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御手洗冨士夫の名言

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御手洗冨士夫のプロフィール

御手洗冨士夫、みたらい・ふじお。日本の経営者。キヤノン会長、経団連会長。大分県出身。中央大学法学部法律学科卒業後、キヤノンに入社。その後、同社アメリカ法人に赴任し23年間アメリカに駐在。キヤノンのアメリカでの躍進に大きく貢献した。キヤノンUSA社長を務めたのち、キヤノン本社社長に就任。その後、日本経済団体連合会会長に就任。そのほか、内閣府経済財政諮問会議議員、若者の人間力を高めるための国民会議議長、鉄道貨物協会会長、特定非営利活動法人東京オリンピック招致委員会理事なども務めた。

御手洗冨士夫の名言 一覧

進退は自分で決めろ。自分で使命が終わったと思ったら、辞めればいいんだ。本社を向いて仕事をするな。おのおので一流会社を目指せ。

【覚え書き|現地法人のトップたちに対して】


経営の基本は、いかに社会の変化に対応していくかということ。成長にはイノベーションが大事だが、イノベーションによる世の中の変化を見極めながら、対応していく。対応しそこなった所はつぶれていく。


私は役員たちに、「一番ピークのときに(旧来の事業の)衰退の予兆を見つけて、新しい事業を考えろ」と言い続けてきた。


女房子供は日本に帰して、それこそ全米を駆けずり回った。あの時期が原点。私だけではなくて、その頃キヤノンUSAに居た者はみんな血を吐いて頑張った。企業はそうしたトンネルを抜けなければ大きくならないです。


世界中どこの会社も現場とトップの一体感のある会社はやはり強い。


世界人口は爆発的に伸びており、人口に沿った事業は伸びる。


新規事業こそキヤノンの本業。キヤノンは変身を遂げて大きくなってきた会社。


経営は、その国の国民に任せるべきだ。おのおのの会社の経営というのは、その国の文化や伝統、行動形式に合わせるのが一番合理的だ。


当社の歴史はイノベーションによる事業改革の歴史。


若い頃は貧乏生活だったが、少しも苦にならなかった。何でも見てやろう、何でも体験してやろうの精神で踏ん張った。


伸びる人とは、自分で自分をかき立てるエンジンを持っている人。自主的に、自分で自分を奮起させる力や精神構造を持っている人。


変化に素早く対応することが大事。変化は進歩、変身は前進。


改革を進めれば様々な不満が出るのも当然。改革は経営者としてやらなければいけないことだと文字通り腹をくくりました。


世の中は大きく変わってしまった。そういう流れの中で企業はイノベーションに努め、需要創造を図っていかなければ。


気を引き締めてこの難局を乗り切るという気持ちを強く持つことが大事。


経済を活性化するためにはイノベーションが大事。


企業は高い付加価値を生み出すイノベーションこそが最も大事。


よい製品をつくるためには、研究開発と工場を同じ場所に置くことが重要。


経済は心理で動きますから、先行きが明るくなれば経済も好転する。


数字なき物語も、物語なき数字も意味はない。


安定的な経営ができるようにしなければいけない。


柱となる大きな事業を育成するためには10年単位の時間が必要。


産業構造の転換で強みを失わないためにも、モノ作りの在り方を見直していく必要はある。


横並びの年功序列は良くないが、長期雇用で安心して仕事に打ち込めれば、その道にプロになれるし、生活設計も安定します。


日本経済活性化のカギは、やはりイノベーション。新しい価値を生み出すことで、新たな産業が生まれ、雇用が生まれる。それが経済活性化の大原則。


日本はトップがどんどん替わり、替わるたびに新しいことをやるから、投資が無駄になりがち。トップは長い方がいいと言うと自己弁解みたいですが、そういう気は全然ないです。要はトップが責任を持つこと。4年や5年で替わったら責任は持てません。


M&Aをするにも原則があります。一つは、「当社の今までの技術の応用ができる分野、あるいは、既存技術との相乗効果が見込める分野であること」です。もう一つは、「M&Aの相手は優良企業でなければならないということ」です。優良企業とはマネジメントチームがしっかりしている会社ということです。


キヤノンにとって最も大切なことは雇用の維持・確保。常に社員が活躍できる道を準備し、雇用を守り、人間尊重、雇用尊重の経営を続けていきたい。


米国に23年住んだのはプラスですね。自分たちと違う多様性を勉強させてもらった。多様的な価値判断というのは、世界を見る目を広げていくし、各々の国の持つ価値観の多様性、そういうものを見る目ができたというか、判断する基礎ができたと思いますね。


キヤノンは人間尊重の会社であり、雇用優先の会社。新しい商品、技術を開発していくのにも、雇用が保証されているから、安心して開発の仕事に打ちこめる。身分が不安定だったら、そうはいきません。古いやり方だとか、いろいろ言われるけれども、基本的に人を大事にしていきたい。


まず、お互いに信頼できる人間関係をつくった上で、やっていくことが大事。緊急の場合、電話一本で話せるというような人間関係をつくっておくと。


新しい価値を生み出すことで人類は進歩・進化してきた。経済水準をあげて日々の生活レベルを豊かにしていくことが経済人の役割。


対抗していくには、価格競争ではなく、イノベーションによる、付加価値の高い製品を産み出していくしかない。


企業人も自らある程度のリスクをとりつつ、市場を切り拓いていく覚悟が求められている。


日本は技術で高付加価値の商品やサービスをつくり、生産技術でコストを徹底的に削減していくことが大事。


各地方は自分たちの力で自分たちを強くするという仕組みに変えていかなければ、真の意味での地方活性化はできないと思う。


有為転変の時代にあって、経済、技術、政治とありとあらゆるものが変化する。その変化に的確に早く対応することが一番大事。


日本は世界と連動している。その世界はどんどん変化しています。だから、変化への対応の仕方が大事だし、そのスピードも大事。


改革を進めるにあたって、当初、社員の不満も出ました。もう対話して合意していくほかなかった。まあ、だんだんみんな分かってくれました。


改革にはそれなりの覚悟がいる。何がなんだってやり遂げるんだという気持ちだったですね。失敗すれば、そのときは自分で腹を切るという思いでね。


イノベーションにつながるものに投資して、付加価値の高い産業へと転換していく。産業転換ですよ。


キヤノンでは毎年1月には全幹部を集めて年頭方針を1時間半ほど話して共有し、十数か所の重要拠点を回って同じことをしています。それから毎月、国内の全幹部を集めて進捗について話す。労働組合の全幹部と全役員が毎月顔をそろえて、意見を交換し、会社の実態を全部しゃべって質問も受ける。こちらからも注文をつけます。


(キヤノンのトップの任期はみんな長いが)経営者たる人材は、ためています。私は社長になったときに公平な人事をしようと思って、「経営塾」を始めました。米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチ氏に手紙を書いてお願いし、(GEの研修所のある)米クロトンビルに社員を3か月間派遣して経営者人材の育成システムを勉強させて作ったものです。


経営者は長期計画に基づいて一貫して投資をすべきです。(任期が短く経営者が)くるくる代わるということは一貫という意味からすると、あまり合理的ではない。次の経営者は、何十年も一緒にいるから自然に分かる。必ず出てくるものです。


私はキヤノンを世界的な一流会社に少しでも近づけたい。それが夢です。現地で上場して、一流の人物が経営する本当の国際企業になっていったらいいなと。私の時代では、全然できないに決まっているけど。そうなるといいなと私は思っています。


資本主義の会社の機能は、投下資本の拡大再生産の循環でしょ。社長や役員は、その機関を動かす機関士ですよね。その役割をうまくやっているかが大事で、何年やっているかは問題ではない。会社をうまく動かすために、ある人に任せる。その関係を考えたときに「人のために順番にポジションを用意する」ように見えることは、あまり合理的ではないと思いますね。


経営者の役割は「夢」です。将来のあるべき姿を描き、そこに向けた戦略を決め、実行部隊と議論しながら実現する。それが経営者の仕事です。会社が繁栄すれば社員の生活が向上し、社会貢献もきちんとできる。社会に親しまれ、尊敬される会社を目指します。


私が尊敬するデュポンなどは、200年にもわたって繁栄し、何世代も働いている人が珍しくありません。米国企業を指して、よく言われる無機質な労使関係ではなく、家族的な社風です。まさに敬愛される企業でしょう。目標は、まだまだ遠いというのが実感です。


アメリカに居れば、圧倒的多数を占める現地メンバーや取引先の協力が不可欠であり、それには、自らアメリカ的な発想や、行動をとれることが何よりも大切です。どこへ行っても、現地の人々との関係を結びながら、目標達成のための物語を描ける。それがグローバル人材です。


トップにとって経営とはバランスシート(貸借対照表)で語る物語です。理想的なバランスシートを構想し、それを実現するため、企業内のあらゆる組織、あらゆる人間が行うべき仕事を導き出していくのです。


キヤノンでは、一人一人の社員が必ず仕事の目標を数字で表すことを求められます。そして、「お前はその数字で物語をつくれるのか」と問われます。数値目標の達成に至る実行の物語を自分で考えなければならないのです。


気概に富んだグローバル人材を育成するため、キヤノンでは外国語ができるのかも重要な要素ですが、基本的には業務遂行能力を優先させ、どんどん社員を海外勤務に出しています。その人数は常時1000人近くになっています。現地で揉まれながら、苦難を経験し、呼吸していくのが、一番の教育法です。


自分たちの価値観について理解を求めることと、異文化の価値観を認めることは表裏一体です。その両方ができれば、グローバルな舞台で異文化の人間を相手にしても、こちらの主張ができると同時に、相手の立場に立った理解ができます。そして、世界のどこに行っても日本人として一流でありつつ、その国ならではの発想と行動もできるようになる。それが真の国際人であり、グローバリゼーションの時代に求められる人材の理想像です。


自己完結的で内向き志向の日本人は、世界から一歩取り残されるのかと言えば必ずしもそうではありません。日本はもともと多神教的な精神構造を持っているため、宗教的な偏見を持ちません。その意味で日本人はコスモポリタン(世界市民)になれる資質を十分に持っています。相手との違いを理解し、異なる価値観を認める。それにはまず、自分たち自身の強みをしっかり理解することです。自虐的な発想からは何も生まれません。


私が着任当時わずか社員13人だったキヤノンUSAが、23年後の帰任時にはトータルで6400人を要するまでに成長する過程で、ずっと第一線に立ち続け、多くの経験を積みました。その経験を通して、私なりに真の国際人に求められる条件を模索してきました。その基本は「違い」を理解できることです。日本と欧米はどこが違うのか知ることです。


グローバルに通用する人材をどのようにして確保していくか。海外に拠点を持つ企業や海外との取り引きの大きい企業にとって喫緊の課題だ。海外売上高が8割を占めるキヤノンの場合、それは成長戦略と一体になっている。


たまにうまく行動に移してくれていない場合がありますが、自分のポリシーに無理があったから受け入れられなかったと反省して、現場の人とどこに無理があったか、どういうふうに変えればよいかをとことん話し合います。


いまも自分のポリシーが現場に伝わっているか、現場で正しく実行に移されているかを確かめなければやはり不安です。それで現場に行くわけですが、行ってみると私のポリシーの上に現場の人が知恵を加えて期待以上によくやってくれている。それを見た時はうれしいです。だから現場では感謝しながら歩くわけです。


経営ポリシーとか経営戦略はトップが作るものだし、それはトップダウンで現場に下していくべきものです。仮にも間違っていたら集団を誤って導くことになりますから、その責任もまたトップが取らなければいけない。キヤノンの経営計画はもちろんディスカッションを重ねてリファインしながら作りますが、コアとなる考え方は自分で責任を持って作ります。


年に二回の賞与時期の幹部会では、800人の幹部を一人一人壇上に上げて「ごくろうさん」といいながら握手をして、賞与を手渡しします。そのときに、ちょっとした会話をするのですが、心が通じ合うのを感じます。「顔色悪いけど大丈夫か?」「ちょっと風邪をひきまして」とか、「お世話になりました。定年なので最後になります」と言われれば感極まって思わず両手を握ってしまいます。目と目を合わせ、言葉を交わし、手を触れ合う。その数秒のことが信頼関係の土台になり、経営意思を受け入れてくれる信頼の土壌になると思うんです。


キヤノンでは毎朝一時間ほど役員たちが朝会を開いています。50年ほど前から続く伝統です。ざっくばらんな議論の中で、互いの考え方を知ることができます。お互いを知ることによって信頼関係も生まれます。海外の出張先から相談の電話がかかってきても、普段のコミュニケーションが土台にありますから、相手の考えや問題意識を即座に把握することができる。スピーディに意思疎通が図られ、答えを出すことができるんです。


現場には自慢話をしてくれと言っているんです。だから私に自慢話をしようと、現場は私が来るのを待ち構えている。戦略を出し、仕組みを作り、何回もコミュニケーションをして、自分のやり方にも修正を加えながら、現場を指導していく。そして実行を確かめ、実行した人たちの苦労話を聞いて評価する。その繰り返しによって現場のモチベーションは格段に上がる。


大切なのは正しく評価するということです。私も工場にいたことがありますから、お題目を唱えるだけでは駄目なことはよくわかっています。わかるまで何度も説明し、お題目が実行されるような仕組みを作ることも大事です。


終身雇用の良さは、社員が長期的に物事を考えられることです。こうした環境は、流動的でぷっつんぷっつんと切れるアメリカ型の環境より優れていると思います。日本のジャーナリズムは、日本のコアコンピタンス(競合他社に真似できない核となる能力)を古臭いと言ってけなすけれども、あまりに自虐的で嘆かわしいですね。もっと日本の企業風土の特徴を肯定し、誇りを持たなければいけないんじゃないですか。


新卒採用で入って長く会社にいるからこそ愛社精神が育つ。日本の愛社精神は、不正を防ぐコーポレートガバナンスの機能を果たしていると考えることもできます。ひとりが自分の家族を思うように会社を愛せば、ルールがなくても不正は自然となくなる。それから、役員と社員の距離が近いことも経営のチェック機能になる。流動性の高い社会ではありえないことです。


会社の理念こそが、コーポレートガバナンスだと思います。昭和17年、キヤノン初代社長に就任した御手洗 毅(叔父)は、従業員が安心して幸せに暮らせる会社を作りたいという思いで経営しました。今日まで、この理念をずっと通してきましたが、なんの不都合もありません。


いま、仮に社外役員を連れてきたら、逆に企業理念が理解できないために不都合が起きると思います。少なくとも、仕事の内容を教えなければいけないだろうし、自分が教えておいて「どうですか」なんて聞いてもしょうがないじゃないですか。会社について何も知らない人が来て、仮に報酬として600万円もらうこと自体が公平じゃないし、だいたい、そんな人に経営指南を受けなければならない会社は、そのうち潰れます。


今、どこも生き残りをかけて必死に競争をしています。確かに6重苦と言われるように、(日本企業が)ハンディキャップを課せられているのも事実かもしれませんが、そのことを嘆いていても何も解決はしません。


私が不満なのは、みんな30年のうちにどうするとか、先のことばかり議論しているんです。それも大事だけれども、足元をどうするんだという現実的な議論を、もっとやらなければ。


最先端技術の研究開発は大事だが、どの国もそれをやってくる。最先端技術だけで差別化がしにくくなっているのも現実。日本企業特有のメンテナンスやきめ細かいサービス力を生かしていくときだ。


デュポンやP&G、IBMなど、本当の一流企業ではホワイトカラーの移動率が2%以下で、実は日本より低い。理想は日本のように制度的な終身雇用をすることではなく、結果的に終身雇用にすることだ。つまり、それぐらい社員にとって離れがたい魅力ある会社にすることが会社の理想形といえる。


経営そのものは買収先に任せるつもりだ。私は優良企業しか買わない。だから役員を送り込む必要はなく、任せておけばいい。ボロ会社を買って、役員を送り込んでいって、というケースはよくあるが、時間とカネがかかってしょうがない。


終身雇用制のいいところは、多くの社員は終身雇用という前提で入社してくるので、たいていの社員は初めから会社に対する愛情を持っています。つまり愛社精神という文化的なコーポレートガバナンスが醸成されやすい。これが第一。それから教育をしやすいし、それが蓄積します。社員が失敗しても、その失敗が人と同時に残って、二度と繰り返さなくなる。


1974年の大不況のとき、私はアメリカで40名を解雇せざるをえませんでした。アメリカなら解雇しやすいだろうと思われるかもしれませんが、実際にやってみると、一生懸命やっていた人たちを解雇することほどつらいことはないと悟りました。あんな思いは二度としたくないと、そのとき誓ったのです。


いまのようなスピードの速い時代になると、一カ所でものを生み出して、世界中にばらまくやり方では間に合いません。そこでいま私が考えているのは、三極体制による経営です。本社を東京とアメリカ、ヨーロッパにつくります。メーカーの本社とは、研究、開発、生産、販売の機能を持ったものを指します。アメリカやヨーロッパでは、東京では開発していない技術を核に、新しい製品を展開していく。そうした体制で、経営スピードを上げて世界の市場をカバーしていきたいのです。


当社ではロボットの目、要するにセンサーをつくっています。キヤノンは自社の生産のためにロボット本体を内製していますが、それを外販することはセンサーの提供先である企業と競合するのでいまのところは予定していません。でも、目ならロボット会社も買ってくれるじゃないですか。


コーポレートガバナンスについて言えば、私は社長になってから、「透明度の高い経営」を推進してきました。たとえば、社長直轄の監査部門をつくりましたが、現在約70名の社員がその部門にいて社内監査を担当しています。監査対象には、私の担当領域も含めて聖域はありません。


M&Aは機密性が大切です。また急ぐことも多く、社外の弁護士だけに頼っていては機動性を欠いてしまいます。したがって、弁護士が社内にいたほうがスムーズに事を進めやすくなります。ただ、法律問題は毎日あるわけではなく単発的なので、常勤ではなく、社外役員という立場で十分だと判断したわけです。


社長になる前、私は人事を含む管理部門の担当でした。したがって社長就任後しばらくの間は人もよく知っていて、自分で次の役員を決めることができました。ところが会社の拡大とともに、すべてを自分ひとりで判断することが難しくなってきた。そこで考えた結果、アメリカ時代の知人であり、GEのCEOを長く務めたジャック・ウェルチ会長(当時)に手紙を書き、GEの有名な役員・幹部社員養成所の仕組みを勉強させてほしいとお願いしたのです。そうしたら、快く引き受けてくださったので、社員を派遣して、その仕組みを学ばせてきました。


組織のトップというものはある一定期間は務めなければ人脈を築けません。政治でもビジネスでも人脈を築くには時間がかかるし、そういった関係を築いて即時のコミュニケーションが取れることが重要です。


うちは役員食堂もないですから。私もみんなと同じ食堂を使っていますが、私が並んでいても、誰も順番を譲ってくれない(笑)。


会社が始まるのは8時半ですが、7時には役員が全員そろっています。でも、これは私が始めたことではなく、朝会というキヤノンの伝統です。それで、7時45分くらいには役員会議室に集まってきて、8時半まで意見交換をする。


毎朝4時ごろ起きています。そして経新聞の電子版を読みます。ニューヨークは昼間ですから、為替や長期金利、向こうのウォールストリートの市況がわかる。それをじっくり読んで、会社には7時前に着きます。


アメリカにはアメリカの良いところがあります。国民性の違いが社会運営の違いにもなるし、経営の仕方も違ってくる。日本流がいいとか、アメリカ流がいいとか、というのはナンセンス。意味がない。


私はいつも、ハイブリッド経営だと言っています。アメリカ流のいいところは取り入れて、悪いところは取り入れない。日本には日本の良いところがありますし、やはり、その国に合った経営をするのが一番いいと思う。


当社はここ数年、新事業領域へ進出してきました。これらはまったく新しい分野ではなく、いずれも既存の当社技術が活かせる分野です。既存技術を活かせる新事業に重点的に投資をしていきたい。既存のものを捨てるのではなく、いままでの技術を活かしながら新事業を育てていきたい。


いつの時代でも企業にとって大切なことはイノベーションに尽きる。イノベーションによって新しい価値を生み、新たな産業を創り、雇用を増やし、国家財政を豊かにしていくことに貢献していくべき。


モノ作りは以前より精密になってきました。我々も工程管理を「%」から「個数」に変えました。不良品の発生率も「0.1%」と聞くと少なく聞こえますが、カメラを1000万台作っている我々にとっては0.1%でも1万台になってしまいます。


スマホは全てが新しい技術でできているわけではありません。既存の技術を「編集」している部分が非常に多いのです。技術の組み合わせです。視点を変えつつも、時代の要請に合った「編集技術」というイノベーションの好事例でしょう。


私が社長に就任してからは、売上高研究開発比率は8%程度を維持しています。他社に比べても非常に高い数字です。そのため、とがった技術がどんどん社内で生まれています。


戦略的にBtoBを強化しています。BtoCの製品は多かれ少なかれファッション性が求められます。従ってはやり廃りの回転がとても速い。過当競争になってしまえば、研究開発費を回収する前に次のトレンドへと移ってしまいます。市場を独占できる製品は別かもしれませんが、BtoCの製品は回転が速く当たり外れが大きいので経営が安定しないという面があります。


コンパクトカメラでもレンズ交換式でも、やみくもに数量を追わないという姿勢を維持します。安売り競争に巻き込まれないように、付加価値の高い製品を提供し利益優先主義で事業を進めていきます。


成長しなければ雇用も生み出せませんし、賃金を上げることもできません。また配当をすることも、社会貢献をしていくこともできません。従って、いかなる条件の中でも、企業は成長を求めるしかないのです。


社長になってから、ずっと考えてきたのは人材の育成です。米ゼネラル・エレクトリック(GE)の役員養成システムを見習おうと、ジャック・ウェルチ(会長)に手紙を書き、研修させてもらいました。こうしてできたのがキヤノン経営塾です。そこで猛訓練を受けた人材が、役員や執行役員として活躍し始めました。これからキヤノンの経営は変わりますよ。


連結決算で見たキヤノンの売り上げは、9割近くが海外です。世界の市場で毎年、7~8%の成長が目標で、今年1~6月に欧州は7%、米国は10%と、現地通貨ベースでは目標通りに成長しました。ただ、円高のために円換算すると売り上げも利益も目減りします。円ベースの業績予想は下方修正を余儀なくされますが、これをもって、成長力が落ちたという指摘は当たらないでしょう。海外で稼いだ外貨は現地で再投資し、資本を増やしながら成長を続けています。


効率的な組織の典型は、軍隊でしょう。ボトムアップでバラバラに動く軍隊なんてありません。全滅してしまいます。やはり基本はトップダウンです。トップが調査や議論をして、自分の責任で目標や戦略の基本を作るべきです。これは独裁とは違います。トップが考えを述べて、部下と話し、調整して手直しをする。社長に限らず、事業部長でも課長でも、集団のトップは自分の意見をはっきりと示し、そのうえで部下と交流していくべきです。


私が社長に就任したとき、キヤノンは多角化を標携し、事業部制を敷いていました。その体制が長くなり、制度疲労が起きていた。だから、全体最適という方針を打ち出しました。事業部の壁を破るため、全社に横串を通す委員会を作り、事業部門長に兼任させました。事業部間の壁が低くなり、次第に取り払われました。これで、中央集権で全体最適を目指す効率的な組織に生まれ変わりました。


工場の生産方式をライン方式からセル生産へ変更したとき、抵抗は激しかったですね。40年以上続いていた生産方式を根本から変えるわけですから。事務屋に何が分かると悪口を言われました。生産のプロと議論してもかないませんが、時間をかけるわけにもいきません。頼むから信じてくれ、責任はすべて取る、と説得しました。代表取締役を私一人にして、全責任を負うという覚悟を形で表しました。正直、孤独で怖かったですが、なにしろ無我夢中でした。


会社で最も資金を使うのが工場です。ここを合理化すれば損益が改善し、キャッシュフローも楽になる。そう考え、調査の末に出合ったのが、セル生産でした。ベルトコンベヤーを使うライン生産と違い、十数人のチームが製品を組み立てます。ライン方式ではコンベヤーのスピードを上げない限り生産性は上がりませんが、セル方式なら創意工夫の余地が生まれ、作業者が習熟することで生産性が上がります。ラインで滞留する在庫が減り、資金繰りも楽になる。これだ、と確信しました。


突然の社長拝命でした。だから、キヤノンを、どのような会社にしようかと年末まで一生懸命、それこそ命懸けで考え続けました。脳裏に浮かんだのが、若い時に米国で見ていた一流企業の姿でした。経理を担当していた私は、勉強のためデュポンやP&G、IBMなどの財務諸表を取り寄せて経営を分析したのですが、米国で本当に一流の企業は分厚い自己資本を持ち、潤沢な手元資金で開発投資をして新しいものを生んでいました。当時、キヤノンはもちろん、日本の企業は、本当に借金経営。全くの別物でした。あの驚きと憧れはいまでも記憶に残って売います。よし、こうした一流企業肯を目標にしよう、と強く思いました。これが社長としての原点です。


日本で新しい製品や産業を生み、世界に広げてきたのがキヤノンです。これからは世界で新たな価値を生み出していきます。日本でやっていないことを、米国や欧州で始めます。既に高速印刷機は欧州、医療関係は米国が本拠になりつつあります。本格的なグローバルカンパニーが次の目標ですね。


学部や大学が強くなっていけば、海外から優秀な人材も集まって来るでしょうし、新しいイノベーションも生まれやすくなると思います。イノベーションを生み出す源泉というのは、大学を頂点とする教育現場ですから、大学改革を進めることは非常に意味のあることだと思います。


価格競争に陥らないように、今後、付加価値の低いものはやめる。付加価値の高いものに産業転換をしていく。同時に省人化、無人化をしていってコストを下げていく。この2つの流れを作っていきたい。


外国の工場というのは丁寧な開発、精密で微妙な対話や認識を共有しようとしても言葉の制約があったりしてね。単にレーバー(賃金)コストが安いから海外へ出ていく時代はもう過ぎた。


原価に占める労働コストの比率を下げるということが一番大事なのであって、一人ひとりの賃金を下げることではない。働く人の一人ひとりの賃金は高くてもいいんです。むしろ、これからは高くしていかないといけない。


技術を活用して、かなりの高付加価値製品を生んでいく。そして製造コストを生産技術によって下げていく。この2つを徹底的にやっていかなければいけない。


私は常々、バランスシート(BS)を見てほしいと言っている。BSは損益計算書(PL)の積み重ねの通信簿だ。PLには資産も借金も書いていない。キヤノンは業績が伸びていないといっても、BSはまったく劣化していない。


キヤノンは米国の特許取得数で20年間、4位以下になったことがない。その技術を事業化する基準を厳しくしている。


資本戦略や開発戦略はインターナショナルだ。しかし人事はローカルなものだ。移民が多く多宗教多民族で、ルールで成り立っている流動性の高い米国社会には米国のやり方がある。しかし日本は基本的には同一民族で、互助の精神が社会にある。だとすれば、その特色を生かす経営のやり方が合理的だ。日本では終身雇用が合理的だと考えている。


流動性の高い社会は、せっかくその人材に投資しても辞めてしまうので、教育投資効率が悪いともいえる。終身雇用は安心して生涯教育ができる。それから、入社して一生勤めるつもりであれば、自分の会社を傷つけることはしないはず。終身雇用には文化的ガバナンスがある。


うちはこれまで1回もストライキがないんです。盤石の労使の信頼関係ですよ。ボーナスは年2回、約1000人の幹部全員と握手して渡しています。手が腫れてしまいますが、私はうちの社員が好きなんです。経営は合理主義の追求ですよ。キヤノンの合理主義、人間尊重主義の思想は今も脈々と流れていると私は思っています。


今の日本では社長というポジションが「あがり」で、4年経ったら「はい、次」となるのも問題だ。任期4年は短すぎる。私も社長に就任して、即断即決ができるようになるまで5年はかかった。たった4年だと問題を解決する余裕がないので先送りになる。そして次の社長になって放置してきた問題が爆発する。その社長はクビを切られるが、元凶の社長はとっくに辞めている。ほかの電機メーカーを見てもそういう話ばかり。実は、グローバルな一流企業では、役員もあまり動かない。米国式経営の導入を、という人は私に言わせれば二流企業の物まねをしている。だから成功しないんでしょう。


経営者に求められるのは国際感覚があることだ。いろいろな価値観がある世界で、フランスに行けばフランス人と同じ考えで行動できる人、それが真の国際人だ。当社は151か国と付き合っているので、どの国の人でもその考え方が理解できるようなマルチ文化的な人間が求められる。単に海外経験が長ければいいというものではない。


一部のマスコミから、私は「古い経営者だ」と批判される。社員のクビを切らない姿勢なので、そう評されるのだろう。ただ、日本の会社は労使一体だ。戦後の発展は労使コミュニケーションのいい日本的経営が支えてきた。日本の事情に一番合った経営をしているにすぎない。実際、キヤノンUSAの経営をしていたとき私はクビを切りまくっていた。非常に流動性の高い米国社会にとって、それが常識だから。米国では米国流の経営をしないと損だ。もし米国で終身雇用などをブチあげようものなら、有能な人は逃げ3年経つと残るのはバカばかりになる。


株主総会で「東芝メディカル(の買収額)は高いんじゃないか?」と質問されたが、それはファンドの発想だ。ファンドにとって会社は商品だから、純利益、純資産と解散価値だけで見る。メーカーの発想は全然違う。私は会社を売るつもりで買うわけではない。10年、20年先を考えると、あの金額はリーズナブル、むしろ安かったなと思っている。永遠の成長力を導入するという企業の目的に照らせば高くはない。合理的だ。


私は成長力を失った事業ポートフォリオを変えなければ、と思った。だが自前で技術を磨き、新しい事業を作る従来の多角化路線ではもう遅すぎる。自由主義陣営だけでゆっくり競争できていた東西冷戦の時代とは違い、今は中国や北欧など、世界の企業と激しく競争している。そこでM&Aを積極的に活用し、時間を買うことにした。どれもキヤノンの既存事業と親和性がある。そのうえで既存事業よりも成長力がある分野を選んでいる。


これは長期構想ですが、私はグループの主な生産設備を自社製にしたいと考えています。他社で進められているのと同様、キヤノンでも生産設備や自社製にすればコストダウンを進めることができます。また、ソフト開発を自社で行えば秘密漏えい防止にも役立ちます。これはかなり時間を要しますが着実に進めるつもりです。


人生100年と言われる時代です。したがって、職業人生の中で複数の専門性を持つべきですし、それを推進しようと考えています。今、本社内でソフトウエアの技術者を育成しようというプロジェクトを進めており、そのための場所を構築しています。もう一つは、生産設備を担当する技術者の育成を進めています。


キヤノンでもネットワークカメラを手掛けてはいましたが、まだまだ小さく、競争力を持ち得なかったこともあり、ネットワークカメラの世界最大手だったアクシスを買収することによって時間を買ったわけです。ネットワークカメラの需要は世界的に増加傾向にあり、キヤノンが自前で事業を育てるよりも、アクシスが持つ販売網やブランド力を活用した方が、世界の需要をいち早く取り込めると判断したのです。


私は社外取締役を認めないわけではない。今みたいに時代がどんどん変化している中においては、外からの考え方や意見を取り入れるということは必要。大いに必要です。だけど、何もそれは、アドバイザリーであればいいので、あえて取締役でなくてもいいのではないか。その存在はあってもいいし、その分においては否定しません。ただし、世の中でよく監視、監視って言うじゃないですか、あれは認めません。監視なんかできるわけないです。


この20年間で事業を取り巻く環境がガラリと変わってきた。今まで、うちはカメラと事務機、たとえば複写機とかレーザープリンタとかインクジェット、そういったものがメインだった。それが成熟産業になり、伸び率が鈍化してきた。それでポートフォリオの転換をしなければならないということを、私はずっとリーマン・ショックの頃から考えていたんです。


北米と南米を統括している会社のCEO(最高経営責任者)は13年目ですが、北米滞在歴は約30年。今度、米国のCOO(最高執行責任者)を欧州の社長CEOに任命しましたが、彼は北米に33年いました。中国でアジアを統括する社長CEOは駐在員生活38年で、うち26年がアジアです。一般的な日本企業の駐在の人は大体3年ぐらいで代わるでしょう。ですが、今挙げた彼らは現地の役員、社員ときちっとした信頼関係を築き、現地の社会でも人脈を築いています。現地の会社として立派に経営していますので、代える必要がない。


米国では(経営者の)進退は株主や委員会が決め不文律で決めるなんてことはまったくない。でも、日本は日本のやり方があってフィットしているのだろうから、それでいいと私は思っています。ただ、一定期間で経営者が交代する日本ではキヤノンは変わった会社と思われるかもしれませんね。私はキヤノンの6代目の社長です。初代社長は会長を含め40年ほどやって現役のまま亡くなっている。3代目も20年ぐらい会長と社長をやりました。病没や70歳を機に一線を退きたいといった人もいましたが、いずれにしても「何期でやめる」という社長は我が社の歴史にいません。これは初代社長が非常に合理的で、米国式の信奉者だったからです。


米国は経営者人材の流動性が高い。生え抜きでも役員とは契約を結んであり、給料などの待遇から引退するときの条件まで書いてある。期間は1年契約が多い。指名委員会などでチェックされて問題なければ、ほぼ自動的に更新していくんです。日本のようにある年月がたったら交代するという習慣はまったくない。だから、一流の経営者は20~30年在任することがざらです。私は米国から帰ってきてもう30年になりますから、向こうのCEO(最高経営責任者)の友人もだいぶ引退してしまいました。彼らは引退時に異口同音に「自分の使命は全うした。だからこれからは家庭や自分の時間を大切にしていく」と言います。「何期やったから辞めます」なんて言う人は、一人もいない。逆に任期が短い人はクビを切られたということかもしれない。


御手洗冨士夫の経歴・略歴

御手洗冨士夫、みたらい・ふじお。日本の経営者。キヤノン会長、経団連会長。大分県出身。中央大学法学部法律学科卒業後、キヤノンに入社。その後、同社アメリカ法人に赴任し23年間アメリカに駐在。キヤノンのアメリカでの躍進に大きく貢献した。キヤノンUSA社長を務めたのち、キヤノン本社社長に就任。その後、日本経済団体連合会会長に就任。そのほか、内閣府経済財政諮問会議議員、若者の人間力を高めるための国民会議議長、鉄道貨物協会会長、特定非営利活動法人東京オリンピック招致委員会理事なども務めた。