断しなければならない局面になったら、躊躇してはいけません。


私は「やめておけ」と言われることをあえて実行するようにしています。反対が多ければ多いほど、やろうとしていることに価値があると考えます。


世の中にないタイプの商品を創り出すには、相当の執念が必要で、好きでないとできません。


周囲が反対することをやれ。周囲が反対するのは、大抵それが、従来とは違う新しいことだからです。リスクを伴うからこそ、周りは反対するのです。


売上や利益のみを追求している経営者には、周囲もついてきません。会社を経営する根源的な動機が、利潤の追求だけでは、存在基盤の弱い会社だと言わざるを得ないでしょう。


株価、売上、利益、シェアのことばかり気にする経営者であったら、消費者の共感を得ることはできない。


居留守を使う相手には朝、会社の前で張っているといい。朝イチから衆人環視で「申し訳ありません!」ってやられたら、無下にはできない。


世の中、先に頭を下げられて命まで取ってやろうという根性のあるヤツはそうそういない。腹を括って先に頭を下げたら勝ちなんです。


今取り組んでいるのは「脱成熟化戦略」です。もっとイノベーティブなカテゴリーをつくる。要は、この国でまだない商品を開発すればいいんです。


運を引き寄せるかどうかは、その人の考え方次第。それが「根拠なき確信」。


優秀な人ほど、メンタルに問題を抱えて潰れていく。それではもったいないでしょう? リーダーは皆を元気にするのも大事な仕事。そのためには、まず自分が元気でなくちゃいけない。


工場や商品を減らす決断に、周囲は大反対しました。それでも僕が確信を持って「これはやらない!」と言えたのは、やはり普段から、休息を兼ねて一人になる時間を作り、考え続けてきたから。


真面目、博覧強記で何でもできそうな人はたいがいダメ。未来は誰も教えてくれませんし、本にも出ていません。


ニッチのマーケットをつくって、絶えず成長させないといけない。大手と同じことをやっては勝負にならない。


新商品はヤマ勘なんですよ。当たり損ねがホームランになる。狙った通りのホームランなんてありえない。


うちは「製造業」というより「お客様満足業」。お客様の好き、嫌いで戦っている世界です。今、生きているのが不思議ですね。毎日バクチをやってるようなもの。一寸先は闇ですよ。


いいものは売れない。売れたためしがない。逆です。売れるからいいんですよ。いいものだと思った瞬間、目が曇るんです。「買わねえ奴が悪い」とか言って、高慢ちきになっちゃう。


他人から教わることは嘘っぱちが多い。


「世にない商品」なんて、世の中になかなか受け入れられない。一人一人の消費者の頭に刷り込むには、お金も人手も時間もかかります。年中、「脳みそ絞って売り方考えろ」と言います。


人は変化を嫌う生き物ですから、ちょっと命令されたぐらいじゃ、新しい行動なんて起こさない。「このオッサンの言うとおりにしないと、本当に叩き殺されるかもしれない」ぐらいの恐怖感がないと動きませんわな(笑)。


粉飾決算をしていた米国子会社に乗り込んだときの話です。僕に反発したその会社のナンバー2を呼び出しました。その米国人は身長が2m近くあるうえ、ボディビルをやっていて筋骨隆々。小柄な僕と対照的でしたが、ビビったらナメられるだけですからね。英語ができないので、「インチキな書類を持ってくるんじゃねえ!」「いい加減なこと言ってたら裁判に持ち込むぞ!」と日本語で怒鳴りまくりました。最終的には、大男も「このオッサンは危ない」と思ったのか、大人しくなった。ビジネスは喧嘩ですよ。リーダーはナメられたら終わりです。


人は1回や2回言われるぐらいでは、心に響くどころか、覚えもしません。3年間言い続けて、やっと、「この人、何か言っているな」と思ってもらえるぐらいだと思うんです。だから、嫌がられようが何だろうが、100回でも200回でも言っていました。それだけ言えば、相手も「本気なんだな」と思いますよね。


結局のところ、人間は浪花節。感情の生き物だから、理屈じゃ動かないんですよ。中途半端な理屈をこねるぐらいなら、理屈は多少めちゃくちゃでもいいから、情熱を伝えたほうがいい。そのほうが、「何だかよくわからないけど、そんなに言うならやりますよ」となるものですよ。


トップが「誰がなんと言おうと売ってやるんだ」という思い入れがあるから石だって木だって売れるんです。


売れる商品が、商品開発会議や消費者調査で分かるほど世の中、甘くはない。


誤解を恐れずに言えば、経営者というのはある種、バクチ打ちの親分みたいなものです。うまくいったらお慰みで、上手にバクチを打って、負けが込んでもそれほど損をしないようにするのが仕事です。


「俺はゴマなんかすらない」という人は、100日間ゴマをすってみろ。相手がどんな反応をするか、どんな変化があるか、面白いじゃないか。ゴマすりも、人間関係の潤滑油の一つ。そう考えてやるくらいのしたたかさが必要だ。


じっくり考える時間は、上になればなるほど大事。考える時間をつくるためには、常に現在の仕事を整理する習慣を身につける必要がある。


市場調査やマーケティングデータなどを、鵜呑みにするのは危険。やろうと思えば、都合のいい数字ばかりを集めることは簡単にできますし、数字を改ざんすることだってできます。


「もう少しがまんしていれば、売れ始めます」とか言って、損切りを先延ばししようとする人もいますが、私の経験では、がまんして売れたためしはありません。逃げ足は、早ければ早いほどいい。


ホラも本気で吹けば、現実になる。自分で自分に言い聞かせているうちに、確信が芽生えてくるのです。その意味では、知能指数の高い人は経営者に向きません。少しおバカなぐらいが丁度いいと思っています(笑)。


トップが「売る」と決断し、その覚悟を示せば、社員も「しょうがないな」と思いながらも動いてくれる。トップが不退転の覚悟を示し、商品を店頭の目立つところに山積みにしてもらえば、たいていは売れるもの。


ポイントは、物事をできるだけ大局的にとらえ、「勘」を働かせること。「勘」といっても、あてずっぽうの単なる「ヤマ勘」ではなく、現場を知り、経験を積んで磨き上げた「勘」でなければなりません。


社長はコミュニケーション業だと私は思っています。社員に根気強く語りかけるしかない。わかってもらえるように努力するしかないんです。


最初にガツンと旗をぶち上げたら、ひたすら旗を振り続ける。継続は力なりというけれど、社長業は我慢業です。


新市場の開拓は大切だが、撤退の決断はもっと亜要で、早ければ早いほどいい。社内でも「撤退を決断したヤツには表彰しろ」と言っている。


理論ばかり振り回すお利口さんのトップは信用できない。頭でっかちでは駄目。だから「勉強は体に良くない」といつも言っている。


在庫で潰れた会社はあっても、品不足で潰れた会社はない。


改革は、社長にしか起こせない。


会社が潰れるのは、経営トップが財務諸表などを見てもピンときていないからです。そもそも、財務諸表を読めない経営者が結構多いのが実態です。


経営はバクチ。負けたら、首を切られても仕方がない。それをやる社外取締役こそ、最後の安全装置。


実際に世の中を見ていると、私はそんなに景気が悪いとは思わないのです。だから、なぜ経営者たちが「悪い、悪い」と言うのか不思議で仕方がない。したり顔で「世の中が悪い」と言うでしょう。私に言わせれば「おまえが悪いのだよ、経営者よ」。トップが「悪い」と言うから部下も引きずられ、その相場が日本全体に表れているのです。


社長の任務は明確な旗印を掲げることにあります。震災(東日本大震災)の直後、社長だった私がまず掲げた旗印は「負けてたまるか」でした。「やっちまえ」のひと言でもいいんです。短くてわかりやすい旗印ほどいい。


社員には「頭は人に教えを請うて下げるためにある」と伝えています。もちろん、社長もそうです。


社長は自分が掲げた方向性に対して、ある程度はプロにならんといかんのです。だから、たとえばエアカウンター(家庭用放射線測定器)をつくるときには関連本を片っ端から読み漁り、専門家に話を聞いて回りました。そんなことを3週間もやれば、セミプロぐらいにはなれます。


エステーが扱う日用雑貨は、景気がいいから購入数が増えるものではありません。エステーは空気をよくする商品など、世にないものをつくってきた会社です。あくまでも、需要を創造するのが僕らの仕事です。


景気より天気、天気より元気、元気より人気。


他社の株主総会や決算報告を見ていると、たいてい「そもそも我が国の経済は」といった文面から始まります。世の中の景気が悪いから、自分の会社の業績も悪いというわけです。しかしそんなことはないだろうと、私は思うわけです。世の中が駄目だから自社も駄目。それが本当なら、経営者など必要ありません。


心意気と算盤。私が常に意識してきた言葉です。経営者は常に、心意気と算盤の間で揺れ動いています。社長に心意気がないと、社員はついてきてくれません。経営者がぶれたらダメなんです。数字感覚を失ってしまっては立ち行かなくなりますが、かといって算盤勘定ばかりでは社員も私も精神的に参ってしまいます。バランスが重要です。


社長が強くなくては駄目です。学校も家庭も頼ることができない時代、支えになるのは会社です。会社が強くなれば日本は強くなる。社員のためにも、社長は心意気を発信し、社員を先導していかなければなりません。


社員と話をするときに心がけているのは、長話をしないことです。キーワード一発。出合い頭の勝負ですな。


セールスマンシップとは何かといえば、コミュニケーション能力です。ではコミュニケーション能力とは何かといえば、相手の話をよく聞くことなんです。保険営業を始めた頃、セールスの研究をするためにいろいろな業界のトップセールスの人たちに会いましたが、おしゃべりな人はいなかった。セールスマンシップのある人は、相手に気持ちよく話をさせるのがうまい。


処世術のポイントは愛嫡があるかどうかです。愛嫡がなければダメ。諸先輩や仲間から「あの野郎」と思われたら最後だからです。自分で知っていても、わざわざ聞いてみるとか、そのぐらいの芝居は必要でしょう。要は、人に聞くことが最大の勉強です。


世の中のものの半分は「面白い」から買うんです。理屈で買っているものなんて、実際にはほとんどない。「見たことなくて面白そう」。じゃあちょっと買ってみるか、と。


お客様は、よく分かっています。消費者の方が社内のマーケッターよりも利口なんです。マーケッターは理屈ですが、消費者は直感です。ヒット商品が出る時には、自分でも「これは売れるな」という予感がします。


社長がやるべきことは、そう多くないんです。大型買収の決定とか事業撤退とか、社長にしかできない決断をして、ゴールを見極め、「あっちへ進め」と旗を振る。そのために必要なのは、「学歴」とか「頭の良さ」とか、「もっともらしい理論」ではありません。だから僕は、勉強は体に悪いと言っています。もっと素朴にやったらいい。


市場調査のためにアンケートを取っても、答える人が「お金を出さない人」だった、なんていうことも多々あります。それを信じていたら、理路整然と、会社は潰れていきます。


休日に店に行って、名刺を出して、売れているかどうか店長に聞く。それで「ダメです」という言葉を5~6軒聞けば、ダメだなと思ってやめます。早いものだと1週間くらい。売れないとCMもすぐ止めます。そうしないと損が膨れ上がる。「頑張ります」「あともうちょっと」といって、うまくいったためしはありません。


美容院は僕にとって、最大の情報源です。おしゃべりしていると、世の中のことがすごく分かる。ほかにも、ホームセンターやドラッグストアからブランド店、自動車販売店まで、いろんなところに行きます。ストアチェックは僕の趣味。電車に乗るのも大好き。どの電車がどれくらい混んでいるのか。乗って何をしているのか。電車も情報の宝庫。


世の中の購買者のうち、好奇心で買う人は5%はいるそうです。消費者の5%が買ってくれたら、その商品は大成功です。まず買ってもらって、使っていいとなれば、それがクチコミで広がります。


今の若い人はとても優秀です。これ以上勉強する必要はありません。相手を恫喝する。危なくなったら逃げる。捕まったら死んだふりをする(笑)。そんなハッタリやケンカの仕方を学んだ方がいい。そういうメンタルタフネスの根底にあるのは、基本的には体力です。自分は絶対死なない。そう思った方が勝ちますよ。


一番大事なことは、もっと自分に自信を持つこと。「根拠なき確信」を持つこと。昔は終身雇用ですから逃げ場がなかった。今は転職もできるし、逃げ場はたくさんある。もっと暴れればいい。


営業は、大企業を攻略するより、実は社員数が少ない会社の方が、労力がかかるもの。小さい企業からスタートするのではなく、日本一のところからやった方がいい。


最近の経営者は、理屈が多い印象を受けます。みんな枕詞のように「我が国の経済は低迷して、だから業績も危機的状況で……」と言う。そんなの関係ないですよ。ちょっと具合が悪いと、「リーマンショック以来の危機」とか言って騒ぎ出す。歴史を見れば分かる通り、いつだって危機なんですよ。そこをどうするか考えるのが社長でしょう。


僕は「社長」と「経営者」は違うと思っています。「社長」は、決断を先送りして、任期が切れればやめてしまって、お咎めなしの人。「経営者」は決断ができる人。「死んでも自分の責任でやる」という決意を持っている人のこと。


仕事や経営は日々、「現実」との取っ組み合いです。理論だけで太刀打ちできない。私は理論家が大嫌いです。なるべく会わないようにしています。


今は何でもある時代ですから、比較対照できない「新しいもの」を出さないとヒットしません。だから、役員、支店長、営業、すべてが反対するぐらいの商品の方がいい。


現場から出てきたネーミングは大抵、小難しくて、一度聞いてもよく分からないものが多いんです。誰か「独裁者」がいて強引に決めないと、ネーミングは決まりません。


「世にない新しいもの」は、比較対照ができません。つまり、「売れる」「売れない」の判断ができない。だから会議をして考えれば考えるほど、変なものになっていく傾向があります。議論すればするほど、分からなくなりますから、エイヤっとやらないとダメ。


経営のトップに立っていると、「会社が潰れるんじゃないか」といつも思うんです。だから、「いつも何かやらないといけない」。そんな恐怖感を持っている。だから新しいことに挑戦する。


「脱臭炭」は、社員や取引先がみんな反対したのを押し切って、世に送り出したら大ヒットしました。むしろ、みんなが反対したときほど、商品化には熱が入ります。成功したら、「あの人にはかなわん」と全員、私にひれ伏すでしょう。それが楽しみですね。


経営者はケチであれ。好業績のときでも利益を内部留保し、業績が悪いときに取り崩して、金額は少なくてもボーナスに上乗せして支給し続けたほうがいい。キャッシュフローが潤沢になれば、社員を長期に安定雇用することもできる。


いつも仕事のことばかり考えていたら、身も心も干上がってしまいます。何がヒットするか分からない時代だからこそ、成果が予測できないようなことに、意味があるのではないのでしょうか。


新商品で世間をアッと言わせることができれば、「エステー、ここにあり」という存在意義を世の中に示すことができます。逆に他社商品のマネばかりしていたのでは、より確実に売れるかもしれませんが、充実感は弱い。これでは社員のやる気も湧きません。


私が様々な新商品を開発したのは、お金儲けが目的でした。ただし根底には、損得勘定抜きに世の中を驚かせたいという願望がありました。


当然ながら経営者は、お金儲けに貧欲でないといけません。しかし同時に、儲けたお金を社会に気持ちよく還元する、「道楽者の心意気」がないといけないと思うのです。


経営者の仕事は過酷です。寝ても覚めても株価、売上、利益、シェアといった数字が頭から離れません。特に私のように独りで決断する独裁的なタイプの経営者であれば、なおさら負担は大きく、道楽でないとやっていられません。


こんなことを言ったら怒られるかもしれませんが、経営というのは結局、社長の道楽なんじゃないかな。道楽だからこそ、精神的にも体力的にも続けられるのだと思います。


優位性の乏しい中堅企業でも、勝てると信じ込むことができれば、大胆に戦うことができます。そうした思い込みを社員に植え付けるのが、宗教指導者たる経営者の役割だと思うのです。


社員に自分の言葉を信じ込ませるためにも、経営者は神がかり的に見える人の方がいい。周りから「あいつ少しおかしいんじゃないか」と思われるぐらいがちょうどいいのです。淡白な性格の人や、理詰めの人はあまり向かない。特にエステーのような中堅企業の場合はそうです。


本当は発売されるまで、売れるかどうかなんて分かりません。そこでまず「これは絶対に売れる」と、自己暗示を掛けます。その上で、疑心暗鬼の営業部隊に「これは必ずヒットする」と信じ込ませるわけです。


私の経営は独裁といっても、独善とは違うのです。現場の社員と対話し、世の中の流行にも敏感であらねばなりません。そうでないと、トンチンカンな方向に行ってしまいます。


店頭の動向を知るため、休日には趣味の自転車で50kmぐらい走りながら、様々なお店に立ち寄ります。他社製品が自社製品のトレンドとどう連動しているのか、どのようなネーミングが流行っているのか、洗剤や柔軟剤など、近しい分野の製品はどうなっているのかといったことを気にしながら回ります。


それまで世の中になかったタイプの商品を欲しがるかどうかは、実際に手に取って使わないと消費者も分かりません。事前に市場調査で顧客の嗜好を探っても無駄です。未来のことは誰も教えてくれませんから、自分で想像するしかないのです。


経験上、優れたアイデアを出す人材は一部に限られます。しかも一時期だけです。その人材の旬の時期を捉えることが、チーフイノベーターである社長には求められます。商品名も自分で決めます。行き詰まると、社員を飲みに連れていって、反応を見たりします。そうやって商品化したのが、ゼリー状の消臭剤、消臭ポットでした。


一般の社員が何か突飛なことを口にして、実行しようとすると、変な奴と思われて上から抑え込まれがちです。周囲が呆れるようなことを実行できる立場にいるのは、社長しかいません。社長は「チーフイノベーター」であるべきです。


商品やネーミングを会議で決めるのではなく、本当は常識外れの柔軟な発想力を持っている者が、独裁的に決定すべきです。


「衆知を集める」と言えば聞こえはいいですが、社員が集まって商品名を決めるとロクなことがありません。意見を出した人たちの顔を立てるために、妥協点として誰の心にも響かないネーミングを落としどころにしてしまいます。


「開発者はこれだけ頑張ったので何とかしてほしい」などという泣き落としで、商品化が実現することも珍しくありませんでした。これではお客さんの視点も何もあったものではありません。


開発会議では、出た様々な意見をできるだけ商品に取り入れようとします。そうして多くの人々に配慮した結果、最終的に折衷案のような無難な商品が出来上がります。それは他社の売れ筋をマネたような、新規性のない商品であることが多い。


商品開発にも民主主義はそぐいません。次に出す新商品を合議で決めれば、結果として、つまらないものばかりが量産されることになります。あれほど議論に時間を掛けたのに、ありきたりの結論しか出なかった。そんな経験を持つ人は少なくないはずです。


理想は社長の号令で一斉に動くシンプルな組織です。私は社長になってからは、部長や課長という階層をなくして、組織をフラット化しました。社員に、指令がよりダイレクトに伝わるようにするためです。


民主主義には意思決定に時間力掛かるという弊害もあります。やたらと会議が多くて、なかなか結論に至らないという経験があるでしょう。企業には本来そんなことをしている余裕はないはずです。市場という戦場で、ライバルと戦争しているのが民間企業です。常に戦時下なのに、社内の合意形成に時間を空費していては、あっという間にライバルにしてやられてしまいます。


私も社長就任当初は、役員たちから随分と抵抗されました。皆、自分を役員に任命してくれた前任の社長にシンパシーを感じており、規定路線の変更を快く思いません。当時、役員は13人もおり、役員会で私は孤立無援でした。多勢に無勢で、さすがに自分の好き勝手にはできません。そこで独裁体制を確立するために、役員の人数を半減することにしました。敵が減れば勝てると思ったのです。「だいぶお疲れのようだから、しばらくちよっと休んでいてくれ」と言って、適当なポストを与え、一人ひとり「引き込み線」に入れます。クビにはしません。そして理屈にならない理屈を並べて、少しずつ権限を外していきます。一度にやったら、また総掛かりで袋叩きに遭ってしまうので、「徐々に」が肝心です。役員が半減したことによって、思い通りの経営がしやすくなりました。


経営というのは、将来を見据えて1歩も2歩も先んじて動く必要があります。しかし人は将来のために、今、困難を受け入れようという判断がなかなかできません。そういう人たちの意見をいちいち聞いていたら、いつまでたっても改革は成し遂げられません。


私が民主的な手続きを踏む経営者であったら、改革を断行できなかったでしょう。従来のやり方を変えることに抵抗するのは人間の性(さが)だからです。


社長就任当時のエステーは経営難に陥っていました。バブル経済崩壊の余波で利益は減り、所有している有価証券や土地の価値は暴落、株価は低迷していました。私はどん底から這い出すために、過去のやり方をすべて否定することにしました。


民主的な経営者であれば、多数決や合議を隠れ蓑に、責任を逃れることができます。一方、独裁体制ではトップが全部決断し、全責任を自分独りで引き受けなければならない。社長就任時にはもう63歳になっていましたが、あえて困難な道を選びました。


私は幼少期から民主主義に疑問を抱いていました。終戦がきっかけです。私たちの世代は戦後、学校の先生から民主主義の大切さを学びました。ですが、戦中に「鬼畜米英」と叫んでいた大人たちが、いきなり民主主義をあがめるようになったことに、子供ながら違和感を覚えました。大体、日本に民主主義を根付かせようとしていた連合国軍のダグラス・マッカーサー最高司令官も、その統治手法は独裁的でした。私は決して歴史上の独裁者を礼賛しているのではありません。ただ民主主義はどこか胡散臭い。特に経営にはなじまないと思っています。ですからエステーを率いることになった時、迷わず独裁者になろうと決めました。


強いブレーキがあってこそ、安全にアクセルを踏み込めるのだと思います。独裁者であると同時に、謙虚にアドバイスに耳を傾ける「もう一人の自分」がいれば、経営のリスクは減るでしょう。


「社長は、正直に忠告してくれる忠臣のような部下を持つべきだ」と言う方もいます。しかし、上司に異を唱えるような社員は、組織内で生き残れないのがサラリーマン社会の現実だと私は認識しています。ですので会社組織で上司批判はほとんど期待できません。上司が独裁的であればなおさらです。そこで私は社外取締役に期待することにしました。社外の方なら、忌憚のない意見が出ると思ったのです。


反対意見が出れば、自分がやろうとしていることが正しいのかどうかを客観的に見つめ直せる。ですが、誰も批判を口にしなくなると、逆に自信が持てなくなります。


ある時は用心深い臆病者となり、別の時は自信満々の宗教指導者を演じる。この2つの顔を使い分けることが、経営者には求められます。


日本で新型インフルエンザが大流行していた頃のことです。マスクが飛ぶように売れ、エステーでも増産に次ぐ増産を指示していました。しかし、調子に乗った時が危ない。ある時、ふとそう思って減産を決断しました。まだマスク需要が旺盛だった段階だったので、社内からは大反対に遭いました。それでも私は譲らなかった。しばらくすると、新型インフルエンザ騒ぎは沈静化して、あっという間にマスク市場は冷え込みました。大量の返品に苦しむメーカーが何社かありましたが、エステーは難を逃れました。


本当に怖いのは、商品が見込み通りに売れなかった時よりも、実は売れてしまった時の方です。どんなヒット商品でも、いつかは需要がピークアウトします。ピークアウトの時期を予測して早めに供給を絞っておかないと、売れなくなった時に不良在庫を抱えることになbます。特に日用雑貨は店頭に商品をたくさん並べないと手に取ってくれません。流通在庫を多めに用意しているだけに、不良在庫を抱えるリスクは大きい。ピークアウトした段階で供給を絞っても、遅いのです。


「最後まで頑張った奴が偉い」などという考え方は、ビジネスの世界では通用しません。一方で撤退したとしても、それが正しい判断だったかどうかは、実は誰にも分からない。粘れば、販売が好転していたかもしれません。だからこそ撤退は、経営者が腹をくくらねばできない重い決断なのです。


撤退の判断は、経営者にとって最も重要な仕事のひとつでしょう。特にエステーの扱う日用雑貨品は、市場に定着させるまでものすごい資金とエネルギーを要します。ですから「もう少し頑張ったら、定番商品になるのではないか」という思いをなかなか断ち切れず、多くの経営者は撤退を時路します。そして深追いして、大ケガを負ってしまう。


自社の新商品が売れているのかどうかは、客足が集中する週末に店頭を巡って自分の目で確かめます。中でも週末を締めくくる日曜日の夕方から夜にかけてが重要で、商品棚から自社商品がどれくらい減ったかを確認すると、土日の販売動向が見えてきます。


経営者がビクビクしていては、不安が周囲にも伝わり、達成できる目標も達成できなくなる。どんなに不安でも、大仕事を成し遂げる時、経営者は自信に満ち溢れた宗教指導者を演じ切らねばならない。


私は新商品を投入する人件費や宣伝費から損失を詳細に見積もり、どういう状況になったら撤退するかを考え抜いています。失敗した時のリカバリー策まで用意します。目標を達成できなかった時に倒産してしまうようなリスクの高い博打は、決してしてはいけません。


社内を動かすには、まず自分自身が「絶対に売れる」と思い込むほかありません。毎日のように「売れる、売れる、売れる」と唱えて、自己暗示を掛けました。ですが、完全に暗示に掛かっていたわけではありません。冷静に状況を分析している「もう一人の自分」を残しておかないと、会社を倒産させるような大失敗を犯しかねませんから。


大きな仕事を成し遂げようとする時、経営者は自信に満ちた宗教指導者のような態度で社員を鼓舞すべきです。社内を改革する時には、独裁者のように振る舞わないといけません。


消臭ポットを開発するとき最初は周りが反対しました。しかし当初、「絶対に売れない」と断言していた小売店からも、矢の催促で注文が届くようになりました。商品が革新的で常識外れだからこそ、反対されると思っておいた方がいいでしょう。


会議で話し合っていては、他社の売れ筋商品をマネたような、無難な名前にしかなりません。いくら画期的な商品を開発しても、ネーミングがありきたりであれば、斬新さは伝わりません。ネーミングは鋭い感性を持つ人に独断で決めさせるべきです。


商品名には徹底的にこだわることが大切です。というのも、心に響く商品名をつけられるかどうかで、売れ行きが大きく左右されるからです。


私の商品開発のモットーは「聞いてわかる、見てわかる、使ってわかる」です。例えば脱臭炭は、商品名からどのようなものであるのか「聞いて分かる」、脱臭機能が効いていることや、使用期限が「見て分かる」ようになっています。その新鮮な驚きが、「使って分かる」となれば、購入者はリピーターになってくれます。


ヒット商品をつくるときに大切なことは成熟市場を狙えということです。要するに、競争がほとんどなくなってしまった寡占市場や独占的市場です。成熟市場の企業は、安定的に収入を得られているため、あえて商品にイノベーションを起こして競争を仕掛けようとは思わないものです。現状維持が最も賢い選択肢となります。長年、市場にも商品にも変化がなく、油断している状態と言えます。そこに、後発メーカーが一工夫を加えた製品を投入すれば、オセロゲームのごとく、面白いようにシェアをひっくり返すことができます。


私は無駄な在庫が大嫌いです。売れない在庫を抱えて、資産に計上しても、財務が表面上、良く見えているだけです。いずれは在庫を処分して損失を計上しなければなりません。


社長に就任し、商品を絞り込みました。当時、エステーは860品種も取り扱っていましたが、そんなに多くては、全商品を頭に入れて営業トークができるはずがありません。営業マンが記憶できるのは、せいぜい50品種が限度ではないでしょうか。実際に860品種の大半は流通しておらず、倉庫でほこりを被っていました。在庫を圧縮する意味もあって、私は3分の1程度まで減らしました。


テレビからは毎月4000種類ものCMが流れてくるそうです。その中で自社商品が人々の記憶に残らなかったら、CMを流さなかったのと同じです。同時期にCMを出稿しているすべての商品が、競合相手だと思わないといけません。莫大なCM予算を持つ大手企業に対抗するためにも、エステーのような中堅企業は広告宣伝費を特定の商品に集中投下する必要があります。


私がエステーに入る前に勤めていた日本生命保険では、保険の種類が増えるほどに、エネルギーが分散して、営業力が落ちることを知りました。またエステーに入社した80年代半ば以降、外食チェーン吉野家の事業拡大を、驚きを持って眺めていました。お店で提供するのは基本的に牛丼だけです。単品ビジネスはすごく強いものなのだと痛感しました。


商品数が多ければ、1つが見込み通り売れなくても、別のものでリカバーする余地があるので、リスクは小さいでしょう。しかし品数が多いと、宣伝や営業にかける資金や人的資源が分散してしまい、結果として、どれも売れなくなる恐れがあります。私はリスクを負ってでも、特定の商品に経営資源を集中させて、ヒットを狙うべきだと考えます。


利益のためだけの経営など、長くは続けられません。「エステ-ここにあり」と、その存在意義を示したい。500人程度の会社で「日本の空気までもかえたい」と唱和しているなんて、正気の集団とはいえないけれど、そんな会社が、世の中に一つぐらいあってもいいでしょう。


努力したって未来は保証されない、それが現実です。だからこそ、「今日はダメでも、あしたはあしたの風が吹く」と楽観していられる脳天気さが大事です。


私は、保険のセールスマン時代にメンタルを鍛えられました。保険の営業は、成功率ゼロに近い仕事。いちいち落ち込んでいたら、できるはずのこともできなくなります。おめでたい人が、結局は勝つんです。


商品開発をする立場の人間は、あまり慎重すぎてもよくない。おっちょこちょいで、おだてに乗りやすいようなところがないと、リスクをとって前例のない新商品を売り出すようなことはできません。だから私も、失敗はよくしました。


新型インフルエンザが流行して、マスクが飛ぶように売れていたときも、「このまま調子にのっていたら、痛い目に遭う」と危機感が膨らみ、売れ行きがまだ伸びているタイミングで、マスク事業からの撤退を決めました。「せっかくのチャンスを逃すのか」と社内からは猛反対されましたが、頭を冷やして考えれば、インフルエンザの流行がそういつまでも続くはずがありません。実際、その後まもなくマスク需要は沈静化して、増産していた企業はだいぶ困ったようです。


ブームで怖いのはしっぺ返しなんです。商品が調子よく売れているときというのは、たいていそこがピークです。急激な需要の増加に合わせて供給を上げていけば、いつかは供給が需要を上回る。そうなれば、待っているのは在庫と返品の山。


見切りの決断は難しいものです。「ここまでやったんだ。もうちょっと続ければうまくいく」と、つい考えたくなりますから。でも、「もうちょっとやれば」は、たいていうまくいきません。


大事なのは、まず小さく賭けること。新製品の開発は賭けですが、失敗したときに取り返しがつかなくなるような賭けには出ません。たとえば、まず地区限定で売ってみる。あるいはバリエーションの数を絞る。「5種類もつくるな。3種類にしておけ」と言ってやっています。


儲けることより、損しないことのほうが、会社の存続にとっては重要。私も、「絶対売るぞ」と思う一方で、もう一人の自分は売れなかったとき逃げる(撤退する)算段をいつもしています。


失敗に備えることはトップの大事な役目です。大部分の新製品は、結局は失敗します。あのイチローだって打率4割はいかないんですから、我々が10出して3当たれば上出来でしょう。10出して1当たる程度でもいいぐらいです。要は、失敗が大きなロスにならないようにすればいいのです。


私は水泳やスキーもしますが、趣味を一つ挙げるとすればお店めぐりです。うちの商品が置いてあるような店に限らず、カーディーラーにも行きますし、とにかくあらゆるジャンルを見て、「今はこんな色が流行っているのか」とチェックするのが楽しみなのです。髪を切るときは美容院に行って、「最近どんなモノを買った?」と若い美容師さんとおしゃべりします。


「社員からいい知恵が出てこない」と経営者が嘆くのは間違い。アイデアは、危機感がないと出てこないものだからです。「ここで一発、ドーンとやらないと、会社が危ない」という恐怖を身に染みて感じられるトップが、一番いい案を思いつけるはずなんです。


在庫処分になぜ抵抗があるかといえば、「誰がこんな売れないものをつくったんだ」という責任問題になるのを、社員が恐れているからです。「責任は問わない」と言い続け、実際に捨ててもお咎めなしなのが知れ渡るまで、ひたすら忍耐です。


営業部は会社の組織の中でも、社内外への影響力が大きいところです。営業にバカにされる社長は失敗します。経営者としてやっていくには、まず営業部隊の心を掴むことが大事。


最初に大言壮語しておけば、自分も引っ込みがつかなくなる。追い詰められたときに、人間はバカ力が出る。「これは自分の実力以上の仕事だ」なんて腰が引けていたら、こなせるものもこなせない。


「実力以上の仕事」なんていまだかってないんです、精神的には。いつだって実力以下の仕事だと根拠なき確信を持っている(笑)。だけど現実とのギャップがあるわけで、やらせたら何もできない。それがわかっているから、あまり落ち込まないことにしている。


社長というのは決断業。決断して常に旗印を明確に示す。旗を振るだけでは誰もついてきてくれないから、ときには独裁的に振る舞ったり、バカなパフォーマンスもやる。決断するのに実力以上も実力以下もありませんよ。


社長就任演説で多少は社内がぴりっとしましたが、そんなことで組織は簡単に変わらない。最初は抵抗の嵐でした。役員会で何を提案しても反対される。自分たちがやってきたことが全否定されるんだから当然です。結局、組織を変えるには、上を代えるのが一番手っ取り早いということで、役員を半分に減らしました。


会社がどうにもならなくなって、「じゃあ、おまえがやれよ」と私にお鉢が回ってきた。社長になって何をするか。腹は決まっていた。過去の全面否定。就任演説で「聖域なき改革をやる。コンパクトで筋肉質な会社を目指す」と全社員を前に宣言した。


景気の動きに強い企業になるには、ブランドが必要です。我々は「消臭力」や「ムシューダ」というブランドがありブランドに対して消費者がお金を払ってくれます。そこに少しずつ付加価値を付けて、消費者が離れにくくなるようなブランド価値を創造することが重要です。


役職や年齢にかかわらず、給料をもらっている以上、会社員は誰もがプロフェッショナルであるべき。上に提案くらいしないと。その自覚を持つことが、自分の生きる道を見つけることにつながるはず。


「今の会社では上へ行けそうにないから転職しようか」と考えている人もいるかもしれません。でも、今の会社で成果を出せない人は、どこへ行っても同じ。腹をくくること。たとえ出世できなくても、「ここで好きなことをやってやる」と開き直ればいい。


社長なんて、はっきり言えば人気商売ですよ。人に好かれないとやっていけない。上に行きたいなら、能力だけを磨いてもダメ。


僕が経営トップになって何をやっているかといえば、味方作り。組織で上に立ちたいなら、「なんだか憎めないな」と思われるキャラクターを作ることが必要。


最初からイエスというお客様などいません。だから僕は、相手にノーと言われた瞬間に、「よし、ここからがスタートだ!」とスイッチが入る。そして、ノーを覆すためのアイデアがいくらでも湧いてくる。


僕みたいに鈍感な人間は、痛い目にあってもすぐに忘れる。だから、うまくいかないことがあっても、「いやあ、今日も絶好調だな!」と言えるのです。経営者に必要なのは、この鈍感さですよ。悪いことがあっても、すぐに忘れて動き出せる人は、運を引き寄せられる。


僕は昔から「俺が世界一だ」という根拠なき確信を持っていた。それがいつも自分の強みになっていたように思います。実際は単なる思い込みなんです。でも、ビジネスで結果を出すには、この思い込みが大事。


リーダーシップとは何か。それは、周囲を「この人の言うとおりだ」と納得させることです。そのためには、「このオッサン、怖いな」と思わせないと(笑)。リーダーはナメられたら終わりです。


上司にとって「役に立つ部下」になれば、多少好き勝手をしても認めてもらえる。僕はよく「部長の名前で会社にこんな提案をしたら、上から評価されますよ」とプレゼンしていました。すると上司も「こいつはよくさぼっているが、自分の出世には役立ちそうだから見逃してやるか」と思うものです。


一人で考えたことを、僕はいつもレポートにまとめています。「3年後の日本経済はこうなる」「5年後はエステーをこんな会社にしたい」と。この積み重ねがあるから、いざ危機やチャンスが来たときに、どこへ向かうか判断できるわけです。


経営者が本当にやらなきゃいけない仕事は、未来を考えること。それ以外の仕事は、他の人に任せればいい。日本の社長は、用もないのに取引先に挨拶に行ってみたり、必要のない会議に顔を出したりと、どうでもいい仕事を増やしすぎです。


経営者がやらなきゃいけないことなんて、本当はそれほど多くない。トップが仕事をすべきなのは、僕が社長になった頃のような危機に会社が直面したときと、絶好のチャンスが飛び込んで来たときだけ。そこで「今からあっちの方向へ進むぞ!」と決断することは、経営者にしかできません。つまり、トップが本当にやるべき仕事は「未来を考えること」なんです。


私は体が小さい。それでも小さいなりに、大きいやつとの喧嘩の仕方は、子供の頃から体に叩き込んでいる。だからだろう。会社を経営するようになってからも、事業規模が小さいことをハンディだと感じたことはない。


7年前から山小屋を所有していますが、山の中にいるとなぜか元気になる。秘密を探るうちにこの研究にたどりついた。そこで、まず先にクリアフォレスト(北海道のトドマツの林地残材を有効利用した空気浄化剤)事業部を立ち上げたんです。


初めての人に会うことが凄く大事。努力しなければそういう機会はつくれません。同じ業界の人はだいたい発想も同じで、会っても進展がない。違う業界の人と会うと頭が活性化しますね。


聖域なき改革はいい加減に、荒っぽくやらないといけない。精緻に難しく考えていては、ひとつも削れません。捨てなければ会社じたいが重たくなっちゃって、一歩も前に進めないんですわ。


反省するような奴は行動力がないから、新しいものができない。おっちょこちょいな奴は、一切反省しませんね。


皆がダメだという事柄は、皆はだいたい真面目に考えてはいません。チョロッと試した程度で「ダメ」と言う。だからやってみる価値があります。人が何かに反対するときは、だいたい何かと比較した相対的な優劣で言う。絶対的な尺度を根拠にはしてません。だから、尺度を変えればチャンスがあるんです。


いわゆる勉強は体に悪いんですよ。詰め込めば詰め込むほどアイデアが出てこなくなります。だから僕は、多少不義理をしてでもなるたけ頭をカラッポにする、考え事をする時間をつくっています。何かこれまでと違うこと、面白いことないかなあ、と。


商品化されたアイデアの3分の1が売れれば高打率。


パワーポイントで発言の要旨をわかりやすく見られるようにすれば便利ですけどね。でも、感情を伝える肉声の部分が軽視されてしまい、感情が伝わりにくくなると思うんです。なんでもかんでもパワーポイントを使うのは、過度のIT依存症です。私は、社内のパブリックスピーチや全体朝礼など、大勢の前で話すときには、パワーポイントを使わないようにしています。


相手のうまくいった仕事、自慢の娘、趣味……。誰でも自分が話したい話題があるものです。それを調べておくこと。話したいことを聞いてくれる人に対して、人は好印象を持つのです。


あまり売り込むようなことはしませんね。とくに、うちのような大衆消費財の新製品の場合は、売れるか売れないかなんてわかりませんから、商品の説明をグダグダされても、相手も判断がつかないんですよ。自社の商品を選んでもらう最大の決め手は、商品ではなく、自分のことを相手の担当者に気に入ってもらうこと。「かわいい奴だな」と思ってもらえれば、「試しに商品を置いてあげるよ」となるものです。


その仕事を本気で成し遂げたいと思っていて、そのことを示すことができれば、怒鳴ったりしなくても、「この人に逆らったら、どうなるかわからないぞ」という恐怖感が生まれる。また、「それだけ言うなら、仕方ないから協力してやるか」と認めてくれる人も出てきます。


営業はね、とにかく嫌がられても嫌がられても顔を出すこと。慶弔の情報があればお届け物を欠かさない。そうしていれば「しつこいけど面白い奴だ」と必ず認めてもらえる。ひたすら数を重ねればいいのだから難しい話ではないんだ。


トップが、「この商品でトップを取る」と大号令を発して営業政策をフル動員すれば必ずトップは取れる。まず、首位獲得をやりきる。その後に本当の果実が待っている。大企業が参入してきてもトップにいれば、対応策は柔軟に繰り出せる。


市場が成熟して「もうこれ以上はプレーヤーは参入できない」と思われている市場が一番面白いし、美味しい。こういう市場では、「勝つ」よりも「負けない」ことの方が重要で、ちょとした仕掛けで周辺の競争相手を叩きつぶすこともできる。


前例のないことをやろうとすれば必ず反対が出るし、反対するのは人の心情でもあるけれど、それでは何も生まれないのも事実ですな。前例のないところにこそ、チャンスがある。


大切なのは、顧客を維持することです。お客様は今の姿形の商品を買っているわけです。だから、なるべく信頼を裏切らないように、大幅には変えない。お客様に分からないように変えて、3~4年したら、「全く違ってたね」と思わせる。ロングセラーの場合、3~4年先を考えて少しずつ改良を積み重ねていくんです。


当たった商品はあまり改良しない方がいい。最初に買ったロイヤルユーザーから見ると違うものになってしまうから。たとえば、消臭ポットの場合、当初の売りの「小さくてかわいい」が次第に大きくなって下火になった。


やめる商品を選ぶときに一番簡単なのは物流拠点へ行くこと。エステーの物流拠点は5階建てで1階には毎日出荷する商品がある。一番上の階にあるのが売れない商品なんです。ここに行って「5階にあるのは皆殺しだ」と言うと、「いやいやこっちを捨てましょう」となるから後は任せるんです。手っ取り早くアイテム数を絞れますよ(笑)。


商品数を絞るために、時々思い出したように「アイテムを半分にしちまえ」と言うんです。ぼんやりしてると、知らないうちに商品が増えるからね。


売れるか売れないかも分からない新商品を出して、小売りはその瞬間、売り上げが伸びるかもしれない。けれど、我々メーカーは売れている既存商品を売り場から引っ込められてしまうわけです。自分で自分の販路を断つことになる。だったら今売れている商品を大事にして売った方がいい。


99年に消臭ポットを出したとき、60あった新商品を1つに絞りました。商談に行ったって、60も説明できないでしょう。話を聞くバイヤーだってどうしていいかわからない。だからいまでも新商品は年に多くて3つか4つに絞っています。


私ね、怠け者だからひとつの商品をつくったら、浮気をしないで思いを込めて売るんです。いろいろ商品をつくるとくたびれるでしょう。たくさん商品を出すと癖にもなる。


枠は外れたほうがいいんですよ。仕事に没頭することは大切。でも、それだけだと視野が狭くなりがちだし、自分を追い込むだけ。私の場合は、そうなる前にズル休み(笑)。「腹が痛い」とか言ってね。それは冗談にしても、いったん仕事から離れる時間を作ると、「これでいいのか?」と新しい視点が見えてきますよ。


変化の速い時代、過去のデータや上司にマジメに従うだけでは成果は出ない。生真面目に「正論」「前例」に従っていたら今みたいな時代に、頭ひとつ抜け出せない。敷かれたレールは踏み外さなきゃ、何も成し遂げられない。


私たちは、「空気をかえよう」を企業スローガンにしています。そこには日本の、社会の空気までもかえたいという大きな思いを込めています。少しでも世の中のお役に立ちたい、そのために一丁やってやろうじゃないかという私たちの心意気を示しているのです。


結果がどうなるかわからない、先が読めない中で判断するには、どれだけ修羅場を経験しているかが勝敗を分けます。その経験が少なければ、海外の鉄火場で世界のバクチ打ちに交じって戦って、勝てるはずがない。


みんなが同じ方向に向かう「順張り」の戦いでは、基本的に強いものが勝ちます。当社の場合、「順張り」の状況では国内外の最大手には勝てません。ですから、大量生産大量販売のマスマーケットには行かず、戦いの場を選び、敵がいない、少ないところで勝負する「逆張り」の戦略を取っています。


自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分の頭で考えて、結論を出す。それでダメならしょうがない。そんな時は、傷が深くなる前に逃げること。逃げる時の極意は、山で熊に出会った時と同じで、そーっと後ずさりして、見えなくなったら一目散に走るだけです。その見極めの勘どころは、自分でやって覚えるしかありません。


POSデータの数値を見ているだけでは、その商品が売れているかどうか、本当のことはわからない。店頭の棚のどこに、どれだけ置かれて、どれだけ売れたのか、販売価格はいくらか、ライバル商品はいくらでどのように売られているのか。そうしたことも踏まえなければ、その商品の本当の売れ行きは掴めない。


海外に工場をつくる時や市場に参入する時も、現地に行って街をくまなく歩き、その土地の人たちと世間話をします。身ぐるみをはがされるような最悪の事態だけは避けるべく、「悪くなってもこの程度だな」という感覚を持っておきたいのですが、それはメディアの情報からだけでは難しい。だから現地に足を運ぶのです。


私は自社の物流センターにもよく行きました。在庫を見れば、その商品の実際の動きがわかります。「A商品はホコリをかぶっていた。動いていない証拠だ。お前たちは見ていないだろう」。そう言って、A商品の損切りに反対していた社員を納得させたこともありました。


よく、ヒット商品を生み出すにはどうすればいいのかと聞かれますが、やはり改良や改善といった従来の延長線上でいくら考えてもダメでしょうね。周囲が反対するぐらいの独創的な発想がないと、常識を変える新しい価値は生まれません。


スピーチをするときも、役員会で話をするときも私は入念に準備をして臨みます。事前に準備しなければ、言いたいことを簡潔な言葉やひとつのキーワードにはできませんから。


相手に話をしてもらうにはどうしたらいいか。準備がすべてです。私は知らない人と会うときは、徹底的に相手の研究をする。生まれ育ちや家族関係、わかる限りのデータを調べます。その人が本を書いていたら、全部読む。保険のセールスをしていた頃はそれが常識でした。


セクションによって声かけの仕方も違ってきます。研究開発のグループなどは年中、頭をひねくり回している連中ですから、「死んじまえ」なんて乱暴なことを言ったら、シュンとしてお先真っ暗になってしまう。その点、営業の連中はメンタルタフネスですから、単刀直入に「おまえはアホか」と(笑)。


トップが役員から恐れられれば、組織は自然と引き締まります。逆に一般社員とは親しく付き合う。一緒に酒を飲んだりしてね。会長になった今でも会社のあちこちに顔を出して、気軽に社員に話しかけています。


私は役員と個人的に酒を飲んだりしません。妙に馴れ合えばつけあがる。そうなれば締め上げるのが面倒だし、情が湧けば評価の目が曇って道を誤る。だから役員には厳しく接します。そして突き放す。「それはおまえの仕事だ。おまえの責任で何とかせい」と。そうしないと何でもかんでも社長の判断を仰ぐようになりますからね。ワンマントップの場合はなおさらです。


不良在庫を処理しようとすれば、「誰がこんな売れない商品を作ったのか」という責任問題に発展する。誰も手をつけたがらない。「在庫処分は社長の責任だ。誰の責任も問わない」と言っても動かない。最後には自分で物流センターに乗り込んで、怒鳴り散らしながら挨を被った商品ケースを床に叩きつけました。それぐらいのパフォーマンスをやって、「責任は問わん」と言い続けて、ようやく在庫が減るようになった。就任当初は860もあった商品アイテムは、3年かけて300を切りました。


バブル崩壊後に社内で危機感を抱いていたのは私だけで、「すぐによくなる」と皆が思い込んでいる。だから社長就任演説の冒頭でケンカを吹っかけた。「コンパクトで筋肉質な会社を目指す。俺の目に叶わんヤツは叩き殺す!」不良資産の売却、860近くあった商品アイテムの削減、年間約60種類も出していた新商品の絞り込み、在庫の大幅削減……。短期でやるべきこと、中期でやるべきことを全部ぶちまけたうえで、ハッタリをかましたわけです。これで少しは社内の空気もピリッとしましたが、一度号令をかけたぐらいでは組織は変わらない。「コンパクトで筋肉質な会社を目指す」ということはリストラ路線ですから、抵抗がものすごくありました。


スピーチはポイントを3つに絞る。3つ以上になると、言われたほうも言うほうも忘れちゃう。本当はワンポイントだけで完結するのが、メッセージとしては一番響きますよね。大体、普通の人間が集中して話を聞ける限界は15分ぐらい。あとは眠くなっちゃう。


「見切り千両」、破綻寸前の米沢藩を再興した上杉鷹山の言葉はビジネスの鉄則だ。撤退か否か。その目安を「3年で単年度黒字、5年で累損一掃」達成に置いている。


計画してもその通りにいかないのが今の時代。最近の変化の激しい時代に、計画に縛られてしまったら正しい決断はできやしない。朝令暮改、いや朝令「朝」改できる勇気と度胸がないと、今のトップは務まらない。


社員にいくら挑戦しろと言っても、恐ろしくてなかなか動かない。会社が潰れかけるような状態なら、社員が率先して動くことはあっても平時はなかなか。トップが最初の一歩を踏み出して、動くきっかけづくりが欠かせない。


今は閉塞感が漂って元気がない時代と言われているだけに、新人の時から威勢のいい人間はすごく目立ちます。「俺は天下を取ってやる」とホラを吹くだけで、一目置かれる。また「新製品を開発してヒットを飛ばします」と宣言すれば、自分自身も追い詰められ、頭を使うようになります。社内を歩き回って諸先輩に「何かいい知恵を授けてください」と頼めば、みんな悪い気はしないはず。きっとかわいがられます。こうした処世術を早くから身につけることをお勧めします。


新人も含めて社員の行動を変えていけば、長期的には売上と利益に反映してくると思います。自分の部署だけ知っていればいいという「情報の滞り」がなくなれば、売上と利益が向上します。


私は新人を教育するというのが不遜だと思っているほどです。新人が知らない知識を身につけさせる研修は意味がありますが、それ以外はそもそも必要なのかどうか疑問です。むしろ優秀な若い人を生かす組織にしなければならないと考えています。


デザイナーは年を取れば取るほどダメになります。会社が要求するモノを理解してしまうからです。上司としては使いやすいのでしょうが、お客様が要求しているモノとは懸け離れていきます。経験が必要な営業は別ですが、開発や研究、マーケティングなどは、若くて感性のある人の方が勝りますね。


私も日生時代、顧客の経営トップに気に入られるために、その人の郷土料理を自宅に届けたり、土下座やウソ泣きも何度やったか分からないぐらいやりました。芝居を打ってでも、顧客に気に入られるように努めるべきです。


重要なことは、経営トップに会うことです。下の人に会って人脈を作っても、人事異動でどこかに行ってしまい、それまでの苦労が水の泡になります。いかに経営トップに会うか、新人の時から心がける必要があります。


新人に対して助言したいのは、まずガードを解くこと。そのうえで頭を下げて人からいろいろな知恵を聞くことです。自分の頭を使うと、大抵の場合間違えます。ところが、頭を下げるのが嫌いな人がすごく多いですね。


私が20代でどこかの会社に新人として入ったとしましょう。まず考えるのは、その会社は将来潰れる可能性が高いということです。大企業であればあるほど潰れる確率が高い。だから自分の腕を磨いて「100万ドルプレーヤー」を目指します。いずれ起業するかもしれません。そのためにも、仕事を通じて早く「数字感覚」を身につけて、つぶしが利くようにしますね。配属先を希望できるなら、迷うことなく経理部門を選びます。1年間ぐらい、会社の経営状態を示す数字の基礎をマスターしたい。


ガバナンスの仕組みが、ファミリーの暴走も食い止めてくれるのではと期待しています。私という重しがなくなったら創業家内でゲリラ戦が起きて、ファンドなどに付け入る隙を与えてしまうかもしれない。そうならないよう、社外取締役に監視してもらいたいのです。


取締役会の構成は、社外取締役が過半を占めます。知り合いの経営者には「社外取締役に首を切られるぞ」と心配されました。ですが、会社の存在意義は成長ではなく潰れないこと。潰れそうになったら、いつでもトップの首が飛ぶ仕組みが必要でしょう。


63歳の時に社長になりました。工場の閉鎖や商品数の大幅削減など、私の改革案はことごとく、他の取締役に反対されましてね。民主主義でやっていたら変えられないと思い、独裁者になりました。


私は大事なことは一人で決めます。まわりの意見は、あまり役に立たないので。たとえば、新しいコンセプトの商品の場合、担当の研究開発グループ以外の社員は、まず商品化に反対します。過去のデータがないだけに、成功する保証がないからです。だからといって、引き下がってしまってば、商品開発なんてできません。そんなとき、「これはいい」と私が判断したら、ゴーサインを出します。


僕は、何事もダラダラやるのが大嫌いなんです。だから仕事も、常に瞬間最大風速でやる。そのためには、しっかり休息を取らなきゃいけません。特に交渉事は、最後は体力勝負。僕も外国企業のCEOたちと散々渡り合ってきましたが、ビジネスで勝つのは「運と勘と度胸」のある人だけ。ぐっすり眠って体力満タン、頭の冴えた状態でなければ、そんな勝負はできませんよ。だから僕は、毎日必ず8時間は睡眠をとっています。


「消臭力」のCMは、社内でも反対する人が多かったんです。なにしろ外国人の少年や、歌手の西川貴教さんなどが、「ショーシューリキー」と歌うだけ。CMといえば機能や効能を伝えるのが普通ですからね。でも、私はGOサインを出しました。結果的に大正解です。CM好感度ランキングでは上位となり、商品も大ヒット。もし効能を訴えるだけのCMだったら、消費者の印象には残らなかったでしょう。


本当の意味での経営者というのは、単なる「社長」とは違います。任命されたら「社長」という職種に就くことはできますが、それだけでは「経営者」とは呼べません。「心意気」と「志」を持っているか。それが何よりも重要です。経営者はそれがないと続きません。日本に社長はごまんといますが、本当の意味で経営者と呼べる人は、ほんの一握りしかいないのではないでしょうか。


「経営者になりたい人は、勝負事をしなさい」と言いたい。何でもいいからもっと勝負事をして、勘を磨いたほうがいい。学校で勉強しているだけでは実戦感覚は養えません。私のまわりを見ても、学生時代に雀荘に入り浸っていたようなヤツほど、今でもしたたかに商売をやっていますよ(笑)。数多くの現場をよく見て、自分の頭でよく考えて大局観や勘を養う。そして、ここぞという時には、みんなの反対を押し切っても逆張りで勝負に出る。絶対に成功させるという覚悟をもって実行する一方で、やはり現場をよく見て、ダメだとわかればいち早く撤退することも考える。こうした芸当ができてこそ経営者なのです。


逆張りは、トップが決断しなければできません。みんながやめろと言って反対することをやるのが、トップの仕事です。もちろん、リスクも大きいので、ここぞという時を見極めてやるべきでしょう。自分の首をかけてもいいと思えるような勝負の時こそやるべきです。そして、やると決めたら、絶対に成功させるという覚悟が絶対不可欠です。


マスコミは何かと先行きが不透明だと人々の不安を煽るような報道をしますが、私の経験から言えば、いつの時代も先行きは不透明です。透明で先がよく見通せた時代などありません。景気も一緒です。私たちの日用雑貨業界に景気がよかった時期などほとんどなかった。よかったらよかったで、今度は人手不足や原料高騰など、別の問題が起きますし、景気のいい業界では新規参入が増えますから、競争が激化し、好景気は長続きしないものです。結局、いつも見通しは不透明で、景気は悪いと考えるぐらいでちょうどいい。そんな中で、なんとか頭と力を振り絞ってやるしかないのです。


私が自分で見たもの以外を信用しないのは、戦中戦後の体験が大きく影響しています。日本政府は戦争中、戦争に勝っていると国民をだましていました。大本営発表はその最たるものでしょう。新聞も嘘ばかりでした。ある時、「被害若干」と書いてあり、まだ幼かった私は、「若い人が千人も死んだのか」と読み間違えました。もちろん「若干」ですから被害は少なかったという報道でしたが、事実は私が読み間違えた「若い人千人」のほうに近かったのです。だから私は、政府が言うことも、マスコミの情報も、100%は信用していません。


私はPOSデータを見るよりも、店頭に足を運んで、自分の目で見るようにしていました。POSデータは、出てくるまでにタイムラグがありますから、スピードの点でも自分が店頭に行って見たほうが早いのです。店頭の売れ行き動向を知るためには、定時に、定点を、定期的に見るのがポイントです。私は毎週日曜日の午後に、趣味の自転車で50キロメートル近く走り、お店を何軒も見て回りました。売場がだんだん小さくなっているとか、隣のライバル商品のほうが明らかに売れ行きがいいことがわかれば、即、撤退を決めます。


新しい商品を発売する時に、それがヒットするかどうかは、正直なところ私にもわかりません。ただ、トップが「本当に売れるだろうか」と思っていたら、それが社員にも伝わり、売れるものも売れないでしょう。だから、「これは売れる」と自分自身に何度も何度も言い聞かせて、さも売れる確信があるかのようなフリをします。


みんなが反対する新商品を開発するというのは、株式投資であえてトレンドに反するほうに投資する「逆張り」と同じで、一種のバクチのようなものです。それで会社を潰すようなことがあってはならないので、売れなかった最悪の場合のことは、もちろん常に考えています。損切りラインを決めるのも、実際に損切りを実行するのも、経営者の仕事でしょう。


海外に行ったときは、街のいろんなところを訪れます。街一番の高級住宅街も訪れますが、危ないから行くなと言われると行きたくなる性分で、その地区で一番治安が悪いスラムやハーレムにもよく行きます。インドのムンバイのスラムは本当に悲惨でかわいそうになりましたが、フィリピンのスラムは意外にもきれいで驚きました。おそらく、フィリピン人は掃除好きで、きれい好きなのでしょう。その国がどの程度清潔か、国民がどれほどきれい好きかは、私たちの商売に関係しますから、いつも気になります。


情報を得るとき、私は現地・現場に実際に足を運んで集めるようにしています。80歳を過ぎた今でも、アメリカ、ヨーロッパ、アセアン地域、中国に毎年一度ずつ行っているのもそのためです。訪問先で日用品の売場を見るのはもちろんですが、それよりむしろ世の中の動きを肌で知っておくという意味合いのほうが強いかもしれません。よく行くのが、不動産屋です。不動産屋に行けば、その土地の動きが見えてきます。私たちの商売に直接役立ちそうもない情報であってもインプットします。


デジタル化が進み、いろいろと便利な世の中になりました。しかし、どんなに進歩しても、デジタル情報は未来まで教えてはくれません。デジタル情報が得意とするのは、過去です。インターネットを検索すれば、過去についてはほとんどのことがわかりますが、明日、何が起きるかは検索をしてもわからないのです。では、未来を予見するためにはどうすればいいかというと、やはり自分の頭で考えるしかないでしょう。


一番いい対処法は頭を下げちゃうことですな。相手の足下にタタタッと走っていって、汗をかきかき土下座する。「まことに申し訳ございません、この通りです」って。嘘でもいいからとにかく頭を下げる。相手の怒りが爆発する前に、気配がよくないなと思ったら、すぐに出向いて先手を打つ。「ただいま全力を尽くしておりますので、いましばらくの猶予を」とか「奮闘努力しておりますが、なかなか衆寡敵せず(多勢に無勢)」なんて大げさなことを言うわけですよ。3回も頭を下げれば相手もうんざりして「わかった、わかった」となるかもしれないし、「大したヤツだ」と逆に株が上がるかもしれない。許しを得たら「ありがとうございます」って抱きついてみたり。それくらいの演技をすればいいんです。私がそうされたら「アホか。その手は食わんぞ」って言いますけどね(笑)。


結局は人材の勝負、アイデアです。それとアイデアを認める、度胸のあるトップ。です。アイデアなんて会議をいくらやっても出てきません。「脱臭炭」や「消臭ポット」などを開発したときも出任せでした。まず初めに、酒を飲んで大ぼらを吹く。酒を飲むと、気が大きくなって、大胆な発想が生まれます。酒はいいものですよ。日本人よ、もっと飲めですわ。今の人は真面目過ぎます。だから、飲めや歌えやができた企業が今年以降も勝つと思います。


経営者の仕事のひとつは、「やらないことを決める」こと。僕は社長になった際、5つあった工場を3つに、860あった商品を280に減らしました。これは「売れない商品を作るのをやめる」と決めたからできたことです。売れないものをやみくもに作って「よく頑張った」と満足するような働き方は、会社にとって一番迷惑。余計な人件費や物流コストがどれだけかかることか。放っておいたら、大抵の人はムダな仕事をするものです。だからこそ「やらないこと」を誰かが決断しなければなりません。


今の企業にとって、最も重要な資源は「アイデア」です。資本や技術を外から調達するのはさほど難しくない。フェイスブックなんて、別に高度な技術や巨大な資本があるからできたわけではなく、まさにアイデアから生まれた大ヒットビジネスです。そして良いアイデアというのは、プールサイドでぼんやりしているときなんかに出てくるもの。だから僕は、まず遊びの予定を入れる。仕事はその合間に入れればいい(笑)。


未来を考えるには、一人になって休息する時間が必要。僕は一週間くらいの長期休暇をよく取ります。そして、一人でプールで泳いだり、趣味のスキーやトレッキングに出かけたりして、遊びながら考える。あるいは、マキャベリの『君主論』や『孫子』といった本を読んでは、また考える。会社の中で立場が上になるほど、そういう時間を作らなきゃいけません。リーダーというのは、一人で考えて、一人で決断しなくてはいけない職業なんですから。


元々、私は生命保険会社で営業マンをしていました。企業相手に法人向けの保険を売るのですが、とにかく契約が取れない。一生懸命、勉強し、そのノウハウを実践しても最初の2~3年は売上ゼロ。そこでトップ営業マンに同行させてもらったら、マニュアル通りだからダメだったんだとわかりました。相手はマニュアル通りに話す営業マンに、何百人も会うわけですからね。印象に残らなくて当然です。そこで私は商品より、自分を売り込むことにしました。顔と名前を覚えてもらってから、相手の企業に役立つ提案をしました。その結果、契約高1兆円という記録が作れたのです。


鈴木喬(経営者)の経歴・略歴

鈴木喬、すずき・たかし。日本の経営者。エステー社長・会長。東京出身。一橋大学商学部卒業後、日本生命保険に入社。法人営業部第一課長、総合法人業務部次長を経て、エステー化学(のちのエステー)に出向。企画部長、取締役営業本部首都圏営業統括部長、常務営業本部マーケティング部長、専務などを経て社長に就任。経営合理化と新商品開発により同社をさらに成長させた。「消臭ポット」「消臭力」「脱臭炭」などをヒットさせた。

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