星野佳路の名言

星野佳路のプロフィール

星野佳路、ほしの・よしはる。日本の経営者。星野リゾート社長。長野県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。日本航空開発、シティバンクを経て、星野リゾート社長。リゾナーレ、アルツ磐梯リゾート、アルファリゾート・トマムなどを傘下に収め、ホテルや旅館の再生事業を行っている。

星野佳路の名言 一覧

自分たちのこだわりを押しつけていくからこそ、他とは差別化されるし、コモディティ化されない商品やサービスになっていく。

成功するかどうかわからなくても、とにかくやってみる。楽しみながら試行錯誤することが大事。

失敗できる環境があるのは、自らが成長するうえでとても重要なこと。

「こうでなければならない」と思い込むことで、様々な可能性やチャンス、成長のきっかけを逃してしまう恐れがある。既成概念を一度取り外してみると、想像以上に素晴らしい経験や豊富なチャンス、様々な出会いが得られるかもしれません。

多少の時間はかかっても、信念を曲げずに仕事を続けることは必ず自分の血肉になり、成長につながる。

乗り越えるべきハードルが高いからこそ、実現したときの喜びは人一倍大きい。

ほどよい緊張関係が、現場を活性化させる。

経営者や上司が犯すミスジャッジの大半は、偏った情報が原因。

社内だけで議論していると、意見が偏ることがある。そういうときは、外部の人の意見を聞くと、いかに自分たちが固定観念の中に閉じこもっていたかがわかるもの。

「フラットな組織」が重要。言いたいことを、言いたい人に言える。そんな環境でこそ、正しい議論が生まれる。

ニーズにないサービス、我々自身のこだわりを逆にこちらから提案していくサービスこそが「世界で勝つためのおもてなし」。

誤解を恐れずに言えば、我々はお客様の言いなりになるつもりはありません。真の顧客満足が、必ずしも顧客ニーズから生まれるとは限らないからです。

やりたい仕事に挑戦でき、自分たちの力を試せる環境こそが大事。やってみてうまくいかなければ、それは本人が一番よくわかる。

自分の殻を破って、今ある力を活かす。ポテンシャルを信じて、挑戦してみることは、どんな仕事の局面でも重要なこと。

好きなことであれば、やる気を持って取り組めるので、成功体験も積みやすくなる。

人を引き寄せるのは、スタッフのこだわりや情熱がすべて。

時間は有限ですから「やらないことを決める」。これが成果をあげるコツ。

経営をしていて常に気をつけていることがあるんです。それは、「会社とか世の中の調子がいいときには、常に最悪なことを考える」ということ。

私は働く日と遊ぶ日をあまりきっちり分けないほうです。遊びながら仕事をするスタイル。しっかり区切ると生きにくくなると思っています。

飛び抜けた何かがあれば施設を再生できる。

競争相手が簡単に真似できない、独自のやり方をつくれるかどうかが重要。

自分にとって意味のないことをやめていくと、そのぶん、やりたいことに時間を割く余裕が生まれます。

私たちはつい、うまくいっていることは現状維持を好みがちです。そうではなく、「何かを変えなくてはいけない」という危機感をつねに持つことで、固定観念を捨てられるのではないかと思います。

固定観念にとらわれているかどうかは、自分では気づくことが難しいものです。柔軟に思考するためには、つねに「何かを変えよう」と意識しながら仕事をすることが効果的です。

斬新なアイデアやひらめきを得るには、パフォーマンスを発揮する心技体が必要です。自分自身にいろんな刺激を与え、散歩や十分な睡眠で体調を整えるようにしています。

僕が大事にしているのは、自分に刺激を与える時間です。ネットワーク作りや会食をやめて、代わりに自分にとって新しい情報や刺激を与えてくれる人や場所を積極的に求めるようにしています。

競争市場では競合は避けられませんから、ライバルが現れたら徹底的に戦います。

結果が出ない原因には、2つのことが考えられます。仮説が間達っているのか、それともまだやり切れていないのかです。

いかに成功体験を積ませるか、これはチームが強くなるためには重要だと思いますね。

こだわりに立脚していれば、サービスのコモディティ化を避けることができます。

施設はオープンして完成ではなく、その後も現地スタッフの手によって進化し続けていくことが大事。地域に合ったテーマを選ぶことで、魅力を進化させ続けることができる。

誰しも、いつか会社を辞めるときが必ずやってきます。「この会社で働いて、自分のためになった」と思ってもらえる会社にしたい。これは我々の組織に対する一番の思いです。

限られたリソースを集中させ、お客様からの満足度を高めることが何より大切。

現場の誰かがいい情報やアイデアを持っていても、それを組織全体に発信し共有することができなければ、活かしようがない。だからこそ、フラットな組織が必須。

言いたいことを、言いたい相手に、言いたい時に言う。自分も含めて、フラットな組織でありたい。

フラットでない組織、人間関係の下では、情報は隠される傾向にある。隠された情報は愚痴になる。愚痴が溜まった結果、最後はスタッフが辞めていく。

フラットな組織がいい。風通しを良くすれば、辞める人が減るだけでなく、強いチームを作ることができる。

若い人たちが発想するアイデアには、私たちの世代の感覚からすると「違うんじゃないか」と思うものもあります。しかし、やってみると意外に顧客に好評であることが多い。

顧客の声を常に聞いている現場スタッフだからこそ発想できることも多い。現場スタッフが課題を持ちながら接客すると、顧客との接点から刺激やヒントをもらうことができる。

何とか時間を捻出して、旅に出て欲しい。感性を磨くには「仕事以外の時間」がとても大事。そこで磨かれた感性が、仕事で大きな成果を生む。

経営陣と社員が情報を共有することで、初めて会社全体が同じ方向を向いて走り出すことができる。

ミスや顧客からのクレームは、業務改善につながる大事な情報資源である。スタッフの失敗から組織が学び、失敗しにくい業務プロセスに改善するチャンスがある。

失敗するからこそ、本人には次の学びの方向が見えてくる。

リーダーとして成長するために重要なことの1つは、「失敗経験」だと思います。「失敗は学びの機会」「失敗の数だけ成長できる」と感じています。

所属する部署にかかわらず、スタッフ全員で接客や顧客満足の向上に取り組むことが大事。

魅力を常に進化させていくことは絶対に必要。進化が止まれば成長も止まり、顧客に飽きられ、競合にも追いつかれてしまう。

自分たちのサービスが顧客の満足を生んでいるという実感こそが、この仕事を続ける原動力になる。顧客視点を養うことにもつながる。

課題を目の前にして本を読むと、急にひらめくっていうことはよくあります。

私は教科書になる本を探して、理解できるまで何度も読んで理論をそのまま実践しました。

日本旅館そのものが現代の旅行者のニーズに合わせて進化しなければいけない。西洋のホテルも、日進月歩で進化し、今の形になっている。

既存の西洋ホテルと同じ運営方法を取っていては、西洋ホテルと同じリターンしか返ってこない。

観光業はマーケットサイズが問題ではなくて、生産性が問題。

体調管理を続けるコツは、記録し、それを頻繁に見直すこと。

いい会社とは、顧客満足度と収益を両立できるところ。

日本のホテル業界の将来を考えたときには、日本文化は切り離せないため、そこを生かすしかない。

きちんと変えるべきところは変えて、守るべきところを守って、日本旅館をもっと進化させていこう。これが私たちのストーリー。

たとえ厳しい状況でも、自分の正しいと思うことを、覚悟を決めてやり抜くことです。強固な壁を突破する力も、必ずそこから生まれてくるのですから。

次々と新しいことに挑戦していますが、ビジネスというのはリスクゼロということは決してありません。次の勝負がひょっとしたら、大きな失敗のときかもしれない。その危機感が常にあります。

危機感をもって自分を鍛える。そのためのツールとしてライバルが必要なわけです。スポーツや勉強と一緒です。

オンリーワンなんて寂しすぎます。先行する競争相手に勝ってこそ、仕事の楽しさや達成感も得られますから。「この面でライバルに勝ったぞ」というのは大きな達成感ですよね。それがないとちょっと業績がいいだけで、「これでいいんだ」という意識が蔓延してしまいます。

危機感を持ち経営するには、競争相手を設定することが非常に重要です。誰をライバルにし、誰に勝たなければならないかというのを社内に常に示しています。ライバルを明確にすることが重要です。

状況が良いときにはいつ悪くなってもおかしくないということを常に頭に置いておくことが大切です。安心しないということです。

現場のスタッフにお客様の情報が集中しますから、トップが情報を集約するのではなく、現場から変えていける組織になるのが理想的です。リーダーの役割は、そのための環境を整備すること。実際、私がまったく関与していないところで上手くいっている現場はたくさんあるんです。

勝つべき相手を明確にすると、やるべきことが見えてきます。自分も含めて組織のやる気を高めていくという意味でも、競争相手を明確にすることは大切です。

ビジョンは企業における憲法みたいなもので、社員が常にそこに向かっていると意識できることが大切です。そのためには、経営者は設定したビジョンからブレないということが必要になります。最短距離でビジョンに向かう姿勢を常に見せなければなりません。

弊社の競争力とは、フラットな組織文化が礎になっていると思っています。それがあるから、星野リゾートらしさが体現できる。そういう意味で次のリーダーは、その文化をきちんと継承している人、組織文化の中心になれる人でなければならないと思っています。

星野リゾートはいまのところチャンピオンではありません。チャレンジするプロセスこそが自分たちの成長ですから。

私たちが考える日本の良さと、外国人旅行者が見てみたい日本は違う。日本に期待するものを外からの目で見てみることはすごく大事なことです。

日本文化独特の要素を切り捨てずに、それらをモダンに進化させていったらどうなるのか。これが我々が主張すべき「日本らしさ」ではないかと思います。

チームに波風が立っているのは、お互いに言いたいことを言い合いながら、チームが成長している証です。

「ライバルとはいえ業界みんなで協力して、地域を盛り上げていきましょう」という意見もあるかもしれませんが、ビジネス上では、そんな話はあり得ないでしょう。この世は勝つか負けるか、どちらかしかないと思っています。

ビジョンを社内に浸透させるポイントは2つあります。

  1. 情報公開を徹底して行うこと。現在の経営状況と未来像、そこに至るまでの戦略、大事にしなければならない会社の価値観、これらをオープンにする。
  2. 経営ビジョンに対して本気であることを知らしめる。社是や企業理念を額縁の中だけのものにしないためには、「社長はあれしか考えてないんじゃないか」と思われるくらい本気で言い続けないとビジョンは絶対に伝わらない。

アイスホッケーと同じで、経営だって勝たなければ意味がありません。勝つためには「こういう方向に向かうんだ」というビジョンは絶対に必要です。じゃあ、それは誰が決めるのか。それこそ経営責任を担う者が決めなければならない重要な責務だと思うのです。

会社にはビジョンがなければならないし、そのビジョンを実現するための組織やチームには目標がなければなりません。しかし、それに連動する目標を個人に設定するという発想は私にはありません。個人に目標なんていらないと思っています。一人一人がノルマを背負わされている状態は精神的にもきついだろうし、そんなもので追い込んでも、たいして働かないのは目に見えているからです。

会社の価値観や将来像に共感できるのであれば、全力で取り組むしか選択肢はないでしょう。それがチームプレーの鉄則であり、そうできるように事前にトコトン議論を尽くせばいいのです。

みんなの意見を総合して真ん中をとるなどということをやっていたら、何も達成できません。妥協するのではなく、誰の考えだろうが一番正しいものを選ぶのです。

会社のビジョンのようなものは別ですが、日常の仕事に関しては、状況に応じて最適な目標に変えていくべきです。私もスタッフの意見の方が正しいと思ったら、それに合わせた目標にすぐに変更することにまったく躊躇はありません。

もし個人が目標を持つなら、自分もこういう人になりたいと思えるお手本を身近に見つけ、その人に近づくにはどうしたらいいかを考える方が、現実的で意味のあることではないでしょうか。

組織というものは「目標を持たない個人の集まり」だと考えてみればいいでしょう。当社なら、「とにかく接客が好きだからこの会社で働いているのであって、とくに明確な目標はない」という社員だってたくさんいます。それでまったく構わないのです。大切なのは、そういう個人たちのチームが、組織としていかに目標を達成するかなのです。

目標達成を目指すうえで忘れてはならないのは、エンターテインメントの要素です。当社では、社員の誕生日にコーヒーカップと目覚まし時計をプレゼントするのですが、コーヒーカップの内側には、「経常利益率20%」と書かれていて、コーヒーを飲むたびにその数字が嫌でも目に入ります。目覚まし時計は、アラームの代わりに「リゾート運営の達人を目指して、今日も一日頑張りましょう!」という声で起こしてくれるという優れものです。こういうことを真剣にやるのも楽しいと思いませんか(笑)。毎日朝礼で唱和するよりも、この方が楽しくビジョンを共有できると思います。

厳しい練習であっても、何のためにそれをやるのかが明確だったり、他人との比較ではなく自分の成長が数字で具体的にわかったりすると、楽しくなるのです。仕事も同じで、上から押し付けられてやったところで、成果が出るはずがありません。

私自身は、目標に何を据えるかより、達成するための戦略と、それをやり抜くことの方が大事だと思っています。とくに仕事はスポーツと違い、時間が来れば試合終了とはならないからです。できるまでやり続ければいいのです。そしてプロセスは、楽しくなければ続きません。

目標は挑戦的な方がやる気が出ますが、かといって、どう転んでも達成不可能な目標では、逆に意欲は湧いてきません。また、目標にどれくらい近づいたかという達成度が把握できないと、モチベーションの維持は難しいでしょう。

古いやり方を切り替えられない社員には、お客様アンケートなどを見せ、客観的なデータをもとにビジョンの正当性を理解してもらうように努めました。それでも納得してもらえない人は会社を去っていきましたが、これは仕方ありません。ビジョンを共有してはじめて、目標に突き進んでいくことができるからです。

私が最も重視しているのは、一人一人のスタッフに「自分の意見が会社の意思決定に影響を与えている」「経営に参画している」と感じてもらうことだ。会議での決定事項に共感を引き出せたら、決定事項についての実行力も格段に高くなる。

気を付けなくてはならないのは、上意下達の文化が染みついている組織に対して、あまりせっかちに侃々諤々(かんかん・がくがく)型の会議を持ち込もうとすると、逆効果になることもあるという点だ。自由に意見を言い合うよりも「とにかくリーダーに決めて欲しい」という人たちも思いのほか多いのだ。そのため、自由に発言する会議へと変化するのを待つ間の緊急避難的なやり方として、私自身が独断専行で話を進めるケースもある。

我々の会社は役所や銀行とは違って、会議になれたホワイトカラーの集まりではない。テーブルを囲んで意見を言うのは初めて、という人もたくさんいる。そういう人たちを巻き込んでいくには、会議そのものをわかりやすく、楽しめる雰囲気にしなければならない。

会議などで発言することへのハードルを低くするためには、適度に柔らかい雰囲気を保つことも必要だ。真面目な会議ではあるけれど、半面笑いがあり、楽しめる要素があるというイメージである。

スタッフにもいろいろなタイプがいる。たとえば、意見を持っているけれども積極的に発言しないタイプ。こういう人には、会議の途中で「君の意見は?」と聞く。そして、どんな意見でも否定をせず、まずは自信を付けさせる。さらに、ちょっとした発言でも褒めて、積極性を引き出す。一方、いつも積極的に発言する人の場合は、逆にあまり褒めないように意識している。

会議で発言するとき、私は「アイデア出し」をするだけで、決定事項を伝えているつもりはまったくない。しかし上意下達に慣れきった人たちにとっては、社長の言葉は指示であり、決裁であり、絶対の命令である。だから息を詰めるようにして聞いている。ところが次回の会議で私がまったく違う意見を言うことがある。「なんだ、社長の話は思いつきだったのか」。そう気が付いたところで、それぞれが自分でも思い付きをどんどんしゃべれるようになるし、私の発言を絶対視しないようになる。

再建先のスタッフが変わるきっかけのひとつはスタッフの誰かが「キレる」ことです。一緒に施設の再生に取り組んできた人が、あるとき会議の場で「この会社はひどいじゃないか!こんなやり方では絶対に駄目だと思う」と叫びだす。すると堰を切ったように他のスタッフも自分の意見を口にし始める。そして議論が進んでいくのだが、反対意見を言ったからといって咎められるわけではないことに気づく。むしろ言いたいことを言えば風通しがよくなり、自分たちの参加者意識が芽生えるということにメンバー全員が気付き始める。

再建先のスタッフは上意下達の文化に染まりきっていることがほとんどです。星野リゾートによる支援が決まり、初めてその施設へ出向く。すると幹部らをはじめ、スタッフ全員が出迎えてくれます。気持ちはありがたいが、その裏には「あなたが責任者なのだから、好きに決めてくれ」という当事者意識の希薄さが透けて見えます。まずはこの意識を変えなくてはいけません。

誰もが「いつでも、だれにでも、どんなことでも」遠慮なく意見が言い合える。侃々諤々(かんかん・がくがく)の文化。これが星野リゾートを支えています。地方の温泉旅館など、当社が再生に携わる施設も例外ではありません。

意見を言えない人には発言を促したり、雰囲気を盛り上げたりすることで会議の満足感を引き上げるのも、根底には「どうやったら良い人材に入社してもらえるか」「どうやったら社員がやりがいを感じ、定着してくれるか」という思いがあるからだ。そもそも私の経営スタイルは「観光業には人が来てくれない、定着しない」という悩みから出発している。

自分の後ろに私や総支配人がいる。いざというときに闘ってくれる。社員はそう信じているから、無茶な要求やクレームに対して我慢できます。そういった客に譲歩してしまうと、社員も誇りが持てなくなる。ときには前に出て、徹底的に闘います。

返金やお詫びとして渡す金銭は関係修復ではなく、たんに金で黙らせているだけです。経営者として納得できませんし、社員も「ミスはお金で解決できる」と思うようになり、モラルハザードやモチベーションの低下につながります。

対応を通じ、お客様への理解が深まれば、既存の仕組みも改善されます。なまじ専門のクレーム処理班を設けたりすると、楽をするようになり、逆効果のこともあるのです。

お客様が怒るのは、楽しい旅行の時間を壊された言葉にできないつらさ、苦しさをスタッフに共感してほしいからだと思います。それを必死に受け止め、もう一度サービスをするチャンスをくださるようお願いすると、気持ちが伝わることもあります。

サービスチームの一員が、地域の魅力を発信していることがすごく大事。サービス業務を担うスタッフを、労働力としてではなく、サービスのクリエイターとして私たちは見ている。このような働き方は、まさに私たちが奨励している働き方です。そこにも西洋ホテルとの違いがあると思います。

「なぜこんな田舎で働かなくてはならないのか」と思う人には、その土地の魅力を発掘することは難しいはず。自分がその土地を好きだから、もっと知りたいと思うし、ゲストにも魅力的に伝えることができる。

日本の文化を知るには、旅をするのが最も味のある方法です。

最近の若いビジネスマンを見て感じるのは、もっと海外に出て欲しいということです。私たちの時代は、海外を経験したいという意欲が強く、大勢の留学生やビジネスマンが海外に出て行きました。最近は海外で働きたいという人もいるものの、国内思考の人も増え二極化していると聞きます。海外で暮らすことはいい経験になるはずですから、どんどん海外へ飛び出して欲しい。

「星野リゾート界 箱根」で箱根の伝統芸能「寄木細工」を紹介したいとスタッフが提案したとき、最初なピンときませんでした。しかし、スタッフがあまりに熱心なのでやってみたところ、お客様にも好評でした。館内に寄木細工を展示しただけでなく、寄木細工の職人の方の協力を得て「寄木の間」という特別室もつくりました。現在、箱根の寄木細工職人は2人に減ってしまったそうで、伝統芸能の存続に向けた地域の動きとも連動した企画として、やって良かったと思います。

私は社長として、納得できない提案に対しては拒否権を発動します。しかし、提案に思い入れのある社員は、いったん却下されたとしても、別の作戦を考えて、私を再び説得に来ます。そんな熱意に感化されて、「それほどやりたいのなら、やってみれば?」と許可することもあります。

社長や総支配人の言うことを聞いておけば問題ない、というトップダウンのルールが崩れれば、現場のスタッフは自分たちで考えなければならなくなります。また、フラットな議論ではへ自分の発言に対して反論や批判が出ます。それに答えるためには、顧客にとって、会社にとってどうするのが良いのか、自分なりの意見を持っておく必要があります。自分の意見や主張にコミットしなければならないという点で、スタッフにとっても厳しい環境だと言えます。

社長の発言だからといってや会社の方針だとは思わないでほしい。単なる思いつきだし、すぐに忘れてしまうから。実行する場合はちゃんと精査してよ。
【覚え書き|社内での会議中の発言】

組織文化が変わるきっかけは、やはり若い人が言いたいことを自由に発言し始めるときだと思います。とくに新卒の新入社員はほかの企業を経験したことがないだけに、フラットな議論に抵抗を感じません。

良い情報であっても、悪い情報であっても、会社の情報は全員が同じレベルでアクセスできることが大切です。

組織文化はどのようにつくるのかというと、大切なのは環境を整えることです。たとえば、上司とは異なる意見を発言したら人事査定に影響したという環境は良くありません。どんな発言でも人事査定には影響しないという信頼感が必要です。

社員達が楽しく仕事が出来ることを最優先に考えていった結果、私たち独自の組織の仕組みが自然とできあがってきました。一番の特徴は「フラットに議論できる組織」であること。役職やポジションに関係なく、言いたいことを言いたい相手に気兼ねなく言える組織です。

通常、目指す組織を考えるときには、会社が置かれている競争環境からさかのぼって、その競争に勝つためにはどのような組織が必要であり、どのような人材を採用するのかを考えていきます。しかし、当社の場合はそれとは逆で、まずは人材ありきです。人が就職したいと思ってくれるためには、どのような組織が必要で、その組織に合った顧客やリゾートはどのようなものか。そのような考え方で組織を作ってきました。

米国留学中、本ではなく、授業中に配られるプリントで山ほど読み、経営学の主要な論文の内容を頭に入れました。今も書店に行って、新しい経営学の本を見つけるたびにめくっています。音楽の好きな人が、新しい音楽が発売されるたびに聴くのと似た感覚だと思います。

会社員という立場だった時は、課題に直面しても「会社には会社の都合もある。ある程度は仕方がない」などと妥協することもあった。でも、経営者という立場になり、すべて自分で舵を切ることができるようになると意識が変わった。その時から、経営学の本1冊を軸にして、一気に舵を切る方法を取るようになったのです。

顧客の要望はどこに行っても同じですから要望に応えている限り、同じようなサービスや施設が生まれることになります。

最初の成功体験は理屈ではありません。そもそもやり切って成功した経験がないのですから不安や迷いがあるのは当たり前。それでもやるしかないのです。そのためには「まだやり切ってないだろう。だったらやり続けなさい」と成功体験者が強く導いていくことも必要でしょう。

観光は、結果が出るまでに時間がかかります。私たちの取り組みが旅行代理店に伝わりやその先のお客様に伝わるまでには3年かかるでしょう。結果が出るかわからない不安のなかで、どうすればやり切ることができるのか。それには成功体験を積むしかありません。不安と戦いながら続けていった結果、やがて宿泊客が増え、数字になって表われる。そういった成功体験を積んで初めて、次にうまくいかないことがあっても、やり切る勇気が持てるのです。

誰に対しても言いたいことが言える環境だからこそ、正しい議論が生まれ、正しい意思決定ができるようになる。私も相手が正しいと思えば聞き入れますし、それは違うと思えば、反論します。

うちでは管理職は立候補制なんです。人事部が評価して人材を抜擢するシステムだと自由がないじゃないですか。だから、自分はもう管理職やれるよという人は立候補してもらう制度にしています。

社員は自由に発言したい、上司の許可がなくても言いたいことが言えるとか、そういう環境を求めている。どこまで自由を与えるかは限界があるけど、その姿勢が大事。

働きがいは、人それぞれです。管理職を目指す人もいれば、現場で接客のプロを目指す人もいる。たくさん稼ぎたい人もいるだろうし、キャリアに必要なスキルを高めたいという人もいるでしょう。大事なことは、それぞれが感じる働きがいに会社側がどれだけ柔軟に対応できるかです。

私たちが世界で戦っていくときには、世界のホテルの真似ごとをしていても勝てるはずはなく、ローカリゼーションこそが我々の生きる道だと考えてきました。

顧客にしてみれば、旅先では自分が知らないことを体験したいし、知らない土地の魅力を教えてほしいはずです。現地主導でその土地の魅力を探し、いいと思ったものはとことん続けることを奨励しています。その中から、きらりと光るサービスが生まれてきます。

まずは少し試してみて、反応が良ければ、展開を広げていく。顧客が満足している実感が、自分たちの自信にもつながっていく。

星野リゾートの特徴の一つは、現地主導で観光テーマを探すことです。東京や他の場所でマーケティングやセールス、広報を担当しているメンバーではなく、現地で春夏秋冬を通して暮らしている人が、自分たちのこだわりや地域の楽しさを考え抜いて、サービスに反映させていきます。

リーダーとして成長するためには、ミスや失敗の経験が不可欠。ミスをすると、自分や組織の問題点に気づくことができる。「同じことを繰り返したくないから」と、仕事の精度が上がり、判断力も研ぎ澄まされていく。

ミスや失敗を恐れてはいけない一方、同じミスを繰り返すのはよくないですね。ミスをしてしまった時は、冷静に事実を振り返って、再発防止の仕組みを考えることが大切。

当社のような接客業の場合、スタッフひとりひとりが、お客様と接する短い時間にどう判断し、対応するかでお客様の満足度が決まり、施設全体の評価に直結します。自分が犯したミスにしっかり向き合う人は、確実にお客様への対応力が上がり、会社にとって欠かせない人材になる。

フラットな組織では、現場で実現できることの自由度も高まる。興味があって勉強しても、現場のサービスに生かせなければつまらない。勉強したことを仕事で試したり、反映させたりして、どんどん変えていけることも仕事の面白さにつながっている。

星のや京都の料理について、最近は詳しいことは把握していません。また、把握することが大事だとも思っていません。経営者としての私の仕事は、フラットな組織づくりに尽きます。仕組みと文化が根ざしていけば、スタッフが自由に活躍してくれます。そちらのほうが重要なのです。

「他の誰かでもできることだ」と感じたことは、積極的に他の人に任せましょう。任された人の成長をうながせるし、任せる人も、引き継ぎをする過程で、自分の仕事の意味や重要性を再確認できるはずです。

「やらないことを決めること」。これは事業を展開するうえでも、大切な考え方。「やらないこと」を決めるのは、「強みを大切にする」ことにつながる。

時間や労力に対して得るものが少ないと感じる事柄に関しては、「やらないこと」とし、その分のエネルギーや集中力を、自分にとって本当に大切なことに使うようにしています。

「本来の自分の仕事」に100%の力を注ぎ、確実に成果を出すためには、「やらないこと」を決めることが重要。私自身、「これはやらなくていい」「これは自分がやる必要がない」と思えることは、やめるようにしています。

「好き」であれば情熱を持って続けられるのと同じように、「使命感」もまた、情熱を持つためには重要な要素。

ハードの部分は、競合他社が真似することは可能です。しかし、我々の顧客が、定型サービス以外に何を望んでいるかは競合には分からない。例えばアンケートに「部屋のCDがもっと多ければよかった」と書いたお客さんが次に来られた時には、部屋にCDを多く用意しておく。そうした情報こそリピート率を高めるためにすごく重要なので、それを得るシステムに投資した方がいい。

ばらばらな施設をチェーン展開すると普通はマイナスになります。ただ、そもそも日本の地方の魅力ってばらばらで、それこそ旅の楽しさなんですね。ですからどこに行っても地域らしさがあるという安心感が我々のブランドの強さになっていると思っています。

これまで青森の旅館を3つ再生してきました。日本中どこでも、食や温泉、豊かな自然は素晴らしい。その中で、青森にしかない特徴は何かと考えた時に、それが方言だったんです。津軽弁を聞くと、意味が分からなくても青森に来たという実感がわきますよね。だったら、青森の旅館は常に津軽弁で通したらいいと。その前は、スタッフには標準語で話さなくてはという意識があった。津軽弁でいいとなれば自然体で接客でき、サービスレベル全体が上がりました。

自由に意見を出し合い、対等に議論できる組織文化があると、社員は一人ひとり自発的に考え、創意工夫し、進んで運営に参加するようになる。新しい魅力や発想も湧いてくるし、そうなると当然、仕事が楽しくなって、やりがいも高まってくる。結果、会社としては社員の定着率が上がり、人材の蓄積につながる。

運営と所有が一体ですと、やはり馴れ合いが起こりやすいと思っています。自分が持っている施設ですので、利益率が多少低くてもいいじゃないか。そういった甘えが出てしまいます。だからこそ、目指すはリゾート運営の達人なのです。

欧米の大手ホテルでは、どのホテルも現地スタッフをたくさん雇用してはいますが、彼らを労働力としかみていない。一方、我々の「日本旅館メソッド」では、現地の人々をサービスのクリエイターとして位置づけています。彼らのこだわりこそが、サービスの源泉だからです。

自分たちのこだわりをお客様の感動に変えていくおもてなしの手法を、私は「日本旅館メソッド」と呼んでおり、サービスのコモディティ化に巻き込まれずに世界のホテルに伍するには、この戦い方しかないと確信しています。

この地を訪れたら、ぜひこういうふうに過ごしていただきたいという、もてなす側のこだわり。それをしっかりと伝えて、実際に体験していただくことが、お客様自身も気づいていなかった心の奥底の琴線に触れ、予想もしない感動につながっていく。

多くのホテルでは、業務ごとに組織が縦割りで、それぞれ治外法権のような状態になっていますが、必ずしもそうでなければならない合理的な理由はない。私に言わせれば、それは欧米のホテル文化の根強い固定観念にすぎない。

「やらなければいけない」と思っていることに対して、本当にそうなのか、疑ってみてください。成果とは無関係なものが、案外多いものです。仕事でパフォーマンスを上げるには、そこを整理することが大切。

睡眠時間も大切にしています。私の場合、7時間くらい寝ないと本来のパフォーマンスを発揮できないからです。ビジネスパーソンには、会議中の発言の瞬発力や発想の豊かさ、着眼点の面白さが求められます。期待通りのパフォーマンスを上げるには、心身ともに良い状態であることが大切です。

私は負けず嫌いなんです。これまでほとんどの仕事で最初に設定した目標を達成していますが、これはと思った事業は、成果が出るまでやり続けるからでしょう。

コンセプトづくりはスタッフが主体になって行います。「こういうサービスを顧客に提供したい」という自発的なモチベーションの下に動くから、成果につながりやすい。

社内の情報共有を阻害する一番の要因は、役職の多さといった組織の仕組みではなく、組織文化です。情報の行き来が悪い組織文化のままで、現場の声を吸い上げるための「仕組み」だけ作っても、大した効果は上がらない。

スタッフのモチベーションを上げるには、スタッフにとって「いいニュース」から始めるんです。企業再建にあたり「コスト削減」といった、スタッフにとって一見すると悪いニュースを経営側が最初に発信するパターンはよく見受けられますが、それはうまくない。「いいニュース」というのは例えば、「会社の情報を皆さんに公開します」「言いたいことを直接、言いたい人に言ってもらえるようなフラットな組織にします」とスタッフに伝え、「いいチーム」の土台を作ることです。

当社では、総支配人とユニットディレクターはすべて立候補制です。立候補制度を採用するのは、人にどんな能力があるかはやってみないとわからないし、ポジションが本人の能力を伸ばすこともあるからです。

リゾートを訪れるお客様がニーズを持っているかというと、そうでないこともあります。旅先でどんな体験をしたいのか、必ずしも明確な目的を持たずにいらっしゃる方も、多いものです。お客様のニーズが明確でないなら、私たちは何を提供するのか。自分たちのこだわりを提供するしかありません。お客様にとっては、それが外れることもあれば、予想以上の驚きや発見を生むこともあるのです。

会社としてやるべき業務もありますが、基本的には本人が好きなことに楽しみながら取り組んで欲しい。それが長く勤めてくれることにもなり、会社にとってもプラスになる。

リゾート経営で重要なことは、優秀な人材に長く働いて成長してもらえる環境を作ること。

20年近く前の話になりますが、当時運営していた長野・軽井沢の旅館では、従業員に働き続けてもらうために「宴会」を請け負うのをやめました。酔っ払ったお客様が失礼な態度を取り、それが嫌で辞めていく社員が続出したことが一因です。

スタッフが自由に発想し提案できる環境であることも重要。私たちが進化し続けていくためには、世代もバックグラウンドも異なる人たちが、自由に意見を言える環境を整えることが不可欠。

「努力をし続けているのに思い描く成果が出せていない」。そんな人は、「やっていることが間違っている」か、「成果が出るまでもう少し時間がかかる」か。このどちらかです。

変化が激しいビジネスの世界では、「いつまでにこの数字を達成しないといけない」と決めること自体、難しい。期限にこだわりすぎると、肝心の「目標達成のビジョン」や「仕事の目的」を見失ってしまいかねません。

周囲からとやかく言われるたびにやり方を変えるよりも、自らを信じて同じ戦略を続けた方が、長い目で見た時に「ブレない人」という信頼も得られる。「自分を信じ、負けず嫌いになる」。ビジネスの世界で、大事なことだと思います。

「負けず嫌いであること」は、仕事に必要なスキルではないかとさえ、思っています。見通しが厳しくても「自分の考えを貫いて、結果が出るまで続ける」ことで、功を奏したケースは少なくありません。

誰しもが「無理だ」と思っていることを、悔しいから何とか成し遂げる。このことを繰り返すうちに、周囲の評価が少しずつ変わってきました。一目置かれるようになったのです。

コモディティー化が進む現在は、「顧客が何を求めているか」よりも、「自分が顧客に何を提供したいのか」をとことん追求することが大事。「こうしたい」という自分の感性に基づく発想。そんな発想こそが、似たり寄ったりの壁を打ち破るカギとなる。

商品やサービスが「似たり寄ったりの状態になる」ことを、経済用語では「コモディティー化」と呼びますが、そうなると、セオリーに従うだけでは、差別化が図れない。カレー屋の例だと、今どきは「安くてうまい」だけでは、ライバルに勝てません。

セオリー通りでは、どうしてもクリアできない課題もある。そんな課題を解決してくれるのが「感性」。これからのビジネスは特に、職種を問わず、「感性に基づく発想」が重要になってくる。

今は大企業でも絶対に潰れないとは言えない時代。会社に100%依存するのは危険。こんな時代だからこそ、どこに行っても通用する力を身につけることに、価値を見出してほしい。

完璧な英語で対応しても、お客様に十分なサービスを提供できるとは限らない。不完全な英語でも満足頂けるサービスが提供できれば、仕事の成果につながるうえに、自らの英語力も磨かれる。

英語をビジネスで使いこなせるようになるための第一歩は、自分が持っている英語力を活かすことから始めること。

星野リゾートでは誰もが滞りなく情報共有できるように、フラットな組織作りにも尽力し、情報を共有しやすい仕組みを整えています。フラットな組織が出来上がると、現場から新しいアイデアが持ち上がりやすくなります。

社員にできるだけ多くの情報を発信してもらい、トップもそれに応じて必要な情報を伝えていく。経営陣と社員が情報を共有することは、とても重要なこと。

私も様々な方法で情報を集めていますが、とりわけ重視しているのが、社員からの情報です。社員は私宛に自由にメールを送り、時には直談判にもやって来ます。私の元には競合他社の状況はもちろん、社員の個人的な仕事の目標についてメールが届くことがありますし、社員が会社への要望を直接言いに来たこともありました。

失敗して落ち込んでいる人をよく見かけますが、気を落とす必要は本当にないです。重要なのは失敗から何を学んで、どう活かしたかで差がついてくるということです。がっかりしている暇はありません。失敗を恐れずに、果敢にチャレンジしていきましょう。

長野・軽井沢にあるホテルブレストンコートでは「ミスを憎んで、人を憎まず」というキャッチフレーズの下、ミスの情報を報告し合う「ミス撲滅委員会」という活動を続けています。

失敗を個人が自分でしまい込んでしまったり、隠してしまっては、大事な情報資源を活かせません。だからこそ、失敗を隠さず提供してもらう制度と環境が大事になってくるのです。「失敗したことについて個人を責めない」「失敗を報告したことを褒める」というルールを定めて、失敗を共有する仕組みも設けています。

人事評価も結果ではなく、プロセスを評価するように設計しています。仕事とどう向き合ったか、課題に対してどのような行動を取ったのかを把握しようとしています。失敗をした時にどんな行動を取ったのか、失敗をどう改善に結びつけたかを含めて評価することで、プロセスの重要性を強調しているのです。

スタッフにトライをさせないと課題を認識できないばかりか、最悪なケースでは他社に転職してトライする、といった事態に発展します。そうなると大事な人材を失うので、会社としては大きな損失です。

星野リゾートのマネジメント職は「立候補制」を採用し、やりたいと手を挙げた人の中から抜擢しているのですが、「失敗しなさそうな人」を選んでいるわけではありません。「もしかしたら失敗してしまうかもしれない、やや危なっかしい人」であっても、そのリスクを踏まえたうえで、本人のやる気とポテンシャルを客観的に判断し指名しています。

星野リゾートでは実際に「失敗が経験できる組織」となるように工夫をしてきました。例えば、「失敗そのものでスタッフを評価しないように」と努力しています。スタッフの一定レベルの失敗を許容できる組織になることは、チャレンジングですが重要なことであり、組織の制度にも盛り込んでいます。

最もやってはいけないことが「失敗を恐れること」。「失敗してはいけない」と思った瞬間から、行動が消極的になる。安全に結果が出る策に走りがちになり、思い切ったことができなくなります。その結果、本質的な問題解決が先延ばしになり、大きな成果を出す機会も失われ、同時に自分自身の成長も頭打ちになってしまう。

私自身、これまで数えきれないほどの失敗を重ねてきました。失敗したことによって初めて自分の問題点や判断の甘さに気づくことができたし、「次回は同じことを繰り返さないようにしよう」と心がけ、判断力を進化させてきたと思います。

行ったときはまったく英語がダメだったので、1日3時間くらいの睡眠時間で、ひたすら英語の勉強でした。
【覚え書き|米国留学当時を振り返っての発言】

僕は、会社の調子が悪いときには、組織全体にポジティブなメッセージを送って組織全体を明るくする。それが経営者の仕事だと思うんです。逆に、いわゆる「イケイケ」のときには最悪のことを考える。みんなに考えてもらいたいし、僕自身も考えるようにしている。

管理職を目指す人にアドバイスしたいのは、固定観念を持たないようにすることです。同じ場所で長く仕事をしていると、考え方が次第に凝り固まってきます。これが一番の問題だと思います。それゆえに、上司は誰から見ても堅く見えるし、古く見えてしまう。新入社員よりも頭の柔らかいマネージャーはなかなかいません。だからこそ、上司になる人は、できるだけ固定観念にとらわれず、新しい発想に対してはいつも柔軟に、また自分自身も柔軟に発想できることが大切だと思います。

散歩をしていると、デスクに座っているときには思いつかないような、いいアイデアがひらめくことがあります。これは、散歩することで脳が活性化されるからだと聞いたことがあります。また、私は毎日違うルートを歩きますから、視覚的な刺激があるのも発想にはいいのかもしれません。パソコンを入れたリュックを背負って歩くので、途中でいいアイデアを思いついたときは、通り道のワインバーに寄り、忘れないうちにパソコンに打ち込むこともあります。アイデアや発想を生むには、散歩が向いていると思います。

毎日の習慣としては、健康のため欠かさず散歩をしています。1万5千歩が1日の目標です。昼間の移動はできるだけ車や電車を使わないようにして、昼のうちに7千歩を歩くようにしています。そして、残りの8千歩は夕食後の散歩で達成します。30分で約3千歩なので、8千歩なら大体1時間から1時間半くらいでしょうか。結構な時間だと思うかもしれませんが、会食すれば3時間はかかります。無駄な会食をやめれば、散歩の時間はいくらでも生まれるというわけです。

専門分野は違えど、世界の最先端で活躍する人たちの発想や考え方に触れると、自分たちがどれだけ遅れているのかわかります。また、将来の行き着く先の姿も見えてきます。私たちが世界で戦っていくには、何を選択し、どこに集中すべきなのか。そのためには何をやめるべきなのかと。

最近は、海外のカンファレンスに参加しています。この夏も、サンフランシスコで開催されたインターネット関連のカンファレンスに出席しました。インターネットは私の専門ではありませんが、新しい情報に触れるのは刺激的で楽しく、また収穫もありました。

意味のないことをやめると、精神的に身軽になれます。仕事はただでさえストレスフル。だからといって、ストレスフルな仕事をすべてやめるわけにはいきません。そのような中で自分のパフォーマンスを高めていくには、ストレスコントロールが不可欠です。意味のないことをやってストレスを感じるのは、極力避けるのが賢明です。

付き合いのゴルフや会食はビジネスのネットワーク作りには必要だ、という意見もあるかもしれませんが、ネットワークが本当に自分のパフォーマンスに好影響を与えるのかはずっと疑問でした。あちこち顔を出してネットワーク作りに励んでも、すぐに成果が出るわけでもないので効率が悪い。だったら、興味のない会食や、得意でもないゴルフにわざわざ行く必要はないだろうと思いました。

帰国して会社を継ぎましたが、さすがに銀行にラフな格好で行くのはマズイかと思い、金融機関に出向くときだけはスーツ着用を続けていました。しかし、それも徐々にやめていったところ、周りも慣れていくようで、意外に平気でしたね。

やる気が出ないことはあまりありません。ただし、「やる気が出ないもの」はあります。出たくない会議、行きたくない出張……。無理にやっても成果があがらないので、こういう場合は「やらない」ことにしています。

スーツは2~3年かけて着るのをやめました。日本でクールビズが叫ばれるようになる遥か前に、超クールビズを実践していました。スーツ着用をやめたのは、スーツを窮屈に感じていたことと、日本の気候に合っていないと思ったのが理由です。もっとさかのぼると、20代でアメリカの大学院に在学中、フォーマルな席にスーツ着用で出席したところ、「なぜお前はスーツなんだ」と言われたことがありました。クラスメートがみな自国の衣装を着用する中で、日本人の僕が西洋の洋服を着ているのはおかしいと指摘され、とても恥ずかしい思いをしました。世界の人から見れば、日本人にスーツは似合わないし、期待されてもいない。いつかスーツはやめようと思いました。

私の習慣は何だろうと改めて考えてみると、何かを「する」のではなく、「しない」ことを決めることかもしれません。たとえば、ゴルフをしない、会食しない、時計を持たない、スーツを着ない、社用車に乗らない社長室がない……。自分がやっていることのひとつひとつについて、本当に大切なのか、意味があるのかを考えて、やらなくてもいいことはやめるようにしています。

基本的には自信がないです(笑)。自信がないので、確信が欲しくて本を読む。うまく成果が出なくても、「間違っていないはずだ」という確信があれば、やり続けることができますから。

悩みを解決しようと思うと、その悩み用の教科書を探すんです。本屋へ行くと、「これがもしかしたら、今の自分の課題を解決してくれるかもしれない」なんていう理論に出合うことは、よくあるんですよ。

会社の中でも「あなたの仕事はここからここまで」とやると、ほかは全部、他部門でしょ。そうすると他部門がどうしようが、どのくらい経費を使おうが、自分には関係ないってなってしまう。それだとチームとして勝てない。

一番の難局は「いま、この瞬間」です。仕事の内容がどんどん難しくなっているというのもありますし、自分にとっての一番いい時期がいまで終わるんじゃないかという危惧があるからです。

私たちは3期連続で増収したというようなときでも、ライバルに比べたらまだまだじゃないかと考えます。安心すると傲慢になり、傲慢になると、とたんに会社のパフォーマンスは落ちていきますから。

私たちの組織はデータに基づいて改善していくという部分では上手くやれているし、実績もあります。しかし、新しいアイデアとなると話は別です。新しいものを創造するというのは、難易度が高い。創造性というのは、どうしても個人の能力から切り離せない部分があります。これは、経営において一番難しい部分で、属人的な能力が必要になってしまう。いまのところ私が担うことが多い役割ですが、その能力の継承は課題だと感じています。

もし名実ともにナンバーワンになったら、それはもう、いよいよ引退するときです。私にとってライバルの喪失は、やる気の喪失に等しい。一番になれば、思い残すことなく辞められます。

仕事も実はあんまり好きじゃないんです。私は仕事が自分の手を離れれば離れるほど嬉しい。でも、敵が現れると急にやる気になるんです。逆に、敵の存在をいつも意識していないとサボりたくなってしまう(笑)。

私の場合、何か困ったとき、解決したい問題が発生したときに、それを解決してくれる本を探して読みます。逆に困らなければ、本は読みません。

私は議論する場はフラットであるべきだと考えています。それは仕事を楽しくすること、いい人材に長く勤めてもらうためにも大事なことです。言いたいことを言えないのはフラストレーションが溜まるし、偉い人と偉くない人で線引きされた組織というのは、居心地がよくないですから。それにフラットな議論の場では意見はたくさん出てきます。

研修では必ずライバルの話をします。たとえば、軽井沢ではエリアで一番大きくて満足度が高かったホテルをライバルに設定しました。数値も市場調査会社に依頼して示しました。「去年は料理の味で勝った。今年はサービスの内容で勝とう」などと、顧客満足度のひとつひとつで勝ることを目標にしました。

現在の我々の競合は誰かというと、明らかに外資系の運営会社です。星野リゾートはいま国内に27拠点ありますが、そのスケールメリットは、外資系に比べれば大したことはない。我々の弱点というのはそこで、運営面や予約獲得面においてスケールメリットが効いていないし、ブランド力が低い。ですから、競合に勝つためにはそれらを強化しなければなりません。運営施設をもっと増やしたいし、世界的な知名度を持つ彼らに負けないブランドになる必要があります。

経営者の判断について、情報共有することが大切です。戦略についても理論に従って、きちんと説明すればわかってもらえます。「この調査の結果に基づいてこう判断した」と説明すれば、共感しやすい。一番伝わりづらいのは、直感的な判断です。「これからはこれが流行るぞ」なんていっても「本当か?」と思いますよね。直感ではなく、ファクト(事実)ベースの理論とデータに基づく判断でなければなりません。その説明さえしっかりしていれば、いろんなことを思う人もいるでしょうが、気持ちは別として頭では理解できると信じています。

業績が昨年よりプラスになったという報告が、1~2か月続いたとします。こういうときに手放しで喜ぶのではなく、「この状況はいつまで続くのだろう」と考えるようにスタッフに指導しています。プラスが続けば、そのうちマイナスになる。状況が変化したときにどうすべきかと。

ブライダル業界にはリーダー層とフォロワー層がいます。リーダー層は本物やよりよいものを見分ける価値観を持っているそうです。フォロワー層は流行のものをやりたがる層です。新しい商品を始めると、リーダー層に続きフォロワー層が徐々に入ってきます。数が増えていくので上手くいっているように見えますが、この段階になるとリーダー層が商品を敬遠するようになり、実は好ましい状況ではなくなっています。つまり、いま流行っているものがもうすぐ廃れるということを示しています。ブライダル業界はリピーターが存在しないうえに、流行の移り変わりが激しいのです。

小さな挑戦が集客やお客さまの満足につながると、自信になります。小さな成功体験から良い循環が生まれ、業績アップや職場環境の改善につながり、強いチームになっていく。

5年後、15年後にライフスタイルや求めるキャリアが変わったときに、できるだけ希望に添った配置や業務内容を叶えたい。それが優秀なスタッフに長く会社で働いてもらうためには大切なことだと思っています。

日本旅館はどこかで進化を止めてしまった。本来なら、現在の世界の旅行者のニーズに合わせて進化しないといけません。変えるべきところは変えなければいけないし、守るべきところは守らなければいけない。

よく、忙しくて休みが取れないという人がいますが、その人は仕事を優先して、余った時間から休みを取ろうとするから休めないのです。私のようにあらかじめ休暇をブロックして、限られたリソースのみを仕事に当てる、というように割り切るしかないですね。

午前11時にお客様がチェックアウトしてから午後3時までの間に、いかにしてきちんと部屋を清掃できるか、大量の夜の食事を高品質で提供するためには、といったことは、接客業というより製造業の工場のノウハウに学ぶべき点が多かった。

日本の観光産業の問題点は需要ではなく、収益力であり、利益率にある。利益率を高めるということは生産性を高めることで、それには製造業のノウハウが生きてくる。

ホテル業界は運営と所有という大きな2つの役割があります。このまま所有と運営を一体にやっている限り、新規参入してくる大手には敵わない。そこで、運営に特化しようと考え、1992年に「リゾート運営の達人になる」と宣言し、邁進してきました。

大事なのは地域らしさを出すこと、スタッフが楽しんでサービスを考え、トライすること。そうなれば、いずれは正解に辿り着き、チームも強くなります。

社長に就任してから、とくに苦労したのが人材の確保です。リゾート運営も他のビジネスと同様に人材がすべてですが、職場が地方といった条件もあって人が集まらず、入っても年間6~7%は辞めてしまう。この比率を何とか下げなければと、退職を決めた人に話を聞き、その声を活かして管理職を立候補制にしたり1年間の海外留学なども認める学習休職制度を設けたりしました。目指したのはスタッフが自由な発想で行動でき、言いたいことが言える「フラットな組織文化」です。自由度が増すと仕事が楽しくなって定着率が上がり、辞めても戻ってきた人もいる。

当社では顧客満足度調査を実施し、その結果を社内でオープンにしています。調査結果を参考に自己修正したり、新たな提案につなげたりできる仕組みを取り入れているのも特徴。

日本人に支持されない日本旅館は最終的には海外に行けない。ここまで変えたら日本の文化じゃないというところまで変えてはいけないし、ここは変えないと現代の日本人でも不便だというところは変えなければいけない。

日本旅館の数がなぜ今減っていっているのかと言いますと、決して日本旅館の潜在力が落ちているわけではなく、進化させるべきところを進化させてこなかったことに理由があると思っています。

スタッフを焚きつけるためにどうするか。通常の予算や目標などの管理指標のほかに、ライバルホテルの運営状況を重要な指標として組み入れています。指標を意識するようになったスタッフは、ライバルホテルの状況をよく把握するようになり、当然、勝つためにはどうすればいいかも見えてきます。

スイッチが入るべきなのにき入りにくいスタッフには、「のんびりするな!」と焚きつけます。とくに売上げに直結する予約獲得や営業のチームは、競争に敏感でなければなりません。これらのチームがのんびりしているようでは、組織の競争力が失われてしまいます。

軽井沢のブライダル市場は多くの新規参入がありましたが、競合を徹底的に調査し他を圧倒するような魅力的な挙式の演出を常に提案し続けてきています。

競争は、私にとって仕事のモチベーションの源泉です。たとえば、京都に外資系高級ホテルがオープンするとなれば、我々は「星のや京都」を運営していますから、「負けていられない」と俄然やる気が出ます。ライバルが現われると、闘争心のスイッチが入り、自動的に戦闘モードに入ってしまうのです。

女性が活躍できる環境にするには、性差に関する偏見のない、フラットな組織文化をつくることが不可欠です。

正直なところ、アメリカに留学するまでは「旅館はカッコ悪い」と思っていました。当時の私にとってカッコいいリゾートとはハワイやカリフォルニアにあるような西洋型のホテル。そのような認識だったため、留学先では周りのアメリカ人から予想以上に厳しい目を向けられました。「日本には千年を超える歴史と独自の文化があるのに、西洋に憧れるなんておかしいじゃないか」と。西洋のホテルを真似ていては日本のホテルは駄目になると、その時強く思いました。

人間の成長には、成功体験が最も糧になると思います。それは個人だけでなく、チームにも言えることです。これまで多くの施設の再生を請け負ってきましたがうちょっとした成功体験がきっかけとなって、チームが良い方向へ変わっていく瞬間を何度も経験してきました。

施設はオープンして終わりではなく、絶えず進化させていかなければなりません。その際、遠く離れた本社が主導して、「この施設ではこんな魅力を発信しよう」とコントロールしようとしても無理ですから、現地スタッフが進化させやすいテーマを設定することが大切です。この「現地発の進化」こそが、本部主導でコントロールする西洋ホテルチェーンとは違って、私たちのような日本旅館ネットワークでは重要です。現地発でそれぞれに進化するからこそ、お客様がわざわざその地まで足を運んでくださるのです。

私たちはまた、スタッフが仕事にやりがいを感じているかを把握するために、年一回、社員満足度調査を実施しています。統計的な手法を取り入れた調査は、客観的に判断するうえで有効な手段です。一方、そこまでする必要のない場合は、できるだけ多くの人の意見を聞いたり、賛成と反対の両方の意見を聞いたりすることで、客観的な判断に近づけるようにしています。

「これからはしっかり確認する」「ダブルチェック、トリプルチェックでミスを防ぐ」といった再発防止策を立てる人がよくいますが、これは「仕組み」とは言えません。チェックの数を増やしても、形ばかりのものになりやすく、同じミスを繰り返しやすいからです。「なぜミスをしてしまったか」を深掘りし、「本当の原因」を特定して、「どの段階で」「誰が」「何を」すればミスを防げるか、突き詰めて考える。こうした経験を繰り返すと、次第に思考のプロセスが変化する。一段上のレベルの仕事がこなせるようになります。

相手が社長であろうと、総支配人や総料理長であろうと、スタッフが言いたいことを言える。上のポジションの人が物事を決めるのではなく、ポジションに関係なく説得力のある意見が通る。そうした環境があってこそ、正しい議論と正しい意思決定をすることができます。それがサービスの質を良くしていくだけでなく、スタッフのモチベーションの維持にも繋がる。

私が重要だと考えるのは、「料理を調理師や板前の専門分野にしすぎないこと」です。つまり、調理師ではないスタッフが、料理に関与する自由があることが大事です。ホテル業界における弊害は実はそこにあって、料理の領域が調理師以外は誰も口を出せない「治外法権」になりがちなのです。料理を出してお客様の反応を見たり、要望に応えたりするのはサービススタッフです。サービスを提供する彼らが、「今日の料理はおいしくない」と言える文化。お客様が喜んでいるのかいないのかを、調理師とざっくばらんに議論できる文化。「こうしたらいいのでは」とスタッフが自由に提案できる組織。そんな「フラットな組織」を私たちは目指しています。

私たちがやろうとしているのは、建物だけでリゾートの魅力を完結させるのではなく、サービスと合わせて魅力を高める「舞台」を作ることです。その舞台で演じるのはスタッフであり、演目や演じ方もスタッフの自由。ゲストへのおもてなしの発想を生かせる舞台を設計して、ハードとソフトの両面で滞在の魅力を高めていこうという考え方です。

お客様からクレームを受けたとき、受けたスタッフがそのクレームをどう考えるか。言われた内容から何を発想するか。お客様の気が収まればいいというような、その場限りの対応にとどまるのではなく、そのクレームから何かホテルの競争力を高めるヒントを引き出せないかと考えることが、会社にとってはとても重要。

本音で対等な議論ができるようになると、事件(対立や葛藤)は必ず起こります。無理もありません。「この方針、変じゃない?」「そのやり方はおかしいんじゃないか」「そんなところに金を使うより、こっちに使うべきだろう」と、みんなが自由闊達に言い出しますからね。これはもう、侃々諤々のカオス状態。そこから事件が起こっていくわけです、ですから、事件がよく起こること、イコール、フラットな組織であることの証だと、私は歓迎しています。

組織の構造やルールがフラットなだけではありません。社員全員が同じ立場に立って、対等に議論できる環境を大切にしています。年齢差や、役職による権限の違いはあっても、人間対人間として本音で話し合い、何でも言いたいことを言い合える――そういう文化が定着して初めて、本当の意味でフラットな組織だといえるのではないでしょうか。

星野リゾートの各施設・各チームでは、しょっちゅう「事件」が起こっていて、この「事件が起こる」ということ自体が、私にとっては非常に大きな意味を持っているのです。ここでいう「事件」とは、組織内のコンフリクト(対立や葛藤)を意味します。では、それがなぜ、しょっちゅう起こるのか理由は、我々が完全にフラットな組織を志向しているからにほかなりません。星野リゾートらしさとは何かというと、それはこのフラットな組織に尽きるといってもいいでしょう。

面接で評価の低かった人が、現場に出て活躍することもあれば、その逆もあります。人の能力は未知数で、上司が一方的に見て正しく把握することは難しい。当社では新卒を300人ほど採用しますが、誰が将来どう成長していくかは予測不可能です。人材の抜擢には限界があります。だからこそ、立候補制度があるのです。

自由に発想できる環境にこだわる最大の理由は、それが仕事を楽しくするから。優秀なスタッフに、地方で長く仕事をしてもらうためには、仕事が楽しくなければなりません。たとえ未熟なアイデアを採用して失敗したとしても、挑戦し続けることでいつか成功し、それが仕事のやりがいや楽しさ、自信につながります。楽しい仕事を通して優秀なスタッフが定着することを、私たちは重要視しています。

今のビジネスは、「顧客にものを聞きすぎる」と思います。顧客の声に耳を傾けることは大切です。けれど、「顧客が答えを持っている」と考えて商品やサービスを作ると、結果として似たようなものになってしまう。顧客の声を聞くことは、誰にでもできます。ビジネスで勝ち抜いていくには、顧客の声をしっかり聞いたうえで、顧客がまだ気づいていない「潜在的なニーズ」を、提供する必要があります。

日本人は英語力が高いのに、苦手意識が邪魔をして、損をしている人が多い。もともと私たちは、中学から英語を学んでいるので、基礎はできています。それでも英語を活かせないのは、完璧な文法やスペルでなければ「×」がつくという受験トラウマがあるからです。「正しい英語を話せないと笑われるのではないか」「美しい英語を話せないと相手に失礼なのではないか」という間違った思い込みが、英語を使う際の障害になっているように見受けられます。しかし、私は多少の誤りは気にせずに英語を使って考えを伝えた方が、相手に好意を持たれ、仕事もうまくいくと考えています。

現場からの何万もの情報の中から、大変革につながるものがあるかもしれない。そのためにはまず、社員に情報を出してもらわなければ始まらない。たとえ情報の大半が役に立たないものだったとしても、決してムダにはならないと思います。情報を共有することが、「一体感のある組織」を生み出すからです。まずは何万もの情報を把握できる企業風土を作る事が重要ではないでしょうか。

大学卒業後、私はホテル運営を手がける、ある会社に就職しました。その会社の休憩室では、毎日、社員が会社の方針や上司の判断について愚痴を言っていた。自分も愚痴の輪の中にいて、「この人たちの言い分はもっともだ」と思っていました。一方で経営陣が集まる会議に出ると、そこでは様々な情報に基づいて納得できる判断が下されていた。この時に感じたのが、「経営陣は社員が抱いている不満に気付いていないし、社員に必要な情報を提供していない」ということでした。同じ情報を経営陣と社員が共有していたら、「なぜこの局面でこの判断が下されたか」が理解でき、愚痴や不満が半減したと思います。その結果、会社一丸となって同じ目的に向かって動くことができたかもしれません。

日本のおもてなしとはなんでしょうか。たとえば、日本の地方を訪れる人にとって、その地方で体験したいことが明らかなわけではありません。むしろ、迎え入れる側の人が、「この地方に来たらぜひこの料理を食べてほしい」と「押しつける」のが日本のおもてなしであり、日本旅館のやり方だったはず。それを海外でも展開すべきだと我々は思っています。つまり、「バリらしさ」をニューヨークやロンドンの本部で考えるのが西洋ホテル流だとすれば、地域の魅力を一番よく理解している現地スタッフが「バリらしさ」を考えるのが日本旅館流。

私たちは海外にも通用する都市型日本旅館のサービスのあり方を模索する狙いも込めて、星のや東京を開業しました。日本旅館でありながら、都市を訪れる観光客やビジネス客のニーズにも対応できるようサービスを進化させていく。日本に来たから日本旅館に泊まるのではなく、快適でサービスが素晴らしいから日本旅館に泊まるという市場を作り出したいと思っています。

現場で自分で見たり聞いたりすることは大事だと思いますが、私が見たものが必ずしも本当の姿ではないとも思っています。同様に、自分に伝えられる情報も、必ずしも公正ではないとも思っています。自分の感性を信じていないわけではありません。ただ、私のところには特殊な情報しか入ってこないと思っているんです。経営者や総支配人が見えている情報は、あくまで断片的で、偏ったものです。都合のいい情報や、親しい人からの意見しか届かなかったりします。たまたま得られた情報にもかかわらず、全体を反映していると思い込んで判断すると、必ず間違えます。

今後の100年で最も大きな影響があるのは、私は人口減少だと思っています。東京は、過去100年で良いものを壊したかもしれませんが、何だかんだ言っても日本の中心でした。しかし、このまま日本の中心にいるだけでは、人口減少に転じたときのインパクトが非常に大きい。事業者としては怖さがあります。やっぱり、会社をグローバル化させなくてはいけないという発想になる。私が東京に期待するのは、日本の中心からアジアの中心に舵を切れないかということなんです。アジアの中心になるためには、マルチナショナルな都市にならなければいけないと思っています。そこにはすごくマイナスの面もあるでしょう。テロや失業、それに伴う排他的な動きなども出てくるかもしれない。それらを乗り越えて、東京がアジアの中心になるという。覚悟を持てないだろうか。もし持つことができれば、(グローバル化するより)この国でしっかり事業をする方がいいかもしれないと思えてきますよね。

グローバル化はますます進み、ビジネスの変化も加速している。今後、今の常識では考えられないような場所で働くことが求められるかもしれない。そんな時代を生き抜くためにも、先入観を持たずに、様々な場所でチャレンジする姿勢は必須だと思います。そのチャレンジによって、自分の予想を超える成長を遂げられるのではないでしょうか。

実際に星野リゾートでは、地方で働き、自らの力を思う存分発揮している社員が大勢います。着任時は不安を抱いていても、「住めば都」となり、新しい視点でその地方の魅力を発見して、活性化に貢献している例が多いのです。例えば、神奈川・箱根にある施設「星野リゾート 界 箱根」では、ある担当者が箱根の伝統工芸である寄木細工に目をつけて、ホテルで使う調度品の製作を職人に依頼しました。職人たちは価格が安い土産品を作ることが多く、意欲を失っていた面があった。そこを何とかしたい、そして、寄木細工の魅力をお客様へ伝えたいと考えたのです。結果的に寄木細工の調度品はお客様に喜ばれただけでなく、地域の活性化にも貢献できた。担当者はこのことにとてもやりがいを感じているようです。

私自身は地方で働くメリットはたくさんあると思っています。

  1. 地方では競争相手が少ないために、早い時期から責任にあるポジションに就く機会を得やすい。
  2. 地方は人材の絶対数が少ないため、自分1人が担当する仕事の範囲は広く、幅広い仕事の経験ができる。
  3. 地方の企業では失敗した人に責任を取らせたところで、その人に代わる人材がいるわけではない。失敗を通じて育つことができる余地があると思っている。だからこそ、リスクやプレッシャーを恐れずに働ける。

閑散日の人員がどうやったら繁忙日に良いサービスができるかを考えると、マルチタスクにせざるを得ない。実際にマルチタスクをやろうと思うと大変で、今までどおりやっていれば楽だというトレードオフがあり、大変だからみんなやらないです。しかし、私にとってはやらないと解決できない問題があるので、90年代からサービスチーム、マルチタスクの方向に進んできました。

星野リゾートでは、スタッフ全員が旅館のすべての業務を身につけることを前提としています。仕事に担当がつくのではなく、お客様に担当がついてサービスを提供してきたのが日本旅館だからです。フロントから客室清掃、レストランまでマルチタスクを実践する中で、スタッフ自身がおもてなしを進化させることが求められています。

星野佳路の経歴・略歴

星野佳路、ほしの・よしはる。日本の経営者。星野リゾート社長。長野県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。日本航空開発、シティバンクを経て、星野リゾート社長。リゾナーレ、アルツ磐梯リゾート、アルファリゾート・トマムなどを傘下に収め、ホテルや旅館の再生事業を行っている。

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