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岡野雅行(岡野工業)の名言

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岡野雅行(岡野工業)のプロフィール

岡野雅行、おかの・まさゆき。日本の技術者、経営者。世界最先端技術を生み出す町工場として有名な岡野工業代表。東京出身。向島更正国民学校卒、旧制西部高等学校中退。その後、家業の文具・玩具部品用の金型製作を手伝いながら独学でプレス加工技術を習得。世界一細い「痛くない注射針」や、携帯電話の小型化に貢献したリチウムイオン電池ケースなどを開発。高い技術力を買われ、国内一流企業のみならず、NASAや米国国防省からも仕事が持ち込まれた。

岡野雅行(岡野工業)の名言 一覧

俺も最初、「痛くない注射針」の話を聞いたときは、正直、「これは無理だ」と思った。それで、専門の学者に相談したら、「物理的に不可能だ」というじゃないか。ところが、逆にこれで俺のやる気に火がついた。だってそうだろ。最高学府の学者が理屈でできないといっているものを、尋常高等小学校中退の俺がやっつけたら、こんなに痛快な話はない。そう思って引き受けたんだけど、これが簡単じゃなかった。何百回と試行錯誤を繰り返し、結局量産化に成功するまでに4年半かかったよ。


腕がいいのは当たり前。黙ってちゃ誰も評価してくれない。


遊んでいると、仕事じゃ知り合えないような人に出会うだろ。そういう人から教えてもらったひと言が意外に重いんだ。


落語には昔の人の知恵が詰まってる。だから楽しいだけじゃなく、発想やアイデアのヒントになる。勉強しようと肩肘張って聴くとダメ。楽しみながら聴くから頭に残る。


社内や取引先との打ち合わせに儲け話は転がっていない。自分に役立つお宝情報は、人付き合いの中に埋もれているんだ。そのためにお金を惜しんでちゃいけない。


他ができないことを次々に実現させると、「あそこは何でもできるから」と仕事が集まり始める。その結果、大企業からもどんどん仕事が入るようになる。


日本は減点法が根づいているから失敗もしないし挑戦もしない。失敗を怖れず挑戦しなきゃ。失敗は、ものづくりの仕事の基本だよ。


うちの会社はずっと「他がやらないこと」だけをやってきた。


いい仕事をしていたら、お金なんて後から入ってくる。仕事をしていないからお金が入ってこない。これは原理原則だよ。


「痛くない注射針」は、もう特許は切れたけど、いまだ誰も真似できない。俺しか作ることができないからさ。これが本当の特許なんだ。


大切なのは会社を大きくすることじゃない。いい仕事をして、結果的にお金が後から入ってくる。世の中、そういうもんだろ。


自分だけがよくなろうとしちゃ、ロクなことにはならねぇ。


目先の効率だけを考えてはダメ。一見、ムダなことが大事だったりするから。


これまでの俺の仕事人生は、10のうち、低く見積もっても8は失敗。試行錯誤して失敗を繰り返すから、成功できる。失敗はムダじゃなくて、成長に絶対に必要なもの。


人は他人の自慢話は話半分で聞くけど、第三者が褒めると信用するものなんだ。


世の中でモノになりたいんだったら、人と違ったことをやれ。


仕事っていうのは、成功するまでは失敗の連続なんだよ。失敗するのが嫌だなんていっていたら、成功なんてあるわけがない。


失敗しないような仕事ばっかりやっていたら、新しい技術が身につかないから、会社は伸びないし、いい仕事も来なくなる。


俺はいつも3年先、5年先を見て仕事をしている。


最後に役立つのは人からの生きた情報だね。友人の業者や受注先の担当者の人からの情報で、ふっと解決策を思いついたりする。人づき合いって大切だよ。


いまの若い人達は、パソコンで調べたり、情報があり過ぎて、やる前にわかった気持ちになってるんだよな。


どんなに風呂敷を広げても、それを実現したら詐欺じゃない。そうだろ。だからあたしは諦めない。


頭というのは無限なんだよ。これでいいということはないんだよ。人と違うことやっているんだからね、うちでしかできないことがあるんだから、それができていれば仕事はどんどん来るからね。


腕さえあればいくらだって稼げるんだよ。人ができない仕事をやるんだから。簡単にできない仕事をやるんだからさ。


いろいろなところにごますってないで、変わり者にならないとダメだよね。みんなに好かれようなんて思っているからダメなんだ。俺に言わせると気に入った人に好かれれば後は関係ない。


ファッション雑誌を見るといろいろなアイデアが浮かぶな。そんなの、全然関係ないと思うだろうけど、実は製品開発のヒントがいろいろあるんだよ。そんなこと普通の技術者は考えもしないだろうけどね。そこからヒントを頂いて「ああ、これはこうつながるんだな」などと応用するんだよ。


親父は技術一本やりでね。腕はすごくいいんだけど、商売は下手でさ。「相手を喜ばせる」精神が大事だと俺は思ったんだ。最終的に、自分が得するんだから。


学校ってところがよくない。失敗しないために、あれもこれも覚えろこれも暗記しろ、はみ出るってことを教えてくれない。違うんだ。社会に出たら、わざとはみ出して人のやらないことをやらなきゃ、成功なんてできっこない。


そろそろ仕事を辞めて楽しもうとは思わない。仕事は俺の生きがいだよ。そりゃあ、面倒なことや苦しいことはたくさんある。それがいいんだ。面倒で苦しいほど楽しい。だから俺は昔から、難しい仕事しか引き受けないって決めている。


仕事でも遊びでも、目の前のことに集中すればいいのに、理屈が先で、食う前から美味い不味いといっていたら、それはやる気も出なくなるよ。俺のところには中学生がよく来るけど、本当は頭が固まる中学生くらいまでに、そういうことを知っておかなければいけないんだけどな。


何でも、あえて人がやらないことをやるように心がけないとつまらない。人にバカにされても、自分がいいと思ったことはやってみなきゃ。実際、目の付け所が良ければ、1+1が5になって返ってくる。


会社を大きくしようと思ったらいくらだってできたけど、うちは小さいってのが武器なんだ。こんな威力がある武器を手放す気はさらさらない。社員が100人も200人もいてみろよ、その家族のことを考えたら、安い値段をつけられたって、それでやりますって言うしかなくなっちまうだろ?社長のわがままで、あいつは気に食わないからこの仕事はしないってわけにはいかないからな。


仕事で頭を使わないやつは伸びない。ただ真面目なだけじゃ駄目なんだ。どんなにいい腕を持ってても、それだけじゃ駄目。世渡り力がなきゃ仕事も人生も絶対にうまくいかないよ。薄っぺらい世渡り上手をすすめているんじゃないよ。人と情報のマネジメント力って意味だ。仕事の運命を決めるような決定的情報を入手するには、人と情報をどう使って、動かせばいいか、自分はどう動けばいいかといったことだ。


人からものをもらったときは、倍返しするといい。たとえば、3000円の菓子折りをもらったら、6000円のものを返すんだよ。これには理屈がある。くれた人は、俺なり家族なりのことを考えて、品物を選んでくれてるわけだ。その気持ちへの感謝が3000円分。そして、当然、その品物に対しても同額のお返しをする。合わせて6000円ってことになるわけだ。お返し分の何百倍、何千倍ものいいことが起きる。ホントだから覚えておくといい。


俺はしっかり肝に銘じてる。ただ奢られたり、ただもらったりなんてことはしない。その場は得した気分になるかもしれないけど、それで一生頭が上がらなくなったんじゃ、えらく高くつくことになるんだ。恩を受けるってことは、ハンデを負うってことなんだ。よっぽどの覚悟がなくちゃ、一生もんのハンデなんか負えねえよ。俺はいつも現金決済、飲み食いも、遊びも自腹でやる。仕事をしてりゃ接待を受けることだってあると思うけど、されっぱなしはいけない。必ず借りは返しておくこと。借りを作ったままじゃ、対等な立場で商売ができねえ。


まわりにいる、ついている人間をよく見てみな。何か見えてこないかい?律義さ、熱っぽさ、粘り強さ、なんだっていいんだよ。いいなと感じたところは、その人が持っている世渡り力だ。ありがたく勉強させていただいちゃえばいい。まんま真似したっていいんだ。


いくら値段が高くたって値段を超える付加価値があれば、それが適正価格ってもんなんだ。ノウハウってやつは値段がつけられない。いままで誰もやったことがないことをやるためのノウハウだから、まだやってもいないうちから、どれくらい価値があるかなんて判断しようがないだろ?最初はえらく高いことをいうなってびっくりするんだろうけど、終わってみたら、岡野さんと知り合ってホントによかったって言ってくれる人ばっかりだね。


自分の仕事は一生懸命やっていますって言う人がいる。だからどうなの?俺はそう言いたい。本業をきちんとやるのは当たり前だし、本業なんてのは、習えば誰だってそこそこはできるようになるんだ。それだけじゃ世渡りは難しい。本業以外のプラスアルファを持つことが大事なんだ。要はあいつが来ると面白いよ。何かやってくれるよってってもんを身につけることだ。


勝負は普段から人付き合いにどれくらいお金を使っているかだ。情報が欲しい時だけ「こんちは」と来るやつに、重要情報をくれる人間がいるか?その時とくに仕事がなくても、話をしに行ったり、一杯奢ったりする。情報網はそうやって作るしかないんだよ。


大企業が突然、経営危機に陥るってことがあるだろ。あれは上層部が、下から上がってくる情報を鵜呑みにしているのが原因だ。下は都合の悪い情報は知らせっこねえんだから、それを鵜呑みにしちまったら、ほんとのところは何も見えない。裸の王様になるに決まってんだよ。上層部が肝心な情報を持ってなきゃ、経営危機にだってなるし、倒産だって、して当然だろ。


釣でいうコマセ(撒き餌)を、こんだけ撒いて鯛が3枚上がらなきゃ元は取れないななんて考えて撒くやつがいるかい?釣果は二の次、その場は損得抜きで、豪快にパッと撒いてこそのコマセだろ。俺はそんな付き合いこそが世渡り力だと思ってるんだ。一番価値があるのは、情報を持っている人間なんだよ。だったら、その人間にお金を注ぎ込むのは当然じゃねえか。人間を大切にする。大切にするためのお金は惜しまない。それが世渡り力の原点だ。


金は天下の回りものって言葉があるけど、回ってきたお金をよそさまに回すから、また自分のところに回ってくるんだよ。欲出して抱え込んじまったら、それっきり回ってこなくなるもんなんだ。周囲を儲けさせれば、皆が岡野に仕事を取らせようぜということになる。


人と話すのは面倒くさい、人付き合いは煩わしいなんて言ってたら、いい情報は入ってこないし、成功なんてどっか行っちまうよ。成功するには、しゃべって、人と付き合って、先端情報を取りこぼさない世渡り力を鍛えるしかないんだよ。待ってたって情報なんか集まっちゃ来ない。常に大企業の人間と付き合ってないと駄目。大企業の第一線にいる人たちと話してると、技術がどんな方向に進んでるとか、最新の素材開発はどんな段階なのかとか、俺たちにとってお宝みたいな情報が入ってくるんだ。現場の切実な悩みなんかもわかるんだよ。


人付き合いを上手くこなせないようじゃ、信用だってもらえないし、可愛がってももらえない。あいつを呼んでも、ただいるだけでロクに話もしないし、もう呼ぶ意味がないなってことになったら、情報交換だってできなくなる。ほうぼうから声がかかるってことが大切なんだ。


裏切られるってことは、自分を鍛える経験でもあるんだよ。人間色々、仕事も色々だってことを身に染みて知ることになるし、自分がしちゃいけないことを教えてもくれる。実体験は重みが違う。必ず自分の血にもなり、肉にもなるんだ。だから、裏切られたからってへこむことなんかない。世渡りを学ぶのにいい機会だって言うくらいに考えてりゃいいんだ。


義理を欠いたツケは必ず戻ってくる。自分じゃうまく立ち回ったつもりで、してやったりなんて思ってても、お天道様はお見通し、頭隠して尻隠さずっていう無様なことになっちまうんだ。義理人情を忘れた世渡りをしちゃいけないよ。


人と同じようにすることが、世渡りのコツだなんて勘違いはするなよ。世渡りにとって変わってるってことは、これ以上ないアドバンテージなんだ。美徳と言ってもいいね。


「客と飲みに行くなんてまっぴら。そんな面倒なことはいやだよ」なんて言ってたら仕事なんか来やしない。人付き合いの中で相手と信頼関係を作っていかなきゃ、自分の思うような仕事はできないね。


学校じゃ、簡潔に話せ、控えめに話せなんて教えるだろ。これがいけないよ。だから立派な大学を出た政治家にも、自分の言葉でまともに話せるのがいないっていうお寒いニッポンになっちゃうんだ。言葉は聞くそばから消えちゃうんだよ。10を額面通りに言ったんじゃ、1か2しか残っちゃいないよ。しゃべるときは、10のものを100にも1000にも膨らませられなきゃ駄目だ。


技術は盗むもんだと思ってる。給料払ってるのはこっちなんだ。なんで、給料払う方が懇切丁寧に教えて差し上げなきゃならない?そんな間尺に合わないことはないじゃねえか。腕のいい職人の技術を盗んで一丁前になるには、なんていったってやる気だね。いまは俺が修業した時代とは違うし、褒めてやる気を出してくれるんなら、いくらだって俺は褒めるね。気前にゃ自信があるし、大盤振る舞いは得意なんだ。


間に入る調整役の役目は大事なんだ。仕事を続けていくうちには、発注元も俺に言いたいことが出てくるよ。俺の方だっていいたいことはあるさ。それを直接言い合っちゃったら角が立つよ。俺はこういう気性だから、相手の言い方によっては「もうあんたのところの仕事はやめだ。二度とうちの敷居をまたぐなコノヤロウ」ってことにもなる。間に調整役がいりゃ、そうならない。


どんな業界でも古くからのしきたりが幅を利かせている。異業種からの参入が難しいのも「俺たちは昔からこうやってきたんだ」っていうしきたりに阻まれるからなんだ。技術があっても、異業種に参入するには大きな壁があるんだよ。そのしきたりってやつが障害になることもあるけど、知恵があれば乗り切れるんだ。


俺は個人で特許を取って痛い思いをした。だけど、ああ痛えってだけじゃなく、頭を切り替えて、どうしたら痛い思いをしないで済むかを考えた。だから大企業と連名で取るって手法に行きついたんだ。大企業と連名なら、他の企業は手出しはできない。黙っていただいちゃおうなんて考えない。


大法螺は相手に渡した約束手形みたいなもんなんだ。振り出しちまった手形を不渡りにするわけにゃいかない。ちゃんと決着をつけるまでは、何が何でも頑張るしかないし、頑張れるんだよ。石橋を叩いて渡るようにコツコツ生きたい奴はそうすりゃいい。だけど、自分の可能性を広げたい奴は、時に大法螺を吹いて、自分を追い込んでみるのもいいんじゃないか。


気は心、これも世渡りのキーワードだ。俺はどんな仕事相手にだって言いたいことは言うけど、そのへんの心遣いだけは欠かしたことがない。俺のことをおっかながっている人も、俺に怒鳴りつけられた人も、いっぱいいると思うけど、仕事が切れないで続いてるのはそこなんだよ。いくら表面上だけいい顔したって、腕だけが少々よくたって仕事なんか続きゃしない。心遣いができなきゃ、ホントの縁は生まれない。忘れるな。


遊びは若いうちからやんないと、とんでもないことになるんだよ。いい歳になってから、酒だ博打だ色の道だなんてはじめると、免疫がないから匙加減、切り上げどころってものがわからない。のめり込むだけのめり込んで、気が付きゃ家族崩壊、将来も棒に振るなんて取り返しのつかない事態になっちまうんだ。


不思議なことにツキっていうのは周囲の人にも波及するんだよ。俺自身の経験から言うんだけど、絶対、ついている人間と付き合わなきゃ駄目だ。ツキっていうのは、サイコロの目みたいに偶然に回ってくるもんじゃないんだよ。ついている人間は、ツキを引き寄せるだけのことをしてるってことだ。ついている人間と付き合うってことは、その人の生きざまを見ることだし、そこから何かを学ぶってことなんだ。


誰が価値ある情報を持っているかをまず見極めなきゃ、いくら情報を集めたって役には立たねえよ。枯れ木は山のにぎわいくらいにはなるけど、ガセネタは束になるほど持ってたって絶対、それ以上のものにはならない。人と人との触れ合いの中で、さりげなく語られる情報は信用できる。


向こうから勝手に入ってくる情報がある。社内の回覧とか、いまならメルマガとか。それをありがたがってるようじゃ駄目だ。勝手に向こうから入ってくる情報は、たいがい当てにならねえもんだってことは、知っといたほうがいい。ホントに貴重な情報ってのは、あらたまった場で出てくることはまずない。打ち合わせをしましょうなんてときは、その話に終始するもんだから、情報のポロリはないんだ。酒でも飲んでワイワイガヤガヤやってるときに、「そういえばちょっと耳に挟んだけどさ…」なんて極上な情報が出てくるわけさ。


いろいろな企業と付き合いのある仲間からの情報は貴重だ。なかには運命を決めるような情報だってある。人付き合いをやめたばっかりに、そんな情報が入ってこなかったら、それこそ運命にかかわるんだ。いま仕事が大量に入ってきているからといって、それだけに目を向けていたら、値引きが必至な三年先のダメージは計り知れないってことになる。実際、そんなことで潰れていった会社を、俺はたくさん見ている。


適正な値段で仕事をすれば儲かるよ。だけど、自分だけ儲けようなんて狭い了見じゃいけない。仕事を持ち込んでくれた人、仕事がまとまるまでに尽力してくれた人、あらゆる関係者にしっかり利益を還元しなきゃ駄目だよ。商売の一番のポイントは、他人を儲けさせることだって俺は思う。お裁きは「三方一両損」の大岡越前流がいいのかもしれねえけど、商売に限っては「三方一両得」が極意なんだよ。俺のところも儲かる。間に入った人も儲かる。仕事を出した方も儲かる。そんな三方一両得をいつも考えなきゃ。


技術力だけじゃ駄目なんだ。情報収集力がないと、仕事の選び方も間違えちまうし、細かい話、値段の付け方だって失敗しちゃう。それじゃ仕事がうまく回るはずがない。適正な値段をつけて、きっちり稼ぎ、利益を的確に先行投資していく。ホントに大事なのはそこだ。


自分の仕事場にデンとかまえてるだけじゃ、発想もアイディアも頭打ちになっちまうだろ。新しい技術を開発するにも、時代に即応して儲けるにも、なんてったって情報だよ。それもメーカーが持っている最新の情報を知らなきゃいけない。メーカーの人たちは、いつも5年先、10年先を見てる。時代の流れが速いってことを肌で感じてるからね。


仕事を成功させたいんだったら、しゃべらなきゃ駄目なんだよ。技術の説明ひとつするんだって、下手なしゃべりじゃ、まどろっこしくて聞いてられない。相手に合わせてポイントをかいつまんで、ちゃっちゃと説明するから「こいつは使える!」ってことになるんだよ。


頭がいいのと利口ってのは違うんだ。勉強ばっかりしていれば頭はよくなるかもしれないけど、利口にはなれない。利口を教えてくれるのは世間だよ。人の中でもまれて、遊んで、いろんな経験をしなきゃ利口の単位はもらえない。命がけで人と付き合って、遊んで、利口になっていくんだよ。利口な奴は仕事で行き詰ってもふっと発想が違う方向に向かう。頭がいいだけじゃこれができない。


相手が大企業だからって卑屈になることはないんだよ。ちゃんとした技術なら、欲しいってところはいくらでもあるんだ。大企業の看板を鼻にかけて、実績だなんだと言っているようなところと、顔色をうかがいながら仕事をするこたあないんだ。


中途半端に面白いとか、真面目だとかってのが一番いけない。中途半端を突き抜けるには演出だ。これは間違いない。「岡野さん?根っからの職人気質っていうか、とびきりの偏屈だね。でも、仕事はきっちりする。腕のほうもとびきりだよ。それは俺が保証する」担当者の説明がうちの宣伝になってるんだ。変わり者って言われるような人間じゃなきゃ駄目なんだ。変わってるから、人と違う発想ができるんだし、人と違うものが作れるんだ。


自分の仕事は安売りしちゃダメなんだ。そのためには、人にできないことをやらなきゃな。誰でもできることなんてのは、相手の言い値でやるしかなくなるんだよ。できないことだから、値段を自分でつけられるんだ。


ゼロを10だっていうのは嘘になるけど、1を100は嘘じゃない。大風呂敷ってやつだ。大風呂敷を広げとけば、皆の話題になる。自分をアピールできるんだ。嘘から出た誠じゃないけど、どんなに突飛な話でも、いつ現実になるかわからないんだ。遠慮なんかすることない。大風呂敷でも嘘でも、堂々と胸を張って吹いちまえ。


日本じゃ、口数は少ない方が人間として深みを感じさせるとか、やたら目立とうとするのは品がないなんていうだろ。冗談じゃねえってんだ。みんな自分をもっと認めてもらいたい、評価されたいと思ってるだろ。だったら、ドーンとアピールしなきゃ駄目だよ。わかってもらいたかったら、わかってもらえるようにちゃんとしゃべれ。認めてもらいたかったら、きちんと言葉を使って認めてもらえってんだよ。


職人の世界は特にやる気が重要だね。うちは仕事を教えるなんてことはしないんだ。俺が親父の下についた時も、親父が直接、技術を教えてくれるなんてことは、これっぱっかりもなかった。何やってんだコノヤロウ!ってゲンコツで殴られ、ダメ出しされながら、見よう見まねで覚え、自分で工夫しながら、技術を磨いてきたんだよ。


社員や部下の力をどうやって伸ばせばいいか、思い悩んでいる人が多いって話をよく聞く。俺に言わせりゃそんなの簡単だよ。褒めりゃいいんだ。いつも社員を怒鳴りつけてるような印象があるかもしれないけど、俺は絶対に仕事で社員を怒鳴りつけたり、けなしたりしない。褒めに徹する仏の岡野なんだ。経験があればわかると思うけど、怒鳴ったり、けなしたりした方は、案外簡単にそのことを忘れても、されたほうはいつまでだって覚えてるもんなんだ。第一、褒められたら気分がいいし、仕事のやる気も出る。やる気があれば、多少不器用だって伸びていくもんだよ。


調整役がいることで、仕事が上手く運んで、企業も儲かる、俺も儲かる、間に入っている調整役も儲かるって具合に、皆よくなりゃ、こんなにいいことないよ。お互い気分よく仕事を続けていくための保険みたいなもんだ。何%かの口銭を惜しんで、企業とぎくしゃくするなんてのは愚の骨頂だよ。


いまは間に人を入れるようにしている。企業と直接、取引ができないってことじゃないんだ。できるけど、わざと口銭を払ってワンクッション置いてるんだ。企業と岡野工業の間に名の通った商社が入ったら、企業側は一目置くじゃないか。たった6人の町工場なんて見方はしない。あの規模で一流商社を使うんだから、よっぽどすごいところなんだと思うだろ。黙ってたってナメたマネをしてこなくなるんだよ。


特許なんて個人で取ったって何の意味もないんだよ。大企業にしてやられるのがオチだね。特許を取った技術は、大企業にとっても垂涎もんだ。欲しければ、しかるべき手続きをして買い取ればいいわけだけど、大企業ってのはプライドだけは超一流だ。ちゃっかり特許技術を真似て商品を作っちまうんだ。特許を持ってる方は当然訴える。裁判にはなるよ。だけど決着するまでには何年もかかるし、終わるころには技術は古びちまってもはや用済みになってる。勝ったってわずかばかりの賠償金で終わりってことになる。


いまの日本のモノづくりを見ていると、大丈夫かなと思うところはたくさんあるけれど、トヨタは凄いと思う。あの会社はものの考え方が違うからね。うちには難しい仕事ばかり持ってくる。それで失敗してもいいからっていって、本当に失敗してもちゃんと対価を払ってくれる。ただし、失敗の過程を全部レポートにしてくれと言うんだ。


自動車を作るというのは大変なことだと思う。同じモノづくりでも、家電とは全く違う世界だ。なぜなら自動車は一度作り始めると、4年か5年は同じものを作り続けなければならないからね。試作して走らせて、問題点を改善していく作業には、ものすごい時間を要する。その余裕がなければ、自動車は作れないし、その実績のもとに、走る、止まる、曲がるという基本が蓄積される。そうでなきゃ100%安全な車は作れない。


「どこで失敗したのかすべて教えてくれ、図解して説明してくれ」と(トヨタは)言う。それを見てトヨタはここで失敗したのなら、次はああやってやろうとまた注文が入る。二度と同じ失敗はしないし、失敗はトヨタにとっての財産になる。ほかの会社はそうはいかない。失敗のリスクを取るのは俺たちで、儲けは自分たちだけで取る。


駄目なのは注文された仕事だけをすることだと思う。みんないま食べていける注文が取れれば満足なんだろう。うちは違う。こういう技術がある、これだけすごいものができるという話をすると、そこから、じゃあこういうものも、ああいうものもと仕事が広がっていく。技術があればあとからあとから仕事がくるんだ。それに仕事が向こうからやってくるから、自分の技術を安売りすることもない。


誰にもできない技術とノウハウがあれば、自分を安く売ることもないじゃないか。たとえば衛星通信地上局システムに用いる導波管を手掛けたのは、30年以上も前で、導波管なんて一般に知られていなかったけれど、俺は誰にもできないことをやるのが好きなんだ。どこかでやっているものはやりたくない。


うちは「誰にもできない仕事をする」をモットーにしている。プレス加工のポイントになる深絞りという技術では抜きんでていると思う。深絞りは一枚の平らな金属の板をいくつもの工程を経ながら順に筒状に加工する技術だ。30年以上間にステンレスを深絞りで加工し、ライターケースを作ることに挑戦した。以来「誰にもできない仕事をする」という信念のもとに仕事をしている。


狩猟民族はみんなと違うことをしないと獲物はとれない。みんなが獲物をとったところに後からノコノコ出て行っても、もう獲物はいないんだから。俺は人と違うことをする。だいいち人と同じことをしたってつまらない。浮いた存在になるくらいじゃないと何もできないよ。みんなと同じことを言っていてもダメだ。浮いているからこそ何でもできるんだ。浮いているというのはある種の感性を持っているということだからね。


マニュアルや教科書があるわけじゃない。教えてくれる人なんかいない。職人の世界はただただ、上を見て自分で学ぶんだ。俺もオヤジや他の職人を小さい時から見て、学んで、体で覚えてきたんだよ。


他の会社が「技術的に難しくて誰にもできない」「安すぎて誰も受けない」と言って避けてきた仕事を引き受けてきた。難しい仕事に挑戦していたら、いつのまにかうちにしかできない技術が身についた。だって人と同じことをやっているだけじゃ出世できないだろ?


若いうちはもっと遊ぶべき。学校で教えてくれないことがいろいろわかるからね。大きな声じゃ言えないけど、俺も人生で大切なことは遊郭で教わった。遊びは時間やお金のムダだと言う人もいるけど、そんなことはない。人とのつきあい方とか、いまも仕事で役立ってるよ。


あいつは人付き合いが悪いと思われると人が寄ってこなくなり、仕事の情報も入らなくなる。遊びをムダだと思ったり、人付き合いにかかるお金を惜しむと仕事は上手くいかないんだ。


真面目っていうのは、余計なことはしない、つまり何もチャレンジしない人のこと。俺が不真面目だと責められるのは、いろいろ挑戦して目立つから。真面目で退屈と言われるくらいなら、不真面目と言われた方が嬉しいね。


他と違うことを貫けば、天下だって取れるんだよ。俺の仕事はずっと挑戦の連続だったけど、挑戦の中で蓄積されたものは、他の誰にも真似できない知恵や知識になったんだ。


とりあえず20年は辛抱しろ。職人の世界ってのは、20年は大成しないと言われている。それくらい時間をかけないと技術がしっかり身につかないし、上手な世渡りも覚えられない。それに自分を助けてくれる人脈もできないよ。


「人がやらないことをやる」スタイルにたどり着いた理由は2つ。まずは「同業他社に迷惑をかけない」ということ。他から仕事を横取りするのは仁義に反する。もう1つは、「学歴も地位も人脈もない」ってこと。他がやらない仕事をやる以外に、この社会で生きていく方法がなかったんだ。


難しい仕事はもちろん、安い仕事で採算を合わせようとしたら、効率的に生産できる仕組みを作らなきゃいけない。でもさ、それが俺みたいな職人には仕事の楽しさだし、発想力、技術力にもつながるんだ。


人からだまし取るような儲け方をしちゃダメだよ。そんな暇があったら「技術を覚えろ」って俺は言いたい。それは営業の技術だって、経理の技術だって一緒だよ。本当に誇れるような仕事の技術があれば、必ず一生仕事できるから。俺なんて生涯現役だよ。


生き残るには他人がやらないことをやることだ。近所に、1枚の鉄板から鈴を作る技術を持ったプレス屋があるんだな。もう50年にもなるだろうけど、いまだほかじゃできないんだから。こういうことをしないと。


大企業の社長でも昼食に盛り蕎麦を5杯も、6杯も食べることはできない。1杯あれば充分だ。その程度のお金があればいいんだから、会社を大きくしたってしょうがない。


勉強すれば頭はよくなるかもしれないが、利口にはなれない。世の中を渡っていくには利口じゃなければいけない。それにはいろんな人に揉まれ、経験を積んでいくことが一番。


痛くない注射針だって、理論物理学者が不可能といっていたことを実現した。たしかに従来の細い管を加工する技術では不可能だが、金属板をプレスで加工する技術なら可能なんだよ。そこに目をつけたのは中学校中退のあたしだけ。


必ずできるって信じること。これが一番大事。もし、「できねぇかもしれねぇ」なんていっぺんでも思ったら、もうダメだね。だから、できるんだって、揺るぎない気持ちを持ち続けることが、とにかく大切。


真面目が一番なんてヤツもいるが、あたしはそうは思わない。人間、自分ひとりでできることには限りがある。人が集まってくれるから大勝負ができるってもんだろ。だから、若いときは、「何考えてんだ!」ってくらい破天荒なほうがいい。あたしが、ちょうどそうだったからね(笑)。


依頼が来たとき、採算は度外視してやってみる。失敗を重ねても、最終的に完成させる。これが技術なんだよ。コスト意識が強かったり、最初からできないと思う奴が多すぎる。おかげで、あたしには大きな仕事がくるんだけどね(笑)。


俺もあと、5年生きればいいと思っているけどね。まあ、何年も前からそんなこと言っているから、まだまだ長生きするかもしれないけどね。将来、花開くだろうアイデアがどんどん生まれているよ。やっぱり、俺は仕事が好きだからね。これからもいろいろやっていきますよ。


コンピューターとかいろいろ進化するだろうけどさ。コンピューターを使うのは人間であくまで道具だからね。基本がない職人が使ったってどうしようもないよね。


大企業の技術者は60歳で辞めちゃうからね。本当はその先が応用の段階なのに、そうした発想はないわな。だから大企業には応用力がなく、長年やってそれで終わりになっちゃんだよ。


最近もちょっとしたアイデアが浮かんでね。詳しくは言えないけど、ここで使われている技術をこっちに使ったら全然変わっちゃうなと思うのがあるんだよ。メーカーがこれを取り入れたら、今までの製品はすぐに価値がなくなっちゃうだろうね。ただ、今の製品を作っているメーカーはそれで儲けているし、買う方もそれで満足しているから、新たに開発しようとはしなかったんだけれど、どこかのベンチャー企業がやり始めたらもうアウトだよな。


俺ももう80歳だけどね。職人は60歳過ぎればあとは応用力の勝負。よく人に「岡野さんいつ勉強するの」って聞かれるけど、俺、勉強なんてしてないよ。大体、60代で勉強は終わったな。


うちは例えるなら町医者みたいなもんだ。高い治療技術を持つ大学病院で不治の病だって言われ、医者にさじを投げられた人が、紹介状を持ってうちに来るようなもんさ。大企業にもロボットにも誰にもできないような仕事をやるんだから痛快だよな。


結局、人対人なんだ。気持ちの問題。「ありがとう」と言われた相手は、気持ちがいいに決まっている。言った自分に好感を持つよ。上司、同僚、部下、取引先と、誰に対しても、仕事のやりやすさを考えたら、自分をよく思ってもらった方がいいに決まっている。


仕事に対する真摯な態度だけで仕事がうまくいくほど、世の中は甘くない。だから、雑談で仕事相手との距離を縮める必要があるんだ。「ムダ話は仕事の潤滑油」。これは理屈の話じゃない。もしかしたら、自分の仕事に役立つ情報が耳に入ることがあるかもしれない。


「ネットで調べれば、すぐに分かる」なんて考えを持っていたら、頭が錆びて退化しちゃうよ。仕事を続けていると、解決方法がネットに載っていない問題に必ずぶつかる時がある。その時、どうするんだ? ネットに頼り続けていたら、解決力や発想力はゼロになっているよ。考える癖をつけていたら、頭は錆びない。


工場で一緒に働く先代の親父や、先輩の職人がやっていることをひたすら盗み見した。「そうか、あんなふうにやるんだ」と。「盗む」というと聞こえは悪いけれど、利点は大きい。大体のやり方を短時間でつかめるから。


他のプレス屋が手を出さない難しい仕事や、安くて捨てたような仕事だけ選んでやると決めた。これなら、干そうにも干しようがないだろ。常識的なことだけやっていたら、とっくに潰されていたよ。


辛抱や我慢ができないのは、自分が本当にやりたいことをやっていないからだろう。子供だって、親からこれをやれと強制されたら、すぐに嫌になるけど、自分からやりたいと思ったことなら、苦しくてもそう簡単にやめないよ。


一人前になるにはとにかく時間がかかる。俺がよく行く銀座の「天一」という天ぷら屋じゃ、客前で天ぷらを揚げられるようになるまで20年といっていたが、ものをつくるっていうのは、なんだってそれくらいかかるのが当たり前なんだ。その辛抱ができないようじゃ、どの世界でも一流なんかになれっこない。


日本人っていうのは黙っていると、どういうわけか、周りと同じことをしようとするだろ。じつはこれは、農耕民族の特徴なんだ。田植えや刈りいれっていうのは集団作業だから、一人だけ時期をずらすわけにはいかない。その習慣が身体に染みついているので、両親の家がクラウンを買ったら、じゃあうちもという発想になってしまう。だけどこれからの仕事は、これじゃあ通用しない。人が歩いたあとにはペンペン草も生えていないと思って、絶えず開拓し続けられる人間でなければ、もともと狩猟民族の欧米人にみんなやられちゃう。だから、隣がクラウンなら俺は戦車だっていう人間になれ。


図面なんて引かないよ。それで複雑な自動機械をこさえちゃうから、みんなびっくりするんだけど、これは常識に逆らうというより、俺にとってはこの方が自然なんだ。だって、ものづくりっていうのはジャズと同じで、アドリブで演奏しながらいかにイマジネーションを膨らませていくかが、勝負じゃないのか。それなのに図面を引いちゃったら、その図面に縛られて、そこから外に出られなくなる。


大企業には何度も騙される。ちょっと上手くいけば、嫉妬した仲間から足を引っ張られる。プレスを始めたときも、それまでは金型屋がプレスに手を出すのは御法度だったから、「生意気だ」と仕事を干されそうになった。ところが苦境に立っても、俺はサラリーマンじゃないから、どうしたらいいか教えてくれる先輩もいない。そこであれこれ工夫して乗り切ってきた。その経験があるから、何とかなるという気持ちになれるんだ。ところが、失敗しないように生きてきた優等生は、そういう経験がないだろ。だから風邪ひいたぐらいですぐ倒れちゃう。こっちはバイキンだらけの中を生きてきてるんだ、免疫力がパンパじゃない。


俺は若いころ遊びが好きで、また戦争で学校にちゃんと行けなかった。履歴書を書いたって誰も雇ってくれない。いつも絶体絶命。それがよかった。目の前の仕事しかないんだから、やる気がないなんて言っていられなかったんだ。それに、学問を知らないという劣等感がある。これがいまでも、大学や大学院で勉強した奴に負けるもんかという自負心のもとになっているんだ。


墨田区の向島という土地柄もあるけど、町にはとにかくいろんな人がいたね。おっかないお兄さんや水商売で働くキレイなお姉さん。学校を終わったらそういう人たちにくっついて、タバコやら石鹸やらを買ったりしてお使いするんだ。そうしてお駄賃をもらう。そのやり取りの中で会話の仕方やつき合い方を学ぶ。学校の勉強はしなかったけど、いろんな人とつき合うことで、たくさんのことを学んだよ。それがすべていまに生きているんだ。


いまの若い世代には人間関係を築く力が欠けている。とくに思考の変換機能がないんだね。相手の言葉をそのまま受け止めちゃう。あるとき若い社員に「こんなこともできないようじゃ、お前クビだな」って怒ったことがある。そしたらそいつ次の朝神妙な顔して来て、「僕にはできませんでした。責任とって辞めます」って言うんだ。本当にクビにするんだったら、そんなことは言わないよ。お前ならできて当然だ、だから頑張れっていう意味なのに、言葉の上っ面をそのまま捉えちゃうんだね。パソコンの変換機能はしょっちゅう使うくせに、肝心の自分の頭の中に変換する機能がない人が多いんだな。


昔かわいがってもらった人からこう言われた。「お前は頭がいいから、すぐ結果を想像して70メートル地点で走るのをやめてしまう。そんな人間は信用されない。結果がどうあれ、100メートルを走りきれ」と。みんなが不可能だという仕事に俺が挑戦し続けられたのも、あのときの言葉のおかげかな。


多くの人が思い込みを捨てられないのは、勉強ばかりしてきたからだ。教科書に頼りすぎなんだよ。いまの若い子はドライブもナビ頼りだろ。みんな同じ道を進むからすぐ渋滞するし、どこかが通行止めになるとパニックになる。仕事も同じで、通行止めになってからが勝負。その先を考えるのが本当の仕事だよ。


できないと決め付けるのが早すぎるんだよ。「痛くない注射針」も、「注射針はパイプを切って作るもの」という思い込みがあると、そこでおしまい。パイプを切るのではなく、一枚の板をプレスして丸めるという発想ができれば、いくらでもやり方はある。まず思い込みを捨てなきゃ始まらないよ。


お金の使い方も学んで欲しい。いまは「自分さえよければ」と貯めこむヤツが多いだろ。でも俺はバンバンおごるんだ。それで喜んでもらえれば、必ず何かしらの形で戻ってくるものさ。ホラ、うちの玄関だって「出口」「入口」じゃなく「出入口」と書いてあるだろ? 入れっぱなし。出しっぱなしじゃダメなんだ。物事は全部な。


日本の製造業の多くが、経済が発展した中国とかに仕事をとられている。それなのに、うちはいっさい影響を受けていないんだよ。俺がやっているのは難しくて誰にもできない仕事なんだから、中国でも真似できるはずがない。安すぎて誰もやらない仕事にしたって、中国に負けない安さを生み出せる技術があるからね。


俺もまだ創作意欲はあってさ、最近、マグネシウムを加工して100万円のかばんを作ったんだよ。使い道? 知らないよ! 登山家と一緒だよ。山がそこにあるから登りたいんだよ。加工が難しいマグネシウムを俺ならここまで加工して「岡野健在」をアピールしたいの! 軽くて頑丈だから、航空機のシートやカメラのボディーとか応用範囲は広いと思うよ。


仕事を受けるかどうかは、担当者が人間として信用できるかどうかで決める。そりゃ、そうだろ。企業の名前で仕事を選んでたら、結局は買いたたかれ、安売りすることになる。それじゃ、ダメだね。企業ではなく人を見る。信用できたら受けて、人ができない仕事をする。だから安売りしないで、自分で値段がつけられるんだよ。


俺のところに仕事の相談にやってくる人を見ていて感じるんだけど、「雑談」を軽視しすぎだな。仕事相手と、ムダ話をもっとしないと。仕事だからって、仕事の話ばかりしていても仕方がないよ。仕事は結局、人対人のつき合い。ムダ話は人間関係を深めるのにもってこいなんだ。ムダ話を重ねると、お互いに相手はどんな人かが分かってくる。そうすれば、気心の知れた間柄になってきて、「岡野と一緒に仕事を成功させたい」と思ってもらえる。仕事の話がスムーズに回るよ。


才能を持った若い連中もいるとは思うんだけど、絶対的に足りてないものがある。「欲望」だよ。「もっといい仕事をして、もっとカネをもらいたい」。俺たちの世代はそれがすべてのエネルギー源だったけど、今の若い奴らは、生まれたときから豊かだから。それに諦めがいいというか、自分の手と頭を使って考えないで、ちょっと調べて難しそうだと思ったら、やってみもしないで「できません」だもん。そんなことしてたら、途上国にあっという間に抜かれて、日本は終わるな。


こないだ日経の記者が来て、まあ俺もこの年だし、跡取りもいねえから「あと2年くらいかな」とか適当に話したわけ。そしたら、「岡野工業が廃業する」って1面に載っちゃってさ。びびったよ(笑)。で、俺より驚いたのはお客でさ、「岡野さん、本当に辞めるんですか!?」って、トヨタ自動車やらソニーやらいろんなところから電話がかかってきてさ。うちはさ、お客がどこに持っていっても「できない」って断られたやっかいな仕事ばっかり持ち込まれる「最後の駆け込み寺」だからさ、俺が辞めるって聞いてみんな焦ったんだろうな(笑)。そんな風に周りからいわれてやる気が出てきてさ。すっかり欲望も回復しちゃって。まだまだ稼ぎたいし、いいクルマにも乗りたいんだよ。


岡野雅行(岡野工業)の経歴・略歴

岡野雅行、おかの・まさゆき。日本の技術者、経営者。世界最先端技術を生み出す町工場として有名な岡野工業代表。東京出身。向島更正国民学校卒、旧制西部高等学校中退。その後、家業の文具・玩具部品用の金型製作を手伝いながら独学でプレス加工技術を習得。世界一細い「痛くない注射針」や、携帯電話の小型化に貢献したリチウムイオン電池ケースなどを開発。高い技術力を買われ、国内一流企業のみならず、NASAや米国国防省からも仕事が持ち込まれた。