大山健太郎の名言

大山健太郎のプロフィール

大山健太郎、おおやま・けんたろう。日本の経営者。アイリスオーヤマ創業者。大阪出身。高校卒業後、急逝した父の跡を継ぎプラスチック成型加工の大山ブロー工業所代表に就任。その後、同社を法人化・事業転換しアイリスオーヤマに社名変更。同社を大きく成長させた。そのほか、東北ニュービジネス協議会会長、宮城県産業デザイン交流協議会会長、日本DIY協会常任理事、東北経済連合会常任理事、日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会常任理事、仙台経済同友会幹事、みやぎ工業会理事、東北工業大学非常勤講師などを務めた。

大山健太郎の名言 一覧

人それぞれの強みを伸ばすには、とにかく好きなことをやりたいという「願望」も不可欠です。好きなことは何でも身に付きますよね。私がなかなか英語を覚えられないのは、英語が好きではないからです(笑)。


毎年、私は新入社員にこんな話をします。「学校ではできなくても知っていればいい成績をもらえたでしょうが、社会人では、できるか、できないか、が大事になります。できない限りは評価されません」と。


知るだけではなく、行動を起こす力も必要です。「今を知る」ことに加えて、実際に「できる」ことが大切なのです。スマートフォンさえあればどんな情報も入手できる時代ですから、なおさらです。


お客さま目線で、お客さまの満足する価格帯で満足する商品を作る力が重要です。それが今まで需要を創造してきた最大のポイントです。


誰もやっていないことをすれば必ず道が開ける。


生活者の視点に立てば、ニーズはいくらでも掘り起こせる。


目標を明確にして正しい評価をすれば、誰でも頑張る。社長の自己満足ではなく、社員が常に納得する仕組みを作らなければいけない。


仕組み作りは経営の基本。どんな時代環境でも利益の出せる仕組みを作ることが大事。儲けるのでなく、利益が出る仕組みです。


頭で考えていると思いが優先しがち。書くことによって思考が整理される。


誰にでもわかる話し方のコツは、平易な言葉を使うこと。私は横文字も使いません。難しい話を簡単にかみ砕くのが経営者の話し方。


ターゲットとなるお客様は誰なのか、そのお客様に対して何をどう商品化するのかが重要なポイント。


あまり難しいことを考えずに、「自分が欲しいもの」「改良すれば使いやすくなるもの」を作るようにしています。


当社は危機を前提にして経営しています。


当社は生活の中での不満を解消することを重視しています。常に生活者目線で家庭の中からの問題提案をしています。


やはり需要創造、これが一番大事。


重要なのは需要創造で、アイディア次第なんです。コメ農業を変えるためにも、まず需要創造を考えるべきです。


生産者支援だけでなく、まず需要を増やすことを考えなくてはいけない。


昨日の延長で駄目になったのだから、新しいことをやらないと。何をするか、ということは需要創造するしかないと。


会社の目的は、永遠に存続することです。そのためには常に新たな需要を創造しいくしかない。その力がある商品かどうかを私は見ているのです。


我々が狙うべきチャンスは変化の中にこそある。変化のあるところには、必ず新たなニーズが発生する。


朝は私にとって情報収集と運動の時間です。身体を鍛えているからこそ69歳になっても社員と丁々発止のやりとりができるのです。


締切が迫っているときこそ、良いアイデアが出やすいものです。


企業経営は「人、モノ、金」と言われますが、一番大事なのは経営者ではないでしょうか。いくら社員が多くても、経営者が有能でなければ会社は成長しません。


聞きたいことと伝えたいことの接点が合致したとき、聞き手は話に引き込まれ、伝えたいことが聞き手に伝わる。


自分が言いたいことだけを話す人と、相手が聞きたいことを話す人。そこが伝え方が上手な人と下手な人の一番の差。


効率的に働くためには、「集中」と「休息」の適度な切り替えが必要。


下請けが作る部品を組み立てる大手メーカーでは、ユーザーが買いたい価格の実現は難しい。まずは製造工程を見直し、ビス1本まで内製化することで低価格でも利益を出す仕組みを作り上げました。


ピンチはチャンスと言い続けてきました。起きてしまったことは仕方がありません。その中で、今後どうするかが重要です。


我々は原価管理にものすごくシビアな会社です。ひとつひとつの商品の損益管理をしっかりやっています。そういうビジネスユニットさえしっかりしていれば、規模の問題ではないと思っています。


経営で一番大事なのは働く社員の立場に立つこと。評価を正しくすれば、人間は誰でもモチベーションが上がる。だから当社では評価することにものすごく時間をかけています。


当社が急成長したのは、お客様が「なるほど」と思う商品を値ごろな価格で提供することに尽きる。生活者の視点で「なぜ?」を繰り返す。そうしたユーザーインの思想で開発してきたことが強み。


問屋を通さないのが当社の強み。売れたものにしか発注が来ないから基本的に週単位で小売りの販売トレンドが分かります。こうしたデータは新商品の開発にも役立てています。


変化に対応するコツは、顧客の代表になることです。経営者は会社の代表ではありますが、会社の人間の代表となってはいけません。顧客の代表として会社を見るのです。


他社が対応できない顧客の依頼に応え続けること。それが、どんな環境下でも利益を生み出し、ひいては企業を存続させます。


アイリスでは、「売上高に占める新商品の比率」を「自社が変化に対応できているかを測る指標」にしています。ここで言う新商品とは、発売から3年以内の商品になります。それが会社の現状にどれだけ寄与しているのか。すなわち、会社の新陳代謝を指標として測るわけです。今期は60%を目指しています。


効率を考えれば、ロングライフ商品を出すのが一番でしょう。ただ、ロングライフ商品への依存は企業が思考停止に陥る前段階で、結果的に大赤字の元凶になると私は考えています。


私は「給料は高く、人件費比率は低く」とよく言います。矛盾しているように聞こえるでしょうが、貢献した従業員に厚く処遇したとしても、その社員が処遇以上の結果を出せば人件費率は下がります。


生活者のニーズはどんどん変化していくのです。今年のニーズと、来年のニーズは違うのです。そのニーズの変化さえきっちりつかまえていけば、ビジネス・チャンスはいくらでもある。アイデアが枯渇することなんてあり得ないのです。


「大山さんは未来が見えるのですか」とよく聞かれます。当然、未来は見えません。だからこそ、切るカード、選択肢は常に多く持っていたい。最近では家電やヘルスケアの事業も注力し、事業領域は多岐にわたっています。


90年代後半にアイリスは伸び悩みました。なぜ、伸びないのか。自分なりに分析して出した答えが、主戦場であるホームセンターへの過度の依存でした。ホームセンターを牙城にしてきただけに、ここでの売上拡大に集中し、それ以外の売り場での成長を考えることを怠っていました。一定のお客さんには自分たちの強みを示したとしても、大多数のお客さんを取りこぼしている。その時点で、自ら成長の芽を摘んでしまっていることに気づいたんですね。得意のビジネスモデルに安住する呪縛に、私も陥っていたのです。


アイリスは大阪で技術者の中途採用を実施しました。狙いは経営難で人員削減を実施するシャープやパナソニックなど大手電機企業出身の人材です。地方企業であるがゆえに、優秀な人材を取り逃してきたのは一度や二度ではありません。そこに降ってわいた家電メーカーの経営危機。海外企業に引き抜かれれば国としてもマイナスですから、そういった人材をアイリスで再活用したいと考えたんです。


「あえて締切ギリギリ」でやってみる。これも、短時間で密度の高い仕事ができる、効率のよい方法と言えるでしょう。


いま、自動車をつくれと言われてもできません。だけど、我々がつくることによってお客さんが満足できるなら、いずれつくるかもしれない。我々がやりたいかどうかではなく、主語はお客さんです。


ああ、あの人が、という立ち居振る舞いをすれば人の見方も変わります。出る杭は打たれるが、出過ぎてしまうと何の関係もありません。


株主に払うなら社員に払う。稼いでくれたのは誰ですか?株主はちっとも稼いでくれないじゃないですか。


働く社員にとって良い会社を目指し、会社が良くなると社員が良くなり、社員が良くなると社会が良くなる仕組みづくりを。


うちの企業理念に借りものはひとつもありません。19歳でゼロからやってきた思い、哲学が入っています。


ロマンとか思いが会社を成長させる。資本家は企業理念を実現させるサポーターであればいいんです。


いかなる時代環境でも生き残る仕組みづくりと変化対応。これさえあれば、どうあろうと、そんなのは二番目でいい。


仕事では辛辣なことも言うが、(兄弟)みんな分をわきまえて我慢している。一番は信頼でしょう。信頼の絆は血でしょう。
【覚書き|兄弟で経営を頑張ってきたことについて語った言葉】


評価は、人を育てるうえで一番重要なポイントです。それをないがしろにしてはいけません。公平な人事は難しいですが、公正な人事にしたい。全員が満足する人事は不可能。ただ、全員が納得する人事ならば挑戦できる。


思いを語れば、それの実現に向けて周囲が知恵を出したり、協力してくれたりするものです。


従業員を育てるうえで最も重要視しているのが、コミュニケーション能力です。自分が何をしたくて、何を求めているのか。それをきちんと自分の言葉で述べられなければ、何もカタチになっていきません。コミュニケーション教育としては、毎朝の朝礼で「1分間スピーチ」を実施しています。職場において、持ち回りで1人が自分の考えを1分間で話すのです。業務の報告ではありません。テーマは時事ネタに関する考えでも、自分の夢でも構いません。


人材育成の制度設計における私の基準は2つあります。「人事評価が従業員を育てるためのツールとなっているか」「自分が従業員の立場ならどんな人事制度を望むか」この2つの視点を基に、人を育てるという姿勢を明確に打ち出す必要があります。


従業員第一といっても、甘やかすわけではありません。当社を選んでくれた人を立派な社会人として育て上げる。そのためには厳しい指導も必要になります。成長したいという従業員の気持ちに応えるために、その場をどれだけ提供できるか、経営者は常に考えなければなりません。


上場の誘いはすべて断ってきました。利益は従業員が頑張って働いた成果。それを配当に回すなら、従業員へ還元した方がいいと考えます。


有能で信頼関係を構築できると判断した人材は、どんどん幹部に登用していく。それがモチベーション向上につながると私は思います。


アイリスは世間から「厳しい会社」として知られているようですが、それを実践するからには、経営者である私が自分自身に対して一番厳しくしなければいけません。そして自分自身の成功体験を捨てなければいけません。


トップとして大事にしているのは、開発者の挑戦する心です。厳しい判断を下す背景には、きちんとした理由がある。開発者に対して、その理由を明確に示さなければいけません。だから、私にもプレッシャーはあります。前の商品とはどこが違うのか、製品で起こりうる問題は何かと考えなければいけません。そうすると、製造現場や部品、素材に関する知識も必要です。


製品開発は、毎週月曜日の「プレゼン会議」が中心になります。ここで、年間1000アイテム以上の新商品が誕生する。私を筆頭に、役員や幹部が勢揃いする前で、開発担当者が新商品をプレゼンするわけですね。当然、厳しくチェックします。私は顧客の代表ですから。従来品と何が違うのか、ライバルとの差別化はどうなのか、利益にどれだけ貢献するのか。 ダメ出しは日常茶飯事ですが、社員も慣れたもので、持ち帰ってその日のうちに改善してくる。社長や役員が揃っている会議ですから、その場で決裁になります。認められればすぐに取り組んでライバルよりも早く商品化できる。


当社は家庭の園芸市場や室内でのペット飼育という新たな市場を創ってきました。当初はニッチだったのでライバルの参入も少なかったのですが、規模が大きくなれば類似商品も出てきます。それに勝つためには、新たな付加価値をつけた商品しかありません。ライバルよりも1周早く走って開発を続ける。これが、勝ち続けるコツです。


新商品を毎年大量に投入すると、一見効率が悪いように見えるでしょう。ただ、単年の決算だけでなく、会社の未来を考えれば、損して得を取るべきです。


モノづくり大国の日本は製造現場の意見を尊重しがちですが、良いものだからといって採算度外視でモノを作っても意味はありません。モノづくりは目的ではなく、あくまでプロセスです。


現場からは開発が間に合わない、原材料費で元が取れないという意見があがるかもしれません。ただ、これはメーカー側の論理であり、顧客には関係のない話です。常に顧客の視点に立って開発者に意見する。私が言う「顧客の代表」とはこういうことです。このように、アイリスは製品の価格決定プロセスが他社と決定的に違います。


アイリスは製造業に分類されますが、ものをつくるだけの会社ではありません。これまでも、顧客に新たな価値を提供して、生活スタイルを変える商品を生み出すことで、会社の核となる分野を広げてきました。ここで重要なのは、ものをつくること以上に顧客のニーズをつかみ取ること。消費者の生活の変化を意識して開発することです。


アイリスは会社の核となる商品が次々に入れ替わることから、変化対応型の企業経営として紹介される機会が少なくありません。なぜ私が変化対応型の経営を身につけたのか。その背景には、幾度となく当社を襲った危機の存在があります。


いまのアイリスは、経営トップの私が先頭に立って会社を引っ張っています。ただ、最近は個人でどうこうできるレベルを超えつつあります。ピンチをチャンスに変える強い組織を作るには、それを仕組み化する仕掛けが必要になります。


一時は栄華を極めたものの、時代の変遷で廃れることはよくあります。ただ、波に乗り遅れた「過去の遺物」にも価値はある。むしろ、たくさんの英知が集結している「宝の山」と言っても過言ではありません。


企業の再生で大事なのは、従業員のやる気をそがず、かつ自主的に再建を任せて自信をつけさせることです。


人員削減によって100の売上が70に減るのであれば、人員削減をせずに売上を120~150に伸びるよう考えさせた方がいい。そうすれば、経費削減以上の効果が出るものです。金利や共通費用の負担が減るだけで、みな前向きに動き出しやすくなる。


アイリスチトセの再生では、「無駄な支出を減らすこと」、「新たな事業の柱を作って売上を増やすこと」の2点を徹底的に進めました。


買収企業の再生をする際、まず手っ取り早いのが余剰人員の削減でしょう。会社を適正な規模に縮小して、再スタートを切れば身軽になる。ただ、私はこの手法は使いません。なぜなら、残った人員も士気が低下し、結果的に再成長に向けて前向きに仕事に取り組めなくなるからです。だから、人員削減はしません。その代わり、共通費用を徹底的に削減します。経理などのシステムをアイリスと共通化させれば6%近い経費削減が可能になります。ほかにも、金融機関からの借入金をアイリスが負担すれば金利負担を大きく減らすことができる。共通費用を削減することで、さらに人員に余剰が出てきます。こういった余剰人員には売上を作る仕事にシフトしてもらいます。


学習机や椅子を販売するアイリスチトセは、もとは民事再生法の適用を申請した破綻企業でした。しかし現在では売上高73億円、営業利益15億円弱とそれぞれ前年比で13%増、30%増という高い伸びを示しています。アイリスチトセの再生を通して、会社の仕組みを変えれば、破綻した企業でも高収益企業に再生できると気づきました。その後、カイロを扱うニッテツ・ファイン・プロダクツ、名証2部上場の家具メーカーであるホウトクなど、企業や営業権を買収しています。


売り場に関しても既にあるものの有効活用を図っています。アイリスは全国にある「町の電気店」に商品を置いてもらうよう営業をかけています。町の電気店は顧客との信頼関係と、店に足を運ばない客という小売店ではどうにもかなわない顧客を握っているのですね。ただ、町の電器店とタッグを組むからには、彼らにもメリットを示す必要があります。そこで、アイリスは白物家電以外の商品を扱えるように、カタログを作成し、注文すれば翌日に届ける体制を作りました。誰かと一緒に組むには、相手の悩みを解決してあげることが一番です。結果的に、町の電器店は防災グッズやペット用品などを高齢者に売ることで、新たなビジネス機会を創出できました。


ペットの抜け毛がとれないという不満を解消すべく、ヘッド部分にエチケットブラシをつけて抜け毛を取るサイクロンクリーナーを出しました。同様に、1口では足りないという声に応えて、2口のIHクッキングヒーターを開発し、いずれも好評を得ています。こういったアイリスが培ってきたユーザーイン(顧客の不便解消)の発想で開発をすれば、海外の格安商品にも勝てる。伸びシロがないと世間が諦めたところに、まだ伸びシロがある。その開拓こそが、いまのアイリスの好調の原動力になっている気がします。


台湾や韓国のメーカーによる格安戦略に押され、国内メーカーは高価格帯に絞った開発戦略を取っています。白物家電は伸びシロの小さい事業という印象が強いかもしれませんが、価格で海外勢に負けても、消費者の不満を解消する付加価値を提供しさえすれば、売れる商品はまだまだあります。


アイリスは自社工場で製造しているため、繁忙期にも柔軟に製造ラインを切り替えて増産体制を取ることができます。売り場で欠品を出さなかったことで小売店の信頼も勝ち取りました。


アイリスは内製化比率が高いという特徴があります。つまり、川下からニーズが上がってきたら、自分で作ってしまうのです。いまや日本の大手メーカーの大半は、アッセンブリー(組み立て)をやっているだけで自分ではものを作っていません。下請けに部品を作らせて、それを組み立てて、ラベルを貼って出荷しているだけ。だから、仮にニーズをキャッチできても、もはや自力で新しいものを作る力はないのです。しかし、うちの場合は何でも自作してしまう。だから、こういうものが欲しいというニーズに柔軟に応えていけるのです。


一般のメーカーは卸値を知っていても、店頭の小売り価格を知りません。自分たちが作っているものが、いくらで売れているかわからないのです。ところがうちの場合は、1万5千アイテムすべての小売りデータがあります。さすがに今日の明日は無理ですが、今週の来週というタイミングで、どの商品がいくらでどれだけ売れているかを把握できるのです。しかも、POSデータ出荷実績をもとに自社工場に発注するので、先週100個売れたら今週100つくる。先週10個しか売れなかったら今週は10個しか作らない。要するに、うちは売れるものしか作らないシステムになっているわけです。


うちはメーカー・ベンダーというスタイルを取っています。つまり問屋さんを通さずに、自社のホームセンターや大手量販店さんに直販している。メーカーでありながらベンダー機能も併せ持っているため、生活者の不満が直接伝わってくるのです。


我々はソリューション・マーケティングと言っているのですが、ひと言で言えば、生活者の不満を発見して、その不満を解決する商品を出すということ。生活者にはつねにたくさんの不満が鬱積しているわけです。それをひとつひとつ解決する商品を出していって、目に見えた効果があれば、需要は必ず伸びていくのです。


個人消費が伸び悩んでいる原因はひと言でいって、将来に不安があるからです。お金を持っている高齢者に、なんとかしてお金を使わせようという議論がありますが、将来に不安を抱えている人が享楽的にお金を使うはずがない。根本的に将来の不安を解消する方向に進まないと、消費は戻りません。


アイリスとて、いまは成長を続けていますが、将来は分かりません。企業の衰退は想像以上に速いものです。トップだけが変化に対応できても意味がありません。多くのビジネスチャンスのカードを持ち続け、従業員と一丸になって変化対応していきます。


アイリスは新たな漁場を見つけて売り場を創造してきました。一方、最近はLED照明や家電など、強豪がひしめく漁場も開拓しています。顧客ニーズに迅速に応える価格や機能、販売チャネルをもってすれば、市場は創造できる。同じ漁場で魚を取っているようでいて、実は釣り方を変えているのです。


選択と集中という考えは合理的ですが、その市場が永続的に伸びて、競争優位性が持続するならば成立するでしょう。ただ、儲かる産業となればこぞってライバルが参入してきます。


経営者の仕事は、魚のいる場所に船を出すことです。ただ、豊富に魚がいたとしても、そこに大型漁船が何隻も押し寄せれば、過当競争になります。それなのに同じ場所に船を出し続けても魚が取れるわけがない。当然、利益も出ませんよね。選択と集中は、いわば取る魚の種類を限定してしまうようなもの。大事なのはどこに魚がいて、ライバルの漁船がどれだけいるのか。魚の数が減った場合に、どの魚をどの船で取るか。その嗅覚と舵取りではないでしょうか。


アイリスの打ち合わせは顔をつきあわせて短時間で済ませる。長くても15分程度です。必要な人材をぱっと集めて話し合い、すぐに決断して行動に移す。これがアイリス流の会議です。


短期間で集中する点では、会議室も同じです。当社には来客用や研修用の会議室はありますが、従業員の打ち合わせは基本、テーブルを囲んで立ちながら行います。部署をまたいだ従業員が、そこここで立ちながら話し合うのです。わざわざ会議室を予約して会議をすると、全員の時間をすり合わせるのも大変です。座ってしまうと相手との距離が遠くなって議論も活発になりません。さらに居心地がいいとダラダラと引き延ばしがちになります。


大口顧客からの要求を一度でものめば、また次の要求がきます。ほかの小売りも言い出したら、きりがありません。業界の常識や既存客のむちゃぶりのすべてを受け入れていけば、どんどん利益は減って赤字に陥る。小売りからすればメーカーから買う自由があるでしょうが、メーカーにも小売りへ売る自由があります。


アイリスでは取引先とは言わず、取組先と言うように従業員を教育しています。小売りやお客さんとともに、一緒に課題解決に取り組む。そして、お互いにメリットを感じ、利益を得る。そういうウィン・ウィンの関係でなければなりません。小売りだけが強く、メーカーが常に泣き寝入りしていては製造業が崩壊してしまう。


よくある業界内での常識などは、その不必要なものの典型ではないでしょうか。流通業界で例えるなら、押し込み販売です。メーカーが月末に数字を作るため、リベートや値引きで無理に買ってもらうのが押し込み販売です。ただ、これをやると、小売りに在庫がたまり、翌月の半ばで売上が立ちません。結果的に、その月も月末に押し込み販売になる。これでは意味がないでしょう。


私は売り場という言葉はあまり好きではありません。お客さんが買いに来る買い場であるべき。ならば、お客さんが買いやすいように、自分たちの商品の魅力を伝える人を置けばいい。


国内外の工場はすべて稼働率を7割未満に抑えています。せっかくあるのだからフル活用すべしと思われるかもしれません。しかし、これこそが好機を逃がさないアイリスの強みです。3割のバッファーを活用し、刻々と変わる需給状況に合わせてラインを組み替える。そうすることで特需を逃さず、過剰な在庫や設備を抱えないで済むのです。


経営者にとって一番難しいのは、取捨選択でしょう。変化の波を読み、限られた資源をどこに投入するか。何が必要で、どこが無駄かという判断は、その後の会社の生死を分けると言っても過言ではありません。


アイリスが度重なるピンチをチャンスに変えてきたのは、従業員の努力の賜物。彼らに報いるのは報酬だけでなく、見捨てずに育てていくという姿勢もあります。人事制度が従業員を、そして従業員が会社を強くする。人事制度に完成形はありません。だからこそ、挑戦しがいがある。


成果を出せない社員を切り捨てはしません。気づきの場を与えて再生を図ります。順位づけをして、下位10%の社員にはイエローカードを出します。これは、人事担当者と本人にしか分かりません。対象者には目立たない形でコーチがつき、年に数回の面談を行います。当人はショックを受けると思いますが、従業員の士気を下げるためのものではありません。自分1人では改善できない点を一緒になって改善、克服していくことが狙いです。


アイリスは年に2回の賞与とは別に年に1度、決算賞与が支給されます。営業利益の4%を原資として、リーダー以上の社員で分配します。これはリーダー以上の社員だけで、一般社員はもらえません。一般社員のモチベーションが下がるのではないかと思う方もいるかもしれませんが、むしろ逆です。必死になってリーダーを目指します。リーダーという職階は、大卒で5~10年で昇進する職階です。絶対になれない階級ではないという点がポイントです。対象者が極端に限られると士気が下がる。その一方で全員に支給すると、目指すべき目標が薄まってしまう。ゆえに、対象を絞りつつも、みんなが目指せる地位にまで裾野を広げています。


当社は日本最大の自動倉庫を導入しています。この自動倉庫では20万パレットをコンピューター管理して、その日に出荷する製品をパレット単位で自動的に搬出する仕組みとなっています。大手物流会社のシステムより、上を行くシステムだと自負しています。メーカー目線で物流をとらえているところが、物流専門企業との大きな違いではないでしょうか。


中間流通が入ると、思惑で商品を仕入れるため、どうしても在庫リスクが高まります。メーカーは月末に問屋に商品を押し込むし、問屋も値上がり前に発注するため実際の販売状況とは合わないケースが出てくるのです。一方、メーカーベンダーである我々には、小売店の情報が直に入ってくるので週単位の需要予測とタイムリーな仕入れが可能となります。さらに、オンリーワン商品が多いので、他社に急激にシェアを奪われることもありません。


園芸用品に参入した時は、自分の庭で園芸を行うよう社員に指示しましたし、ペット用品の時は実際に犬を飼ってみて、何が不便なのかを見つけるようにしました。


過去の経験から言って、10年に一度はバブルが弾けているんですよ。大地震も30年に一度起きています。平時はほんの一瞬であって、パラダイムシフトがいろんな形で起きている。


我々が展開するソリューションビジネスとは「生活の不足、不満を見つけてそれを解消する」ということです。それで園芸用品に参入してガーデニングブームをつくり、ペット用品に参入してペットブームをつくり、プラスチック収納で収納革命を起こしてきました。


当社の企業理念では「いかなる時代環境においても利益を出せる仕組みを確立すること」を謳(うた)っています。過去を振り返っても、不動産バブルや金融バブル後の不景気の時に業績を上げています。


こういう技術があるから商品化したいとか、競合商品に比べて価格が安いというだけでは、商品化する意味がありません。お客様はなぜその商品を買うのかというエンドユーザーの視点、「ユーザーイン」の視点が企画の肝。


朝礼で話す内容は、大判の付箋に書きながら考えます。付箋に書ける量は決まっていて、あれもこれも書けません。自然と焦点が絞られてくるので、この大きさが丁度いいんです。


社長の話は黙って聞け、という一方的な姿勢で話しても、社員には伝わらない。私が社員に伝えたいことで、かつ社員が知りたいことは何かを意識しながら、テーマを選ぶことが大切。主役は常に、聞き手である社員。


具体的な事例を話すと、みなさん引き込まれますね。商品の品質や機能、専門的な技術について話しても誰も興味を持ちませんが、なぜ我々がこのような商品を作ったのか、というストーリーがあると興味を持ってもらえます。


本を読んだり勉強したりしたことは、そのときは覚えていても、半年もすれば忘れてしまいます。それよりも、「なぜ?」「どうして?」と疑問に思ったことを自分なりに考えて、突きつめていくほうが深く残ります。日頃の興味関心が引き出しを増やしてくれます。


重要なことは繰り返します。人は聞いているようで聞いていないもの。一度話せば伝わるだろうと思うのは間違い。15分の中でも、最初に言って、真ん中で繰り返して、最後にもう一度。同じフレーズは使いませんが、キーワードは3回くらい繰り返さないと伝わらない。


たんに「計画が○○円で、達成率が○○%だから、もっと頑張ろう!」と発破をかけても、社員からすれば「一体、何を頑張ればいいんだろう」と腑に落ちないままでしょう。社員が最も知りたい「何をどう取り組むのか」という問いに答えていないからです。


社員に伝えたいことはたくさんあります。ですが、あまり多くのことを話そうとしても、焦点がぼやけてしまいます。聞くほうも、話のポイントがつかみにくいでしょう。あれもこれもはやめて、テーマを二つくらいに絞るようにしています。


1つの製品カテゴリーで1割のシェアを獲れば十分だと思っています。100億円のマーケットなら10億円の売り上げで良いと。いきなり大手メーカーとシェアを争うことは難しいですが、今までの家電製品に満足していない顧客層に対して、1割の新しい提案や需要を創造することはできると思います。


当社は特に生活の中での不満や不便を汲み取って、需要を創造してきた企業です。ホームセンターに来店するお客さまの身近なニーズに一つひとつ応え、今まで大手メーカーがあまり注目していない領域で市場を創ってきました。


「コメ(お米)ビジネスは儲からないのになぜアイリスオーヤマは参入したのか」。こんな声も聞こえてきます。でも、今までのコメビジネスのやり方だからダメだったのです。消費者に喜んでもらえる形で届けられれば、コメの消費量を増やすことができ、日本の農業発展につながります。


アイリスオーヤマは中間流通の壁を越えるために「メーカーベンダー」という仕組みを創りました。中間流通の機能を外部に委託せず、自社で担うことにしたのです。そうすると製造部門が開発した商品はストレートに小売業に届けることができます。


昔は出張から帰ってくると机の上に稟議書が山積みで、それを決裁するのがひと仕事でした。デジタルで管理するようになってからは、どこでもタブレットなどで確認できます。関係者全員がいつでも見られてすぐ決裁できますから、誰かのところでストップする心配も無用。過去の稟議書も同じ画面に呼び出せるので、報告書としても役立ちます。いつ、何についてどんな決裁を行なったかを手元で確認できるわけです。セキュリティさえ万全にしておけば、これほど便利なものはありません。


一見して無駄に見えることでも、顧客目線の考え方に立てば無駄ではないことがあります。たとえば、来社されたお客様には必ず挨拶をするよう指導していることもその一つ。その間仕事の手が止まるわけですから、生産性だけを考えると明らかに無駄です。しかし、そうすることで好印象を持っていただき、当社のファンになってもらうメリットのほうがはるかに大きいでしょう。


メーカーは通常、原料代や加工費を計算して原価を割り出すことから価格設定を始めますが、当社では先に「いくらなら売れるか」を考えて価格を設定します。ユーザーにとって商品の原価など関係ありません。消費者の納得のいく価格=「値ごろ価格」はどのくらいか、から考えるべきなのです。


商品開発に携わる者は、自分のアイデアに愛着を持つものです。それは当然のことですし、そうあるべきとも言えますが、「プロダクトアウト」の視点、作り手優先の意識にとらわれる原因にもなります。ですから、そうした提案者に対して、私は常にエンドユーザーの視点、「ユーザーイン」の意識で臨みます。


チャレンジしなくてはならないときに足が止まるのは、失敗を警戒するからです。成果を出せなかったことで責任を負うのは誰しも怖いものですから。しかし当社では、私が判をついてゴーサインを出したものなら、そこからは会社が責任を負う、という考え方をします。売れると見て決裁した以上、リスクは私が負う。すると提案者は自信を持って商品化に向けて動ける。守りに入ることなく、果敢にアイデアを表明できるのです。


当社には、売上げ全体の中に占める「新商品の売上」の比率を5割にせよ、という決まりがあります。ロングセラーにばかり頼っていると、進歩がなくいずれ会社が衰退してしまいますから。立ち止まることができない仕組みになっているのです。


我々も闇雲に飛び込んでいるわけではありません。全国にある1万8千店舗のデータが集まっているので、今何が売れているかを把握できます。それを継続的に分析すれば、次に何が売れるかも見えてくる。だからこそ、すぐに行動することができるのです。


迅速さを第一とするのは、日々移り変わる消費者ニーズに素早く応えていくためです。時代や生活環境の変化、それに伴う消費者心理の動きを敏感につかみ、すぐに対応することが必要。


今あるマーケットで、価格が高い、安いとか、品質で競い合うのはいいとして、パイ(市場)は大きくはならない。いかに需要を大きくしていくか、その努力が大事。


全員揃ってする挨拶は、職場の雰囲気を良くする。アイリスオーヤマにとって一番大事な「企業理念」や、効率的なコミュニケーションに役立つ「報・連・相10か条」の確認もできる朝礼は、ムダではない。「朝起きたら、顔を洗う」のと同じくらい当たり前にやることで、欠かせないものです。


リミットがあると、人間は集中しやすい。「段取りを緻密に練って、時間にゆとりを持ちながら仕事を進める」。そうしたやり方に反対はしませんが、私はどちらかというとギリギリ着手派です。


当社は「立ちミーティング」制にしています。椅子に座ると、ダラダラしがちです。「ドッコイショ」と背もたれに寄りかかっているとラクなので(笑)、議論が緩慢になる。しかし立ちミーティングなら、時短意識が働いて、効率的に議論が進みます。「お茶を飲みながらノンビリと進める」ことがなくなる。


19歳の時からオーナーとして当社を経営してきて、モノ作り、営業、管理……と、私は常に会社全体を見てきました。だから、「全体最適化」がまず先にあり、その前提で「部分最適化」を考える癖がついています。


会議で全員が議論して、情報を同時に共有するメリットはとても大きい。理解の行き違いはなくなります。そして私が商品化を決裁すれば、商品開発や営業の各担当者が、一斉にスタートできる。時短効果も絶大です。


常に新商品の開発を行い、その割合も全体の50%を超えています。それに加え品揃えも多いとなると従来の取引先である問屋やバイヤーでは対応できなくなってきました。そこで小売店とは直取引し、自社の物流センターで商品管理、発送を行うメーカーベンダーになることで新製品を売る仕組みを構築しました。


我々は家電製品に限りませんが、ユーザーインで、消費者目線で「なるほど感」がないと開発しません。家電製品はコモディティー製品ですから、「なるほど感」と「値頃価格」が大きな購買動機になります。


普段生活していたら、新しいアイデアはいっぱい出てくる。生活に不満のない人は誰もいないでしょうし、みんな気付いていても見過ごしているだけ。その不満を我々の持っている技術やノウハウで解決し、具体的に商品化、事業化していく。


僕は採用基準に、はっきりと順番をつけています。一に人柄、二に意欲、三に能力です。おわかりだと思いますが、これ、世の一般企業と逆です。


変化に対応していくためには、利益率が大きくなければなりません。規模ではなく、大切なのは利益率です。いくら売上規模が何兆円あっても、営業利益率が3%程度では、変化のための投資にお金を回せません。仕方なく銀行から借り入れることになりますが、他人の資本を入れてしまうと経営に口出しされて、どうしても横並びの前例主義にならざるを得なくなる。その結果、大胆でスピーディーな経営判断ができなくなり、変化に対応できなくなってしまうのです。これが、日本の多くの大企業が陥っている悲劇です。


会社が生き残るための条件はただひとつ。世の中の変化に対応していくことです。世の中はどんどん変化していきますから、その変化に対応していきさえすれば、企業は間違いなく存続できます。


評価とは、常に他人がするものです。社長といえども、自己評価だけでは評価されたことにはならない。そして企業というものも、お客様という他人の評価によって成り立っているものなのです。お客様から「お前の会社は好きや」と言われれば業績は上がるし、「お前の会社は嫌いや」と言われたら業績は下がる。個人も企業も、大切なのは常に他人からの評価なのです。


360度評価は、社長の僕も受けています。評価は平等に行なわれなければ、公正さを維持することはできないからです。


360度評価でも、トップからビリまで順位を出しますが、各階層の下位10%の社員に対して「イエローカード」が提示され――誰に出されたかはオープンにしませんが、対象者は専任のコーチングスタッフがつき、1年間サポートします。さらに、コーチングを受けたにもかかわらず2年連続してイエローカードだったら「レッドカード」、つまり降格させます。ただし、降格者が一人出たら、昇格の枠を一人増やします。要するに、ベンチに入れる人数は常に同じということです。いくら4番バッターだって、3振ばかりしていたら2軍に落ちる。落ちる人が出たらベンチの空きがひとつ増えますよということです。


数字的にどれだけ業績を上げたかということは、評価の半分にしか反映しません。なぜなら、たまたまいいお客さんに当たったりヒット商品に恵まれたりしただけで、その年の数字はボンと上がってしまうからです。ですから数字的な業績は半分だけにして、残りの半分は仕事の能力の高さや意欲を評価するようにしています。


「明確な目標」を与えられて、「公正な評価」をしてもらえる状態。この2つがあれば、人間、誰でも一生懸命に働きます。だから、アイリスオーヤマは常に目標を明確にし、社員を公正に評価するために相当な努力を払っているのです。


僕は19歳で経営者になったので、実はサラリーマン経験がない。だから常に、もしも自分がサラリーマンだとしたら、どんな状態のとき一生懸命働く気持ちになるかを考えるようにしています。


うちは全国から採用していますが、社員には部活を一所懸命やった人とか、何かの組織でリーダーをやった人が多い。そうした活動を通して組織について実地に学んできた人の方が、学歴が高いだけの人よりも会社にとって魅力的な人材なのです。


高学歴の人には、キャッチ・アップ(追いつく)をする訓練ばかり受けてきた人が多い。だから会社が右と言えば右を向き、左と言えば左を向いてしまう。よく大企業の社長さんが「自分の頭で考えろ」なんておっしゃるけど、キャッチ・アップするための教育ばかり受けてきた人にそんなこと言ったって無理というものです。


うちは、一流大学だからというだけでは採用しません。高学歴であるという点だけで採用すると、どうしても横並びの官僚主義に陥ってしまいます。日本の大企業はみんなこの病気にかかっていると思います。


人事の担当者は自分が採用した社員に対し、入社後5年間、責任を負う仕組みになっています。つまり、採用した人材に対する5年後の評価が、その人材を採用した人事担当者の評価になるのです。そうでもしなければ人事の仕事を評価するのは難しいし、こうした仕組みがあれば採用する側も強い緊張感を持つことになります。


私は横並びが家電業界をダメにした原因だと思っています。一般論ですが、大手さんが手掛ける商品には、いらない機能がいっぱいついている。結局のところ、大手さんがやってきたのは、自分たちの技術をベースに作るプロダクトアウトの発想か、量販店のニーズをくみ取るマーケットインの発想だったと思います。


震災後に会社の進むべき道を少し変えました。あの震災では、仙台に本社を置く当社に対しても、あるいはこの地域全体に対しても、全国からたくさんの支援を頂きました。皆さんに少しでも恩返ししたい。ならば、私たちができる範囲内で、日本の課題を解決してみようと。


社会が豊かになり、イノベーションによって新たな需要を創造していかなければならない今の時代においては、与えられた課題を速く解ける人材ばかりを育てても意味がありません。これまでにない事業をゼロから生み出す、構想力が必要です。それには、標準的な人材ではなく、「自分はこうしたい」という強い願望に突き動かされたリーダーが必要なのです。


学校や企業の力も時間がたてば、がらりと変わります。だからこそ、親は子供に、「おまえは自分で情報を集め、判断して、行きたい道を勝手に選べ」と言うべきなのです。しかし、心の底からそう断言できる親は、ほとんどいないでしょう。


経営や組織のマネジメントで大事なことは情報の共有。重要事項は経常陣だけが知っていて、社員には知らせないという会社は多いようですが、それでは組織は強くなれません。野球にしても、監督と選手が目標を共有して練習に取り組むからチームが強くなります。会社も同じで、社内ができるだけ目線を合わせられるよう、情報共有が不可欠です。重要な内容は繰り返して話すだけでなく、テキストでも伝える。それくらいのしつこさが必要。


伝わる話し方を習得したいなら、できるだけ人前で、ノーペーパーで話す経験を積むとよいと思います。ノーペーパーで話そうとすれば、多くのことは話せないので、テーマやポイントを絞ることになります。それが結果的に伝わりやすさにつながります。はじめは誰もが失敗しますが、失敗してもいいんです。間違えたら後で言い替えればいいわけですから。


企画会議では本質の部分をパワーポイントの一画面で簡潔に表現することが基本。伝えたいことが二画面にも三画面にもなると、結局何が言いたいのかわからなくなります。一画面にまとめることで、伝えたいことの本質が磨かれていきます。もし、現状の課題や競合分析を示す必要があれば、最後に補足すればいい。あるいは、プレゼンを聞く人も、細かな点でわからないことがあれば、その都度質問すればいいのです。私たちは前置きなしで本題から入るので、検討すべき案件は多くても、スピードは早いですよ。


企画会議では、企画の本質の部分、つまり本題から話すことをルールにしています。なぜ前置きが要らないかというと、業界内の現状や課題は、同じ仕事をする仲間ならみんなわかっているからです。共通認識として持っていることを、あえて言う必要はありません。それよりも、重要な事柄から先に話します。聞く人もそれを聞きたいわけですから。


以前は作れば売れるプロダクトアウトの時代でした。しかし、オイルショックでモノが売れなくなり、プロダクトアウトからマーケットインに変わると今度は業界内の競争が激しくなった。業界の景気や競争に左右されないためにマーケットの先にあるお客様の視点、ユーザーインによる需要創造型企業へと会社を変えてきました。


家電は組み立て産業です。部品を集めてきたら作れるんです。だから当社はできるだけ部品から自分たちでやるようにします。もちろんコンデンサーとかモーターとか汎用品は、自分で作るより買ったほうが品質とコストがいいからやりません。でも、例えば、金型から内製できるプラスチック類は自分たちで作ります。一番かさばって、投資コストがかかるところを自分でやれる。それが当社の強みです。


大手家電メーカーは規模を追いかけすぎたと思います。事業部で年間の売上高が200億~300億円の頃は強かった。そういう事業部が10、20とできて、足し算すると3兆円、5兆円と。ここまで規模が大きくなってくると、社長は「A社がやっているのに、なぜ、うちはやらないんだ」なんて言い出す。他社を見ながら無理な成長を求め始めるわけです。組織は大きくなり、小回りが利かなくなってしまった。海外に出れば、原価でコテンパンにやられてしまう。


当社の開発スピードは速くもなんともない。何が速いかと言えば、ジャッジですよ。アイリスでは毎週月曜日に新規商品開発に向けたプレゼンテーション会議を開くのですが、そこでは私をはじめ、開発に関係する役員らのキーマン全員が顔をそろえる。その前で担当者が新しい商品や価格政策だとかを説明する。そして、その場で是非を決めてしまうのです。


ホームセンターをいくつか買収しましたが、小売り自体を拡大するつもりはありません。テストマーケティングの位置づけです。当社の商品の販路はホームセンターがメインですが、「こう売りたい」という私の考えと、お店でやっている現実が、なかなか噛み合わないことがあります。実際に自分たちでやってみてうまくいったケースは「こうしたらこれだけ売り上げが上がりましたよ」と、オープンにする。そうすれば、みんな納得してくれますし、信頼関係も深まります。


子供が興味を持ち、それをできるようになりたいという願望を、周囲はサポートすべきです。逆に言えば、知識ばかりを詰め込むような教育は、子供から願望を奪っていくように感じます。たとえば、塾に通うことで知識は身に付きますが、自分の願望を素直に追求する時間も気力も体力も、奪ってしまいそうです。偏差値が高い大学を卒業しても社会で活躍できない人がいるのは、「こうなりたい」「これをしたい」という願望が奪われてしまっているからではないでしょうか。


知識を詰め込むと物知り顔で「それはうまくいかない」といったマイナスの発想をしてしまいがちです。だからこそ、教育は何事にも「できる」まで挑戦し続ける子供を育てることに重きを置くべきなのです。実際、今の教育では、工学部や医学部といった専門性の高い学部の卒業生を除き、大学で学んだ知識は実業ではほとんど生かされていないでしょう。


社長の座を長男に譲り、会長に退きます。半世紀ぶりの社長交代となります。当社は株式を公開せず、創業の理念をきちんと引き継いでいくことを重視しています。3人の兄弟が経営幹部として会社を支え、会社は私たちの「家業」そのものです。当然、長男に経営者としての自覚や能力が身に付いたら、社長を引き継ごうと決めていました。


実業で生きる人材を育てるという観点では、スポーツほど適した教育はないと思います。子供の頃からスポーツをやってきた人は、どんな分野でも通用します。特に団体競技では、自分の強みを発揮できるポジションを選び、チームに貢献することを学ぶからです。スポーツで生計を立てられる人は限られていますが、スポーツをしてきた子供は、社会に出ても実業の世界で自分の強みを生かしてチームに貢献できます。当社でも学生時代に野球やサッカーなどに打ち込んできた社員が活躍する傾向があります。


親や教師、さらにはAIが我々に教えてくれることは全部、過去に基づいた話なんです。それよりも、子供には今を知るためのニュースを読み、自分で考えることを促すべきです。子供の進学や就職の際に、親が自分たちの世代の価値観を押し付けて、結果的に失敗したという事例はたくさんあるでしょう。親の価値観というのは、往々にして時代錯誤なものです。親は自分の価値観に基づいて、学校や企業の良しあしを判断しがちですが、古い判断基準でこれから生まれてくる新しい価値を正しく評価できるはずはありません。特に、見栄やメンツを優先し、知名度やブランドで学校や企業を判断するようなことはあってはならないでしょう。


社会が求めている現実のニーズを知り、それにどう応えていくかを考えること以上に、大切な学びはあるでしょうか。子供がかわいいからでしょう、親や教師は子供が失敗しないようにと、過去の事例をいろいろ学ばせようとします。しかし、「転ばぬ先の杖」を与えると、そればかりに頼るようになり、チャレンジする気持ちが失せてしまいがちです。逆にいうと、チャレンジ精神が旺盛な起業家やリーダーで、そうした過保護な教育を受けてきた人は少ないと思います。私は、AIの登場がこうした風潮を加速するのではないかと心配しています。AIはビッグデータを解析して判断をします。人々は効率的に物事を達成しようと、AIが過去の事例に基づいて導き出した成功確率の高い選択肢を優先して選ぶようになるでしょう。そうなると、ますます前例にない挑戦をする人が減ってしまうように思います。


私が社長になった当時は下請けの仕事が多く、経営は安定しませんでした。下請けから脱却しなければ会社を存続できないと考え、世の中は今、何を求めているかを必死に考えました。ヒントは身の回りにありました。私にとって最大の学びの場は、家庭でした。結婚したばかりの妻が庭いじりが好きだったので、妻の不満や要望をヒントに植木鉢やプランターなど様々な園芸用品を考えてヒットさせました。子供たちが犬を飼いたいと言い出した際には、市販の犬小屋はどれもベニヤ板でできていることに気が付きましたそこでカラフルで水に強いプラスチック製の犬小屋を作ったところ、爆発的に売れました。


私が過去より今を重視するのは、私自身の半生と密接に関係があります。私が若くして社長を継いだのは、会社を経営していた父を亡くしたからです。5人の工員と8人兄弟姉妹の家族が残され、長男だった私がみんなを養わなければならなくなりました。経営のことなど、何も分かりませんでした。父から経営の話を聞く機会は限られていましたし、助言してくれる人も周りにはいませんでした。経験に頼りたくても、できないのです。朝から晩まで、今、目の前で起きている課題に向き合い、自分で考え、がむしゃらに働く道しかありませんでした。


私は仕事ばかりしていたので、子供の教育にはあまり関わってきませんでした。それでも、子供に言い聞かせてきたことがあります。それは、「今を知る」ことの重要性です。今は時代の変化がとてつもなく速い。昔だったら100年くらいの変化が10年くらいで起きています。AI(人工知能)が普及していくと、社会はもっと劇的に変わるでしょう。そのような時代に、過去の経験則はあまり役に立ちません。だからこそ、今起きていることを報じるニュースやその解説をしっかり読んで、過去よりも今、そして未来と向き合うことが何よりも重要だと教えてきました。


大山健太郎の経歴・略歴

大山健太郎、おおやま・けんたろう。日本の経営者。アイリスオーヤマ創業者。大阪出身。高校卒業後、急逝した父の跡を継ぎプラスチック成型加工の大山ブロー工業所代表に就任。その後、同社を法人化・事業転換しアイリスオーヤマに社名変更。同社を大きく成長させた。そのほか、東北ニュービジネス協議会会長、宮城県産業デザイン交流協議会会長、日本DIY協会常任理事、東北経済連合会常任理事、日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会常任理事、仙台経済同友会幹事、みやぎ工業会理事、東北工業大学非常勤講師などを務めた。

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