小泉光臣の名言

小泉光臣のプロフィール

小泉光臣、こいずみ・みつおみ。日本の経営者。日本たばこ産業(JT)社長。神奈川県出身。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(のちの日本たばこ産業)に入社。日本たばこ産業経営企画部長、執行役員・人事労働グループリーダー、執行役員・たばこ事業本部事業企画室長、常務執行役員、たばこ事業本部マーケティング&セールス責任者、副社長たばこ事業本部長などを経て社長に就任。そのほか日本能率協会経営部門評議員会副議長を務めた。

小泉光臣の名言 一覧

常に他社をしのぐスピードで利益成長を続けることで、その先にナンバーワンがある。


すべての事象を0か1かで見る、寛容さを否定するような社会って、本当に成熟した大人の社会なのかなって、常に疑問を持っています。


問題は現場にあるし、解決策もそこにある。


私が本社にいたって、何の付加価値にもなりません。現場・現物主義なので、自分の目で見たもの、触ったもの以外は信じられないんです。


リーダーには、最後の責任は自分が取るという矜持が必要。


いつかは次の世代にバトンタッチするときが来ます。その若い世代が笑顔で仕事をしてくれる姿を想像すれば、いま、やるべきことをやるのは別に悪いプレッシャーではなく、心地良い健全なプレッシャーになります。きれいごとではなく、心底そう思います。


若いときは夢を語っていればよかったのですが、職責が上がると、夢は目標になり、目標は実現すべきものという使命感に変わります。それはプレッシャーでもあります。


現場から報告書の形であがってくる情報は、確度こそ高いが喫緊の話が多い。先のこととなると、トップ自ら現場で拾った個々の情報を自分の中でつなぎ合わせて読み解くしかない。先を読み、布石を打って決断する経営者をめざす以上、こういう情報がなければ不安で仕方ないんですよ。


経営者に必要なことは先をきちんと読み、そのための布石をしっかり打って決断することです。「先を読むには、お客様の声に耳を傾けることが大切。例えば、愛煙家全員の声を聞いて回ることは難しくても、お客様と日頃から接している営業担当や研究開発担当に話を聞けばいい。そういう現場には、先手を打つためのタネが落ちている。社長自らそういうタネを拾いに出かけなければ、先は読めません。


海外も含め、たくさんの工場がありますから、一カ所にせいぜい年に2回も行ければ御の字です。でもまったく見てない場合と1回でも2回でも見た場合とでは、大きな差があります。1回訪ねたくらいで偉そうにと思われるかもしれませんが、「それでも俺は見たいんだ」と正直に社員に宣言しています。


現場の社員がサボるとか、そういう恐怖ではないんです。大きなジャッジメントが必要な課題であっても、元をたどれば、現場の一つ一つの小さな問題・課題が寄せ集まってできている。現場から離れたことが原因で、大きなジャッジメントに狂いを生じさせたくなかったのです。


お客様に付加価値ある商品群を提供し続けることが大切です。JTはもっとイノベーティブな組織にならなければならない。


事業投資によって商品価値を高め、発売し、それに見合った価格を設定させていただき、得た利益を再投資することで、さらに満足度の高い商品を提供する。この正の循環こそが正しい経営の道だと考えています。


私は「投資なきところに成長なし」という理念を持っています。たばこ業界3番手の当社は、事業投資によって中長期的な企業価値を高め、株主の期待に応えていきたい。


商品を開発するためにも、お客様への洞察力を高めたり、組織全体がチャレンジをし続けたりすることが重要です。失敗を恐れない、むしろときには失敗を褒めるような会社の雰囲気をつくりたい。


タバコの歴史は非常に長いですが、シガレットはせいぜい120年です。既存商品以外にもまだ新たなフロンティアがあると思っています。


お客様を深く知り、お客様自身さえ明確に意識していないニーズをとらえた商品を世に出すことが求められています。


私が考える、世界一になるための戦略の柱が、いままでにない新しいたばこを生み出すことです。そのための新しい事業部を作りました。まだ赤字を垂れ流していますが、社内の知見だけでなく、米国のベンチャーの技術や特許などを集め、それをたばこに仕立て上げるというオープンイノベーション型で開発していきます。


世界一のたばこカンパニーを目指すということは私がずっと前から言っていることです。ただし、この言葉にもふたつのポイントがあります。世間的には、売上高や利益額というのがナンバーワンの定義ですね。実際私もそうだと思います。これは必要条件ですから、満たさなくてはいけない。ただし、それは必要条件であって、自分たちが自信を持って送り出したブランドがお客様においしいと思ってもらえる。そのお客様の数が世界で一番多いことが本質です。


企業を買収時のシナジーにはふたつあって、ひとつはコスト面のシナジー。工場の合理化や原料調達などで、これは買収後2~3年で現れてきますが、効果は1度きりです。買収の意思決定をする際にはコスト面のシナジーをかなりの精度で見極め、公的には合理的かどうかをそこで判断します。もう一方がトップラインにおけるシナジーです。両社が組むことによって何ができるようになるのか。コスト面のシナジーの先にあるものです。トップライン(売上高)側のシナジー効果が望めないと、そこから先で急にぎくしゃくするという危機感が、買収前からすごくあります。


買収して相手先に経営を任せて成功するには、経営哲学について、被買収企業から共感を得られる買収者かどうかでしょう。買収当時、RJRもギャラハーも短期的なキャッシュフローを追い求める米国的な株主至上主義に偏重し、そこからかなりのプレッシャーを受けていました。そこにJTが乗り込み、日本的な、短期でなく中長期の利益を重視する姿勢などを提示したことが、感動を持って受け入れられました。


持たざる経営というのは、格好悪いのですが、被買収企業に1000人単位で乗り込んでいくほど人材がいなかったのです。だから任せる経営になった。社内では冗談交じりに「貧者の経営」とも言っています。


コスト面のシナジーだけではM&Aのすべてを判断しません。やはり将来のシナジーまで見通さなければ、M&Aの効果は1度で終わってしまって、その後、一緒に成長を目指そうというモチベーションが起きませんよね。


買収によるシナジーがどれだけ取れるかということを明確にする必要があります。シナジー計算が中途半端なものは、目的がはっきりしていないということです。緻密というより、時間をかなりかけます。それも弊社は外部に計算を頼まず、あくまで自前で算出します。


私たちの世界戦略におけるキーワードはふたつあって、ひとつが地理的なポートフォリオ、もうひとつがブランドのポートフォリオです。このふたつが盤石になって初めて安定的にグローバルで成長できると言っています。


リサーチをしてみたら、名前が変わっても味や香りが変わらなければ吸い続けるというお客様がほとんどでした。それどころか、逆にメビウスという新しい名前になったら一度試してみようかという人までいました。むしろ手応えさえ感じるくらいの調査結果でしたので、最後の最後で私の背中を押してくれる、大きな結果でした。
【覚書き|マイルドセブンの名称をメビウスに変えた当時を振り返っての発言】


M&Aを成功させるには、「買収目的を明確にしてディール(取引)に臨むこと」。次に、「持たざる経営」。そして「自分たちの組織能力以上の買収をしない」という3点でしょう。


ブランドの意味について社員によく言う例がルイ・ヴィトンです。あれはいまでこそファッショナブルなルイ・ヴィトンですが、もともとブランドとして確立したのは、あの旅行バッグが丈夫で長持ちして、壊れた場合はすぐに修理のアフターサービスがつく。これはいいという信頼感でヴィトンです。そのブランドを確立したからこそファッション性を求めるなど、次の戦略オプションが展開できるわけです。しかし、それはあくまで次の戦略オプションであって、根幹はやはり信頼。


JTの経営を語るとき、私はリスクヘッジとリスクテーキングのふたつの概念を重要視します。ポートフォリオとは経営資源を分散させるリスクヘッジの概念です。一方で、選択と集中というリスクテーキングの概念も必要になります。ただしこのふたつは相反する概念ですから、両者をどれだけマネジメントできるかが、経営陣の役目だと考えています。


私がM&Aなどで事業を地理的に拡充したいと言っているのは、単に販売量や利益額が増えるという絶対量の問題ではありません。成熟した市場や新興市場、あるいはその中間が組み合わさることで安定成長ができると考えます。ブランドも全く同じ発想です。


弊社はベルギーのグリソンという会社を買収しました。これは、グリソンが持っている手巻きたばこ、つまりあらかじめ巻かれたシガレットタイプではなく、自分の手で巻く、値頃感のある商材を手に入れることが目的です。これによって景気が悪い時のダウントレーディング(顧客が下の価格帯商品に移る現象)の受け皿として、ポーフォリオの拡充ができました。


たばこという商材は、景気変動の影響を受けにくいという業界の定説、ある種の常識がありました。しかし、リーマンショック後に、西欧を中心にダウントレーディング、つまりは値頃感のあるたばこにお客様がブランドを切り替えるという傾向が初めて見られました。


現在、グローバルに見ても非常に景気が悪い局面ですから、経営者の目は日本国内であればデフレ対策というように、どうしても値頃感のある商品に向かいます。私も実際にそうです。しかし、その時あえて意識的に自分の脳みその75%くらいは値頃感のある商品の問題にし、残りの25%は逆張りですが、ブランドのポートフォリオという中長期的課題に向けました。景気が回復することを考えれば、付加価値の高いプレミアムの分野を先取りして拡充しておくということも、経営の安定成長のために手を打っておく必要があると考えたわけです。


ブランドの根幹について、私は常に「信頼」だと言っています。若い社員なんかは間違えるんですが、何かイメージ戦略のようなことでブランドを語って、ファッショナブルであるとか、高いイメージを獲得するとか、ともするとそういうことをもって語ることが多い。


マーケティング屋がブランドを作っているのではなく、工場のひとつひとつの品質に対する取り組みがブランドを作っている。


過去の買収では世間からいろいろ言われましたが、私たちに自信があったのは、たばこ会社がたばこ会社を買収した点です。土地勘があるわけですね。逆に単に投資をして上納金として配当だけ受け取る投資会社になるつもりもありません。


もともとたばこというのはマヤ文明からひもとくと、薬だったんですから。いままでにない範疇の商材を世に送り出すことで、たばこというカテゴリー全体のプロダクトライフサイクルを伸ばしていきたいです。


私が経営者として常々思っているのは、近江商人の「三方よし」という言葉がありますよね。弊社の中では「4Sモデル」という言葉を使っていまして、お客様を中心として、株主、従業員、社会、こうした4者のステークホルダーに対する責任を高い次元で果たし、満足度を高めていく。


課題がわかると、結構何とかなる。自分一人じゃありませんから。副社長がいて、常務・専務がいて、世界中に社員がいて。そこはみんなの力を借りればいいわけですけど、経営者の最大の宿題というか、ミッションは、「何が課題なんだろう?」って考えること。


文化や歴史が日本人と異なる海外の社員には、阿吽の呼吸は通用しません。国際舞台でのコミュニケーションには、日本以上に気を使っています。


どんなに素晴らしい戦略を構築しても、社員がそれらを共有し、行動してくれなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。そうならないよう私は、「フェース・トゥ・フェースで具体的に話す」「相手の聞きたいことの中に自分の言いたいことをまぶして伝える」の2点に気をつけています。


社長のところに日々集まってくる情報だけでは、十分とはいえません。市場の変化の兆し、まだ顕在化していない社内の課題など、本当に必要な情報は、社長へのレポートにまとめる時点でかなり落とされてしまっているからです。それらを補うには、自ら社員の言葉に耳を傾けるしかありません。私が時間を見つけては現場に顔を出すのはそのためです。


特に海外で気をつけているのがアイコンタクトの重要性です。相手が日本人であれば、自分の話のこの部分でこんな反応があるだろうと、ある程度想像できる。ところが海外では、思わぬところで目が輝いたかと思えば、こちらが強調したい個所に全く反応がない場合もあるというように聞き手の反応が予想できません。


わかりやすいようにと卑近な事例に落とし込めば、聞く側はイメージしやすくなるものの、今度は解釈の幅が狭まって、誤解を招く恐れがあります。それでも、私は社員の腑に落ちるような具体的な説明を展開したいと思っています。誤解が生まれた場合でも、後で訂正すればいいだけの話ですから。


話が抽象論で終始しては、聞き手の心に響きませんが、だからといってディテールまで踏み込んで話すと、具体的な内容が社外に流出するリスクも高まります。しかし、たとえそうだとしても、社員が会社の戦略を深く理解して、「自分の仕事にはこういう意味がある」と認識してくれなければ、社員の仕事の生産性は上がらないでしょう。


社長には2つの大きな役割があります。1つは戦略を立案して決断すること。もう1つが戦略を社員に伝えることです。いずれにしても社員とのコミュニケーションが重要です。


事業が一本足打法というのは怖いですね。事業のポートフォリオを考えると、たばこ一本に絞ったときにリスクをはらんでしまう。ですが、あまりに手を広げすぎてしまうと屏風が倒れるようにデメリットも大きい。そのため、今は医薬と食品の2つに絞って強化していこうと考えています。


私は世界ナンバーワンになろうと社内で言っています。ただ、その時期や数字を明確にしているわけではないんです。もしそうした目標を設定すると、達成するために必ず組織に無理が生じるんですね。M&Aも手段ではなく数字を積み上げるための目標になってしまう。


たばこは国ごとの特徴に応じて事業展開するビジネスです。「日本市場は特殊だ」という社員には、「お前は他の市場をどれだけ見ているんだ」と叱ります。


入社当時私が感じていたのは、民間企業に対する強烈なコンプレックスだったんです。専売公社は国の公共企業で親方日の丸、ダサい名前の会社だと思われていた。民間はバラ色だけど僕らはネズミ色みたいだと。その感情がバネになりました。国内が縮小する以上、国際化や多角化を達成しないと、いつまでもそのコンプレックスから抜けられないという危機感が、原動力になった。


戦略論とかマーケティング論の本を読むと、いまのものってソリューションが書いてあるんですよ。ところが、歴史小説にはそれが書いていないので、自分の脳みそを使って引っ張ってくる。この過程が楽しいんですね。戦国の武将ものを読んでいても、何が課題で、どう対応して、どういう解決策を見出すか。小説の中だと、まず「何が課題か」というところから入れるわけですよ。


笑い話で言えば、私は間違った理解をしていたんですね。たとえば、日本人というのはコミュニケーションが冗長で、あえて言葉を濁すような文化があるけれど、アングロ・サクソンはそうではないと勝手に思い込んでいました。スイスのジュネーブに海外事業の本社がありましたので、買収直後は現地に行って会議なんかやるわけですよね。日本人ばかりだったら、挨拶をしてビジネスの話に入る前にちょっと雑談でもするんでしょうけど、とにかくダラダラとやっちゃいけない、と。当日は効率よく行うために、頭の中で会議のアジェンダを作りながら、ポンポンと言うべきことだけ言って「どうだ!」って。小一時間の会議を終えて出たんです。自分の中では達成感があったんですけど、後から「何だ、小泉は」と。「いつもありがとう」もなければ、前期の実績に対して「Good Job!」もなければ、「ご苦労さま」もない。いきなりしゃべってパッと帰っていった。よかれと意識してやったことが逆効果になってしまって、ものすごく落ち込みました。その後もいろいろと試行錯誤して会議に臨んでいるうちに、「そうなんだ。みんな、日本人以上に褒められたいんだ」とか、いろんなことがわかって、それで軌道修正していった。


小泉光臣の経歴・略歴

小泉光臣、こいずみ・みつおみ。日本の経営者。日本たばこ産業(JT)社長。神奈川県出身。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(のちの日本たばこ産業)に入社。日本たばこ産業経営企画部長、執行役員・人事労働グループリーダー、執行役員・たばこ事業本部事業企画室長、常務執行役員、たばこ事業本部マーケティング&セールス責任者、副社長たばこ事業本部長などを経て社長に就任。そのほか日本能率協会経営部門評議員会副議長を務めた。

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