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福岡伸一の名言

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福岡伸一のプロフィール

福岡伸一、ふくおか・しんいち。日本の分子生物学者、農学博士。東京都出身。京都大学農学部食品工学科卒業、京都大学大学院農学研究科食品工学専攻博士後期課程修了。ロックフェラー大学分子細胞生物学研究室ポストドクトラル・フェロー、ハーバード大学医学部ポストドクトラル・フェロー、京都大学食糧科学研究所講師・助教授、京都大学大学院農学研究科助教授などを経て、青山学院大学理工学部化学・生命科学科教授、青山学院大学総合文化政策学部教授。そのほか、ロハスクラブ理事なども務めている。主な著書に『生物と無生物のあいだ』『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』『生命と食』『プリオン説はほんとうか? タンパク質病原体説をめぐるミステリー』など。

福岡伸一の名言 一覧

日なたがあれば日陰もある。バブルがあれば不況もある。だから、いま、いくら「不況だ、先行きが見えない」と言っても、いつかは暗いトンネルから抜け出せる。変に焦ってジタバタしないことだと私は考えます。


いまは悪しきDNA至上主義が蔓延していて、遺伝子がすべてを決めてしまうと思いがちですけど、遺伝子が命じていることって「トンビがタカを生まないようにする」ことぐらいでね。あとは環境が決めていくというか、「自由勝手にやってくれ」と言ってるんですよ。だから自分の好きなことを深く掘り下げていったほうが勝ちなんです、生物学的には。


近代社会は、どうすることもできないことはほとんどない。「なんとかできる」という考えに基づいて自然に介入し、環境をコントロールしてきました。おかげでエアコンとか洗浄便器とか、局所的には便利で心地よくなったことはたくさんありますが、そのツケがヒートアイランド現象などの異常気象で、地球環境にも現れていますよね。生命現象に限らず、地球環境も「いいことがあれば、悪いこともある」という動的な平衡で、絶え間なく揺らぎながらも、ある種のバランスを求めているんですよ。


約60兆個の細胞から成り立っている私たちの生命は、一見、固体に見えますが、中身は「絶え間なく合成され分解されていく」という流れの中にあって、せせらぎにできた一瞬の「よどみ」のようなものなんです。だって、1年もすると私たちの体の中の細胞が入れ替わってしまうんですから。私というのは「ある」んじゃなくてひとつの「現象」でしかないんですよ。


できれば仕事以外に絵でもなんでも、何か一つ好きなことがあればいいでしょうね。10年、好きで掘り下げていけば、いっぱしの専門家になれますよ。私のように、好きなことが仕事になるというのは幸せだと思いますけど、それでも大学という組織にいると、学問や研究以外に面倒なことがあって、夏休みが明けると、学生以上に憂うつな気分になったりしますから(笑)。


最近では、学生でも「自分探し」をしている人がたくさんいるけど、まず「どういう職に就くか、決めましょう」って言うんですよ。もちろん、将来変わってもいいんですけど、社会に出て仕事とか人間との関係性の中からしか、自分なんて見つからないんですから。細胞が前後左右、上下の関係性の中から自分を決めていくように。


上がれば下がる。下がれば上がる。その上がったり下がったりが動的平衡の揺らぎなので、その揺らぎ自体が、ある種の喜びや豊かさをもたらす。


よく貯めたお金を確認するために、通帳に記帳するのが趣味みたいな人がいるけど、いくら残高が多くても豊かな人生とはいえない。残高じゃなくて、総支出と総収入の振れ幅が大きい人ほど、豊かな人生を送っているといえるんじゃないでしょうか。


今日、何か悩ましいことがあったとしても、分子のレベルで考えれば、それさえも流転している。だから生物は、「自由であれ」と命じられているともいえるのです。私が伝えたいのは、こうしたポジティブな無常観というべきものです。


生物学を学ぶとわかるのが、世界のあらゆるものが「流れている」ということなのです。私たちを構成する分子はやがて空気中に流れ出していって、次には海の一部になるかもしれないし、岩の一部になるかもしれない。生物とは、そうした流れの中にできた一瞬の淀みのようなものです。


自分は威張ってなどいないという人でも、謙虚になることは必要だと思います。知的であることの最低条件は、自己懐疑ができることですから、謙虚さは、その出発点になるのです。


人間の体内でたんぱく質が合成される方法はただ一通りなのに、逆に分解される方法は10通り以上あります。生命にとって、なぜ分解=壊すことがそれほど大切なのでしょうか。この世界がエントロピー増大の法則に支配されているからです。秩序あるものはすべて摩耗し、酸化し、ミスが蓄積して障害が起こり、無秩序の状態になっていきます。この不可避の流れに抗するために、生命がとったのが自らを常に壊し、再構築するという自転車操業的な在り方でした。


すべての情報を日々分解して洗い流し、さらに新たな情報やエネルギーを取り入れていくことが生命の本質だとしたら、上司や顧客のひとこと、自身のブログに書かれた批判といった些細なことに動揺し、いつまでも拘泥することがいかにくだらないかと思えます。


生命のあらゆる組織や細胞は、日々新たにつくられ更新され続けています。分子レベルで見ると、今日の自分と明日の自分はまったく違う存在といえるのです。常に変わりつつ一定の状態を保っている。その絶え間ない流れ自体が生きているということです。


生命は常に揺らいでいます。押せば押し返しますし、引っ張れば逆に引っ張りかえそうとします。情報とエネルギーを投入し、あるとき効率がアップしたとしても、別の個所でダウンしてしまいます。


ほとんどの現代人が同じ病気にかかっています。一定時間におけるパフォーマンスの最大化を目標にする考え方です。一日、一週間単位でノルマを決め、着実に実行することはビジネスで成功するためには欠かせないことかもしれませんが、生命現象を観察している立場から申し上げると一片のむなしさをそこに感じてしまいます。


紀元前5世紀には、ギリシャのヘラクレイトスという哲学者が「万物は流転する」と言っています。日本でも平安末期から鎌倉にかけての混乱期に、鴨長明が「ゆく川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず」と言っている。生命には、人間にはどうすることもできない無常観というか、生命観が昔からあったんです。だから、その流れに身を委ねるしかないのだと彼らは言っているんです。


「分際」という言葉が重要なキーワードになるんです。生物が地球上に誕生して38億年、人間以外の生物は自分の分際――英語でいうニッチを守ってね。限られた資源や環境の中で、ほかの種と無益な争いを起こさないように棲み分けてきました。交信する周波数も、活動する時間帯も限定し、自分たちの食べる食性も厳密に守って……。人間だけです、自然を操作できるものとうぬぼれ、自らの分際を忘れてしまったのは。狂牛病なんて、その典型です。草食性の牛に、飼育のスピードを上げようと食性を無視して、牛や羊の死体から肉骨粉をつくって食べさせ、肉食にしてしまったんですから。いまこそ、人間の「分際」を考え直す時期にきていると思います。人間の細胞もニッチを心得ているというか、前後左右、上下の空気を読みながら何になるかを決めていきます。


人間がサルから進化して、今日まで700万年ぐらい経っていると思われていますが、その間、人間がもっとも苛まれてきたことは何かというと、「今日の食べ物はどうやって手に入れようか」ということだったんです。マンモスみたいな巨大な獲物を捕らえられるなんて、多分、数年に1回ぐらいしかなかったでしょうから、絶えず飢餓と欠乏に苛まれ続けてきたわけです。その分、脳が大きくなって悩むことを身に付けていきました。今日の強欲資本主義というのも、欠乏と飢餓を繰り返した末の裏返しだと、私は思います。進化の過程で、常に「足りない」という状況にあったので、「足るを知る」ほうのリミッターというのが発達しないできてしまったのではないかと。


私たちの身体を構成する細胞の分子は、絶えず食べ物から得られる分子と入れ替わっています。髪の毛や爪といった目に見え、わかるところだけではなく、骨や歯といったところも例外なく入れ替わっているのです。早い、遅いの差はありますが、消化器官の細胞なんていうのは2、3日で入れ替わり、筋肉の細胞も2週間ぐらいで入れ替わる。細胞の分裂が起こらないとされる脳細胞や心臓細胞でも、細胞の中身は絶えず入れ替わっているんです。よく、知人とかと久しぶりに会うと「お変わりありませんね」って言うでしょう。でも、1年も経っていると、私たちの身体は表面上同じに見えても、分子レベルではすっかり入れ替わっているんですよ。それこそ、お変わり「ありまくり」状態です(笑)。


福岡伸一の経歴・略歴

福岡伸一、ふくおか・しんいち。日本の分子生物学者、農学博士。東京都出身。京都大学農学部食品工学科卒業、京都大学大学院農学研究科食品工学専攻博士後期課程修了。ロックフェラー大学分子細胞生物学研究室ポストドクトラル・フェロー、ハーバード大学医学部ポストドクトラル・フェロー、京都大学食糧科学研究所講師・助教授、京都大学大学院農学研究科助教授などを経て、青山学院大学理工学部化学・生命科学科教授、青山学院大学総合文化政策学部教授。そのほか、ロハスクラブ理事なども務めている。主な著書に『生物と無生物のあいだ』『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』『生命と食』『プリオン説はほんとうか? タンパク質病原体説をめぐるミステリー』など。

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