西室泰三の名言

西室泰三のプロフィール

西室泰三、にしむろ・たいぞう。「東芝」「東京証券取引所」「日本郵政」社長・会長。山梨県出身。慶応義塾大学経済学部卒業後、東芝に入社。東芝アメリカ副社長や常務、専務などを経て社長・会長を務めた。そのほか、東京証券取引所社長・会長、日本郵政社長・会長などを務めた。

西室泰三の名言 一覧

「西室君、社長になったら、自分でも本当にこんなに同じことを言ってもいいのかと思うぐらい繰り返して言わないと、社員は分かってくれないよ」。東芝の社長になったとき、前社長の佐藤文夫さんに言われたことですが、まさにその通りだと思います。


株主価値だけが増大して、社会的に何の価値もないという企業であったら、それこそ存在価値がない。


私は従業員を大事にしたいと思っています。それこそ縁あって東芝で一緒に仕事をしているわけですから、教育にもお金をかけています。【覚書き:東芝社長時代の発言】


重要なことであれば繰り返し何回も説明する。そうしないと社員は分かってくれません。


東芝と東京証券取引所で経営改革に取り組み、様々な教訓を得ました。ひとつは、会社が危機のときはある程度お金をかけてでもスリムダウンする必要があること。もうひとつが、そうした緊急事態の際には必ず、会社の実情を全社員に周知徹底しなければならないことです。


グローバルスタンダードと呼ばれる経営手法の一つに、ストックオプション(自社株購入権)制度があります。しかし頑として、私は東芝本社にはこの手法を導入しませんでした。いまの制度には、大きな欠陥があるからです。株価が下がるとストックオプションを持っていてもまったく価値がなくなり、会社が引き留めたいと考えている優秀な人材に転職する口実を与えてしまいます。優秀な人材を引き留めるためにこれまでのオプションを放棄して、新しい価格で設定しなおすことをやりますが、これこそ株主無視です。


経営そのものにグローバルスタンダードがあれば、経営者としてはすごく楽なんですが、現実にはありません。企業の歴史から本社所在地、市場、商品など企業の置かれている条件は皆違うからです。実際に存在するのは、グローバルコンペティション(国、自治体による企業誘致の競争)です。最近の情報技術(IT)革命がそれを増幅しています。だからこそ、勝ち残るためのグローバルスタンダード経営があるはずだという幻想が生まれるのかもしれません。


取締役の数を減らしたり、分社化したり、事業を売却したり、シックスシグマという経営管理手法を導入したり、いろいろと取り組んできました。この間、米企業が導入している経営改革について研究しましたが、経営そのものにグローバルスタンダードがないという確信を抱くようになりました。


人材というのはライアビリティ(負債)というよりアセット(資産)です。人材をアセットとして考えた場合、その人材を有効利用するためには、その人たちが夢を持って仕事ができるというのが一番理想的な姿ですから、我々のグループの中でそれが実現できないのであれば、それが実現できるグループを探します。


東芝という会社が、電球から原子力まで何でも作ることが安定と成長のもとになっていたという時代は過ぎたと考えています。我々は、何でも作るという発想から、得意なものを作る、上手にできるものを我々がやる。足りないところはよそから補うということを果敢にやらなければいけない。我々の力が足りないとか、よその力を合わせればもっと良くなるというのなら、そういう選択もある。アライアンス(共同事業)の話は当然出てきます。


本来なら、成績を出した人にボーナスの代わりに(ストックオプションではなく)実株を与えればいいのです。自分の財産を増やしたいと思えば、株の価値を高めるべく仕事に励みます。逆に株価が下がれば、株主と一緒に自分の財産も減るのです。ただ、これは法律上できません。給与は現金で払うことになっているからです。


誤解していただきたくないのですが、株主を軽視していいと言っているのではありません。むしろ過剰な株主重視がグローバルスタンダードのように見られている今の風潮がおかしいと思うのです。我々は、まず顧客を優先して次に従業員と株主、社会を大事にする考え方を貫いています。株主価値だけが増大して、社会的に何の価値もないという企業であったら、それこそ存在意義などありません。


経営者にとって、社外に対して説明することが大事な仕事であるのは言うまでもありません。ただ、それと同じくらい大切なのが、社内にメッセージを出し続けることです。


私が東京証券取引所の経営を任された2005年、システム障害が相次いだ東証は経営危機に陥り、大きな改革を迫られました。そんな中、当時の社員には東証の正確な状況がほとんど伝わっていませんでした。このため社員はテレビや新聞など外から入る情報に振り回され、本当に不安だったと思います。そこで私は、トップから直接メッセージを送って会社の状況を分かってもらうとともに、月1回の記者会見をすべて社内放送でリアルタイムに流すことにしました。同時に、40人ぐらいずつに分けて対話会をやり続けました。いまどんな危機が起きていて、それをどう解決するのか、報道される前に社内に理解してもらうことに努めたんです。記者会見をリアルタイムで聞いていれば、テレビで流れているニュースや新聞に書かれている記事について、家族にも説明できます。そのことで家庭の中の平安も違ってきます。


構造改革を断行するだけでは、社内のモチベーションが大きく下がりかねません。いままで一緒に仕事をしていた人たちが相当数辞めさせられたり、辞めたりするということが目の前で起こったら、誰でも動揺するはずです。リストラを進めるうえでは、この危機は乗り越えられる危機なんだと、将来のビジョンを明確に打ち出す必要があります。そのためにはまず、会社の状況を包み隠さず従業員にオープンにすることが欠かせません。


東芝の経営改革にあたった当時、100あった事業の半分は赤字。いくら総合電機だからといって、すべてをやるわけにはいきません。加えて、赤字事業なのに社員にはあまり危機感が見られませんでした。残しておいても黒字化するメドがない事業を売却することは、業績改善のみならず、危機意識の醸成にもつながると考えたのです。


かんぽ生命の主力商品に学資保険があります。かつてはシェア100%だったのですが、今は30%になっています。それはこの10年で他社が商品内容を分かりやすいものにし、約款も変えてアピールしているのに、当社は認可などの関係で約款を変えることさえ難しく、そのままでやってきたことが大きいと思います。


かつての小泉純一郎政権時代の郵政民営化フィーバーの後、民営化を進める法律もできたのに、実際には具体的な進展はありませんでした。社長になった時には、今後もこのペースでやっていて、本当に上場できるのかという危機意識を持ったほどです。その後、一緒に仕事をしてみて、皆よく頑張っていることは分かりましたが、一方でもっとアクセルを踏んでいこうと思いました。上場を半年前倒しすることにしたのは国民へのアピールと同時に、社内の引き締めのためでもあります。


西室泰三の経歴・略歴

西室泰三、にしむろ・たいぞう。「東芝」「東京証券取引所」「日本郵政」社長・会長。山梨県出身。慶応義塾大学経済学部卒業後、東芝に入社。東芝アメリカ副社長や常務、専務などを経て社長・会長を務めた。そのほか、東京証券取引所社長・会長、日本郵政社長・会長などを務めた。

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