片田珠美の名言

片田珠美のプロフィール

片田珠美、かただ・たまみ。日本の精神科医。広島県出身。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程を修了し博士号(人間・環境学)取得。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析部に留学。精神科医として活動。著書に『他人を攻撃せずにはいられない人』『プライドが高くて迷惑な人』『なぜ、「怒る」のをやめられないのか』『正義という名の凶器』『無差別殺人の精神分析』ほか。

片田珠美の名言 一覧

相手の言うことを真に受けず、その場をうまくやりすごす「スルー力」が大切。会社の中で生き残るには、ある程度のずるさも必要です。


普段の顔に騙されてはダメ。逆境のときの態度で見極めることが大切。


自分の周りの人間関係を振り返り、整理してみることは、心身の健康のために必要。


怒りの感情は6秒でピークを過ぎるといわれています。文句をつける前に6秒をカウントしたら、冷静さを少しは取り戻せるでしょう。私はせっかちで6秒を早く数えてしまうので、イラッとしたときは10秒カウントすることを自分に課しています。


まずは、「相手を知る」ことから始めましょう。なぜ、相手が身勝手な言動を取るのかを理解できなければ、いつまでもやっかいな人に対する恐怖心は消えません。


腹が立つ相手とのコミュニケーションを避ける人もいるが、それは部下の手段である。監督責任がある上司はコミュニケーションを避けてはいけない。


不満とは自分自身への過大評価から生まれます。「私はもっと凄いんだ」というプライドが高い。だから昇進や処遇に不満を持ち、怒るわけです。


3つの「不」、3つの「慢」のいくつかが現れていると、周囲から感じが悪いと思われる。3つの「不」とは不満、不安、不和。3つの「慢」とは傲慢、慢心、自慢。


ある程度の自己愛は必要ですが、過剰になると、強い承認欲求や自分の過大評価につながる。それは他人を振り回す人、振り回されやすい人の両方を生む。


会社と自分の関係を構造的に見た場合、その利益は相反します。会社は利益を上げたい。だから、安い給料でよく働いてくれる人が一番いいわけです。会社が理不尽なことを言ってきて、振り回されていると感じたら、戦う覚悟も必要です。


「ちょっと面倒くさい人」と思われることも対策の一つ。人を振り回す人というのは、「この人は何をしても言い返さないから大丈夫」というのを鋭く嗅ぎ分けています。自分の身を守るために、あえて面倒くさい人になることも重要です。


悪質な人の場合、振り回す対象をわざと孤立させることも。上司から「みんながおまえのことを悪く言ってるぞ」なんて言われた場合は、要注意です。信頼できる人に相談したり、自分の評判を確かめたりして対処しましょう。


状況を改善しようとして上司や先輩の言動が変わるように働きかけても、それはムダ。なぜならば、性格の核になる部分は18歳を過ぎると、余程のことがない限り、本質的には変わらないからです。振り回されている人は、自分自身の考え方を変える努力をしなくてはいけません。


人の性格はそう簡単に変わるものではありません。まずは「根性曲がりにつける薬はない」と肝に銘じ、苦手な相手を観察すること。なぜそんなふうに振る舞うのかが理解できれば、やり返せなくてもうまく立ち回れるようになります。


管理職に就いている方は、部下をマネジメントする際に信念を貫き通すことは大切ですが、「もしかしたら正義を振りかざして、誰かを攻撃していないか」と自問自答することも忘れないでいただきたい。


怒りを持たない人間がいないのと同じように、攻撃性もまた誰もが多かれ少なかれ持っているものです。


一番重要なのは想像力を働かせること。視野を広げて、世の中にはいろんな考えがあり、いろんな人がいる、という多様性を受け入れるべきです。そうすれば自分の正しいと思うことを押しつけたり、すぐに相手を否定したりすることがなくなり、相手を不快にさせる発言も減るはずだと思います。


重要なのは頭ごなしの発言を控えること。相手が自分の話を聞いてくれていれば、最後に厳しいことを言われても、受け入れることができます。でも、話に耳を傾けてもらえず、いきなり「そんな言い訳は聞くに堪えない」「根本的に意味ないんじゃないですか」と頭ごなしに突き放されると、人格さえも否定された感じを受けてしまう。これが一番いけません。


過剰に褒めちぎれば、人は暴走します。また厳しいことを伝える際、肝心な点に言及せず優しいことだけ言っていても効果はありませんよね。だから目的をはっきりさせたうえでバランスを考えながら、どんな言い方が適切か、常に判断する必要があります。


自分では何気ないつもりで口にした発言でも、部下から「傷ついた。パワハラだ」と非難されようものなら、今はすかさず管理責任を問われます。自分の身を守るためにも、より想像力を働かせて、言い方に気をつけなければなりません。


嫌な言い方をされると、自尊心の源である自己愛が傷つき、生きる気力を失ってしまいます。ただ、不快な物言いに対して免疫をつけるためにも、傷つく経験はある程度必要。それが今は自己愛が肥大化している風潮もあって、うまく対処できない人が多い。


相手の嫌がる言葉を平気で投げつける人には2つのタイプがある。一つは想像力が欠如している人。過去の成功体験や社会的な実績があって、絶対に自分は正しいと信じて疑わない。だから、自分が発した言葉を相手がどう受け止めるのか、どんな感情を抱くのか、想像できないのです。もう一つのタイプは逆で、自分に自信がない人。たとえば学歴にコンプレックスを抱えていたら、さらに下の学歴の人をバカにして、自分が上だと認識する。自分の価値を相対的に上げるために、相手を貶めようとするんですね。


理不尽で恐ろしく思える攻撃は、そうした攻撃をしてくる相手が心の奥底に持っている「弱さ」の裏返し。視点を変えれば、「かわいそうな人」とも言えます。この点をきちんと理解すると、とにかく恐くて仕方がなかった人の存在が、とても小さく見えるのではないでしょうか。


「運のおかげです」を口ぐせにしてください。柔らかい笑顔でこう言われると、やっかむ気持ちも消えていきます。もちろん、他人の仕事がうまくいったときに「運のおかげ」というのは厳禁です。逆に恨まれて敵をつくることになるので、「あなたの努力が実った」とほめてあげましょう。


怒りをコントロールするときに大切なことは、怒りそのものを否定しないこと。「私はけっして怒らない人間だ」というのも過大評価です。けっして怒らない聖人君子はいません。人間であれば誰でも被害者意識を抱き、怒りを感じる可能性があります。それを受け入れたうえで、怒りの出し方を工夫するのです。


被害者意識から怒りを爆発させてしまう人と、冷静さを保てる人。その差は、自分を「過大評価」しているかどうかです。古代ローマ時代の哲学者セネカは、『怒りについて』の中で次のように書いています。「怒りの憤慨は、おのれに対する過大評価から生じる」。つまり、オレサマは特別な人間のはずなのに、特別に優遇してもらえないと腹を立てるわけです。


日記に恨みつらみを書く方法も効果的です。べつに怒りが大きくないときでも、あえて怒りを探して書くくらいでいい。たとえばランチのごはんが不味かったというのでもいい。便意がなくても朝トイレに行くと自然に便が出て調子が整うのと同じ。毎日小出しにすることを習慣づければ、怒りを爆発させにくい体質になります。


怒りをコントロールしたいとき、趣味に集中してインターバルを取るのも一つの手です。たとえばプラモデル、編み物や料理など、怒りの原因になったことを考える暇がないくらい作業に没頭できる趣味がいい。とにかく何かに集中して、怒りの感情から一時的に距離を置くことが大切です。


「攻撃は最大の防御」と言うように、自分を守るためなのです。攻撃欲が強い人は、実は臆病な意気地なしです。自分の弱さを隠すために、人を攻撃するのです。


相手が何者かよくわからないときに、人は過剰に恐れたり警戒したりします。なぜその人は被害者ぶるのか。そして、なぜそんな行動をとるのか。その理由がわからないから、こちらもパニックになってしまうのです。タイプがわかれば、それにあった対処法も見えてきます。


感情的になるのを防ぐためには手帳や日記に自分の感情を書き留めて、後で読み返してみるとよい。「自分はこん蔵ことを感じて怒っていたのか」とよくわかる。


精神科医も面談では必ず具体的に質問していく。心の中では「この人のわがままが問題だ」と思っていても、絶対に自分からは言わない。やり取りのなかでわがままである事実を浮き彫りにし、本人に気付いてもらう。


上司の思い込みで「おまえはちゃんとお客様に足を運ばないからダメなんだ」と頭から決めつけてはいけない。必要な情報を集め、データを見せながら「君の営業成績は他の人に比べてあまりよくない。それはどうしてだろう」と質問形式で進めていく。そのやり取りの中から原因と打開策を本人に気付かせるのである。


部下に小言を言うだけでも感情が爆発しそうになる人もいるだろう。それを防ぐには、正しい小言の言い方を知っておくことが大切である。この場面でやることは2つだけ。なぜその人がうまくいっていないのかという原因究明と、その打開策についての話し合いである。


感情的になるのを防ぐには、感情を小出しにすることである。毎日「こいつはダメな部下だ」と不満をため込んだ末に爆発させるのではなく、問題があればすぐ情報を集めたうえでコミュニケーションを取り、注意する。要はまめに小言を言っておくのである。


大切なのは、できるだけ周囲の人に話すこと。一人で抱え込まず、誰かに話を聞いてもらうことで楽になることもあります。また、同僚や別の上司、他の部署の人に相談することで、意見がもらえます。日頃から相談できる人間関係をつくっておきましょう。


他人を攻撃せずにはいられない人が、いま本当に増えていると、精神科医として日々、その被害者である患者さんを診るなかで強く実感しています。そうしたいわば「職場の問題児」はみな欲求不満や不安を抱え、それが溢れそうになっているため、はけ口として他人を攻撃してきます。


嫉妬しやすい人は常に自分を「被害者」の立場に置く。そういう人ほど「自分なりの正義」を振りかざして、嫉妬の対象を攻撃します。自分は被害者だから、相手に罰を与えても許されると思い込み、自らの「懲罰欲求」を正当化するのです。


嫉妬されてしまったときは、相手がなぜ自分に嫉妬するのか分析してみるといいでしょう。嫉妬の根底には喪失不安と恐怖心が潜んでいます。相手が何を失うことを恐れているのかがわかれば、心に余裕が生まれ、その場から離れる、斜め上の上司に相談するなどの適切な対策も取れます。


人脈をひけらかしたり、自分を大きく見せたりする人は、他人から大きな反発を受ける。反対に、大きな成功を収めても「みなさんのおかげです」「運が良かっただけです」と常に腰が低く、実績を示すときも淡々と伝え、感謝の念を忘れない人は、あまり嫉妬されない。


嫉妬の根底にあるのは「喪失不安」なんです。幼児は弟や妹が生まれると、お母さんが見ていないときに下の子を叩いたりします。それは「母親を取られる」という危機感が原因です。会社員が自分より先に出世した同僚に嫉妬するのも、「本来ならば自分がその地位を手に入れるはずだった」と思うから。


根も葉もない噂を広める人に対して避けたいのは直接対決。「噂話を流すのはやめろ!」とダイレクトに怒りを表明すれば、妬みの感情を助長して火に油を注ぐようなもの。誹謗中傷がエスカレートする可能性がある。


根も葉もない噂を広める人はどこにでもいます。こういう作り話をする人は自己愛か強く、自分が認められない悔しさが心の内にあり、噂を流すことで相手の足を引っ張り、あわよくば代わりに自分が出世したいという感情を持っています。この場合は、スルーを決め込むのが何よりの戦略。あるいは「噂を流していることはわかっている」ということを暗に伝えれば抑止効果が期待できるかもしれません。


なかには怒りの感覚を自覚できない人もいます。よいことのように思われがちですが、怒りが自分でも気づかぬうちに蓄積されて、心や体に変調をきたすことがしばしばあります。自分の怒りに気づくことは、自分を守るためにこそ必要なのです。


私は精神科医として心を病んだ患者さんの診察をしていますが、怒りを抑え込んだために不眠やうつなどに悩まされるようになるケースはたくさんあります。じんましん、動悸、吐き気、頭痛、胃痛などが出現することも少なくありません。怒りを溜め込みすぎて、俗にいう「キレる」状態に陥ることもあります。キレると感情のコントロールがきかなくなり、物に当たったり、暴力をふるったりして最悪の状況を引き起こします。そうなる前に、怒りをうまく小出しにする必要があるのです。


怒りを抑えるほうが「よくない」ことです。怒りの感情が湧くのは、なにかしらうまくいっていないことがあるせい。怒りを抑えてしまうと、そのうまくいってないことを放置することになり、問題解決につながりません。


自分に自信がなく、引け目があると、防衛機制が働き、他人に対して一層攻撃的になります。羨望から他人の足を引っ張る人とは距離を置いて接し、自身は日々の努力を忘れないようにしたいですね。


感じの悪い人が上司になった場合、言われたことは記録に残すこと。メールのやり取りなど証拠があれば言いがかりにも対応できます。組織のなかで感じの悪い人と一対一にならないよう、周りと共闘することが大切です。ただ、感じの悪い上司は往々にして部下にスパイを紛れ込ませているので要注意。酷い場合は戦わず、他の上司に相談しましょう。


人間は嫉妬にかられると、非合理な行動に出ることがよくあります。たとえば相手をあるポストから引きずり下ろしても、自分が代わりにそのポストに抜擢される保証はありません。それなのに怪文書を撒くなどして、足を引っ張ろうとする。バレたらむしろ自分が窮地に立たされるのに、そうしたリスクも計算できないほどに冷静さを欠いてしまうのです。


嫉妬モンスターを見分けるのは簡単。見た目や口癖に特徴があります。具体的にはブランド品をこれ見よがしに身に着けたり、何かと人脈や学歴を自慢したりする人は危険です。自己愛が強い人は、周りの人に認められたいという承認欲求が強い。同時に、他人より目立ちたいという自己顕示欲も持っています。嫉妬しやすい人は、これらの欲求を満たすために自分を大きく見せようとする傾向がある。


嫉妬と密接な関係があると考えられるのが、「自己愛」です。自己愛の強い人は自分を過大評価しがち。そのため客観的な評価をされているのにもかかわらず、「自分は不当に低く評価されている」と考えてしまう。その怒りが、自分のかわりに高い評価を受けている人にむかったときに、嫉妬という感情に化ける。


「いい人」が共通して身につけるべきスキルは、「スルーする力」。相手の身勝手な言動をいちいち真に受けていては身が持ちません。身を守るには、態度や言葉の使い方が重要になりますが、一番有効なのは、やはり接触する回数を減らすことです。人間関係を絶ち切ることが難しい職場では、なかなかできないかもしれません。しかし、やっかいな人とは直接話さず、なるべくメールのやり取りで済ましたり、行動する時間をずらしたりするといった工夫はできるはず。場合によっては、部署の異動願いを出すのも手です。


朱に交われば赤くなる。自己保身のために被害者ぶる人が多い組織だと、同じような人が量産されます。トラブルを部下のせいにして自己保身を図る上司がいたとします。部下は自分のせいにされて大変ですが、一方で「自分を被害者にすれば生き残れる」ことを学習して上司のマネをするようになります。これを精神分析用語で同一化といいます。


自己愛の強い人は自分を過大評価する傾向が強く、ちょっとしたことで傷つき、怒りや不安を覚えます。それが他者への攻撃性に転化しやすい。また他責的で、利得に敏感であることも、モンスター化しやすい人の性格傾向といえます。


欠点がなさそうに見える人、人生がずっとうまくいっているように見える人ほど、自分が嫉妬の対象になっていないか注意したほうがいい。フェイスブックを開けば、「友達」の暮らしぶりも家族の様子も手に取るようにわかってしまう時代です。不要な嫉妬を招かないためにも、SNSでは自慢と思われかねない投稿は控えたほうがよいでしょう。


嫉妬も羨望も人間の根源的な感情。まずその存在を認めることが大切。そして、それを前向きなパワーに変えてください。嫉妬心は悪いことばかりではありません。歴史上の人物も、その行動の背景には嫉妬の感情がありました。「失いたくない」という強い喪失不安は、上手く使えば大きな仕事を成し遂げる原動力となるのです。


常に自分が一番でいたいと思っている人ほど、嫉妬しやすい傾向があります。客観的に見れば、同僚のほうが実績も能力も優れているのに、自己愛が強い人はそれを認められません。また、自分の中に確固とした価値観がなく、常に他人と自分を比べることによってしか自己確認できません。相対的な尺度でしか価値を判断できないから、年収や家の広さ、車のグレードなど、目に見えるモノにこだわります。


投資詐欺の類いは、楽をして利益を得ようとする人がひっかかりやすいもの。つまり、騙す人は、騙される側の欲につけ込んで話を持ちかけるんですね。職場に当てはめると、自分の言うことを聞いていれば出世できる、などという上司の言葉を信じて愚直に従ってしまう人が振り回される。相手の話を真に受けてしまう点も、振り回される原因になっている。こういう人はまず、相手の話をよく分析し、疑ってみる姿勢が必要です。


振り回す人に支配されやすい人を「イネイブラー(enabler)」と呼びます。直訳すると「~できるようにする人」。振り回す人の問題行動を助長する身近な人のことを指します。もちろん、一番悪いのは振り回す人ですが、実は振り回されている人も、振り回す人が「少々のことは許される」と思い込む状況をつくってしまっているのです。


私が最初から物書きの道を歩んでいたとしたら、いまのように連載を持つ立場になっていたかどうかわかりません。おそらく強い被害者意識があったからこそ、それをプラスに変えたときに力を発揮できたのでしょう。恨み続ける人生を歩むのか。それとも被害者意識を幸せに生きるきっかけにできるのか。それはみなさん次第です。


自分の中にも被害者意識があることを認めれば、それをポジティブなパワーに変えていくことも可能です。じつは私は母に対してずっと怒りを抱いていました。母はごく普通の教師。しかし、父の兄の奥さんは名家の出。祖母から兄嫁と比べられて、悔しい思いをしたそうです。母は、私を医者にすることで、その悔しさを晴らそうとしました。一方、私は記者や作家になりたかったので、若い頃は無理やり医学部に入学させられて人生を狂わされたと母を恨み、その被害者意識から鬱々とした日々を過ごしました。しかし、そのまま後ろ向きの人生を生きることにも抵抗がありました。どうせなら、母に復讐する目的で作家になってやろう。そう思って医者の仕事と二足のわらじで本を書き始めました。「幸福こそ最大の復讐」といいますが、私が本当に生きたかった人生を生きることで、母に仕返しをしたのです。


劇作家の寺山修司は、「一日一怒」を習慣にしていました。怒りは排泄物のようなもので、出さないと溜まっていく。だから毎日小出しにして怒って、大爆発することを未然に防げというわけです。私も一日一怒に賛成です。ただし、小出しとはいえ、怒りを人に向けてはいけません。会社で感じた怒りを家で妻や夫にぶつけると不和の原因になります。おすすめしたいのはスポーツです。心と体はつながっているので、体を動かして汗を流せば、心のもやもやもすっきりします。ジムでサンドバッグを殴りつけてもいいでしょう。


もし被害者意識がむくむくと大きくなって怒りの感情に転化しそうになったら、「自分はそんなに偉そうなことを言える立場なのか」と自問自答しましょう。ファミレスでよくない席に案内されたら、文句を言う前に「自分はお客様だから店員より偉い。そう勘違いしていないだろうか」と自分の胸に聞いてみる。そうやって一呼吸置くことで冷静になり、とりたてて騒ぐことではないと気づくはずです。


実は精神科では、すぐ医者と揉め事を起こす患者さんを同じように他院に紹介することがあります。医療業界では「チームワーク医療」と呼んでいますが、実質的にはたらい回しです。たらい回しというと聞こえが悪いですが、問題が大きくなる前に火を消すには、こういう手法を用いるしかない場合もあります。被害者ぶる人が個人の手に負えないなら、組織として対応してもらうことも視野に入れるべき。一人で背負い込むと心身ともに消耗するので、まわりの力をうまく借りてください。


被害をでっちあげられたなら、もうスルーは厳禁です。放置すると調子に乗って言いふらし、ウソだった被害が既成事実化してしまいます。加害者にされたら、しっかりと反論してください。ただし、感情的になるのはダメ。相手と同じ土俵に乗ると泥沼にハマるので、あくまでも冷静に、客観的な事実を指摘しながら敬語で反論することが大事です。面倒くさがらずに細かく反論していくと、今度は向こうが音をあげます。被害者ぶる人は、誰彼かまわず噛みつくのではなく、噛みつきやすい相手を選んでターゲットにします。「この人は面倒だな」「ケンカを売る相手を間違えたな」と思わせたら、こちらの勝ち。相手がそう感じるまで、粘り強く反論していきましょう。


相手と距離を取るのにオススメなのが、敬語を使うことです。危険物を素手で触る人はいませんよね。目の前に危険なものがあってそれを取り除かなくてはいけないという場合、手袋をはめて直に触れないようにするはずです。会話において、手袋の役割を果たすのが敬語です。タメ口だと相手は遠慮せずにこちらに近づいてきますが、敬語を使えば逆に相手に近寄りがたいと感じさせ、一定の距離を保つことができます。敬語は、危険な相手から身を守る武器なのです。


被害者意識が強い人たちとつき合ううえでまず意識したいのは、接点を減らすこと。接点が多いほど、いちゃもんをつけられるリスクが高まります。近寄らなくて済むなら近寄らない。これが鉄則です。不用意にプライベートに踏み込むのは危険です。幼少期に親との関係がうまくいかなかったり、いま現在夫婦や恋人との関係でストレスを感じていたりして、強い被害者意識を抱いているケースもあります。そのような相手にプライベートの話題を振るのは自滅行為。会話をするときは、地雷を踏まないように仕事上のあたりさわりのない話に終始すべきです。


人間の性格は、18歳までにだいたい決まってしまいます。肉親や友人の死など、ショックな出来事を経験することで、大人でも性格が変化することもありますが、ちょっとやそっとの経験では根っこは変わりません。「そのままではまわりに嫌われて苦労するよ」とアドバイスしても、本人はびくともしないでしょう。それどころか、「あの人は私の悪口を言った」とターゲットにされてしまう可能性大です。性格を変えられないなら、あとはつきあい方を模索するしかありません。


警戒してほしいのは、成功した経営者やエリートサラリーマンです。彼らには自他ともに認める実績があり、自分は特別だという特権意識を持っている人が少なくない。それゆえに普通の人ならスルーするレベルのことをいわれたり、されたりしても、「侮辱された」と怒りを覚えがちです。その怒りが、他者への過剰な復讐へとつながるわけです。この傾向は、実績が立派な人ほど強いと思います。彼らは輝かしい実績をつくるために、血のにじむような努力をしてきました。人は自分が支払った犠牲が大きいほど、その結果として手に入れたものに執着します。そのため、自分の実績を脅かす存在に対しては、とくに強い攻撃性を発揮します。被害者ぶって周りを貶めるのです。


自分を過大評価している人ほど、欲求不満とそれに伴う怒りを持ちやすいもの。根底には、なんらかの劣等感が潜んでいて、しばしば不全感が強い。一流企業に勤め、それなりに出世しているけれど、自分よりもさらに出世している同期に劣等感を抱いている場合などがあてはまります。このタイプは、「自分は上司にもっと評価されて、出世したい」という承認欲求を抱くようになる。すると、こうすれば認められるはず、褒められるはず、と上司の意向を忖度し始め、やがては上司にうまく操られ、振り回されていくのです。


片田珠美の経歴・略歴

片田珠美、かただ・たまみ。日本の精神科医。広島県出身。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程を修了し博士号(人間・環境学)取得。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析部に留学。精神科医として活動。著書に『他人を攻撃せずにはいられない人』『プライドが高くて迷惑な人』『なぜ、「怒る」のをやめられないのか』『正義という名の凶器』『無差別殺人の精神分析』ほか。

ページの先頭へ