小路明善の名言

小路明善のプロフィール

小路明善、こうじ・あきよし。日本の経営者。アサヒビール社長。長野県出身。青山学院大学卒業後、アサヒビールに入社。東京支社中央第一支店課長、東京支社特約店営業部副部長・部長、人事部人事課長、人事部次長、人材高度化推進部人事課長、人事戦略部長、執行役員経営戦略・人事戦略・事業計画推進担当、事業計画推進部長、執行役員飲料事業担当、アサヒ飲料常務取締役企画本部長、アサヒビバレッジサービス社長、アサヒ飲料専務、アサヒビール本社常務執行役員、アサヒグループホールディングス取締役などを経て、アサヒビール社長に就任。

小路明善の名言 一覧

アサヒグループでしかできない新規事業をやっていく。他ができることを我々がやる必要はない。我々が持つ資源やリソースを使った事業をすることで、結果的に社会課題の解決につながることをやっていきたい。

新しいことに挑戦していかなければいけない。前例は踏襲するものではなくて、自分でつくるものだ。前例は自分でつくったら、次の人たちがまた新しい前例をつくる。それが新しい価値の創出につながる。

私は、直感力と直観力を磨いていくことが大事だと。他の人がやっていることをやっていたのでは社長の価値がないと思うので、社長しかできないことをやる。それにはもう直感力・直観力を磨いていくしかない。

落ち込んでも諦めないようにしよう。諦めずに努力し続ければ、必ず成果があがる。

過去を振り返ることなく前に進むのが私の経営であり戦略。

何もしなければ、非常に厳しい状況になるという危機感は強く持っている。

私はどちらかというと新しいことが好きで、前例は踏襲するものではなくて自分でつくるものだと思ってやってきました。

経営トップが常に情熱を持って経営し、それが社員一人一人に伝わることで、集団のモチベーションを高めることができる。

トップとして必要なのは直観力と情熱。情熱は最適な決断を促す源にもなる。

社員は会社の命である。人材という会社の成長の源を、経営者として大切にしなければいけない。

社員との距離感を縮めたい。社長と社員とは絶対距離感があってはいけない。

ナンバーワンブランドを持っていないと企業は生き延びていけない。

顧客に満足してもらうという信念を持ち続けることが大事。

ブランドは大事に取っておくだけではダメで、活用して初めて価値が上がる。実践を重ねて成長するという点では人もブランドも同じ。

ビール業界だけを見ていたら、斬新な切り口に気付かぬまま、他社より少しいいものを出せばいいという発想になってしまう。

場長に相談して、良かれと思ったら、足を一歩踏み出して手をつけなさい。考えてばかりいては駄目。自分の経験から振り返って、成功と失敗は51勝49敗で勝ち越せばいい。それを99勝1敗というような意識でいると、手も足も出なくなってしまう。

我々はやはり日本市場で強くなければグローバルで強くなることも実現できません。そのためには、お客様に大きな評価をいただかないと。トップブランドはそう簡単につくれるものではありません。

価値あるものは必ず売れます。お客様が望んでいるような付加価値ですね。その付加価値が質になります。お客様が望んでいない価値を作っても、それはお客様にとって質とは言えません。もちろん、我々は常に最高品質を保っています。

我々が標榜するのは、あくまでも企業価値向上経営。企業価値の向上というのは、もちろん財務的な価値、そして社会的な価値、あるいはステークホルダーに対する取引の価値。

私の子供がリトルリーグに入っていた頃、コーチをやっていまして、子供たちに、うちの子供も含めて見逃しは駄目だと。三振するんだったら、空振り三振しろと。見逃し三振をしても次に役立たないんです。空振り三振すると、ボールとの距離がこうだ、フルタイミングが早かったとか覚えるけど、見逃し三振からは何も生まれないし、次の成長の糧にはならない。だから必ずバットを振れと。

大切なのは、どの市場でどのようなビールが求められ、我々はそれに対してどのような商品を提供できるかということ。日本が海外事業の司令塔でなければならない理由はない。

感性を磨いていくと、データではないところでの判断、決断ができるのではないか。それが経営者には必要。

前例に拘泥せず、自ら前例を作り出そうとする努力が大切です。

モチベーションの源は「達成感」にあると、私は考えています。非凡な努力を貫いたと自分で確信できたなら、それは達成感につながるのではないでしょうか。

部下が出す提案をちょっと手直しするだけでは意味がない。社長には直感力、直観力の2つが重要。

日本の消費者は、商品の新しい面をいつも望んでいる。

いまのアサヒにはスターは要らない。組織プレーができる営業マンであるべき。社内の専門部隊と連携してほしい。

現在、ドライのブランドエクステンション(拡張)を行うなど挑戦しています。守りに入るとブランドは陳腐化し、魅力は失せていきます。

上司と部下の関係で大切なのは、客観性などではなく納得感の強さです。

営業の班長だったころ、部下たちに毎月、「よかったこと」と「悪かったこと」をひとつずつ言わせてノートにまとめました。半年経つと1人当たり6個の改善するテーマが見いだせ、部下と突っ込んだ話し合いができました。

メーカーと流通は、協調する時代。共に働き、商品づくりと店づくりとで、消費者に高い価値を提供する必要がある。

内市場がシュリンク(縮小)するから海外に出るのではなく、海外に進出できる商品力が付いたから積極展開すると考えなくてはいけない。

常に企業価値を上げていく経営を進めていく。企業価値が上がらないような経営や、価値が上がらないような業績の積み方をしない。

2位、3位のブランドを、ナンバーワンブランドに持っていくことが成長につながる要件。

ナンバーワンブランドを、あるいはナンバーワンカテゴリーを毎年増やしていくということによって、ダイナミックな成長ができる。

ナンバーワンブランドを増やすことにこだわる。そしてナンバーツーブランドはナンバーワンにしていく。

私だって、これまでのビジネス人生を振り返ると、成功と失敗は51勝49敗といったところじゃないでしょうか。一勝でも勝ち越すことが大切だと思っています。

リスクのないビジネスなどあり得ないはず。リスクを取らないということは、退歩していくということです。ブランドはつねにブラッシュアップしながら付加価値を高めていかないと、陳腐化してしまう。そのほうがよほどリスクは高いはずです。

私は自分自身にも、そして社内に対しても、「前例は自分でつくれ」と言い聞かせています。弊社に入社する社員は、ほとんどがアサヒスーパードライのファンですから、心のどこかに「いまのスーパードライを変えたくない」という気持ちがある。だから、姉妹商品をつくるなんて発想がなかなか出てこない。そこで私は社内に向けて「向う傷は問わない」ともいっています。

もっとも大事なのは、消費者の皆様に価値ある商品を提供することであって、シェアはその結果でしかありません。もしシェアが下がったとしたら、それは我々が価値ある商品を提供していないというプロセスが問題なのだから、そこを徹底して見直すべきです。

思い切ってリスクに立ち向かった結果、失敗したとしても構わない。その場合は社長の私が責任をとるから、あなたたちは前例をつくるためのチャレンジをしてくれと。トップがそういうメッセージを発信すれば、組織も前を向くようになります。

シェアの奪い合いにばかり組織の目が向くと、結局は価格などの条件競争になってしまい、会社が疲弊してしまう。そんなことはお客様も望んでいないはずです。お客様が求めるのは、ビール会社が価値競争をして、よりよい商品をマーケットに提供してくれることです。その本質を見誤ってはいけないと思いますね。

常にチャレンジャー精神が社長以下全員になければ、お客様に評価される商品は出せないと思っています。挑戦するところが、アサヒビールのDNAとして残っていくような組織にしていきたいと思います。

ビジネスの世界も、最初から「銀メダル」や「銅メダル」を目指して闘う者はいません。

何のために競い合うかといえば、勝利するためです。私どもアサヒビールの企業風土は、ひとことで言えば「挑戦」です。挑戦してきたからこそ25年前にスーパードライを世に出すことができましたし、挑戦し続けてきたことで、いまではトップブランドとしてご評価いただいております。

モチベーションの源とは何か。私は、達成感にあると考えています。

私の考え方の基本には、「成果=能力×努力+外的要因」という式があります。持って生まれた能力の高さは人によって違いますが、努力の量によってその差は埋められるし、越えられると思うのです。だから、多くの努力ができる人ほど、評価をします。

なかなか注目されることのない人やチームを掘り起こして紹介することが、会社全体のやる気を高めることにつながると考えています。

希望退職によって多くの人がやむなく会社を辞めていく姿を見て、もう二度とこんな悲しいことは繰り返してはいけないと思いました。だから、社長に就任したときにも、最初にお話ししたのは、「人は会社の命である」ということでした。経営判断をするときには、常にそのことを念頭に置いています。
【覚書き|スーパードライ発売以前、苦境に陥っていたアサヒビールで人事の仕事を担当していたときを振り返っての発言】

部下が大きな達成感を得られるようにするには、部下が自ら問題点に気づき、自ら考えて工夫するように導かなければなりません。

部下のモチベーションを高めるには、部下が達成感を得られるようにサポートすることが大切です。

私が努力を重視するようになったのは、入社直後に私の担当になった先輩からこんなことを言われたことがきっかけです。「僕は君の能力なんて全然見てもいないし、期待もしていない。大切なのは努力だからだ。君のような入社2週目の社員でも、毎日10件のお得意先を10年間まわり続けることはできるはず。それをやり遂げれば、能力がなかったとしても、必ず結果は出る」。その言葉に感銘を受けて、以来、努力の量を意識するようになりました。

全国のお得意先を回るとき、必ず現地の事業所の社員と懇談会をします。これは社員との距離を縮めることが第一の目標です。顔を突き合わせて話すと、社長と社員の距離が一気に縮まります。すると、メッセージを発したときも、社員が耳を傾けてくれると思うのです。

社長表彰の選考の際に心がけたのは、「見えないところで頑張っている社員にもスポットライトを当てる」ことです。たとえば、お客様相談室のお客様対応チーム。先般の東日本大震災による商品の欠品でお客様からのお問い合わせが相次ぎました。そんな中、このチームは根気よく、的確な対応をしてくれました。また、震災後、徹夜作業で驚異的なスピードで物流網を回復してくれた東日本物流部も表彰しました。

私は社員全員に焦点を当てた経営を目指しています。そのひとつの現われが「成功事例をたくさん拾い上げて発表すること」です。活躍している社員の情報を入手しては、月一回の全社員向けのビデオメッセージで発表しています。

私が目指すアサヒビールの理想像は、社員3200人全員が高いモチベーションを持って仕事に臨んでいることです。社員全員が元気でないと商品から元気を発信できません。

社長になると難しいのですが、私は必ず一人一人の部下に挨拶をして回っていました。反応を見て、「何か困っていることがあるのか」を探し出すためです。誰しも悩んでいるときには明るく挨拶できませんから。毎日声をかけていれば、「少し元気がないかな?」と、かすかな変化にも気づけます。

部下によっては、苦しいときに苦しい顔をすることを良しとしない人もいるでしょう。あるいは、上司に遠慮して相談できない人もいるはずです。そこで、「痛いときは痛いと言っていいんだぞ」「困ったら困ったと言いなさい」と常々言うようにすると、部下も困ったときに「実は……」と相談を切りだしやすくなります。

仕事で困っているときは誰だって相談したいものです。にも関わらず、部下が相談をしてこないのは、上司に何らかの問題がある場合が多いと思います。たとえば、普段から「そんなこといちいち俺に相談してくるな」といって、近寄りづらくしている。あるいは、素直に教えを請う部下に、「だからお前はダメなんだ」と説教を始める。これでは誰だって相談する気が失せます。

「こういうやり方をしろ」「このお客様を訪問しろ」「こういうことはやめろ」などとプロセスを押し付けるのは感心しません。仮に、そのとおりにやって成果が出たとしても、部下は「この成果は自分の力によるものではない」と感じてしまい、小さな達成感しか得られないからです。

上司のすべきことは、部下が自分の能力を100%発揮できるよう、努力の方向性を整えてあげることだと思います。

達成感というと、成果の大きさによって、その大きさが決まると考えがちです。しかし私は「どれだけ努力したか」つまりプロセスによって大きさが決まるものだと思います。たとえば、営業マンが目標予算を達成したとしても、ライバル企業の失敗で大した努力もせずに売上が増えたのならば、達成感は小さいのではないでしょうか。反対に、予算が未達に終わったとしても、懸命に努力をして、自分の能力を最大限に発揮した結果であれば、大きな達成感が得られるでしょう。そして、長い目で見て成長するのも後者だと思うのです。

自分が手掛けた仕事で大きな達成感を得られれば得られるほど、人は「あのときのような達成感をまた味わいたい」と次の仕事に対するモチベーションを高めるものです。逆にいえば、達成感なしにモチベーションを高めるのは難しいでしょう。

人と会うときには下調べが重要だと思いますが、それは社員に対しても変わらないのです。たとえば事業所を回るとき、イントラネットの改善事例を投稿するコーナーに、その事業所で働く社員が何か投稿していないかを調べます。そして、現地に出向いたときに、「○○さんはいい情報を発信してくれていますね」などと個人名を出して話します。すると、その社員は報われたあと感じてくれ、ほかの社員も「頑張れば社長に認められるかもしれない」と感じるのではないかと思います。

国内がダメだから海外に出るという意識では勝てない。カギは「日本発」の技術や品質、ブランドを海外で戦う強みにできるかどうか。各国の消費者の好みに合わせながら、「プレミアム」商品として打ち出すことが重要。

私は見た目と違って負けず嫌いですから、営業で銀座エリアを担当した時は、「機動力」のある自転車で競合他社が普段回らないような路地裏やガード下を走り回ったものです。

若手社員時代、ある飲食店で「料理や接客で顧客に満足してもらうのが一番大切なこと。ビール会社の営業も顧客である飲食店に同じように接しているか」と、言われました。当時アサヒビールは業界シェアが十数%の厳しい時代でした。メーカーとして飲食店や消費者に満足してもらうよう、努力を続けるしかないと心に誓い、今も経営の信念になっています。

アサヒは、感謝と挑戦の歴史なんですね。苦しいとき、シェア10%に落ちこんだときに支えてくれた得意先や先輩への感謝。それからスーパードライという新しいコンセプトの商品を創り出した挑戦。これは絶対変えてはいけないと。だから、私はいつも、社内や国内の事業所、海外に行っても、アサヒのDNAは感謝と挑戦だと。これを忘れるなと言っています。感謝と挑戦というのはずっと大事にしてきたことです。

私どもはメーカーなのですけれども、私がよく言っているのは、モノを売るのではなくて価値を売るんだということ。たとえば「スーパードライ」という商品から付加価値をいかに感じてもらえるかということだと思っているんです。これがアサヒというメーカーの使命ですし、そのためにスーパードライがあり、カルピスがあり、三ツ矢サイダーがあると。

データだけでは、その青写真(経営戦略)が勝てる戦略になっているかどうかわからない。トップが直感力を働かせて、「これで勝てる」と責任を持って決断しなければいけない。

ビジネスの世界では、どんなに相手と親しくしていても「あなただけですよ」というアプローチをしてはいけません。重要な情報は、一斉に発信するのが原則です。一部のお客様だけに先にお知らせすると、不公平が生じてしまいますから。そのルールは絶対に守るべきだと反省しました。もし得意先から信頼を得たいなら、逆に「あなただけです」などという言葉は使わないという姿勢を徹底したほうがいい。すると相手は、「自分には教えてくれないけれど、この口の堅さなら、他の取引先にも話すことはないだろう」と思ってもらえる。月並みですが、お客様と誠実に向き合っておつきあいをすることが、良好な関係を長く築くためには必要なのだと実感しました。

ビジネスパーソンにとって人事異動は、竹の節のようなものだということ。竹が木より強いのは節があるからです。人間も適度に環境を変えて新しい経験や挑戦をすることで、節がつくられて強くなるのではないかというのが私の持論。だから、何か自分の意にそわない出来事があっても、「ここを乗り越えれば、この経験が節になって、自分はもっと強くなれるのだ」と考えればいい。それが心を強くする一つの手段になると思います。

たとえば計算力が弱いという自覚があるなら、小さい電卓をつねに持ち歩けばいいわけですよね。精神力だって同じこと。生まれつき心が強いという自信のある人のほうが少ないはずですから、ここでもやはり「自分の役割を果たすためには何を準備すればよいか」を考え、プレッシャーに備えれば、達成感を得て自信をつけていくことができる。その繰り返しだと思います。

正直にいえば、決断を下してから結果が出るまでは、寝られない夜もありました。精神力という点では、私はごく普通の人間ですから。ただ、メンタルが特別強くないという自覚があるなら、それを要件として受け入れるしかないでしょう。そして、自分の弱みを補完する手段を考えればいい。

数字やデータだけで決断できるなら、コンピュータにやらせればいい。でも、商品の味やパッケージをよいと思うかどうかは、感性の世界です。そこは人間にしか判断できないこと。そして感性を磨くには、マーケットに出てお客様や流通関係者の方の生の声を繰り返し聞くしかない。私も社内の会議は月曜にまとめて入れるようにして、火曜から金曜は外へ出てマーケットに足を運ぶようにしています。それを積み重ねることでしか、自分の感性に自信をもつことはできませんから。

私たちの商品を売ってくださる小売店や飲食店の方たちは、消費トレンドを非常に敏感に捉えている。その方たちが「これを売りたい」と思うような商品であるかどうかは、重要な判断基準になります。

部下たちが開発した新商品にゴーサインを出すか、出さないか。その決断をする瞬間のプレッシャーは、やはり大きいですね。ただし、私は新商品について「3つの視点でしか判断しない」と決めているんです。3つの視点とは「消費トレンド」「小売店や飲食店の方たちの流通ニーズ」「他社の商品より優位性があるか」です。私がみるのはこの3つだけ。余計な雑音が入ると迷いが出るので、ほかの情報はあえてみないことにしています。

ビジネスは一回の決断で終わるものではない。寄せて返す波のごとく、ずっと続いていくものだから、結果に一喜一憂していたら精神がもちません。だったら、結果よりもプロセスに目を向けたほうがいい。それに、「これ以上はできない」というほど準備をしたのなら、たとえ結果が出なくても達成感は得られるはずです。

経営者としてさまざまな決断をしなくてはいけませんが、準備段階では関連部署や社内の専門家たちに意見を聞きながら、戦略や戦術を徹底して考え抜く。そして決断をしたら、結果はあまり気にしません。「人事を尽くして天命を待つ」という心境ですね。それで結果が出なければ、準備段階で立てた仮説が間違っていたということですから、それを見直して、別の仮説を立てればよいだけです。

人前でプレゼンをするとします。そのテーマについて深く調べ、話す練習を何度もして、「自分は十二分に準備をした」と思えれば、人前に立っても緊張しないし、プレゼンもうまくいくでしょう。しかし、準備不足の場合は「失敗したらどうしよう」と不安になり、それがストレスとして溜まってしまう。だから私は、つねに「やるだけのことはやった」と思えるくらいに準備をします。

私も若いころは、ストレスを溜めないことなどできないと考えていましたが、あるときにその方法を見出しました。それは、「結果ではなく、プロセスを重視する」ということ。結果というのは、どれだけ準備をするかというプロセスでほとんど決まってしまいます。

私はごく普通の精神力の持ち主なんじゃないでしょうか。ただ、30年に渡ってビジネス経験を重ねるうちに、ストレスをコントロールする力は身につけてきたように思います。ストレスというのは、ビジネスパーソンであれば誰もが大なり小なり感じるもの。そのストレスを発散することと溜めないこと。この二つがうまくできることが組織のトップに立つ者には必要ですし、ほかの経営者の方々をみても、みなさんストレスコントロールが上手だと感じます。

私は、よく社内で「成果=能力×努力+外的要因」と話すんです。ビジネスパーソンが出す成果は、その能力だけでは決まりません。能力が10で努力が1なら成果は10。能力が5でも、2以上の努力を費やす人材のほうが成果は大きくなるのです。外的要因も影響しますが、それでもなお素晴らい成果を出し続けられる人材は、能力が高い人であるよりも非凡な努力ができる人です。

当社は「スーパードライ」という国内トップブランドを持ち、高い収益性とコストダウンを実現しています。母国の市場で鍛えられた優位性は、海外市場でも生きてきます。

私は、「意思決定のスピード化と最適化」「課題解決型営業」を営業部隊に掲げています。特に、今年1月、店頭販促を行うアサヒフィールドマーケティングの酒類部門をアサヒに統合しました。量販チェーンなどお客様のニーズを我々経営層まで素早く汲み上げ、一方で本社の決定を瞬時に現場へ伝えるためです。

新商品を次々に投入するのではなく、既存商品のブランド資産を生かす経営で行きます。

今年の上半期は「スーパードライ」が好調でした。昨年からブランド資産の最大化に、私たちは取り組んでいて、それが奏功したと思います。

直観の「観」には観察の「観」と感性の「感」の2つが含まれます。観察とは、例えばデータや得意先の動きから消費動向などを自分なりに読む力。一方、感性とはデータに表れない部分を判断する力です。予測できないことが起きても、スピーディーで最適な経営判断を可能にするのは直感力だと思っています。

ホールディングスの5つの役割

  1. グループの経営陣を指導すること。
  2. 商品の研究開発をはじめ、事業会社を様々な面で牽引すること。
  3. 経営資源の配分。コア事業、非コア事業にヒト、モノ、カネ、ノウハウをどのように提供していくか。
  4. 事業の方向性を決めること。
  5. 経営者の育成。

ビール類の消費がシュリンク(縮小)していく状況で、私は業界を牽引するのではなく、業界全体を活性化させたい。

「スーパードライ」という幹があって、派生問品はその枝葉です。枝葉に日が当たってたくさん光合成をすれば、そのぶん幹が太くなる。しっかりした幹があれば、また新しい枝葉を伸ばすことができるのです。

私どもの今年度の活動のキーワードは「Re・元気(元気回復)」です。人とのつながり(Relation)、信頼できる確かなもの(Reality)、リフレッシュ(Refresh)、といったいまお客様がお酒に求めている価値観をご提案することで元気回復に貢献していきたいと思います。

世界陸上で金メダルを獲られた直後に弊社をご来訪いただき、室伏(広治)選手とお話しする機会を得ました。強く印象に残っているのは、ハンマーを投げるあの瞬間に合わせて、事前に心技体を計画立ててトレーニングしているというお話でした。平凡なことを非凡なレベルまで練習し続ける綿密な戦略家とでも言いましょうか。ビジネスの世界にいる私どもにも通じることです。

社内メールでは虚礼廃止を徹底しています。資料のアップを知らせるメールに、部下が「社長、お忙しいなか大変申し訳ございません」などと付け加えることはありません。私からのメールも簡潔を旨とします。

意思決定が迅速なら、たとえそれが間違っていてもすぐに次の策が打てる。つまり、意思決定が速ければ速いほど、最適な解に早く到達することができる。1か月に10の意思決定をするトップと、100のトップとではどちらが1年後に正しい経営判断ができているかといったら、それは間違いなく後者。

私は、ホールディングスというのはピラミッドの頂点にある組織ではないと思っています。ホールディングスは常に円の中心にあるものだと考えています。ホールディングスと事業会社は、上下の関係ではありません。この感覚がとても大事。

社内の風通しが良いであるとか、組織ではそれぞれ支え合うといった企業風土ができていないと、社員から見ても、社会から見ても、価値ある企業とは言えない。

苦しい時代を支えてくれた先人・先輩や得意先への感謝の気持ちを常に持ち続けて事業を拡大していこう。アサヒグループが今日これだけの企業になり、ある程度の評価もしていただけるようになったのも、「夕日ビール」と言われた時代に諦めず、私たちの商品を売って支えてもらったからで、スーパードライで大きくなったのではない。

経営者というのは強くなければ、会社を、あるいは事業を牽引することはできない。同時に、第一線の社員の目線に立って、その愚痴や悩みも聞く。優しい心や度量がなければ社長としての価値も見いだせない。

これからは競争と協調ということを明確にしていかなければ、企業はなかなか生き残れない。いま、共同配送をアサヒ、キリン、サッポロ3社でやっています。商品の付加価値競争は思いっきりしながら、一方では共同物流でコストダウンや二酸化炭素削減を図っていく。

商品を通して、社会貢献につながる活動に取り組み、かつそれが事業としての価値を生み、利益を生み出すというように、成長を遂げていかなければいけない。

常にベースとして、トップを含めて社員一人ひとりの高いコンプライアンスの意識がないと、どんな立派な商品をつくり、高い評価を受けても、企業としての価値、あるいは社会的貢献という面でゼロに等しくなってしまうことになりかねない。

私はビール事業を一言で言って、「強い競争力を持ったグローバルなプレミアムビールメーカー」という姿にしていきたい。強い競争力とは、4つの条件があります。1つ目は高い収益力を持っていること。2つ目は強いブランド力があること。3つ目は高い生産効率と醸造技術を持っていること。4つ目は経営能力の高いトップやキーパーソンがいることです。この4つを備えていく、または備えていることが強い競争力を持てる条件です。

ビール会社の社長時代は商品に対して直接意見を述べるなど、トップダウンでものごとを決めることも多々ありましたが、ホールディングスの社長としては、事業会社の経営や商品に直接口を出してはいけないと思っています。今はグループ全体の社会的価値や存在意義をいかに向上させていくかが仕事であり、言ってみれば間接経営をしなければならない。その意味で、同じ社長であっても大きな違いがあります。

若いうちは上司や先輩に言われたことや、会議で重要だと感じた意見などを、きちんと書き残しておく習慣が必要です。私も若い頃は、相手の発言や出された意見などをせっせとノートに書きとめていました。執行役員に任じられ、責任を意識しだした頃から現在のやり方にスイッチしました。

人は勉強を怠らなければ一生成長し続けることができるし、それが喜びだと私は思っています。そして最高の学びの機会は、人との出会いのなかにあります。ですから私は、人と会うときはいつも、今日はどんな勉強をさせてもらえるのだろう、あるいは、どんなことに気づかせてもらえるのだろうとワクワクしながら相手の話に耳を傾けます。

お礼状を書くとき、相手に合わせてメールまたは手紙を出します。その際に気をつけているのは、相手の言葉や行動から「学んだこと、役立ったこと」を具体的に示して感謝するということです。たとえば先日一緒にゴルフをしたお得意様は、玄人はだしの腕前でした。私もその方のアドバイスに従ってみたところ、スコアがぐんとアップしたので、翌日すぐに「あのレッスンのおかげで開眼しました」とメールを送ったら、たいへん喜んでくださいました。

能の言葉に「守破離」というものがあります。まずは上司や先輩のやっていることをそっくり真似る「守」、次はほかの方法も試してみる「破」、そして最終的には、それらにとらわれず、自分独自のやり方をつくりあげる「離」。この段階を踏んで、一人前の能役者になるということです。守破離はビジネスにも通用する考え方だと思います。

「結論を明確にする」「理由を3つ挙げる」というのが私のメールを書くときのルールです。理由を「3」としたのは、4つ以上書くとかえって伝わりにくくなるからです。また「3つにまとめる」と決めておけば、何を優先するか、どういう表現をとるかを常に考えていなければなりません。その過程で私目身の頭のなかも整理されていくのです。

会議では参加者の発言を聞きながら、それに対して自分がどう発言するか、どう行動するかをノートパソコンに打ち込んでいきます。他人の発言を記録することは99%ありません。経営者は会社の将来を見据えて、様々な意思決定を行う責任を負っています。その立場からすると、将来どう行動するかが大事であり、過去の発言内容などはあまり重要ではないのです。

相談にはフェイス・トゥー・フェイスでじっくり時間をかけますが、報告と連絡に関しては、やりとりの回数を増やしたほうが中身の質は確実に高まるので、やはりスピード重視を心がけています。たとえば経営会議にかける前の資料のチェックなどは、社内イントラネットの共有フォルダにデータをアップし、メールで簡単に「ご確認お願いします」とだけ知らせてもらうようにしています。あとは私が勝手に資料を確認し、修正ポイントを指示していきます。いちいちメールに資料を添付し、そのつどメールの文面を練ってやり取りするよりも格段にスピードが上がりました。

物的価値はマイナス2度にまで冷やして飲む「エクストラコールド」というビールがあります。これは氷点下2度という凍る寸前のビールが美味しく飲めるという物性価値です。一方、数年前に販売したピンク缶入りのスーパードライは情緒的価値になります。ビールという男性色の強い飲み物に対し、ピンク色の缶を作ることで、何となく可愛く、食卓に置くと明るくなるような情緒的な訴えを盛り込んだ商品を作りました。これらの物的価値と情緒的な価値を常に作り続け、商品に付加して売ることが大事なのです。

ヨーロッパのビールメーカーを買収したのも、アサヒが作り出す価値をヨーロッパのビールメーカーを通して欧州の人々に届けたいという想いがあります。ですから、国内のビール市場は縮小が続いていますが、もしこれがプラスになっていても、私は欧州への投資を実行しましたね。それはアサヒの価値を、より多くの人に届けたいという想いからグローバル化を図っていく。それが私の基本的な考え方であるからです。国内が縮小しているから海外に出ましょうということでは成功しません。

仕事の成果は「能力×努力+外的要因」。能力があっても努力が1なら、1しか掛かりません。入社して研修の後、営業の指導役の先輩に1日20軒のお得意先を回れと言われました。結構疲れましたが、やはり努力なんです。1日20軒、営業稼働日が仮に220日として、これを10年やったらトップセールスになれる。棋士の羽生善治さんの本の中に「1日4時間から5時間の将棋の練習、稽古を10年続ければ、有段者の道につながる」と。努力の継続の話は事実だと思います。いわゆる能力がなくても努力をし続ければ成果につながる。

小路明善の経歴・略歴

小路明善、こうじ・あきよし。日本の経営者。アサヒビール社長。長野県出身。青山学院大学卒業後、アサヒビールに入社。東京支社中央第一支店課長、東京支社特約店営業部副部長・部長、人事部人事課長、人事部次長、人材高度化推進部人事課長、人事戦略部長、執行役員経営戦略・人事戦略・事業計画推進担当、事業計画推進部長、執行役員飲料事業担当、アサヒ飲料常務取締役企画本部長、アサヒビバレッジサービス社長、アサヒ飲料専務、アサヒビール本社常務執行役員、アサヒグループホールディングス取締役などを経て、アサヒビール社長に就任。

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