匠英一の名言

匠英一のプロフィール

匠英一、たくみ・えいいち。日本の認知科学者。「デジタルハリウッド大学」教授。和歌山県出身。東京大学大学院教育学研究科を経て同大学医学部研究生修了。認知科学研究所設立、ヒューコム勤務、CRM協議会理事・事務局長、早稲田大学IT経営戦略研究所客員研究員などを経てデジタルハリウッド大学教授に就任。そのほか、eマーケティング協会専務理事、ビジネス心理協会副会長などを務めた。

匠英一の名言 一覧

プロセスを見ても見なくても、結果として出てきた料理の味は変わらないはず。ところが、人はプロセスを見たほうがおいしく感じるもの。


商品のリニューアルで大切なのは、核となる要素は変えずに、それ以外の部分を変えること。


特にデキる人は、他人の提案などを聞いたら弱点を指摘しようとする。マイナスの情報も隠さず話すほうが「嘘がなく信頼できる」と思われ、共感を得やすい。


提案ではなく相談という形で話すと、相手が他人の意見なのに、自分の意見のように錯覚し始める。短い時間でも何度もすることが効果的。


大事なのは、お客にある程度の「自由度を与える」こと。自分は商品整理など別の作業をしながら、横目でチラシとお客のリズムを観察し、商品について聞きたそうな気配を感じた時にすぐに飛んでいける距離感がベストです。


いい接客をするポイントは、まず「店員がネームプレートをつける」こと。人は、相手が自分の名前を知らない場合、攻撃的になったり、怠けたりする傾向があります。そのため、ネームプレートによって名前がわかるようにすると、お客に対していい加減な対応をしなくなるという効果があるんです。


横浜の高層ビルに、売り上げに伸び悩むレストランがありました。ところが、メニューを「ベイブリッジ展望メニュー」「横浜トワイライトメニュー」など、「夜景がきれいに見える」というコンセプトを打ち出したネーミングに変えたところ、大成功。デートで利用するカップルが増え、客単価がアップしました。


私自身の体験ですが、日本ビジネス心理学会という組織で資格の認定試験の教材を作ろうと提案したら、50名ほどの会員のほとんどから「ムリだ」と言われました。しかし、教材作りに参画することのメリットを示して説得したら、みんな協力してくれて、わずか半年ですべての教材を完成させることができたんです。


まず相手の意見を受け入れる。それにより、相手が「俺の意見を聞いている」と意識してもらう。さらに、相手の話の中からキーワードを探り、その言葉を自分の提案に盛り込んでいけば、より共感力は高まる。


専門用語では「心理的リアクタンス」と言いますが、誰の心の中にも他人にコントロールされることを拒絶するメカニズムが備わっています。そして、その心理は地位が高い人ほど強く、相手よりも自分が優位に立っている場合に発生しやすくなる。


いい接客をするには「相手のリズムに合わせる」こと。一般的に、年齢が高くなるにつれて動作や話すスピードは遅くなります。ですから、年配のお客にはゆっくりと、反対に若い人にはリズミカルに接するのが正解。これは「シンクロニー」と呼ばれる同調行為で、相手との距離を縮め、親近感を持ってもらいやすくなる効果があるんです。


男性には「100ギガバイトの大容量」といったスペックを並べてロジカルに説得し、女性には「楽しい、ラク」といった感情に訴えるのが有効。通販番組を注意深く見ていると、男女どちら向けの商品かによって表現を使い分けているのがわかるはずです。


ポイントは、いかに楽しい体験をしてもらうか。心に残る経験をすれば「あの店ではこんな面白いことをやっていたよ」と、人に伝えたくなりますよね。つまり、価値の高いユーザー体験は口コミで話題になりやすいというわけです。


コカ・コーラのように息の長い商品になると、顧客がその商品に持つイメージは一つの信念になる。そこを無視して味だけ変えようとしたのが失敗の原因です。
【覚え書き|コカ・コーラが1980年代に味を一新し、顧客から猛反発を受けたことについて】


時間帯によってお客のタイプやニーズが変化するファストフード店では、時間帯に合わせてBGMを変えています。たとえばビジネスマンで混雑する朝は、回転率アップを狙ってアップテンポな曲を流しています。お昼過ぎから夕方にかけては客数が減るため、スローな曲を流し、滞在時間を長くして購買につなげています。


テレビの通販番組では「この商品がいいことはわかったけど、ほかの商品も見てからにしよう」とか、「あとでじっくり検討しよう」と考えさせてはアウト。番組が終わる前に「いますぐ注文しなきゃ!」と思わせることが大事。そうした衝動買いに踏み切らせる鍵は、「切迫感や恐怖感」。「いま買わないとやばい!」「これを持っていないと損をする!」という要素を上手に盛り込むことで、考えるスキを与えず、衝動買いに走らせることができるんです。


安易な値引きはブランドイメージの低下を招きます。ただ、それを防ぐ方法もあります。以前、マクドナルドはサラリーマン向けに「17時以降はコーヒー100円」という値引きキャンペーンを実施。コーヒー単体ではほとんど利益が出ませんが、他の商品も注文してもらうことでトータルで収益が上がるという戦略でした。これは、ターゲットを明確にして特定商品だけを値引くことでブランドイメージを壊さず集客に成功した好例です。


コンビニには、弁当やお酒など売れ筋の主力商品がある一方、ロウソクや缶切りなど、頻繁には買わないものも置かれていますよね。これは「アンカー商品」と呼ばれ、お客がその店へ足を運ぶきっかけになります。アンカー商品自体では、たいした売り上げは見込めませんが、「この店には何でもある」といった印象を与え、お客を常連化することができます。急に必要となる祝儀袋や電球のほか、他では手に入らないものも、アンカー商品になります。


実際にお客さんに商品作りに参加してもらうのも、販売につながる手法。お菓子作りや、工芸品作りの体験は観光地に多く、たとえは箱根では自分が作ったガラス細工を買って持ち帰れる店があります。じつは、最初から職人が作ったものを店頭に並べておくよりも、自分が実際に作ったモノのほうに付加価値を高く感じるものなんです。それを心理学的には「自己関与性」と呼びます。商品作りの体験は、人は自分が関与したことには興味を示すという特性をうまく利用していると言えます。


リズミカルで手際のよい職人の名人芸を見せることは、お客に「楽しい!」「面白い!」という感情を呼び起こす。人間は感情を揺さぶられると、脳内でアドレナリンが分泌され、血流が良くなります。すると食欲が増し、パフォーマンスを何も見ないで出されたときよりも、おいしく感じるんです。このように、様々な体験や感情と結びついた記憶を「エピソード記憶」と言い、商品やサービスへの好感といったプラス効果につながります。


「○○さんも愛用!」といった有名人のコメントがあると、信用度がグッと上がり、購買意欲が高まります。これを「後光効果」と言います。特に男性は、権威的なものに弱い傾向があるので有効。著名な大学教授や医者などのお墨付きがあると、「○○先生が言っているんだから、いいものに違いない」と、買っていく確率がアップするんです。


イトーヨーカドーで、ミンクのバッグを販売したとき、1万8000円と3万8000円の2つの商品を並べたところ、1万8000円のほうが売れ行きの8割を占めたそうです。ところが、それらに加えて5万8000円の商品を置いてみたら、今度は3万8000円のものが一番売れた。つまり、「松・竹・梅」を意図的に演出することで、「一番安いものは品質が悪いのでは? 真ん中のものにしよう」と、お客の価値基準が変わってしまうワケです。


セブン-イレブンが採り入れているのは「大量陳列」。たとえば新商品のドリンクを10本置いても、半分しか売れません。ところが100本ぐらい大量に並べると、お客に「これほど置くというのは、いい商品なんだ」と思い込ませることができ、完売してしまう。これは、人間の同調意識を刺激する手法。


同じ商品でも陳列の仕方ひとつで、売れ行きは大きく変わる。棚の一番手前に、商品数個分の空きスペースを作って、周辺にはギッシリと並べておきます。するとお客は、その空き部分にあった商品が売れたのだと思い込む。「こんなに売れているのなら、自分も買っておこう」という心理が働くんです。ドン・キホーテの陳列は、まさにこの手法。


心理学の観点から言うと、何かモノを食べたり飲んだりという行為は、一連の体験の中ですること。これを「状況的認知」と言います。ですから味の部分だけをテストしてもあまり意味がない。飲むシチュエーション、企業ブランド、ビンの形……。すべての要素がミックスされた体験を重視しないといけないんです。


店のテーマソングは、童謡に近いリズムと音階で作ると成功します。童謡は耳になじんでいるため、それと同じようなBGMだと、気づかないうちに覚えてしまい、ふと口ずさんでしまう効果があるからです。童謡の「桃太郎」とビックカメラのCM曲は、リズムが似てるでしょう? こうしたテーマソングは店への親近感を高めるので、リピーター獲得につながるんです。


接客では、マニュアルを感じさせないことも重要。いくら笑顔で対応してくれても、それがマニュアルだと思ったら、お客は冷めてしまいます。アパレルショップや美容院などでは、最後にお客を出口まで見送ることがありますが、店が混んでいて他のお客が待っているような状況で見送られても、居心地が悪いだけ。むしろ「今日はこちらで失礼します」と、レジの横で挨拶してくれたほうが、お客としては気がラク。つまり、その場に合わせて臨機応変に対応できることが、相手に好感を持たれる条件。店の混雑状況や時間帯、お客のタイプに応じてマニュアル的でない自然な対応をすると、お客は「気をきかせて対応してくれた」と思い、「また買いたい」と思うはずです。


テレビの通販番組で「ほしい」と思わせる心理要素のひとつは、司会者のキャラクター。ジャパネットたかたの高田(明)社長のように、少し個性的でありながら、ウソをつかなさそうなキャラクターの人に説明されると、視聴者は「こんな誠実そうな人が言うなら、いい商品に違いない」と思い込んでしまいます。また、テレビというメディアそのものも大きな要素。「テレビでやっているんだから、インチキなはずがない」と無意識に信頼してしまいます。つまり通販番組は、「人」と「メディア」の2つのメッセージ性によってお客の心を動かしているのです。


頻繁に値引きを行うと、「安いのが当たり前」と受け取られて逆効果。買う人の気分を盛り上げるためにも「なぜ値引きするか」理由を明確にするのが重要。特に「創業大売出し」「阪神優勝セール」といった催事を理由にすると、世間の雰囲気が盛り上がり、買う側もプラス思考になって懐がオープンになるんです。積極的に利用したいですね。


オマケがブランド物やキャラクターグッズだと、力を発揮します。オマケ自体に稀少価値があるので、欲しい人にとっては商品の金額以上の価値がある。これを心理学的には「後光効果」と言います。女性ファッション誌がブランド物のトートバッグやポーチといったオマケをつけて売り上げを伸ばしているのはよく知られた例です。ただし、初めの段階で効果があっても、長期的に行うと消費者に飽きられるので注意が必要です。


何かを失うことに対する人間の不安はとても強い。「放っておくと肌のハリが失われますよ」というように損失を強調するのがコツ。また、相手を不安にする客観的事実を見せていき、最後に「あなたはどうしますか?」と相手に買うかどうかを選択させるフレーズも効果的です。突き放されると人間はかえって不安になりますから、「買わなきゃ!」という気持ちになるわけです。ただし、脅しも度を越すと逆効果になることが心理学の実験で明らかになっています。「認知的不協和」といって、与える恐怖が相手の想像している範囲を超えると、「信じたくない!」「そんなはずはない!」と反発を招いてしまうんです。恐怖感を与える宣伝は、やりすぎるとかえって売れなくなってしまいます。


店の外にわざと高い商品を置き、店内には安い商品を置くことで安いと感じさせる方法も。これはドア・イン・ザ・フェイス法に似た手法です。たとえばデパートでは、ショーウィンドウで一流ブランドの高価な商品を見せておいて、店内では手頃な値段のものも扱っていますよね。店内の値段が安売り店と比べてみると実際は高いのに、デパートだとなぜか安く感じてしまうのは、この仕掛けのせい。最初に高い商品を見せると、お客を遠ざけてしまうリスクもあるのですが、店のブランド価値を高め、コアなファンを作る効果もあるわけです。安売りイメージに縛られることがないので、長期的に考えれば、有効な方法ですね。


店先に来ているからには、多少はその商品に興味があるわけです。購入につなげるためには、あとひと押しが必要。有効な方法の一つに店頭でのワゴンセールがあります。お客は「ワゴンに並べられるほどだから、話題の商品で売れているんだろう」と思い、買わなきゃ損」と、つい手に取ってしまうんです。これは自然に人の目線を集めるバンドワゴン効果と呼ばれるもの。お店のおすすめを伝えると同時に、お客に「いいものを見つけた」という満足感を与えることができます。ポイントは、陳列にボリュームを持たせること。お客は「店側は、この量がすべて売れると見込んで入荷しているはずだから、きっといい商品に違いない」と思うとともに「みんなが買っているのに、自分だけ持っていないのは不安」という同調意識が働き、購買意欲が刺激されます。ワゴンの位置は、入り口付近やレジ横などの目立つ場所が効果的。


商品やサービスのよさをわかりやすく伝える手法に「メタファー」というものがあります。メタファーとは、簡単にいうと比喩です。たとえば、フラワーショップで「バラ3本300円」と表示されていても、とくに買いたいとは思いませんよね? でも、「パリセット300円」「オードリー風ブーケ300円」という名前がついていると、なんとなく惹かれる。これは、都市や有名人の名前などのイメージを借りることで、商品を魅力的に演出する方法なんです。


人にとって心地いいリズムは、心臓の鼓動と同じスピード。それより速ければドキドキ、ワクワクと気分が盛り上がり、遅ければゆったりと落ち着いた気持ちになります。それを店の特性を考えずに使うと、逆効果になるんです。高級品を扱う百貨店やレストラン、喫茶店、書店などでは、心臓の鼓動より遅い音楽を流すのが正解。お客の滞在時間が長くなり、売り上げアップにつながります。一方、回転寿司や量販店など、顧客の回転率を重視したいお店では、アップテンポな曲を流すと効果的。さらに、リズムだけでなく、音量も大事なポイント。一般に、50デシベル以上の音は人に不快感を与えるといわれます。50デシベルは、クーラーの室外機ぐらいの音。高級感やリラックス感を出したいときには音量を控えめにし、ワクワク感をあおりたいときには、やや大きめにする。この原則に沿って、使い分けをしているんです。


匠英一の経歴・略歴

匠英一、たくみ・えいいち。日本の認知科学者。「デジタルハリウッド大学」教授。和歌山県出身。東京大学大学院教育学研究科を経て同大学医学部研究生修了。認知科学研究所設立、ヒューコム勤務、CRM協議会理事・事務局長、早稲田大学IT経営戦略研究所客員研究員などを経てデジタルハリウッド大学教授に就任。そのほか、eマーケティング協会専務理事、ビジネス心理協会副会長などを務めた。

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