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岩田松雄の名言

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岩田松雄のプロフィール

岩田松雄、いわた・まつお。日本の経営者。「スターバックスコーヒージャパン」CEO(最高経営責任者)、「ザ・ボディショップ」社長。大阪府出身。大阪大学経済学部卒業後、日産自動車に入社。工場での生産管理や営業、財務など様々な業務を経験。カリフォルニア大学ロサンゼルス校アンダーソンマネジメントスクールでMBAを取得。ジェミニ・コンサルティング・ジャパン、日本コカ・コーラなどを経て、コカ・コーラビバレッジサービス常務執行役員、ゲーム会社アトラス社長、タカラ取締役常務執行役員、イオンフォレスト社長などを歴任。その後、スターバックスコーヒージャパンでCEOを務めた。

岩田松雄の名言 一覧

米国留学の経験は、「価値観は多様で、人生にはいろいろな選択肢がある」ことを教えてくれ、私の考え方は大きく変わった。


経営には、理屈だけではなく、人の気持ちを知ることが大切だ。


経営には、人間の「情」への洞察も不可欠。


言葉は、いったん伝わると、相手に強い足跡を残す。


スターバックスの社員である前に、人間として正しい判断をして欲しい。必ず私はその判断を支持する。


本当に信頼につながるのは目の前の仕事を完璧に仕上げることです。たとえ会議の資料作りでも、きっちりとこなせばもう少し次元の高い仕事やチャンスを与えられる。


仕事で信頼を得るには、まずは会社での役割をしっかり果たすことが重要です。


30代は「才」、40代は「徳」を学ぶ時期。才とは仕事に直結するスキル。徳とは人間的魅力、自己修養のこと。


今の仕事でその道のプロを目指す意識で取り組むことが重要。


自慢話は事実を淡々と、失敗話はむしろおもしろおかしく大げさに。


何事によらず交渉事で心得るべきは、最終的な意思決定者が誰かを把握すること。


クレームを受けたときは、まずは平身低頭、真摯に謝ること。そして相手の言い分を最後まで聞く。間違っても言い訳などしてはいけない。


おまえが失敗しても会社はつぶれない。思い切ってやってみろ。


カリスマ性や大きな声は必要ありません。大事なのは「素直さ」や「謙虚さ」です。


権力と責任はセットで考えることが大事。大きな権力には、それ相応の大きな責任が伴います。


一隅を照らす気持ちで、自分ができることからやってみる、そんな真摯な姿勢は、きっと誰かが見ています。


最初の一歩が踏み出せない人が多い気がします。その理由は、考えすぎではないでしょうか。


仕事での基本動作は、若いうちのどこかで叩き込むべきもの。


できるだけ二者択一で考えるのではなく、「両方を満たすにはどうすればいいのか」という考え方をする必要があります。


ライバル会社の立場で考えると、その会社がどう攻めて来るのか、どう攻められると嫌なのかという、競争に勝つポイントが見えてきます。


場合によっては、意思決定をしないことを決定する場合もあり得ます。不十分な情報で自信が持てない場合は、そういう選択肢も用意すべきです。


経営者には、一見相矛盾することの両方に折り合いをつけることが大切です。「長期か、短期か」「品質か、コストか」「利益か、ミッションの実現か」など、一見相矛盾しそうな選択肢同士の折り合いをどうつけるのかが経営者の仕事だと思います。


どんな仕事にも本質がある。


限られた時間で、大量の仕事を抱えたら「これだけはやっておかないと」という部分をまず終わらせようとするはず。それが仕事の本質です。


上司との心理的な距離を縮める基本はまず挨拶。そして、その際の何気ない会話にある。


大いなるパワー(権力)には、大いなる責任が伴う。自分の持つパワーは自分のためだけでなく、世の中のためにぜひ使ってください。


人を治める前に自分を修める。まずは自分自身の徳を高め、まわりから信頼を得ることが大切。小さな約束を守っていくことで信頼関係はつくられていく。


最初から、世のため、人のためというような高い志を持つ必要はありません。ミッションも徐々に進化、成長させていけばいい。


今、世の中は猛烈なスピードで変化しています。その変化を正確に予測するのは不可能。常に原理原則に戻って戦略・戦術をその都度、考えるしかない。その原理原則がミッションなのです。


私には、合計3社、8年間の社長経験があります。その経験から、企業経営にとって一番大切なものは「ミッション(使命)」だと痛感しました。「ミッション」とは、企業の存在理由です。


経営者には痛みを伴う決断をしなければならない時があります。それも社長の仕事。恨まれる覚悟も必要。


リーダーは私心をなくし、世のため人のためという気持ちを持たなくてはならない。


企業にはいろいろな価値観を持った人がいます。しかし、会社で働いている間は、同じ方向を向いてもらわないと困ります。その共通のゴール、目印としてミッションが必要なのです。


若い人には無限の可能性があります。自分はこの程度と思わず、積極的に自らのミッションを持ってそれに挑んでほしいと思います。


大半の業務は、それを一生やるわけではありません。ですが、次にどんな仕事をするかは、いまの仕事の実績が左右します。私自身の経験を振り返ってみても、無駄だった経験はひとつもありません。仕事の報酬は仕事なのです。


「好きなこと」「得意なこと」「人のためになること」という3つの要素の重なる部分を追求すれば、自分が追求すべきミッションが見えてきます。定期的に自分を見つめ直し、それぞれのミッションを早い段階で見いだしてほしい。


社会や企業など、自分以外のものにやりがいを求めるのではなく、物事を「自分起点」で考えてほしい。自分のやりたいことを実現するにはどうすればいいか、常に頭を動かすことが大切です。


週に1度、せめて2週間に1度、半日くらい自分を省みる時間を作ってみることをお勧めします。定期的に自分の人生について思いを巡らすことはとても有益です。


離職率の高いときは人への投資をしにくいものですが、あえて先行してそれに取り組むことで、好循環を生むことができました。


企業の経営理念には美辞麗句が並び、ただのお題目に過ぎないというケースは少なくありません。それを実のあるものにするためには、理念に合った行動を取る社員に対する、明文化された評価軸が必要です。


本は多く読むことに越したことはありませんが、それよりも「いい」と思った本は何度も繰り返して読むことをお勧めします。良書は読むたびに新たな発見があるものです。そういう礎となる本に出合えば、人生は豊かになります。


何にせよ、与えられた仕事に打ち込み結果を出せば、自信につながり、思わぬところで後のプラスになります。社内留学制度に合格し、MBAを取得できたのも、社長賞猶得の実績が、大きく後押しをしてくれました。


私が経営者として招かれるのは、何らかの問題解決を求められてのことです。どの会社も、それぞれに違った問題を抱えていましたが、まず最初に行ったことは企業理念、ミッションに戻ることでした。


どんなフィールドで起業するにしても、次の3つを確認してほしいと思っています。(1)自分の好きなこと(2)自分の得意なこと(3)人のためになること。この3つの輪が重なるところに起業のヒントがあるはずです。きっと成功します。あなたなら。


誰しも一度きりの人生。やらない後悔よりも、やった後悔をすべきです。


できるだけ早い時期に、自分で手を挙げてリーダーのポジションに就き、多くの失敗を経験しておくことが大事です。そして、会社員のうちにその失敗を乗り越える胆力を鍛えて、人格的にも成長しておくことが大切です。最後は「人間力」なのです。起業し、ひとたび経営者になれば、そこは自己責任の世界。もうあなたを守ってくれる会社や上司はいないのです。給料日に、誰もお金を振り込んではくれません。


日本にはまじめなフォロワー(追随者)たる人材は多いけれど、真の経営者・リーダーが少ない。だからこそ、これまでの経験、ノウハウを惜しみなく提供しながら、真のビジネスリーダーを育てる活動に注力したいと思っています。今、私がこの世に生かされている意味、ミッションをこれからも考え続けたい。


素晴らしい技術・商品と資金があれば、ビジネスはうまくいくと、多くの人が考えていますが、それは大間違い。事業にかける熱いパッションと、明確なビジョンを持つリーダー=経営者がいなくてはダメなのです。


私は「企業は世の中をよくするために存在している」と信じています。会社には存在理由がある。その存在理由がミッションです。THE BODY SHOPは化粧品を通じて、スターバックスはコーヒーを通じて世の中に貢献するミッションを持っている。ですからこのパートナー(スタッフ)はスターバックスのミッションを体現してくれたわけです。企業は株主のためだけにあるのではありません。


経営は人がすべてである、と実感していましたから、社員のモチベーションを高める施策を数々実施しました。初めてお店に自由裁量予算をつくったスターバックスでは、こんな出来事もありました。ある雨の日、店舗の目の前で交通事故が起こりました。それを目撃したスタッフが、事故を起こし茫然と立ちつくしている女性に、一杯のコーヒーをお渡ししたそうです。その後私は、女性からいただいたお礼の手紙で、そのことを知りました。


経営をするときは、できるだけ多くの店舗を訪問するようにしました。それでも頻繁に訪問することは不可能なので、店舗のリーダーあてにメールで「社長からの手紙」を送り続けました。社長室とお店との距離を縮めることで、理念、ミッションの深化、浸透を図りたかつたのです。


アトラスの再建のときに一番腐心したのは、各事業部の次の成長の種を育てること。経営に取り組み始めてから、社員たちが徐々に自主的に動き出し、外部の人からも「アトラスはいい方向に変わり始めた」と言ってもらえるようにと。


スタッフの前で、初めて社長就任演説をした際、MBAで学んだ「キャッシュフロー経営」や「企業価値向上」の重要性を伝えました。でも、それが全く響かなかった……。そこから、率先垂範を徹底することにしました。小さなことですが、会社の受付周りが汚かったんですね。社員に「きれいにしよう」と言うだけではなく、まず自分が雑巾を持って掃除する。そして、アトラスのリバイバルプランを作成し、不良在庫の一掃や子会社の整理などをしました。


ビジネススクールでは、ファイナンス、マーケティング、ヒューマンリソースなどを勉強します。しかし、数字がすべてという授業に、私は疑問を感じていました。人を動かすためには、「情」も大事なのではと。このときに、東洋哲学をはじめ、孟子や孔子の中国古典、司馬遼太郎さんの歴史小説などを読みあさり、自分なりに心のバランスを取っていました。


20代後半の頃、自宅の近くに、ハンバーガーチェーンA社と、B社の店舗がありました。ほぼ同じ商品、時給なのに、片方はスタッフが楽しそうに働き、片方は嫌そうに働いている。なぜ店員さんのやる気に差があるのか?これがまさしくマネジメントの差であると気づいて経営に興味を持ち、後にMBA取得を目指したのです。


学校では学級委員、野球部ではキャプテン。いつの間にか、チームのリーダー的ポジションについていました。日産では、入社時に「社長になる」と大それた宣言をしていましたが(笑)。志だけは高かったですね。


スターバックスに入ったとき、レジで注文を受けた後、パートナー(店員)がバーカウンターでお客さまに商品を手渡す時が、この仕事の火花の散る(付加価値が発生する)瞬間であるはずです。偶然にも、スターバックスのコミットメントに、「Moments of Connection(顧客とつながる瞬間を大切にする)」があります。全社員の意識をその火花の散る瞬間(Moments of Connection)に向けなければならないと感じました。それが「経営者の一番大事な仕事」と言っても過言ではないのです。


日産の後、私はコンサルティング会社や世界的飲料メーカーに勤務していますが、やはり生産管理や営業での現場経験が生きました。コンサル会社や外資系企業には私より頭のいい人材がたくさんいます。でも、彼らには「工場の経費を1円削るのがどれほど苦しいか、クルマ1台を売るのがどれほど大変か」なんて話はできません。社内でもクライアント先でも、現場の話は興味を持って聞いてもらえました。そういう意味で、必死でやりきったこと、そのとき得た経験は、異なるフィールドでも通用する。そんな原理原則を、身をもって学んできたと思っています。


日産ではMBA取得後には、財務畑も経験し、3兆円の資金管理もしました。日産では、実に多彩な業務を経験させてもらいましたが、振り返ると、目の前の仕事すべてに、常に全身全霊をかけて当たっていた。そして失敗も含め、無駄な経験は、ひとつとしてなかったと断言できます。30年前の経験が、今の仕事にも大いに役立っています。


日産では自動車のセールスもやりました。ちなみに当時、新車1台を売った報奨金が1500円。私は報奨金狙いではなく、販売記録をつくって社長賞を獲得すると決め、飛び込み訪問、チラシの投げ込み、何でもやりました。まず目標を定め、実績を出すために必要な戦略を考える。そして、決めたことを一所懸命とことんやる。結果、断トツの結果を出し社長賞を獲得しました。


大学卒業後に入った日産での最初の配属は、追浜工場の生産管理部です。その後、協力会社の生産管理・指導を担当する部署へ。工場で、ストップウォッチとにらめっこしながら、100個の問題点を洗い出す。そんな仕事に明け暮れていました。当時の上司は、私の「心の師」的な存在で、尊敬していました。一緒に車体組み立て工場に出向いた時、その上司が言ったのです。「車体のパーツが最終的に組み合わさる瞬間、火花が飛ぶ。この瞬間だけが付加価値を生み出し、それ以外の工程はすべて無駄だという目で見なさい」と。どんなビジネスにも火花が出る瞬間、つまり付加価値を生み出す「本質」がある。まず、それを見極めることが、マネジメントの出発点。その上司は、仕事人としての真髄を教えてくれました。「火花の瞬間が大事」という教えは、どこの会社のCEOになった時でも、最初に考え、実践してきたことです。


女性は敵に回せばこんな手強い人たちはいないです。逆に味方になってもらえば、損得を抜きにして大きな力を発揮してくれます。


「資料を作って」と上司から指示されたときに、「資料を作る」という作業にだけ意識が向いて、「何のためにこの資料を作るのか」ということを意識していないと、良い仕事をすることができません。「午後のブレインストーミングの資料」という目的がわかれば、詳細なものを丁寧に仕上げるのではなく、簡潔に素早く作ることが必要だと判断できます。あるいは、「来週の役員会で5億円の投資を決定するため」だとわかれば、精度が高く見やすい資料を用意すべきだとわかります。


40代からの仕事は、人に任せる、人を育てることで成果を出す能力が求められる。優れたスキルを持っていても、人の協力なしに大きな成果は出せません。人が力を貸すかどうかは、最終的にその人の魅力(徳)にかかる。そうなれるよう自分を磨くことです。


30代は、社内の処世術を覚えて出世を得ることを目標にせず、履歴書に堂々と書ける「実績」を残しましょう。他社でも通用する力をつけるのです。


ザ・ボディショップ時代に採用の最終面接で出会った女性に「君は声がとても素敵だから、広報などの仕事が向いているね」と言ったのを、彼女は十年近く経った今でも覚えていてくれて、「あのときの言葉が自信につながった」と言ってくれました。


ミッションや経営理念というものは、世のため人のためといった、日常業務とかけ離れた内容であることが多い。それだけに、形骸化、陳腐化しやすいものです。だからこそトップは、繰り返しミッションを語り、常に組織全体に浸透させ、行動化できるよう働きかけ続けなくてはならない。


私は日々の仕事の中で、何度もミッションについて自分の考えを語りかけました。朝礼で語り、マネジメントレターに書き、日々の会議やミーティングで触れる。また、ミッションに適う行動をしている人を朝礼などで褒めました。こうしてミッションの浸透を図った結果、業績が好転していきました。


ハワード・シュルツの退任後、外部から迎えた後任のCEOが効率を優先させ、コーヒーの味やサービスの質が低下しました。当然、業績も低迷していきました。そこで、復帰したシュルツが最初にしたのが、7項日からなる新しい行動規範の発表でした。「コーヒー」というスターバックスの原点に立ち返るためです。


スターバックスのミッションは、「人々の心を豊かで活力あるものにするために――ひとりのお客様、1杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」という言葉。これをパートナー(従業員)一人ひとりが意識することで、店頭に立つことが単なる労働ではなく、大きな喜びになっています。お客様を笑顔にすることが自分たちのミッションなのですから。


スターバックスの成長を支えているのは、なんと言っても、そのミッションです。


その都度自分に「越えられるか越えられないか」というハードルを課してきたことが、経営者への道につながったのだと思います。


留学したときに勉強になったのはMBAの理論もさることながら、日本ではみることのできない多様な価値観でした。キャリアも多様で、アフリカで看護師をしていた女性がビジネスに目覚めてMBAを取得し、シリコンバレーで起業するといった事例が、そこかしこにありました。「会社のレールを踏み外さないことが大事」という日本の感覚とは大きく異なる世界を知ったのです。のちに転職を決めた際、当時はまだ珍しかった外資系企業を選んだのも、この体験が背景にありました。


若い頃は、私も「時間術」「整理術」といった類のハウツー本をよく読みました。妻には「またそんなもの読んで」などとバカにされたものですが、こういうテクニックは、一度吸収したら長く役に立つものもあります。若いうちは、そうしたことを身につける努力をするのも悪くないでしょう。


意外と自分が何にどれだけ時間を使っているかは意識できていないものです。調べてみると、1日のうちメールチェックに2時間も使っていたり。機会を見つけて見直してみると、能率が上がることは多いでしょう。


何となく元気が出るような本というのも持っておくといいでしょう。社会人生活をしていれば挫折を味わうことは何度もあります。元気なときと、そうでないときに読みたい本は違うものなので、意識して作っておくと、いざというときに役立ちます。私は気に入った言葉を集めた冊子を自作していました。


つき合う友人を選ぶということが大切です。非情なように聞こえるかもしれませんが、「敬して遠ざける」という言葉のように、つき合いたくない人とはそれとなく距離を置いた方がいい。一緒にいて文句ばかり言う人や、自分の元気がなくなる人とは、無理につき合わない方がいいでしょう。その代わり、パワーをもらえるような人とはしっかりと向き合うべきです。ほかの部署でも構わないので、尊敬できる上司や先輩を見つけて、その人のようになることを目指して頑張るというのも有効です。


新人時代は社会人として、あるいは人間としての基礎ができる時間と言えます。人事部や、教育に当たる直属の上司は「人生を左右する重要な時期に接している」という自覚を持って、新人が自身のミッションを築いていけるように適切にサポートすることが求められます。


いわゆる「イエスマン」は上にいる人間にとっては扱いやすいものですが、そういう人は得てして自分の部下にもイエスマンであることを求める傾向があります。そうした人がどんどん昇格していけば、上司の言うことに若手が異議を唱えなくなり、社内はイエスマンばかりになってしまいます。


会社側のメッセージを従業員に伝えるには、座学の研修なども大事ですが、最も効果的なメッセージは人事です。どんな人を昇格させ、どんな人を昇格させないのか。これほど会社の方向を如実に示すものはありません。


豊富なモノに囲まれて育ったいまの世代は、お金の量と幸せの量が必ずしも比例しないことをよく分かっています。生活に支障がないなど、一定の水準を超えていれば、給与は直接仕事のやりがいには結びつきません。それよりも、やりがいのある仕事や役割をどれだけ与えられるかが、企業にとっては重要です。


「ただ計算しておいて」と言われれば、仕事を受ける側もそれ以上、仕事の質を改善する余地がなくなります。ですが目的が分かれば、そのために「間違いが許されない資料ならば、3回チェックしよう」、あるいは「急ぎの資料ならば、調べるのに時間がかかる正確な数字は概数で済ませよう」といった判断を自分でできます。細かなことですが、こういったことがやりがいにつながるのです。


明確なミッションを持つ必要があるのは、新人を受け入れる先輩社員や経営陣も同じです。自分たちは何のためにこの業務、この事業をしているのか明確に説明できなければ、人はなかなかついてきません。例えば簡単な表計算の仕事を新人に頼むとしましょう。その際に「これは役員会で使う資料だから、間違いがないようにして」とか、「現状を大まかにつかみたいだけだから、できるだけ早めに仕上げて」などといった言葉をつけ加えるだけで、依頼される方の印象は随分と異なります。


目の前の仕事で実績を出すというのは、大抵の場合は非常に苦しいことです。だからミッションが必要になります。「いま頑張るのは、将来こうするため」という意識があれば、自分が前に進んでいる実感が持て、仕事にも意欲がわいてきます。


実績が出ないのを「仕事内容が自分に合わないから」と言っても、そんな人はどこにも相手にされません。希望の仕事でなくても結果を出すことで、周囲の評価が高まり、「じゃあ、あいつに仕事を任せてみよう」となります。転職する場合でも、実績を上げてこそ履歴書に言ける内容が増える。


何かしらのミッションを実現するには、我慢しなければいけないことや、乗り越えなければならない壁が当然あります。私自身、何度も転職をしてきましたが、いたずらに転職を勧める気はありません。なぜなら、目の前にある仕事で実績を上げることがすべての前提だからです。


「起業して何をしたいのか」がはっきりしていなければ事業はうまくいきません。既存の企業組織に対する反発として、起業自体が目的化している人も見受けられますが、それではダメなのです。


私は研修で話す際、従業員に「必ずひとつ質問をしろ」と求めていました。そうすれば同じ話でも懸命に聞くからです。ピント外れの質問をすれば恥をかくので、どうすれば的確に相手の意図を捉えられるか考えもするでしょう。意識を変えるだけで、得られる効果は劇的に変わるものです。


明確な目標を持って業務に取り組むのと、漠然と頑張ろうとするのとでは、表に出る結果は大きく異なってきます。


ミッションを適切に進化させていくために、どうしても自分のことをその都度深く内省する必要が出てきます。それをするには細切れのスキマ時間ではダメです。ある程度まとまった時間が必要になります。若いうちは目の前の業務に追われて、なかなかそういった時間を確保しにくいでしょうが、意識してつくっていくべきです。


ミッションは立場や経験によって変わっていくものです。進化すると言ってもいいかもしれません。若い頃は自己実現や家族の幸福などのウエートが高いでしょうが、出世して立場が上がれば、部下のことや部署全体のこと、取引先のことなども含めて、「何を成すか」を考えなければなりません。経営者ならば企業全体のこと、そして社会にどう貢献するかといったことも視野に入れることが求められます。


大企業に入ったことに安住し、組織の「歯車」になってしまえば、社外で通用するキャリアは何も積み上がっていかない。


個人のキャリアという視点で捉えると、いまは大企業に勤める方がリスクは高いと考えることもできます。大企業の仕事は、関わる金額の規模などは大きくとも、業務内容などは細分化されていることが多いからです。事業のほんの一部分しか分からない人材は、外部に出ればほぼ役に立ちません。


過去には、いい大学に行って大企業に入り、そこで実績を上げて出世していくというモデルコースがありましたが、いまでは崩れ去っています。価値観は多様化し、ある意味で画一的な人生から人は自由になったとも言えます。ですが、その自由の裏返しとして、個人が自分なりの答えを見つけなければならなくなっているのです。


いま社会の変化は激しく、自分が就職した企業や業界が30年後にどうなっているかなんて誰にも分かりません。慎重になるのもうなずけます。ですが、そんな不確実な状況だからこそ、「自分はいったい何をしたいのか」という根源的な問いに対する答えを見つける努力が重要だと思います。


大学を出たあとに入った日産自動車の入社後の挨拶で、私は「社長になりたい」と言いました。当時は社長がどんな仕事か全く分かっていませんでしたが、「どうせ目指すなら最も高いところ」と単純に思っていました。根拠なんて何もなかったのですが、そうした夢を持つことは若者の特権だと感じていたのです。


日産自動車の新入社員時代、私は大きな目標を持とうと「社長を目指して頑張りたい」と公言していました。日産では実現しませんでしたが、3社の社長を経験することができました。高い目標を掲げ、公言し、自分を追い込んで努力したからだと思っています。


偉業を成し遂げるリーダーは、壮大なミッション(使命)を持っています。ビジネスパーソンの場合、「自分がこの世に生かされている理由」「何のために働くのか」といったことを考え、自分のミッションを再確認してください。


「あの人についていきたい」と言われるリーダーが持つ5つの共通点。

  1. 壮大なミッション(使命)を語る。
  2. 無私で働く。
  3. 何をすればいいかわからないときは小さな行動を起こす。
  4. 自らの権力に対して畏れを持つ。
  5. 素直な心を常に持つ。

日産の販売会社に出向したとき、トップセールスの人が書いた本を20冊以上読んだ。どの本も8割は同じことが書かれていて、この8割こそ「営業のエッセンス」。ならば、8割の本質を守りつつ、自分に合った戦略や手法を工夫すればいい。


日産自動車入社3年目、大阪の販売会社に出向になりました。一般家庭に飛び込み営業を繰り返す泥臭い仕事。腐りかけましたが、心機一転、「トップ営業になって社長賞を取る」という目標を立てて、自分を鼓舞しました。


名著の良さは、読む側の機が熟していないと分からないもの。その場合は、ひとまず本棚に置き、いつか再読すればいい。今、自分が置かれている状況から、何を学ぶべきかを考えるのが、本選びの第一歩です。


自分で納得できる目標を設定し、戦略的に、要領よく、楽しく達成することを考えることで、前に進み続けることができる。


私は日産時代、クルマのセールスをしていた時期があります。やりたい仕事ではなかったのですが、それでも社長賞を穫るというポジティブな目標を設定して、結果を出すことができました。つねに目標を設定することで、一種のゲーム感覚で楽しめるようにしたからです。


自分の意見と会社の方針が対立して見えるときも、双方が納得できる方法を考えること。ポジティブさを持って臨めば、道は必ず開けてくると思います。


今日明日の資金繰りに苦しんでいる状況でミッションを語っても、意味はないでしょう。倒産すればミッションを実現することは不可能になるわけですから、目の前の資金繰りが最優先になります。


意志決定をする際、まずいつまでにその意思決定をしないといけないかを確認します。それがわかれば、ぎりぎりまで情報を集めます。それも、できるだけ一次情報を重視します。余裕があれば、実際の現場を自分で見に行ったり、関係者の意見を聞いたりします。


与えられた仕事を片っ端からやっていくというのは、歴史の試験勉強をするのに教科書を最初から順に読んで、最後まで読み切れないようなものです。それではムダが多い。試験で良い成績を取ることが目的なら、試験に出そうなところから始めればいい。たとえば、過去問を調ベたり、先生が授業で強調していたところを思い出して「こういう問題が出そうだな」と予想し、そこを集中的に勉強したりすればいいのです。


仕事は、限られた時間の中でどうやるのが一番効率的かを常に考えなければなりません。できるだけムダなことはしないようにするのです。


私は部下に指示を出したとき、復唱をしてもらうようにしていました。ただオウム返しをさせるのではなく、自分の言葉で言ってもらうのです。すると、こちらの話を理解しているのかどうかがわかります。一方、上司からわかりにくい指示を受けたときは、自分のほうから「要するに、こういうことですか?」と尋ねるべきでしょう。


日本語でも、相手が使っている言葉や資料に書いてある言葉が理解しにくいときは、「要するに、これはこういうことですか?」と尋ねるべきです。自分の言葉で表現することで、物事の本質が見えてくるのです。


人によっては、横文字や難しい言葉を使いたがりますよね。それが格好良いという感覚があるのかもしれません。でも、聞いたことがないような言葉で説明されても理解できません。たとえば、外国人と英語で議論をしていると、やっぱりわかりにくい表現や単語が出てきます。そのときは、「要するに、こういうことですか?」と確認をすべきです。自分が知っている言葉で言い換えて、意味を確認するのです。


相手の立場から考えるということは、自分を客観視することにもなります。上司がパワハラまがいの接し方をしてきて、顔を見るのも嫌だというときに、その上司の立場になってみる。すると、上司も昇進試験間際でプレッシャーを受けていたり、ひょっとすると家庭問題でイライラしているかもしれない。上司の立場がわかれば、気分的にとてもラクになれるでしょう。気分的にラクになれば、解決法も見えて来て、思考の幅も広がります。上司を上から目線で見られるほど、物事を引いて見ることが大切です。


本来は、仕事の目的や背景を説明するのは上司の役割です。私自身、部下に仕事を頼むときには、「何のための仕事か」をできるだけ説明していました。しかし、実際には、そうした説明をしない上司が多いでしょう。そういう場合は、黙って指示どおりに仕事に取りかかるのではなく、部下のほうから目的や背景を尋ねるべきです。


仕事でなくても、趣味でも、新卒ならばアルバイトでも部活でもいい。自分がもっとも楽しかった経験、具体的なストーリーを聞けば、その人の価値観がわかるし、会社へ貢献してくれるかどうかも判断できる。


経営人材に近づくほど、自分一人では何もできません。そこで勘のいい仕事をするためには「人」を知らなければならない。モノを言うのは目先のノウハウよりもいわゆるリベラルアーツと言われる歴史や文学の古典的な教養でしょう。


読書も大事ですね。特に歴史や文学の古典は、優れたケーススタディの宝庫。空間的・時間的に体験できないことをデータベースに加えることができるのですから。


将棋の棋士は、たくさんの定石を憶えているからこそ次の一手が瞬時にひらめきます。自分の仕事に関して大量の経験をし、事例を集めたデータベースを充実させることで、勘は磨かれるのです。


あまりにズバズバと上司に質問するのは気まずいという人もいるでしょうね。私が若い頃によく使っていた手は、こまめな報告をすること。仕事の途中で「現在こんな感じに進んでいます」と報告する。すると、もしも仕事のポイントがズレていたら「ちょっと違うよ」「頼んだのはこういうことだよ」と上司から修正が入るはず。結果として、質問したのと同じ効果が得られるわけです。報告をメールですれば記録が残りますから、後で上司に「こんなことを頼んだんじゃない」とひっくり返されるリスクも軽減できます。


私は、部下は上司を教育していいと考えています。部下が上司のニーズをきちんと問いただすことは、自分が仕事の本質をつかむためだけでなく、上司の指示する力を鍛えるためにも役立つのです。


一瞬で正解をつかめたらそれが一番です。でも、仕事は「今すぐ判断してくれ」という案件ばかりではない。「明日の午前中」とか、「1週間後」といったデッドラインがあるものです。その場合は、ギリギリまで判断材料を集めることも重要。早く判断することが正しいのではなく、正しい判断をすることが正しいのですから。質の高い情報さえ集まれば、たいていの判断は中学生にもできる。それは経営判断であっても同じだと私は考えます。


今でも私は講演や執筆の仕事は基本的に断わりません。もちろんハードですが、忙しい時こそ頭がフル回転する。たとえば、空き時間の30分で原稿を書かなければいけない、といったときですね。余裕があるときに書いた原稿とくらべても、不思議とこういう時に書いた原稿はクオリティが高い。これも、負荷をかけることで本質にフォーカスせざるを得なくなるからでしょう。


ザ・ボディショップやスターバックスの社長をしている時代に、従業員に向けてマネジメントレターを出し続けた経験が、今役に立っています。忙しいなかで毎週数千字のレターを書き続けるのは本当に大変で、何度もやめようと思いました。それでも続けることで、書くことの本質をつかむ経験ができた。今、執筆の仕事が苦にならないのはこの経験のおかげでしょう。


限界以上の業務を抱えて、期限が迫ってくるなかでものすごい負荷がかかる。そんなときこそ本質を見抜く力、つまり仕事の勘を養いやすい。限られた時間で多くの仕事をこなさなければいけないときには、何が大切かを見極めなければ仕事が終わらないわけですから。


大学時代、野球部でピッチャ-だった私は、合宿で500球の投げ込みをしたことがあります。肩を壊しかねない、科学的には何の意味もない練習ですが、このときにつかめたことがある。200球を超えたあたりから、力まずに、自然に投げられるようになったのです。体力は限界ですから、無駄な力を抜かざるを得ないわけですね。ギリギリまで負荷をかけて、必死でやるしかないという状況になると、自然に無駄は削ぎ落とされるものです。それでいて球はスーッと伸びているのが自分でもわかりました。


上司に資料作りを頼まれたとします。そのときにいきなり作業に取りかかるのではなく、ほんの数秒でも「いつ、何のために、どのように使われる資料なのか」を考えて把握できる人は勘がいい。一方、勘の悪い人はなんとなく作業を始めて、上司は「今すぐにデータが欲しい」と思っているのに、レイアウトに凝って時間をかけてしまったりする。頑張っているのに評価されない、という人は、たいてい無駄なことに力を入れているものです。


上司の考え方を理解し信頼関係が生まれるまでは、報連相を過剰なくらい行うべき。報連相が過剰だった場合は「やりすぎだよ」と苦笑されるだけで済むが、足りない場合には「勝手な行動をするな」と叱責され、不信感を持たれてしまう。


私自身はどちらかと言えば、なめられやすいタイプ。私も言いたいことを言えないほうですし、カリスマリーダー的な強さもありません。そういう自分がいるとしても、大事なのは役割を演じ切ること。「こんなことは部下にとても言いにくい」と思っても「社長をやっている岩田として、会社のためにここは強く注意しなくてはいけない」と考えると勇気が湧いてきます。自分の思いではなく、部署のため、会社のため、あるいはその部下自身のため、といった「大義」を持てるかどうか。言うべきことを言う上司になれるかどうかは、そこで変わってきます。


相性の悪い上司とやっていく上では「斜めの上司」、違う部署の上司と仲良くしておくことも大事です。困ったときに相談したらいいヒントをくれたり、時には自分の部署に引っ張ってくれることもあるかもしれません。


上司が望んでいることがわかったら、心の中でどう思おうと表面上はそれに応えてあげればいい。魂まで売る必要はなく、「はいはい、こういう人なんだから、こうしてあげれば喜ぶんだ」という、まさにゲームの感覚です。そのためには、幽体離脱して自分と上司の関係を俯瞰で見てみる。すると、気に入らない上司が相手でもとても気が楽になります。この意識を持てないと、自分が潰れてしまうでしょうね。


大事なことは、上司と喧嘩しても絶対に勝てないということ。向こうは人事権をもっているわけですから。ここを乗り切るには、上司との関係は一種のゲームだと割り切ったうえで、“マーケティング”をすることです。つまり、その上司は何を望んでいるのかを探って、それに応えてあげること。


大切なのは自分のポジションを意識すること。そして「課長としての自分が求められている仕事は何か」というように、自分の役割を考えること。その上で、課長なら課長の役割を演じ切ることだと思います。


ヒラであろうと部長であろうと社長であろうと、またどんな部署に所属しているとしても、相手の信頼を得ていい関係を築くためには、自分のポジションをまっとうするのが第一歩だと私は思います。


あくまで一般論ですが、女性の部下に対しては男性の部下以上に等距離で付き合うことを意識する必要があります。つまり、えこ贔屓をしないように気をつけないといけません。たとえば、職場におみやげを持って行くとき、私はいつも「まず女性に配って、余ったら男性にも配ってください」と頼むようにしていました。AさんはもらったのにBさんはもらっていない、といったことに女性はとても敏感だからです。


リーマンショックの後、スターバックス本社からは新規出店ストップという方針を示されましたが、私はこういう時こそ安定的に出店するべきだと考え、全県出店を目指し、実行していきました。景気の悪い時こそリーズナブルな家賃で出店でき、いい人材が採用できるのです。


スターバックスでは、本社はお店をサポートする存在という意味で「サポートセンター」と呼びます。また、CEOもアルバイトもすべて「パートナー」という呼び方をします。


ミッションを高く掲げていれば、それに共鳴した人が入社してきます。私も創業者の書いたスターバックスの本を読んでミッションに共感し、入社を決めました。ミッションに共鳴した人は、会社に対して誇りと愛社精神を持って、長く働いてくれます。


企業は事業を通じて世の中をよくするためにある。それぞれの会社には存在理由があり、それがミッションです。ザ・ボディショップには化粧品を通じて、スターバックスにはコーヒーを通じて、世の中をよくしていくという使命(ミッション)がある。


留学時代から、合理的で数字ばかりの欧米式の経営に違和感を覚えていました。ビジネススクールでは、何でも数字に置き換えて考えることを教えられました。もちろん、必要なことですが、どこか腑に落ちなかった。経営には、数字(理)のほかに人(情)を理解しないといけないのではないか、と。


会議のとき、社長と同じ側に座って担当者から報告を求めるのは、上下の間をつなぐだけの「電話線上司」。部下は「無責任な上司だ」と判断して、自分もなるべく責任を負わないように無難なことしかやらなくなります。部下をやる気にさせるマネジャーは、部下の隣に座って社長と話をします。それが「責任はすべて自分が取る」というメッセージになる。言葉だけでなく、実際の行動で上司としての責任感を示せるかどうか。部下がやる気を出すかどうかは、上司の腹のくくり方にかかっています。


話し方をいろいろ工夫しても部下がやる気を見せない場合は、そもそも自分の責任感に問題があると疑ってください。


相手の立場に立ち言葉を使うことも大事です。私が初めて社長を務めたのは、ゲーム会社のアトラスでした。社長就任挨拶では、自分の方針をしっかり伝えようと、MBAで学んだキャッシュフロー経営の大切さなどを力説しました。ところが社員は無反応で、ポカンとしています。考えてみると、この反応はあたりまえ。現場の社員にキャッシュフローという言葉が身近に感じられるわけがないのです。その反省から、2社目のイオンフォレストの社長に就任したときには、独りよがりにならないように言葉を選びました。すると今度は、涙を流して聞いてくれる社員までいました。どんなに大事なことも、相手に伝わる表現でなければ意味がありません。


部下に資料の作成を頼むとき、優秀な上司は「役員会で使いたい」「私の備忘録として」というように、資料作成の目的を一緒に話します。目的が共有できていれば、あとは部下が自分なりに工夫して資料をつくってくれるからです。一方、ダメな上司は「このデータをグラフで入れて」と細かく指示を出す。このような指示は創造性を発揮する余地がないため、部下は前向きに取り組みにくいでしょう。


一時期、スタバを真似してお客様に「こんにちは」と声をかける飲食店が増えました。しかし、その多くはうまくいっていません。原因は、おそらく「こんにちは」という挨拶の形だけを取り入れようとしたからでしょう。大切なのは、形よりもミッション。むしろ形は現場に任せた方が、気持ちのいい挨拶につながるのです。


スタバは入店時にしっかりと理念教育をするので、パートナー(従業員)はミッションが大事であることをよくわかっています。しかし、もしミッションではなく、形だけを教えていたらどうなるでしょうか。おそらくパートナーは何か押しつけられたように感じて、挨拶は心のこもらないものになるはずです。


私が社長を務めていたスターバックスでは、お客様が来店されたときに「いらっしゃいませ」ではなく、「こんにちは」と声をかけます。「いらっしゃいませ」は売り手と買い手の関係で交わされる挨拶ですが、「こんにちは」は友達同士の挨拶です。あえてフレンドリーな挨拶をするのは、お客様と心でつながり、活力を与えたいというスターバックスのミッションがあるからです。


成果を出すマネジャーは、仕事を任せるといっても部下に丸投げするわけではありません。理念や方針、目的といった大きな方向性をきちんと共有したうえで、具体的なやり方を本人に任せます。


成果を出すマネジャーは、部下を萎縮させたり自由を奪うような話し方をしません。彼らが心がけているのは、部下がのびのびと動けるような話し方です。いま風の言い方でいえば、エンパワーメント。あれこれと指示せずに「きみに任せる」と伝え、部下のやる気を引き出します。


日産自動車に入社して2年目のころ、上司から言われて元気づけられた言葉があります。「おまえが失敗しても日産はつぶれない。思い切りやってみろ」この上司の言葉に後ろから支えられている安心感を覚えて、よし、頑張ろうと気合が入ったことを思い出します。


言われたとおりに仕事をしてしまうのではなく、仕事を自分でコントロールするという意思を持つこと。仕事が速い人になるためには、これが大切です。


自分の都合でスケジュールを決められないという人も多いでしょうが、それでもスケジュールをコントロールすることを諦めてはいけません。たとえば仕事を上司に頼まれたとき「ちょっと待ってください、いまやっている仕事が終わってからでいいですか?」と言えるだけでまったく効率が違う。ひとつの仕事を中断して別のことをやると、元の仕事に戻るときに手間がかかることはよくありますから。


長めの文書作成や企画立案など、ちょっと骨が折れそうな仕事がある場合は、とりあえず考えるべき問題を頭に入れたうえで、単純な事務作業を片づけていきます。人間の脳は、問題さえ頭に入れておけば他のことをやっていてもどこかで考えているもの。事務作業が片づく頃には、ずいぶん考えが発酵していますし、しかも雑務は片づいているので、じっくり考える時間も確保しやすい。そこで難問に取りかかると、スラスラと進むこともよくあります。


自分が作った資料をもとに会議で戦略が議論され、最終的には来期の経営方針が決定されるとしたら、エクセルで集計するだけの作業でも意欲が違ってくるはずです。また、目的がわかっていれば自分なりの工夫もしやすい。「この資料は役員用なのか。ということは、ご高齢の方が多いから文字を大きめにしよう」といった発想も出てきて、仕事の質も高まるわけです。


私は秘書さんに資料作りなどを頼むにも、いつどんな目的で使うものなのか必ず説明します。本来は上司が「なぜ?」をはっきり説明するべきなのです。でも、上司が言ってくれないならこちらから聞くしかない。「この資料は、どういうタイミングで何に使うのですか?」と、たとえうるさがられても聞きましょう。これは、格好いい言葉で言えばマーケティングをするということ。仕事には上司なり他部署なりといった「お客さん」が必ずいる。お客さんが望んでいないことをやっても、意味がありませんから。


無駄な仕事をしてしまう人というのは、「なぜこの仕事をするのか?」を理解していない。たとえば会議用の資料作成を頼まれたとします。それが役員会議用の資料だったらミスがあってはいけないでしょう。でも、部内のミーティングでブレストの素材にする資料だったら、必要な情報をざっくりまとめる程度でいい。「なぜ?」を理解することで、その仕事に求められるクオリティ、どの程度手間をかけるべきかがわかる。逆に、これがわかっていないと無駄な仕事をすることになります。


作業にかかる時間に関する限り人間の能力にはさして違いがないことが科学的に証明されている。差が生まれるのは間違ったことをやるからです。仕事が早い人は無駄なことをしていないだけで、作業自体のスピードが早いわけではない。


私は昔から「岩田は楽をしている」とよく誤解を受けたものです。仕事を何気なくサッとこなしているように見えるからでしょう。でも実際は楽をしていたわけではなく、混乱する前に仕事を片づけていたり、ミスをして仕事を増やさないように気をつけていただけなのです。


仕事が遅い人を見ていると、最低限のタスク管理や進捗管理さえしていないことが少なくありません。管理といっても特別なことをする必要はない。私のやり方は、すべての業務を書き出して、各項目の後ろに○を書いて十字で四分割し、あとは進捗状況に応じて○を四分の一ずつ塗りつぶしていくというもの。この程度のことでいいのです。付箋にやるべきことを書いて貼り出しておいてもいいでしょう。「当たり前のこと」と思われるかもしれません。でも、この程度のこともできていない人は多いし、そのためにうっかりミスをしてしまい、結果として納期遅れなどの緊急事態を招いて走り回る羽目になるのです。


飛び込んで打球をキャッチして、ユニフォームを泥だらけにしている野球選手はたしかに頑張っているように見えますし、ファインプレーだと称賛を受けることもあるでしょう。一方、本当にうまい選手は最初から打球がきそうな位置に守備位置を取っている。そして簡単に捕球してヒョイと送球する。これはファインプレーには見えません。つまり、本当にできる選手にはファインプレーはないのです。


仕事がスムーズに進まない人は、本来必要のない仕事をしていることが多いと思います。必要のない仕事というのは、要するに異常事態の処理のこと。ミスをしてお客さんに謝りに行くとか、納品が遅れて製品を航空便で送る手配をするとかいったことですね。これは、最初からきちんと仕事をしていればそもそもしなくていいはずのこと。でも、やっている本人は「今日も夜中まで一所懸命仕事をしている」と思っているわけです。


合計8年間の社長時代にやり続けたことが、ひとつあります。それは、社員にマネジメントレターを送り続けたことです。ほぼ毎週、私から社員に向けて、メッセージを発信し続けました。特に、ザ・ボディショップとスターバックスには店舗があり、お店のスタッフは自分が離れ小島にぽつんと取り残されたような気持ちになるのではないかと考えたからです。社長が何を考えているのか、会社がどの方向に向かっているのか、自分たちはどこに立っているのかを知りたいだろうと思って送り続けました。


アトラス社長時代、会社の玄関の受付が、とても汚れていました。すぐに総務の担当部署に掃除をお願いしましたが、数日もするとまた同じ状態になってしまう。そこで、自分で雑巾とバケツを持って掃除をしたところ、それ以来ピタッと汚れなくなったのです。「企業価値経営」などと偉そうなことを言うより、みずから雑巾を持って掃除することが、経営だと実感しました。


アトラスでの社長就任の挨拶で、「これからは、企業価値を高め、キャッシュフロー重視の経営を行なっていく」と、ビジネススクールで学んだことを得々と述べました。しかし、カカシに向かって話している感じでした。皆、身体はそこにあるものの、魂はないという感じで、全く反応がないのです。「経営というのは、こんなことじゃない。こんな話では社員の心は動かせない」と気がつきました。それから、朝礼などでは、「お客様に挨拶をしましょう」「遠くから来てくださったのだから、せめて玄関までお見送りしよう」、そんな話をするようになりました。


車のセールスは、今日頑張って、今日実績が出るものではありません。一度営業所を出れば、監視の目もありません。私は、モチベーションを維持するために、日々小さな目標を決めて、それを達成できれば、自分を大袈裟に褒めていました。例えば、今日は500枚チラシを配ろうと決め、すべて配り終えたら、「ああ、1日よく頑張ったな」と。あるいは、今日はこのマンション1棟すべて飛び込みすると決め、最後まで訪問したら、「よくやったな」と自分を褒めてやっていました。実際車が売れるのは、500軒回って1軒あるかないかです。ですから売れる保証は何一つありません。あたかもマラソンランナーが、「次の電柱まで」「あの角まで」と目標にして走るように、小さな目標達成をしては、大袈裟に喜んで、モチベーションを維持していました。結果、1年半で前任者の9倍の台数を売り、歴代出向者の新記録を樹立。日産サニー大阪生え抜きのセールスマンの中でも、粗利益が2位という成績を残しました。粗利益が2位というのは、つまり値引きをしないで売ったということです。念願のサニー大阪の社長賞と日産自動車の社長賞をいただくことができました。


岩田松雄の経歴・略歴

岩田松雄、いわた・まつお。日本の経営者。「スターバックスコーヒージャパン」CEO(最高経営責任者)、「ザ・ボディショップ」社長。大阪府出身。大阪大学経済学部卒業後、日産自動車に入社。工場での生産管理や営業、財務など様々な業務を経験。カリフォルニア大学ロサンゼルス校アンダーソンマネジメントスクールでMBAを取得。ジェミニ・コンサルティング・ジャパン、日本コカ・コーラなどを経て、コカ・コーラビバレッジサービス常務執行役員、ゲーム会社アトラス社長、タカラ取締役常務執行役員、イオンフォレスト社長などを歴任。その後、スターバックスコーヒージャパンでCEOを務めた。