林野宏の名言

林野宏のプロフィール

林野宏、りんの・ひろし。日本の経営者。クレディセゾン社長。京都生まれ。埼玉大学文理学部卒業後、西武百貨店に入社。企画室、マーケティング部、事業計画部など新規事業の創設業務部門を渡り歩く。その後、西武百貨店の系列会社、西武クレジット(現:クレディセゾン)へ転籍。取締役、常務、専務を経て社長。経済同友会副代表幹事などを務めた経営者

林野宏の名言 一覧

確かなのは、「従来通り」では、もはや生き残れないということ。

当然真似されるものと思って手を打ち続けていると、ある時、真似できないことが出てくる。それこそが決定的な「差別化」のポイントになる。

ドン尻の会社が他社と同じことをしていても立ち行かないのは明白。業界の常識などにはとらわれず、「今、お客様が求め、喜んでくれるサービスとは何だろう」と、それだけを全力で考えました。

やらされるだけの仕事はストレスのもと。しかし、当事者意識を持って取り組めるようにすれば、エキサイティングなチャレンジの場になる。

縮小する市場にあっては、限られたパイの奪い合いだ。後れを取った者に分け前はない。

ビジネスにおいて最も大切なこと、それは「先手を打つ」こと。

もう後がない、追い込まれていることが大事なんです。

ビジネスを成功させるのに一番大事なのは情熱。2つ目に危機感。

とりあえずやってみて、ダメならやめればいい。

真似されるのは仕方がない。真似されるということは、価値がある証左。真似されたら、次の手を打つ。先に手を打ち続けることが大事。

一番ダメなのは、何もしないこと。次にダメなのは、去年と同じことをやること。

継続して努力する人、情熱を持続させている人は、必ずや運がついてきて、苦境から復活する。

なぜハードトレーニングが必要かというと、「ツキが来た時、最大限の活用ができない事態を避けるため」です。ミスをすると、目の前まで来たツキはすぐに逃げてしまいますから。

与えられた課題を高いクオリティーでアウトプットするのは当然。「課題を作る」ことも自分の頭でできるようになることが求められる。

必要なのは、強い闘争心を持つこと。現代ビジネスは、まさに格闘技。倒すか倒されるかの熾烈な競争を繰り広げるのがビジネス。

例えば味方がパスをミスしてツキが相手に流れても、「絶対に勝つんだ」という気迫をみなぎらせれば、ツキを呼び戻すことは決して不可能ではない。

とにかく夢中になること。人間、夢中になると進化する。夢中になると、一所懸命考えるんです。

社員がその気にならないと、絶対にうまくいかない。トップダウンで「あれをやれ、これをやれ」と言っても人は動かない。

多くの企業は知恵を出し、努力することを怠っている。企業は手間を惜しまず、知恵を絞って、工夫を積み重ねていくことが必要。

これはやる、これはやめるという決断を、リスクを取って下せるかどうか。誰もそれをしない組織は硬直化し、変化についていけません。

人がいない、カネがない、ノウハウがない、ということが新しいものを生み出す。

熱をもって、お互い競争することが大事です。安心感が出てくるとダメで、イノベーションが妨げられる。

危機感と競争心が会社の原点で、当社の強み。

感性に関わるような部分は特許などでは守りにくい。だから、競争はしんどい。しかし、そのしんどいところこそが、勝負を分ける。

人間、それほど先のことが分かるわけではない。でも変化のファクターが何かは分かる。どういう変化の仕方をするかは分からないけれど、変わることを前提に遅れないようにすることが大切。

現状維持では駄目だと思い、イノベーションを生むために日々仕事を進化させていく。この危機感をどうやって醸成し、社員にどこまで浸透させることができるか。これがトップマネジメントでは重要。

消費者は見ていますよ。どこが真剣に消費者のことを考えていて、どこが真似しているだけなのかを。

市場を甘く見てはいけないが、萎縮してもいけない。小さなイノベーションでいいんです。それを工夫して作り出して、実行に移すことが大事。

共鳴や共感が消費を生む。

「感性優先」の商品が支持されている。特に、成熟した社会においては、自らの感性と共鳴する商品を求める人たちが増えてくる。

漫然と「勝ちたい」と思っている人は、ちょっとしたトラブルでも、「もうダメだ」「これだけ頑張ったから、うまくいかなくても仕方ない」とすぐに諦める。

一般的な社員教育というと、全員が同じ教材で、同じ講義を聞かせる。しかし、そこから斬新な発想は生まれないでしょう。私が求めるのは、スタッフそれぞれが日々のすべてを教材に、様々なことを考え、アイデアを持ち寄り、磨き上げていく組織です。

組織も個人も「完成形」はない。避けるべきは、閉塞状況を「安定状態」と換言し、安易に現状維持に流れることだ。

現状維持のためのコストが多ければ危険信号。創造的破壊の必然を前提とするなら、そのコストは「変わるため」に使った方がいい。

状況は常に変化する。それに対応することは大事だが、起きたことに対処しているうちは、主導権を握れない。成果をつかむには、リスクを取って自ら仕掛けるべし。

心身ともに健康で、充実した人生を歩むためには、夢中で遊び、学び、働くことが大切だと思います。

何かに夢中になる時間が多ければ多いほど、人生は豊かになっていくもの。

好奇心旺盛な子供のように、何事にも夢中になることは、心身の若さを保つ秘訣にもなるのではないでしょうか。

大変でしたが、初めての挑戦でしたから、当たり前のことでした。

努力したから運がよくなった。

伸びる人は競争心、負けず嫌いな人。それから商人(あきんど)の血が流れている、お客さんに自分たちは食べさせてもらっている、という感覚がある人。

こんなに一生懸命なんだからやってあげよう、と思われることが大事。

島国の中で、無難なやり方で考える発想ではなく、ボーダレスに考えていくことが重要。

働き方ももっと多様化したほうがいいと思います。働き方を状況に合わせて選択できる事が重要。

感性や知恵を磨くポイントは、夢中になれるかどうかです。遊びって夢中になってやりますよね。そうすると能力も飛躍的に伸びる。一番いいのは、仕事を遊びにしてしまうことです。

大きな目標があれば休日の過ごし方も変わります。無駄な時間をなくし自己投資や人脈づくりの時間を増やそうとします。社長らしい広範な知識を身につけるべくあらゆる本を多読精読するのです。そうやって日々を過ごすと、真の実力がつきます。

競争の激しい社内でライバルに勝つには、自らが高い意志やビジョンを持つことが大切です。自覚が自己を鍛え、結果的に人より秀でるきっかけになるのです。

資本主義における企業の本質は競争です。日々少しずつ価値観が変化する顧客の支持を取り付ける競争が続くのです。

21世紀を勝ち抜くのに重要だと私が考えるのは創造的破壊です。誰かのイミテーション(模倣)ではなく、マーケティングを超えてまったく新しいイノベーションを起こすことです。そのためには社員が強くなければなりません。

努力の日々を積み重ねると、その実力は単に社内で通用するレベルのものから同業他社、さらに異業種でも通用するオールマイティなものに進化します。そうなれば怖いものはありません。

相手の苦手な部分を発見したら、そこで勝負をするのです。もし相手がエリート大学出身で細かい仕事を嫌がる腰の重いタイプなら、自分は泥臭く顧客の下へこまめに足を運び、面倒くさい仕事を引き受けるのです。相手の弱みを逆手に取るのです。

どうしてもライバルに敵わない場合、無理して戦ってもノイローゼになります。潔く撤退して違う土俵でリベンジする勇気も必要でしょう。

これまで私にも社内に多くのライバルがいましたが、最終的に勝てたのは「トップを目指す」気持ちの強さがあったからでしょう。

当社では中途採用を重視しており女性の幹部登用も積極的に行っています。多様性を重視し、社内をある種のカオスにすることで、社員間に健全な競争が生まれると考えています。

いまの会社に赴任して私が最初にしたのはライバル企業への挨拶です。彼らの多くは銀行からの出向者でカード事業の経験はなく、しかも2から3年で銀行に戻るのです。そこがライバル企業の弱点でした。こちらもノウハウや人脈がなかったですが、カードの時代が来るという先見性とやる気だけはありました。だから勝てると思ったのです。

社長をライバルに見立て、そのポジションを本気で目指せば目の前の課題だけでなく大きな視点でものごとをとらえる習慣がつきます。この時点で、狭い視点で汲々とするライバルに一歩差をつけられます。目標が部課長ではなく組織の頂であるため努力が長続きするのです。努力が長続きすると、自分なりの戦略も持ち、ライバルに勝る武器を持とうと絶えず精進できます。上司に依存せずに自分でものを考え行動するので知恵もつきます。

私は大学卒業後、西武百貨店へ入社しました。そのころの西武には、堤清二さんという絶対的な存在が君臨していました。しかし、新人の私は当初から「社長に勝ちたい」と、勝手に堤さんを仮想のライバルに仕立てていました。39歳のときにいまの会社に移ってからも同じ志を抱き続け、その後、社長に就任しました。

景気がいいころは市場が成長し各社はそのパイを分け合いました。それはバトルロイヤルのようで一見派手ですが、勝ち負けが明確ではなく、ダラダラと試合が続くような印象でした。しかし現状は、やるかやられるかの真剣勝負で1秒たりとも気が抜けません。

人生で最も大事なのは、「短い」と感じられる時間をどれだけ多く持てるかだと思っています。

同期入社の社員を見渡せばわかると思いますが、夢中で仕事をやり続けている人間などほとんどいません。仕事で成果を出せるかどうかを分けるのは、とどのつまり目標に向かって情熱を継続する力なのです。私は風呂でも、布団の中でも、常に新しいビジネスのアイデアを考えています。

セゾンカードにはポイントの有効期限がありません。これは他社が容易に真似できるサービスではありません。発行したポイントに対して膨大な引当金を積まなくてはならないからです。ビジネスは、他の追随を許さないクリエイティビティを連発していけば、必ず勝てます。カード会社としては完全に後発であるわが社がカード業界のトップに立てたのは、まさにこのためなのです。

私はこの会社を、社員の誰もが知識や情報を知恵に変えることができる多数精鋭の組織に育て上げたいと思っています。

最高の商品とは、発売の前から期待値が高い商品です。クレディセゾンはこれまで、年会費無料のカード、サインのいらないカード決算方法、永久不滅ポイントなど、日本初の新サービスを提供してきました。この結果、「次はいったい何をやってくれるのか」という期待を集められるようになりました。

クリエイティビティがあり、しかも人を動かす力のある文章を書くのは、じつは難しいことではありません。夢中で仕事のことを考え続けていればいいのです。

本当の面白さはクリエイティビティにあります。クリエイティビティとは、新しい発見、新しい発想です。「これまでになかった考え方だ」と思ってもらえたとき、文章は初めて商品としての価値を持ちます。しかも、その発見や発想が、他に真似できないものであれば、商品としての価値は一層高まります。

アメリカン・エキスプレスと提携の契約を結ぶまでに3年の歳月を要しました。私はブルックリンに行って、アメリカン・エキスプレスのCEOに「このカード(クレディセゾン発行のアメックスとの提携カード)をつくれば日本のマーケットで勝てる」と力説しましたが、CEOはなかなかうんと言ってくれませんでした。難しい社内事情があったのです。そのとき、ふと窓の外に目をやると、自由の女神が見えました。そこで「あれは、不自由の女神ですね」とCEOに言いました。私とCEOの心境を表すこの言葉はよほど印象的だったらしく、契約締結のために担当部門の責任者が来日した際、自由の女神のレプリカをプレゼントされました。

文章の評価は読者が決めるものだと割り切ることが大切です。書きたいことを書くのではなく、読者が喜んでくれること、感心してくれることを書くのです。要するに、読者にとって面白くなければ駄目なのです。最初は直感的に書いていって、今度は読み手として面白いかどうかを検証しつつ、書き直しを加えていくのです。

本の要約を社員に送り付けるだけでは、知恵への転換を果たせたとはいえません。このサマライズをどうやって事業に活かすか。そこがまさに知恵なのです「Rレポート(林野氏の社内メール報)」には、そのためのヒントをちりばめています。「ヒントは出したから、あとはみんなで考えてくれ」ということです。

本の要約で大切なのは、本に読まれないこと、本の内容を丸呑みしないことです。書いてあることが全部正しいわけではないし、自分と考え方が違う部分もあります。そういう部分は飛ばしてしまうか、リライトしてしまいます。そして、重要なこと、面白いことだけを短い文章で個条書きにするのです。最初はずいぶん時間がかかっていましたが、いまではA4二枚のレポートを1時間ほどで書き上げることができます。

社長就任の当初から、私は「R(林野)レポート」という文書を社内メールで配信し続けてきました。発行号数は、もう100は超えているはずである。最初は首相の所信表明のような内容でしたが、最近は読書の内容を要約して配信することが多くなりました。

よく、秀才ばかり雇っても企業は立ち行かないと言いますが、豊富な知識を持つ秀才は大変価値があります。問題は、その知識を知恵に変えることができるかどうかです。企業はスタッフ部門が知識や情報を知恵に変え、現場がその知恵を行動に移し、富に置き換えることで成り立っているのです。

書くとは、知識や情報を知恵に変える行為であり、文章は、それ自体が商品でなければならない。

人間の能力には大差がないはずです。あるのは、仕事でも遊びでも目標に対する情熱をどれだけ熱心に維持できるかの差だけです。

私が西武百貨店に勤務していた30歳前後の時期に、自分で自分にハードなトレーニングを課しました。具体的にいえば、「どんな課題でも2時間で答えを出す」という訓練です。私は上司から振られた問題について、いつでも2時間集中して考え、必ず2時間で答えをアウトプットするよう自分に課しました。当日の夕方までには必ずレポートを書いて提出しました。クイックレスポンスです。いわばバッティングセンターのように、堤さん(堤清二社長)が次々投げ込んでくる剛速球を、とにかく必死に打ち返すのです。ファウルでも当たり損ないのチップでもいい。打ち返すことが大事なのです。見送りや空振りはダメです。こうした訓練を連日積み重ねたことで、私の頭の中には、必ずアイデアが浮かんでくるという一種の癖が形成されました。

ルーティンワークは面白くないと感じられがちです。集中力を発揮できないことも少なくないでしょう。そういう場合でも工夫の仕方次第で、仕事はいくらでも面白くなります。仕事をゲーム化すればいいのです。たとえば、同僚とどっちが先に帳簿の記入が終わるかスピードを競い合う。あるいは自分一人で時間の目標を立てて、それにチャレンジする。今日は自己記録更新だと、ひそかに喜ぶのもいいでしょう。ゲーム要素を入れることで、つまらないと思っていた時間もあっという間に過ぎてしまうはずです。しかも、仕事の処理能力も向上します。

情熱を絶やさずに目標に取り組み続けていると、蓄積されたものが、ある一定の量に達したとき、ヒラメキという女神が微笑んでくれることを体験的に理解できます。

遊ぶことは大切です。それは、結果的に仕事に大いに役に立つからです。斬新なアイデアや、先を見通したクリエイティブな発想の源にもなっていきます。そのためには、どんな遊びでも徹底してのめり込むことです。その分野で本が一冊書けるぐらいの意気込みで取り組むことが大切です。麻雀も徹底してやれば、ツキを逃さないためにはどう動けばいいかといったことを学べます。また、人間には直感が与えられているということも知ることができるでしょう。

私は、何事にも好奇心を抱き、どんなことでもタブー視せず、自分で体験してみることが大事だと考えて、面白がって様々なことに取り組んできました。

私は人生の時間は三等分したほうがいいと考えています。「仕事をする時間」「睡眠や食事、休息の時間」「遊ぶ時間」です。一般的には仕事と休息、オンとオフというように二分して考えがちですが、「遊び」と「休息」を区別して、仕事も含めそれぞれ3分の1ずつがいいと考えています。

人間の頭脳は仕事をしながらでも今日の夕飯は何を食べようかなど、別のことをいくつも考えることができるものです。それだけ高い能力が備わっています。その、複数のことを同時に考えられる能力を、2時間の間、たった1つの課題に集中させるのです。

課題への集中と、情熱の持続。短い時間と、長い時間を組み合わせることで、私はビジネスパーソンとしての人生を形作ってきました。

日本人は休みすぎだと、私は考えています。私が新入社員だったころは、もっと厳しい環境にありました。休日は少なく、1日の勤務時間はいまよりずっと長くハードでした。私がこう強調するのも、次のように考えているからです。単なるサラリーマン、つまり自分の会社の中でしか通用しないアマチュア・レベルの人材から、プロフェッショナルなビジネスパーソンに脱皮するには、ハードなトレーニングが絶対に欠かせない、と。

大脳生理学によれば、脳は鍛えれば鍛えるほど、シナプスと呼ばれる神経細胞がネットワーク化されて、創造力が発達するそうです。遊びを通じて得たたくさんの経験や知恵が、シナプスのように有機的に結びついて、結果的に仕事にも生きてくる。私はそう考え、実感しています。

新入社員には単純作業だけでなく、自分の頭で考える仕事を同時並行で与えなければダメです。指示が細かくなるのは当然ですが、能力が上がれば簡略ですむようになっていきます。

部下の企画書作成が滞っていたとしたら、過去に好評を得た企画書のサンプルなどを渡し、まずそれを精査させてから書かせる。すると、部下はあたかも自分一人で達成したかのような満足感を得ることができる。こうしたOJTの反復により、自ら考える習性を身につけさせる。

部下を突き放すやり方は、いまは難しいでしょう。塾講師のような手取り足取りの指示が求められています。しかし、言われたこと以上のことを自ら考えてやるのが仕事です。上司は部下にそれを知らしめなければなりません。

難しい仕事は、若いうちからやらせるべきです。そこでへこたれなければ、あとで他の仕事が易しく思えます。日本の組織では、創造性が最も鍛えられる20代に最もつまらない仕事をさせるから、その組織でしか通用しない、自分を売り込む履歴書もしっかり書けないサラリーマンが出来上がります。

部下が世に通用するプロフェッショナルに成長するには、早い段階で尊敬できる上司に出合うことです。もっともそれには運不運が付きものですから、叶わなければ努力を反復することが不可欠です。

部下への指示にはサプライズとクリエイティビティが必要です。顧客や同業者に勝つための武器、と言い換えてもいいでしょう。若手の企画担当者だった私に、堤清二さん(セゾングループ総帥)が与えてくれた指示がそれでした。

いまはビジネスマンとして、創業者のような気持ちでリードしなくてはいけない。とりわけ運とツキを味方にするには、他力本願では駄目です。やはり自力でやらねばならない。効率よく集中的に時間を使い、率先して仕事をリードしていく。勝利の女神がほほ笑むのはそうしたビジネスマンだけなのです。

全社員が能力を十分に発揮できなければ、破壊的なイノベーションは起こせません。説得と納得だけでは不十分で、社員との共鳴が必要です。ただ仕事を与えるだけでは駄目です。とくに若い世代は「この仕事でどれだけ自分が成長できるか」というフィルターを通して仕事を見ています。

カード業界をめぐる環境は厳しい。しかし競争相手が諦めているとすれば、こんな勝ちやすい状況はありません。カード業界に身を置いて30年目になりますが、これほど絶対的に勝てるチャンスが来たのは初めてです。でも、多くの人はそれに気づかない。おそらく現場の出してくる予算は変わらないでしょう。人間は予算で数字をつくると、予算さえ達成できれば満足を覚え、それ以上やらなくなります。それが人間の性なんですね。

必要なのは「あと10%の努力」です。いったいどれほどの人が夢中で仕事をしているでしょうか。ほとんどは50から60%の力でこなしているように見えます。日本の企業内競争はとてつもなくレベルが高いものではありません。あと10%を上乗せして70%の力を出せば、抜擢される可能性が高いはずです。わずかの努力があなたをプロに育てるのです。

企業の中で仕事をするうえでは、得意な分野をそのまま仕事にできるとは限りません。むしろそんな恵まれた人はごく少数でしょう。大部分の人は与えられた仕事を好きになるしかなく、得意になるしかない。しかし与えられた仕事だと言っても、努力すれば必ず好きになれる。努力とは夢中になれることであり、その結果、成果を上げることです。夢中になればどんな仕事でも好きになれる。夢中になった結果、成果があがればますます仕事が好きになります。

時間がないが口癖になっているような人がいます。どうすればいいのか、答えは単純です。仕事を速く仕上げてしまえばいいのです。そして、苦手なことはやらないことです。人生を80年とすると、ビジネスという意味では、最初の20年はなにもやっていません。定年を考えると長くても40から50年しかないわけです。休み時間を差し引けば、苦手なことをやっている暇はありません。得意なことをするだけで一生過ごせれば、かなりの成果を上げることができます。

人間の能力は無限大で、生まれつきの才能の占める比率は低く、集中して努力した時間によるものと考えています。私たちの能力は限りなく大きなもので、毎日の努力の積み重ねで、その価値を膨大なものにできる。働く人々の努力、すなわち夢中力こそ、会社の貴重な財産だと思うのです。

業績が上向くと安心して、その安心が慢心に変わっていきます。そして限りなく傲慢になり、相手を見下してしまう。これが結局は企業の衰退を招いてしまうことになります。

勝負の分かれ目という言葉があります。スポーツならばあのプレーで勝負の行方が決まったという瞬間です。そんなとき、選手はノリにノッています。自分は今日はツイていると本能的に感じている。だから普段できないようなすばらしいプレーができてしまうことがあるのです。

相手に傾きかかった流れを引き戻す迫力は、「勝ちたい」という漠然とした思いではなく、「勝てる」という強い思い込みでしかもたらされません。根拠などなくてもいい。ワクワク、生き生きしているから、より一層の努力ができる。だから、より強い運とツキがついてくるのです。

私はビジネスの世界で「運とツキ」を呼び込んできましたが、それは勝負ごとによって磨いてきたものです。経験からいうと、運とツキは万有引力の法則と同様に、人に働きかけるもので、あっちの人、こっちの人と移り変わっていくものです。自分に運とツキが来ているのに、それを逃すと運とツキは逃げ、相手がミスをすると自分に戻ってくるのです。

運とツキを呼び込むためには、勝ちがあるうちに次の一手を打ち、勝ち続けていくことが重要です。
90年には当時セゾングループだった西友の食品売り場で、日本初のサインレス取引を始めました。02年にはポイントプログラムの有効期限を廃した永久不滅ポイントを開始。10年には米アメリカン・エキスプレスと3年間の交渉の末、券面にアメリカン・エキスプレスの象徴である「センチュリオン(古代ローマの百人隊長)」がデザインされた提携カードを世界で初めて発行しました。80年代以降、我が国のカード業界のイノベーションはほとんど私たちがやってきたという自負があります。

中途採用の女性たちの熱意、画期的なスピード発行の便利さなどが加わり、初年度に目標のカード会員120万枚獲得をクリア。実績が積みあがっていくと社内全体の雰囲気は変わり、やる気に満ちあふれるようになりました。

当時、ライバル会社は積極的な勧誘をしていませんでした。入会カウンターは正午前後には昼休みがあり、夕方5時には閉まってしまう。土日も受け付けていません。来てくれる人を待つだけだったのです。私たちはセゾングループの各店舗にカウンターを設置して、営業時間中は絶えず積極的にカードの勧誘を行いました。

運とツキは、強烈にそれを望んでいるところにしかやってきません。私は「月に10万枚ずつカード会員を獲得する」という目標を掲げることにしました。そうすれば、10%の解約を見込んでも10年で会員数は日本一になります。壮大な目標ですが、具体的な方策がありました。
【覚書き|クレディセゾンの前身、西武クレジットの立て直しを行ったときを振り返っての発言】

私は39歳のときに西武クレジット(現:クレディセゾン)に転籍を命じられます。西武クレジットの前身は緑屋という月賦販売専門の小売業です。当時、すでに倒産していて、銀行の管理下にありました。着任時、社内の雰囲気は真っ暗でした。適当に働いていればいいやという意識が蔓延していました。セゾングループのテコ入れでやっと存続しているという状況です。私はまず「必ず勝てる」と訴え続けることにしました。社内の沈滞ムードを払拭し、気迫を植え付けて、運とツキを呼び込める土壌をつくるところから始めたのです。

クレディセゾンは現在、国内トップクラスのカード会社となっていますが、私が入社した時には事実上、倒産していた会社でした。その歴史は運とツキに恵まれたものでした。偶然ではありません。諦めずに生き筋を探し続けた結果、イノベーションが生み出され、運とツキが呼びこまれたのです。

いま必要なのは「イノベーションシンキング」です。ロジックだけでは成功を導きづらい時代です。イノベーションと呼べるような新しい価値を作り出していかなくてはいけない。諦めることは簡単ですが、ビジネスを含めた勝負の世界では、諦めることはナンセンスです。死にもの狂いで生き筋を探すことで、初めてイノベーションが生まれるのです。

諦めてしまうのは「ロジカルシンキング」で物事を考えているからでしょう。逆境の時は、理論を立てて、数字に当てはめていけば、対応不能という結論しか出ません。順風満帆のときはロジカルシンキングでもいいのです。ところが法律で前提条件が崩されたり、新しい競争相手が出てきたり、企業の生死が問われるような状況では、行き詰ってしまいます。

逆境のとき、「これは外部要因だから仕方ないのだ」と諦めてしまうのは簡単です。しかし、資本主義とはマーケットに向かって、絶えず顧客の獲得競争を繰り広げるもの。厳しいのは当然で、逆境はつきものなのです。むしろ、競争相手がうつむいているときはチャンスです。ここで知恵をしぼって他にないサービスを考えれば、簡単に相手を抜き去ることができます。

昔の競争相手は、銀行系であれ信販系であれカード会社でした。その中で勝てばよかった。でも今はそこだけで考えてはいけない。戦略を描くにも以前とは違う絵を描かなければならない。だからこそ、常に過去をデストロイする必要がある。

ベンチャーの中には卓越したテクニカルを持つところが多いものの、それだけでは成功しない。どうやって売っていいかノウハウがないから。そこを我々提供する。我々には、ベンチャーが喉から手が出るほどほしい膨大な顧客を抱えている。これを活用する。

油断すると成功体験による危機感の欠落がカビのようにはびこってしまう。これを根治するのはなかなかむずかしい。人間のハートの中にはびこっているため、意識して追い出さないといけない。社員に対して、カビが繁殖しているなら会社から出ていけと強く言う必要がある。

取締役、部長、課長を1人ずつ呼んで、目標と、そのスケジュールを聞いていく。目標が低かったりスピード感がない場合はきちんと指摘する。これを粘り強くやっています。時間も労力もかかり、ストレスがたまります。でもこれをやらないとカビ(危機感の欠落)の駆除はできないでしょうね。

日本信販やJCBなどの先駆者に伍して10年で日本一のカード会社になろうという目標を立てました。当時のトップはJCBで、これを10年で抜くには月に10万人の会員を集める必要がある。そのためには従来の発行基準を破るしかありませんでした。

幸運だったのは、自分の思うようにやることができたことです。多くの会社ではヒエラルキーがあり、上の人がやったことを変えるのはむずかしい。でもクレディセゾンは一度つぶれた会社のため、反対する人がいなかった。ですから躊躇なくタブーを破ることができた。

今やインターネットなどを通じて世界中の情報に誰もが簡単にアクセスできる。そんな状況にあっては、自分がアクセスした情報には、恐らく他社もアクセスしている。そこから考えたアイデアは、恐らく他社も考えている。そう考えた方がいい。そうして、他社が考えるであろうあらゆる戦略を想定し、それを超える戦略を立てる必要がある。さて、あなたのアイデアは、そこまで考え込まれているだろうか。

本当にすごいアイデアなら認められるはず。認められないということは、何かが足りないんじゃないか。そう考えてみてほしい。認めない上司に文句を言う前に、もっと突き詰めて考えてほしい。

感性という言葉は、ともすれば曖昧なものに感じられるかもしれませんが、共感してもらい、実際に消費してもらうには、消費者の感覚にとことん思いを致す感性を持ち、しかも不断の努力が求められます。

ビジネスにおいて、いいアイデアをひとつ考えたら、すべてうまくいくなんて甘い状況はあり得ない。アイデアを出し続け、市場に問い続け、信頼を得続ける。そこに近道はない。

消費マーケット全体は大きく2極化していきます。安さを売り物にしている商品は、さらなる安さが求められる。一方で、良さが認められた商品は高額でも売れる。ここで見誤ってはいけないのは、安いものを買う人と高額商品を買う人が、必ずしも別ではないということ。1人の消費者の中で、こだわりのない分野の商品には安さを求め、こだわりのある分野には相応の出費をいとわないという2つの軸が育っていく。こうなると、単純に価格の高低ではなく、その間に「新しい消費の芽」が出てくる。

私は、世界のクレジットビジネスを変えたい。日本におけるシェアも、当然変えてしまいたい。カードに対する人々の価値観も変える。それが今後のテーマです。

法改正は逆風でしたが、消費者金融や銀行などの貸し出しがすごくシビアになり、貸し手がいなくなったため、多角化によって収益基盤を拡大していた我々にとっては追い風になりました。消費者金融などの貸し手が減る中、信用保証業務やリース事業を伸ばすことができました。

昔は、ベーゴマやメンコなど、子ども同士で勝負をして、相手のものを取り合うような遊びをしていました。取られるのはイヤだから、勝つために一生懸命考えるでしょう。そういう経験が大人になって感性や知恵になると思うんです。いまの子どもたちはテレビや携帯のゲームで遊びますが、何もリスクがないので勝つために必死に考えたりすることが少ない。だからいまの若い人は、頭はよくても、人に先んじるような知恵を身につけている人が少ない気がします。

かつて日本の会社はIQの高い人を新卒採用し組織で鍛えて従来のやり方を踏襲させていきました。日本全体が経済成長し市場のパイが膨らんでいく中ではそれでいいのですが、いまはパイが縮小する時代。少ないパイを同業他社と奪い合わなければならない。そんな椅子取りゲームを生き残るのに必要な能力はIQでもEQでもなく、ライバルを出し抜く知恵や戦略を描ける「BQ(ビジネス感度)」だと考えたんです。

自分のポジションよりもつと上から俯瞰して、「自社や在籍する部署が抱えている問題は何か」と考える。解決策を考えたり、実行したりすることができるようになると、実力がついた証拠。周囲より抜きん出るようになり、ツキが回ってくる。

明朗快活の対極にあるネガティブな感情は、心に余裕がない時に生まれがちです。通勤時間帯をずらして空いている電車に乗ったり、「ノー残業デー」を作ったりして「ゆとり」を取り戻してください。ポジティブな感情が湧き上がってくるはずです。

求められているのは、単に情報を集めることではなく、そこから何を生み出すか。同じ情報をもとに、ライバルと同じことをしても、抜きんでることはできません。他社が考えるであろう戦略を想定し、それを超える戦略を立てる必要がある。それには、想像力や発想力が不可欠。そして、発想力を生み出すもの、それは好奇心。

私1人だけが元気でも成果はつかめない。スタッフ全員を元気にし、やる気を引き出すために、私は4つのことを心がけていました。「適性に合う、やりがいのある仕事と権限を与える」「与える仕事の水準は、実力の少し上に設定する」「仕事に必要な情報は、出し惜しみせずに共有する」「決定の場に参加させ、意見を積極的に取り入れる」。

成長とは、ともすれば「現状の延長線上」にあると考えがちだ。これまでの経験を生かし、そこに経験を重ねることで高みに到達できるというように。しかしそこは、実は「陳腐化の入り口」だ。

ビジネス社会で勝ち抜くための創造的破壊は、組織におけるイノベーションによってもたらされる。つまり、イノベーションなき企業は存在価値を失い、生き残ることができない。

拙速に目先の答えを求めるような読書は勧めない。本は「知の泉」だ。あなたの幹を太くし、先手を打ち続けるための分析、判断、そして実行を支える力を身につけるべく、ジャンルを問わずに臆せず手に取り、より多くのページをめくってほしい。

不利な状況を打破するにはどうしたらいいか。有利な状況に甘んじず、さらに先を行くにはどうすべきか。常に「次」を考え、局面を打開し続けていくことが必要。

私が幼い頃から夢中になったものと言えば、賭け事や落語です。メンコやビー玉などを賭けて勝負をすれば、勝つためにはどうすればいいのだろうと考えます。ほかの人と同じことをしていては勝てませんから、知恵を絞って考える。そうして夢中になって遊ぶ中で、運とツキを引き寄せる法則を学びました。これは今、変革が求められている経営環境に立ち向かい、生き残っていくための知恵にも通じています。

人は皆、自分の中にクリエーティビティーやイノベーションを生み出す「知の泉」を持っています。この泉を広げ深めていくのも、遊びであり、学びであり、仕事です。そして、その源泉にあるのが、好奇心でしょう。

クレジットカード会社だけでやっていたら、ある日突然、大衆保護のもとに厳しすぎる規制法規が成立し、とたんに会社がつぶれてしまう。単品依存は怖い。

少なくとも年間5、6%の金利でも会社を回していけるようでなければ、まともな経営とは言えない。

中学生の頃は伝記ものも読みました。そういった伝記ものを通して「天才はいない」と感じました。例えばモーツァルトだって、父親の友人にハイドンがいて、その影響を大きく受けている。ピカソだって、先人の影響を受けてそれを極めていってオリジナリティーが生まれている。初めから天賦の才でやった人はごく少数しかいないでしょう。環境や周囲の人の影響は大きい。そして努力が大事だと感じました。

基本的に人は善人だと思っています。何かの事情で悪いことをしてしまうことはあるかもしれませんが、最初から悪人はいないと思っています。どんな人でも苦しいときがあって、好き好んで悪いことをするような人は少数派ではないでしょうか。

グローバル化だと言っても、日本のやり方を押しつけていては何にもなりません。日本のノウハウは持ちこみますが、できるだけ現地のやり方、国状、ビジネスの慣習などを踏襲する必要があります。日本で培ったノウハウと現地のやり方が融合しなければなりません。

私は現地法人を作るにしても、株式の過半数を持つことは意識しません。従業員も経営もできるだけ現地の人に任せたい。ベトナムの会社は今、従業員が5千人以上ですが、日本から送りこんでいるのはたった3人です。日本のノウハウを現地に持ちこむことが目的だとも言えます。それができたら、3人の日本人も引き上げていい。

泉に石を投げると輪ができて広がっていく。いくつか石を投げると輪が重なっていく。異なる輪が重なるところにアイデアが生まれる。これをつなげれば良いんじゃないか、これは関係がありそうだと発想が広がっていく。そのためには、深くて広い「知の泉」が必要なんです。

堤(清二)さんから受け継いだと感じているのは「新しいことを考えて、実行する」ということです。現状に満足しないということでもあります。いろんなことに興味や関心を持ち続けるという点では、芸術への興味などは通じるものがあるのかもしれません。今でも映画や音楽、出版の世界で何が流行しているのかは気にしています。

クレジットカードを持っているのは男性ばかりでしたが、我々は女性をターゲットにしました。店で実際に買い物をしているのは女性だと知っていたからです。

第一はお客様。次は取引先、その次に従業員。そして株主。きちんと仕事をやっていれば、ひとりでに株価は上がるから、株主だけ優先する必要はないのです。

中途採用で銀行やメーカーなどの一流企業から千差万別の人が集まってきて、それぞれがカード開拓で頑張るわけです。だから面白い会社ができたんですね。それが成功の要因です。

今まで全く無かったところにアイデアひとつでまだまだたくさん、需要が生み出せる。これは20世紀に送り出した商品やサービスに固執していたらできないこと。

経営者は、どうやったら社員の給料が上げられるかということに、ものすごくエネルギーを使うべきだ。経営者の責任は、社員の給料を上げることだ。

いまの時代に求められるリーダーは、ビジョンや夢を掲げて部下に説明し、共感させ、率先垂範して巻き込んで一緒に仕事をやっていくタイプです。その正反対が社内のヒエラルキーに沿った管理、監督、指示、命令。

かつて上司だった堤清二さんには、「時間をかけて考えてもロクなものはできない」ということを学びました。30代と若かった堤さんはあれをやれ、これをやれともの凄い球をどんどん投げてきた。最初は空振りばかり。そのうちファールになり、何回かは当たるようになる。何もせずじっくり見送るのが一番ダメで、とにかく手を出して、多くの空振りやファウルを経て初めてヒットが生まれるんだということを部下に教えてくれたと思います。

上司になったら「自分が上司にしてもらいたくないこと」をしないことが大切です。最悪なのは、数字だけ押し付けて、成功すると手柄は持っていく。失敗すると「おまえ、何やってる!」。20世紀なら通用したこういうやり方も、今後はそうはいきません。

商品ごとの差異が少なく、パイそのものが膨らんでいた時代は、各社はその力に応じてそのパイを分け合えばよかった。ところが、いまはスティーブ・ジョブズみたいな異端児が、他とは全然違うコンセプトで凄いものをつくり出すと、ウイナー・テーク・オール。全部持っていかれる。要は、イノベーティブな組織じゃないと生き残れないんです。

リーダーが忘れてはいけないのは、イノベーションを起こしていかなくてはならない、ということ。これまでは営業企画とか商品開発、○○戦略室といった、サービスや商品などの差別化の武器をつくり出したりするセクション固有の概念だったイノベーションが、いまやあらゆるセクションのあらゆる雇用形態の人たちが参加すべきものに変わってきています。

私がクレディセゾン(旧西武クレジット)に転籍した当時、社内は下を向いている社員ばかりでした。無理もありません。前身の緑屋は経営危機に陥り、セゾングループに入った後も再建がスムーズに進んでおらず、連戦連敗でした。こうした社内の空気を変えるために、私は「日本一のカード会社になる」というビジョンを掲げました。社員が下を向いてしまうのは夢や希望がないからで、顔を上に向かせるためには視線を向ける対象が必要だったからです。この目標を、月10万枚のカード発行という数字で示しました。1年で120万枚。当時、業界トップだったJCBのカード有効会員数は約700万人。JCBが現状維持なら計算上は6年で抜けます。一見、無謀ですが、具体的な数字に落とし込めば、決して手が届かないものではないとわかります。

リーダーがビジョンや夢を語るというのは、実はそれほど難しいことではありません。が、語るだけではダメ。現実感に欠けると、かえって社員やチームの人たちのやる気を失わせてしまう場合もあります。このギャップを埋めるのが数字です。特に大きな夢や目標は、社員やメンバーにとって現実感のある細かな数字を提示すること、さらに勝てる理由をロジカルに説明し続けることが、やる気にさせるコツです。

最近、20世紀に成功した企業が苦境にあえいでいます。簡単にいえば、成功を支えた組織と、それを構成する人の能力が陳腐化しているということ。典型的な例が家電業界ですが、実際はあらゆる業界に共通していえることで、現時点で陳腐化が表面化していなくても、それは競争相手も似た状況だから目立たないだけ。競争のグローバル化が進むにつれて露わになってきますよ。

女性にはきめ細かいサービスとか、ルールを守るとか、辛抱強くひとつのことを持続するといった特性があって、サービス業ではそれらが活きる。男はその反対が多いじゃないですか。飽きっぽいし、ルールは破るし(笑)。

昔と違って、日本社会がサービス産業中心になってきており、要は女性が活躍するような産業構造に変わったということだと思います。サービス業は本来女性に向いているし、お客さまも女性が多いが企業の側はそうなっていない。

「女性活躍度No.1を目指す」という目標がありますが、セゾンカードのお客さまはほとんどが女性ですから、女性の考え方が経営に反映される仕組みにしないと、カードホルダーに嫌われてしまう。

我々は、ベンチャーファンドのように出資して、IPOをしたら売り抜けるというビジネスモデルではありません。その後も一緒になってやっていく。こういうことを繰り返していくと、ベンチャー経営者の間で、クレディセゾンは本気で相談に乗ってくれるというイメージが出来上がってくる。既に多くの実績もあります。ですからアーリーステージのベンチャーはまず我々に話を持ってくる。その中から、投資先を選んでいく。この好循環ができあがりつつあります。

レジでのサインレスは、主婦が西友でカードを使ってくれるようにするために始めました。せっかくカードを持っていても、レジでサインをすると後ろのお客さんから白い目で見られる。だからカードを使わないという人が多かった。だったらサインをしなくても使えるようにすればいい。サインレスにすれば、現金でお釣りのやり取りをするよりも時間がかからないわけです。業界内からは、当時のカード利用時にはサインが必要という基本ルールに反すると言われましたが、リスクは当社が負うのだからと押し切りました。いざ当社がタブーを破ってサインレスを始めると、この動きはすぐ他社にも広がりました。

明るく楽観的で頑張っている人は、職場でも社外でも周りを明るくするから好かれます。人が集まってくるから、ネットワークが広がり、様々な情報も集まってくる。ツキを呼び寄せて、成功しますよ。逆に、しょげて暗い顔をしている人や、物事に悲観的な人には、親しくしている人ですら近づきたくない。これではツキだって近寄りません。

ツキを引き寄せるために意識しているのは、明るく振る舞うこと。私が転籍した当時の西武クレジットは倒産寸前の状態。社内は暗いムードが蔓延し、笑顔は見当たりませんでした。ネガティブな雰囲気を一掃し、ツキを呼び寄せるためにやったことは2つ。1つは、闘争心の実践で、事あるごとに「必ず勝てる!」と口にしました。そして快活に明るく行動し続けることを意識しました。

「勝ちたい」「成功させたい」気持ちがビジネスパーソンに必要なことは、一般論として理解してもらえると思います。しかし、私が言いたいのは、「絶対に勝てる!」という激しすぎるぐらいの闘争心です。それを持つ人は「最後はうまくいく」と思っていますから、どんな困難にぶつかっても諦めません。100%の力を発揮して、難局の苦しさを、エネルギーに変えられます。

新卒で入社した西武百貨店で、「ハードトレーニングを自分に課さなければいけない」事情がありました。当時の堤清二社長からは、バッティングセンターのボールのように、膨大なテーマが投げられましたから。スピードも求められたので、「与えられた課題は、その日のうちに企画案の概略を作ったり、相応のレベルまで仕上げて経過報告をする」のが鉄則です。本当に大変でしたが、鍛えられました。

ビジネスは激しい戦い。しかし、実力だけで勝つのは難しい。スポーツの試合で、ツキの流れが変わって勝敗を左右するのと同じこと。ビジネスパーソンにとって、ツキは欠かせない。何の努力もしないで、「ツキが来るのを、口を開けて待っていればいい」と言っているわけではありません。いつでも最大限の力を発揮できるよう、常に潜在能力を蓄えておくことが求められますから、とてもハードですよ(笑)。

以前はお客様をお迎えするスペースがありませんでした。そこで開放的な会議室を9部屋用意しました。当社はITベンチャー等との提携を積極的に進めています。彼らには未来と夢がある。彼らと一緒に発展していくためにも、こういうスペースが必要でした。

当社では既存のビジネスモデルの変革に取り組んでいます。今やどんな会社もイノベーションが求められています。そのためにはクリエーティビティが必要です。窓際は部長席という風景を壊し、気軽に人が集まり打ち合わせしやすい開放感ある環境をつくったことで社員同士言いたいことが言えるようになりました。

堤(清二)さんは、素晴らしい経営者で、目標とするには高過ぎるハードルです。その人に認めてもらうには何をすれば良いのか。そこで、堤さんの弱点を考えてみたんです。すると、堤さんは芸術家なのでお金とシステムには弱そうだなと。クレジットカードはまさにお金とシステムですから、これなら勝てる、そして恐らく苦手な分野なので、任せてもらえる可能性が高いと考えました。実際、クレジットカードをやりたいと話したら、「百貨店の竹内敏雄常務(当時)と2人でやれ」と言われ、百貨店から移籍した1年後には役員になりました。タイミングと運も良かったんでしょうね。

大切なのは、面白がる習慣。好奇心あふれるスタッフを育てることが、我が社のナレッジマネジメントであり、会社のDNAにしっかり埋め込みたい。不況を嘆いて意気消沈していても景気が上向くわけではない。その苦境に好奇心で切り込み、突破口を見いだすことにワクワクする。そんなスタッフが多い会社は、強いはず。そして、そうやって仕事にも生活にも楽しさを持ち込むことが、元気の源泉になるのではないでしょうか。

「感動共有ミーティング」は、2週に1回、部課長が集まりますが、そこは仕事の結論を求める場ではありません。「最近感動したことや面白いと思ったこと」を報告してもらいます。人に感動を伝えるには、話のネタが必要。日頃から面白いことにアンテナを立て、漫然と見過ごしていたことに関心を持つようにする。さらに調べると、関連した事象に興味が湧き、最初は想像もしなかった新たな感動に出合う。

元気は、義務感からは生まれません。同じ成果を得るにも、言われたことをこなしただけでは喜びを感じにくいでしょう。自ら考え、工夫して得た成果こそ、喜びとなり自信となる。それが「次はこうしてみよう」というやる気と元気の素になる。だから、仕事を任せる時は、権限を与え、意見を聞く。そうして「自分事」として意識させることが大切です。

1982年、私は西武クレジット(のちのクレディセゾン)に転籍してきました。それまで西武百貨店で人事や企画、店次長など様々な仕事をしてきましたが、金融は全くの畑違い。そして、当時の我が社は倒産寸前……。周囲は「林野はさぞ落ち込んでいるだろう」と思っていたようです。しかし、実際の私は元気いっぱいでした。新しいことにチャレンジできるチャンスを得たと思っていましたし、倒産の危機は大ピンチではあるけれど、見方を変えれば、ただひたすらに浮上を目指せばいい。目標が明快です。

林野宏の経歴・略歴

林野宏、りんの・ひろし。日本の経営者。クレディセゾン社長。京都生まれ。埼玉大学文理学部卒業後、西武百貨店に入社。企画室、マーケティング部、事業計画部など新規事業の創設業務部門を渡り歩く。その後、西武百貨店の系列会社、西武クレジット(現:クレディセゾン)へ転籍。取締役、常務、専務を経て社長。経済同友会副代表幹事などを務めた経営者

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