佐々木常夫の名言

佐々木常夫のプロフィール

佐々木常夫、ささき・つねお。日本の経営者。東レ経営研究所社長。秋田県出身。東京大学経済学部卒業後、東レに入社。繊維企画管理部課長、営業課長、取締役などを務めたのち、東レ経営研究所へ移り、社長を務めた経営者。大阪大学客員教授なども務めた人物。主な著書に『「本物の営業マン」の話をしよう』『そうか、君は課長になったのか。』『部下を定時に帰す「仕事術」』など

佐々木常夫の名言 一覧

100%良い人も、100%悪い人も存在しない。誰に対しても良い面に注目したほうが多くを学べますし、ストレスも減るはず。

人生の後半にもできることはたくさんある。

決断することに過度なプレッシャーを感じる人もいるかもしれないが、繰り返すうちに嫌でも慣れてくる。

リーダーシップは志から生まれる。「チームのため、会社のため、社会のために働かなければ本物じゃない」と献身する姿が、周りの人の共感を呼び、力を貸したいと思う原動力になる。

見栄を張って、わからないのにわかった振りをしたりしても、どうせ見透かされる。部下に頼るべきところは頼ったほうがいい。

仕事は、まず計画策定と重要度評価をしてから取りかかるべき。すぐ走り出してはいけない。重要な仕事では、何も考えずにまず走り出すと、逆に時間を浪費する。

通常の仕事は拙速を尊ぶ。

大事なのはスキルではなく、「志」をもつこと。どう働きたいのか、あるいはどう生きたいのか、その志さえあれば、スキルは後から自然とついてきます。

まず上司自身が、部下の心を動かすだけの高い志を持っているかどうか。志とは、自分の中にある世のため人のためという思いのこと。

欲をもつのは悪いことではなく、むしろ欲があることでやりたいことが見えてくる。その欲を原動力にして、志を高めればいい。

相手の成長を本気で願う気持ちがなければ、本当の意味で自分の味方になってくれない。

上司にはひとりの人間の人生を変えるほどの責任がある。部下がもつ能力を見出し、伸ばし、仕事に貢献させる。それによって本人に自信と実力がつき、周囲から信頼が得られる。

楽観というのは意思である。

トラブル時の真摯な対応こそ信頼感につながる。

人は自分の成長を実感したとき、大きな幸せを感じることができる。

鈍感力と楽天性が、心が折れないための両輪。

今は大変でも、きっと未来はなんとかなる。そう思っていると、その場を切り抜けるアイデアが湧いてくる。

限界を超えるほどのストレスを受け続けると、心が擦り切れてしまいます。もう無理だと思ったら、そこから逃げることも必要でしょう。

思い通りにならない場面が人生には多々あることを認められるようになれば、その状況でのベストを尽くす覚悟が生まれてくる。

どんなことにも良い面と悪い面があるもの。そのうちの良い面だけを活かすべき。

運命は選択できない。選択したとしても、それが良い結果につながるとは限らない。与えられた環境の中で、目の前の仕事に全力を尽くすことが大切。

周囲を見ても、与えられた環境に不満を言って転職し、上手くいった人はほとんどいない。

良い習慣は才能を超える。良い習慣は続けることが大事。

ビジネスパーソンはどの年代でも、1つ上のポジションを目指すべき。いまよりも自由に仕事ができ、働く醍醐味を味わえる。

上司を信頼していれば、怒鳴られたって部下はついてくる。信頼関係があれば、何をどう言われようが心に響く。叱るも怒鳴るも大差ない。要は、言葉より「誰に」言われたかの方が大事。

リーダーとは常に勇気と希望を与える存在でなければいけない。

開き直りと諦めは違います。諦めとは困難にぶつかって歩みを止めてしまうこと。一方、開き直りは困難を受け止めたうえで前に一歩踏み出すことなんです。

自分を変える努力をしないかぎり、幸せな人生は手に入らない。

他人の気持ちは変えられないが、自分の気持ちは変えられる。

夫婦間で最も大事なことは相手へのリスペクトつまり互いの尊厳を認め合うことです。

結局、私欲を原動力に働いても成果が上がるのは最初だけ。必ず頭打ちになる。すぐに部下は「あいつは自分のためだけにやってる」と見抜きますからね。

コミュニケーション以外にも部下と信頼関係と築く方法はシンプル。約束を守る。ウソをつかない。人の悪口は言わない。自分が間違えていたら、謝ったうえであらためましょう。

職場なのだから、意見が対立したり、トラブルが発生することもある。でも、部下との信頼関係さえ築けていれば、自然と元に戻ろうとする力が働く。

部下が心を開いてくれない、という悩みをよく聞きますが、上司の態度に問題があるケースが多い。そもそもコミュニケーションに時間をかけずに、相手との信頼関係なんて築けるわけがない。

業務に直接的な影響が出そうにない場合なら、自分自身のよからぬ噂でも、基本的には放っておいて構いません。しょせん、噂は噂。いちいち躍起になる必要はない。

酔った席での出来事だと、記憶が曖昧で己の身の潔日を自信を持って主張できないのが辛いところ。その意味でも、酒席は要注意。

これからの日本は労働人口が減っていきます。それは「働き方改革」のチャンスでもあります。人がいなければ、知恵を出し合って働き方を見直し、生産性を上げるしかない。

反復連打、すなわち何度も繰り返して徹底することが重要。

どれだけ見聞を広めても、自分の行動に落とし込まない限り、成長にはつながらない。

私は働く意味は、何かに貢献することで自分自身を幸せにするためであるとともに、自分を成長させるためなのではないかと思っています。

「欲」と「志」の違いは、欲が個人的自分本位の願望なのに対し、志はみんなで共有でき、共感できる目標だという部分にあります。

大変なことをやるから人は成長する。

人は相手にされた態度を返すもの。部下をリスペクトすれば、上司もリスペクトされる。年下の部下でも、他人は自分よりも優れたところが必ずあるものなんだから。一人の人間としてリスペクトして話すのが当然。

部下との対話は「8対2」で聞くをメインにしましょう。信頼度が上がり、必ずいい関係が築けます。

いきなり会社全体を変えるのは難しいかもしれない。でも、自分のチームを変えることはできる。そこで結果を出せば、それを認めてくれる人も少しずつ増えていくはず。

そもそも世の中は理不尽なものです。まずはその現実を受け入れなくてはいけません。

「理不尽だ」と思うからストレスが溜まるのです。「人生とはこういうものだ」と思えば、顧客に上からものを言われるくらい何でもなくなります。

「この仕事をやるべきか?」と考え、優先順位をつける時間が必要。少し早めに出社して一人で考える時間を作るといった良い習慣を身につけるべきでしょう。

部下の仕事をきちんと見ていれば、ムダは削れる。最近は自分の仕事で手一杯という管理職が増えていますが、上司はもっと部下の仕事に手を突っ込むべきです。

成功事例ができ、それが良いことだと周囲に伝われば、その取り組みは自然と評価されるようになる。

会社やゴルフでもらった賞状は、持っていても意味がない。自己満足でしかありません。大事なのは、今のあなたがどんな人格かだけ。

成長できる人には、他人の成功や自分の失敗から何かを学ぼうとする謙虚さがあります。

他人の良いところは認め、自分の悪いところを反省できる人には、上司も真剣にアドバイスをしたくなるものです。

部下を厳しく叱ってもダメなら、褒めればいいのです。誰だって、叱られるより、褒められるほうが嬉しいに決まっています。

仕事を効率化するための両輪は、「コミュニケーション」と「信頼関係」です。

私がリーダーとして着任した部署のほとんどで残業がなくなりました。それは、私が部下の仕事に手を突っ込み、全員がきちんと結果を出せるように管理したからです。

口先だけで「成長しろ」「貢献しろ」と言っても、部下には響きません。そう言っている本人が、その志を持っているかどうかを、部下たちは見ているからです。

真摯な人間は自然に人を惹きつけます。そして、周囲の人が「この人と一緒に頑張ろう」と思う。部下を強引に従わせるスキルなどなくても、ちゃんとリーダーシップを発揮することができるのです。

男は仕事さえしていればいい。こんな理屈は妻には通じないと思ったほうがいい。

定年になってから仕事に代わるものを見つけようとしても、もう遅い。

不思議なもので、できるだけ困難な仕事に挑戦したいという姿勢でいると、どんどん新しい業務が回ってきます。人間は困難に直面すると、思いもかけない知恵が出てきます。

仕事の自己実現をしていくためには、高い成長角度を維持することが必要です。いつもベクトルを右上に向けておく。そうすれば、角度の低い人に抜かれることは絶対にしません。差もどんどん開いていきます。

前向きにとらえるなら「これは自分が試されているんだ」とも思えます。愚痴を言わず、困難に立ち向かっていれば「あいつは大した奴だ」という評価にもつながり、復活することは十分可能です。

人事は非常です。自分では心構えをしているつもりでも、意に沿わない辞令を渡されれば動揺は隠せません。しかし、そんなときこそ潔く受けて、自分をしっかりと磨くチャンスにすべきです。

「知る」と「わかる」は大きく違います。「知る」は単に頭の中にインプットしただけのこと。一方、「わかる」ことを私は「解る」だと考えています。ものごとを理解し、自分の行動を変えていくことです。その変化は自分を一歩高めることにつながっていきます。

私は「運命は積極的に引き受けよう!」という人生観を持っています。会社人生にしても、決して一本道ではありません。努力が実らないことだってあります。業績不振の子会社へ出向させられるような、左遷的仕打ちを受けることだってあるでしょう。しかし、それも運命です。

私は、人生の勝負どころは50代だと思っています。20代は脇目も振らずに一生懸命に働き、30代では実力も備わり役職にも就く、40代にそうした経験が生きるわけですが、この時期は疲れずにしなやかに生きることを勧めたいと思います。なるべく部下に仕事を任せ、早く帰る。社外の人とも付き合い、本も読み、力を蓄える時期だと考えて行動したほうがいいでしょう。

仕事を通しての達成感があったからこそ、家族とも真正面から向き合え、苦難を乗り越えられたのだと確信しています。

経営に行き詰っていた繊維商社へ出向した経験は貴重でした。人は何のために働くかが明確になったからです。もちろん第一は生活のため。しかし、それ以上に自分を磨くことが重要なのだと実感しました。それからは、できるだけ困難な仕事に挑戦したいと考え始めました。

彼ら(出向した先の社員たち)は、私たちの仕事ぶりをシビアに見ていたと思います。出向していた私たちのうち、彼らから信頼を勝ち得た者と、離反された者は半々でした。その分かれ目は志だったと思います。私は、出向するからには「一村産業の再建は、自分のミッションだ!」と決めていました。そのことが彼らの心をつかんだのではないでしょうか。
【覚書き|東レの取引先で倒産寸前だった繊維商社一村産業に出向したときを振り返っての発言】

不況下での踏ん張りどきや組織の改革時は、3年くらいかけてダラダラと計画を実行してはいけません。痛みがいつまでも続くと思えば、部下がモチベーションを維持できなくなるのは当然です。それゆえ、痛みを感じる暇もないほどドラスティックかつ短期間で達成できる計画を実行しなければならないのです。

やってはいけないのは、成果に応じて極端に給与で差をつけることです。日本人は欧米人と違って、給与のために仕事を頑張るという人は多くありません。「仕事の成果は仕事で報いる」というのが私の考え方です。自己実現欲求が満たされるスケールの大きな仕事を与えられた方が、多くの報酬を得ることよりもはるかにやりがいがあると思うのです。

私は課長時代、春と秋に2時間ずつ部下の面談をしていました。そのときの鉄則が「8聞いて、2しゃべる」です。2時間のうち1時間は、家族は元気なのか、独身なら恋人はいるのかといったプライベートな話、残り1時間は仕事の話を聞くのです。プライベートの話に踏み込むと、やれ個人情報だのセクハラだのと騒がれる時代ですが、「部下に困ったことがあればいつでも力になろう」という気持ちを持ち、なおかつ「自分に何を話そうとも決して情報は洩れない」という信用を得られれば、包み隠さず何でも話してくれるようになるはずです。

部下のモチベーション低下の原因を探るために、飲みニケーションで業務時間外の付き合いを増やすのも一案です。しかし昨今は、公私の切り替えが当たり前になり、会社帰りに部下を飲みに誘っても、なかなかついてこない時代になったと愚痴る人も少なくありません。そんな人の解決策は、部下の立場に立って、なぜ誘いを断るのか、なぜ自分についてこないのかと、自らを省みる以外ありません。すると、自分の話ばかりをしていて、飲んでも楽しくない、あるいはタメにならないと思われていることに気づくのではないでしょうか。

会社経営には浮き沈みがあります。課長クラスのリーダーは、部下の仕事に直接タッチできると同時に、課全体のマネジメントも行うことができる立場にあります。ですから、部下の士気を上げることもまた課長のおおきな役目ともいえます。

部下のモチベーションを維持できない理由は次のふたつが考えられます。ひとつは、不況という経済環境の中で、仕事への先行き不安を感じている場合。もうひとつは家庭の事情など個人的な悩みを抱えている場合です。

私はいつも、良い習慣は才能を超えると話しています。良い習慣を持つと、人は確実に成長していきます。ぜひそうなって、ビジネスマン人生で幸せをつかんでください。しかし、それには強い決意と、覚悟がいります。しかもそれは、根本の部分に存在しているものですから、習慣以上に大切といっていいでしょう。

会社の仕事はチームで進めるものなので、情報はできるだけ共有化し、業務の効率化につなげていくべきでしょう。課内のコミュニケーションが円滑だと、課長が間違いそうになると、部下が注意してくれますし、悪い情報もいち早く伝わってきます。

それなりの立場、役職に就いたら、部下に仕事を任せましょう。40代にもなってプレイングマネジャーを自負している管理職がいますが、そんなものは愚の骨頂です。デキる部下がいるのに仕事を任せないのは、彼らの成長の芽を摘んでいることにほかなりません。

私が「出世したほうがいい」とよく主張するのは、40歳前後で管理職になると、明らかに周りの景色が違って見えるからです。部長になればまた違った見え方をするでしょう。社長は孤独だなどといいますが、会社で一番やりがいを感じているのは社長です。そこを勘違いしてはいけません。

私が繰り返し、習慣の大切さを説くのは、それが結局は自分のためになるからです。人間は自分を磨くために働いているのです。そう考えたら、日々の努力や難しい局面にチャレンジしていく、前向きな姿勢を保つことも大切です。すると、それが習慣化し、やりがいのある仕事にも恵まれていくでしょう。

上司、そしてさらに上の役職者と付き合うことによって、ビジネスマンは視点の高さを手に入れられます。視点が高ければ、問題のとらえ方が多角的・広角的になり、仕事の幅も出てきます。いつでも「上位者だったらどう考えるか」という意識を持つようにしましょう。

周囲との信頼関係をつくっておくことも重要です。私は「社内のメンターを持て」といっていますが、仕事の計画を立てるのに際しても、その仕事に精通している人や、関連資料のある場所を知っている人の存在はありがたい。そうした人たちと、日ごろから密にコミュニケーションをとっておきます。

上司の上司、課長なら部長、次長なら本部長というように2段上の上司との付き合いも大切にしてきました。実は、2段上の上司も、自分の部下のそのまた部下の話を聞いてみたいと考えているのです。たとえば部長なら、すぐ下の課長が部下からどう評価されているのかを、とても気にしています。そんなときは褒めるのが常道です。でも、10回に1・2回はネガティブな情報を入れてもいいでしょう。そんな関係をつくっておくと、いざというときは親身になって相談に乗ってくれるものなのです。

私は営業課長になったばかりのころ、部長のスケジュールを確認して、2週間に一回、30分程度のアポイントを取っていました。その際には、必ず仕事の進捗状況などの要件を紙に書いて、文書の形で渡しました。そして口頭で報告や相談をしたのです。こうしておけば、上司も安心していられます。

上司をうまく使うことも、段取り上手になるためのポイントです。私は「部下力を磨きなさい」といっていますが、上司とは仕事上の情報や価値観を共有しておくことが重要なのです。上司は部下と違った視点でものごとを見ていますから、部下の提案に対し「これは優先順位が逆だ」とか「この部分は加えてほしい」といった意見を持つことがあります。ですから仕事を振られたら、どの程度の位置づけなのか自分なりに判断する一方で、上司の意見を聞く必要があります。

スケジュール管理も重要です。私は2つの卓上カレンダーと2冊の手帳を使っています。まず、カレンダーですが、いまは7月の隣に8月のカレンダーを並べ、予定を書き込み、2ヶ月分の予定を毎日確かめています。長い経験上、ビジネスは2ヶ月先を見通しながら進める必要があると考えているからです。手帳も2週間分のスケジュールが記入できる大きなものと、メモとして使う小さな手帳を併用してきました。スケジュールはスケジュール、メモはメモと使い分けた方が便利でしょう。

早めに仕事を終わらせておくと、見直す余裕も生まれ、付加価値が高まります。また、関係部署から「もう少し詳しい説明が欲しい」といった依頼があっても、余裕を持って対応できます。

注意すべきなのは、デッドライン(締切)の設定方法です。早めに決めておけば、締め切り間際に慌てずに済みます。また、そうした私の習慣を相手が理解していると、締切近くまで忘れていても「佐々木さん、どうされました。いつもだったら早いのに」と声をかけてもらえ、リスク管理の面でもプラスに働きます。

仕事の重要度に応じてプライオリティ(優先度)をつけることも効果があります。仕事の軽重を見極め、重要度の高い仕事に集中するわけです。もちろん、雑用であっても、しなくてはならない業務もあります。それは後回しにするか、他の人に任せればいい。プライオリティの高い仕事を選択し、自らデッドライン、締切を決めて追い込んでいくのです。

段取りのコツは仕事の整理、言い換えれば「見える化」です。会社にはやたらと多くの仕事がありますが、その8割は定型仕事で、そのすべてを完全にやっていたのでは時間がいくらあっても足りません。本当に重要な仕事は2割です。これをきちんとやれば、その人の抱える仕事のほとんどは達成できてしまいます。

毎日、時間効率を考えている人間と、何も考えないでダラダラと深夜まで会社にいる人間では勝負になりません。10年もたてば、ものすごい差になって表れてきます。

私は東レの繊維企画管理部の課長時代から、家庭の事情で毎日6時には退社しなければなりませんでした。理由は長男が自閉症であることに加え、妻が肝硬変のため何度も入退院を繰り返し、私が子供三人の育児、家事、そして妻の看病という一人三役をこなしていたからです。当然、仕事の段取りを良くしなければ無理です。朝から「今日、仕事を最短コースでいくにはどうしたらいいか」と頭を絞りました。

仕事の時間を効率的に使いたいと思うのなら、何よりも、その気持ちを強く持つことです。私は志と言っていますが、そういう人は自分で工夫をします。本を読んで真似をしようと思っても駄目です。それは、にわか勉強でしかありません。普段からの習慣づけが大切です。

自分の意見を直属の上司がどうしても聞いてくれないなら、二段上の上司に相談するという手もあります。普通は二段上の上司の方が経験も力量も上ですから、直属の上司よりも正しい判断をしてくれる可能性が高いし、上司も上から何か言われたら聞かざるを得ないでしょう。そのためには、日ごろから二段上の上司ともコミュニケーションをマメにとっておくことが重要です。

なぜ経営者が本気で残業の撲滅に取り組まないかというと、社員を目いっぱい働かせた方が成果が挙がると信じているからです。いまは社員に長時間労働を強いると、逆にデメリットの方が大きいのにそれがわかっていないのです。

目の前の仕事に本気で取り組んだら、定時にはヘトヘトのはずです。残業して夜9時まで働く余力があるというのは、それだけ仕事の密度が薄いからだと私は思います。

20代、30代のうちは、しゃにむに働くこともときには必要でしょう。しかし、40代になってなおダラダラと時間をかけるような働き方しかできない人は、はっきりいってどこの会社でも使い物になりません。とくに管理職が求められているのは、課題に対して最短コースで結果を出すことです。それができるようになるには、頭を使った仕事のやり方を若いころから自分に課すことです。

社員一人一人の努力には限界があります。部下が必死に効率化を進めても、管理職の段取りや仕事のさせ方が悪ければ、すべて台無しになってしまいますから。逆に優れた管理職というのは、部下の残業を減らして、なおかつ成果を挙げることができるものです。

部下を残業させずにチームの成果を挙げるには、上司がプレイング・マネジャーをやめることが必要です。管理職の本来の仕事というのは、チームメンバー一人一人を指導して仕事のやり方を改善させながら、組織全体の効率を高めることです。これを本気でやろうと思ったら、プレーなんかしている余裕はないはずです。部下と一緒になってプレーしている管理職は、本業から逃げているだけです。

私が営業部を統括していたときは、それまで月2回取引先を訪問していたのをやめて、代わりに注文や連絡はメールで行うよう指示を出しました。そうすると、人数もそんなにいりません。最終的に営業部の人数を3割カットしましたが、業績は変わりませんでした。

私が課長になって最初にやったのは、まさに仕組みづくりでした。まず部下全員に去年一年間の業務報告書を提出させました。すると、2週間で終えるべき仕事を3カ月もかけていたり、逆に3か月かけてでも完成させなければならない仕事をたった2週間やっただけで中断していたり、とにかく極めて非効率な働き方をしていることが判明していました。そこで、どの仕事にはどれぐらいの時間を費やすという基準を明確にし、さらに仕事に優先順位をつけ、高いものはデッドラインを決めて追い込む、低いものは達成度を6割程度に下げるか思い切ってやめるという仕組みをつくり徹底したところ、毎月平均60時間だった部下の残業が、1年で1ケタになりました。

私は以前、自分の部下に「京レはあなたにとって最終の職場ではない」と言って、会社からクレームをつけられたことがありました。私は部下に転職を勧めたわけではありません。日ごろからスキルを磨いて、いつでも転職できる自由を手に入れておきなさいと言いたかったのです。たとえ相思相愛で入った会社でも、途中で合わなくなることは十分考えられます。そうなったときスキルという武器があれば、躊躇なく辞められるじゃないですか。

手書きなら20分でできるような書類をわざわざパワーポイントで何時間もかけてつくったり、eメールに長々と時候の挨拶を書き込んだりしていませんか。会社の仕事で本当に重要な部分は、全体のせいぜい2割です。それについては時間をかけてやる必要がありますが、残り8割の雑用まで同じようにしていたら、夜中まで残業しなければ終わりません。まずはそういう無駄を洗い出してみることです。

日頃から、仕事の合間に「お手伝いできることはないですか」と上司の御用聞きになるのです。こうして、密にコミュニケーションを取っておけば、急な残業を振られることはありません。

上司はごますりだけでは評価しない。「担当部署の成績を上げること」を会社から求められていますから。では、どうして「ごますり」が出世するか。仕事の実力が周囲と大差ないから、ごますりがプラス評価になっている。頭1つ抜けた成果を出すか、ごますりをするかは、あなた次第です。

「権力を持つ上司に対して、部下はどう接するべきか」と難しく考える問題ではない。「人は、どんな人に好意を持つか」というシンプルな話ですよ。どんな上司も、部下力を発揮され続けたら、「自分の気持ちを理解して、合わせてくれるのか。かわいいやつだな」と思うもの。上司からも歩み寄るはずです。

ある上司と反りがなかなか合わなかったとき、私は部下力を発揮して、相手のあらゆる注文に先回りで応えました。「進めている案件の進捗や結果の報告」「取りかかろうとしている案件の方向性や内容の確認」。「報・連・相」、つまり「報告」「連絡」「相談」を徹底しました。だから、その上司に、「あの件、どうなってる?」と聞かれたことはありません。この作戦が見事に成功して、上司は私を非常に気に入ってくれました。上司が別の部署に栄転するたびに、私も呼ばれて同じ部署に異動です(笑)。そして惜しみなくサポートしてくれる味方、良き理解者になってくれました。

上司と反りが合わなくても、「苦手に思う感情」にふたをして、上司に合わせる努力をすべき。「上司が期待していること」を正しくつかみ、的確に応える。「部下力」の見せどころです。

帝人の社長兼CEOを務めた安居祥策さんの復活劇は、勇気づけられます。安居さんは会社人生の半分を、世間では傍流と呼ばれる所で過ごした方。50代当時の勤務先は、アジアの子会社です。しかし、「会社員人生はここで終わりか」と思っていたら、東京本社に呼び戻されて、取締役に就任。数年後には社長になります。安居さんの働きぶりを、ずっと見ていた人がいたからこそでしょう。見る人は、見ているのです。

断言できるのは、どこで働くにしても、腐らず、真摯に働くことがベストということです。成果を上げれば、与えられる権限は大きくなり、仕事の醍醐味が増す。

どこの会社も、「評価制度は公平」とうたっていますが、そんなことはあり得ません。上司も人間です。彼らの選り好み評価が介入する余地がある以上、「完全な公平」は実現しないのです。

「会社の評価は理不尽」と息まく人は、真摯さや謙虚さに欠ける面がある。この2つを持つ人は、「自分に足りない点は何だろう」と考えるから、周囲の信頼を得やすく、高い評価につながりやすいのです。

40年以上の経験を踏まえると、ビジネスパーソンは実力よりも、「4割増し」で自分を高く評価する傾向がある。自己評価を高く見積もること自体は健全です。「自分の評価は、もっと高くていいはず。来期の評価では必ず認めてもらおう」と、会社の低い評価とのギャップに奮起するから、成果が出やすい。ただ、高く見積もる割合は、「2割増し」程度がちょうどいいでしょう。「もうひと頑張りで、ギャップが埋まる」現実的なレベルですから。

「自分はもっと評価されてもいいはずだ!」と会社に憤る前に、自分を冷静に見つめ直しましょう。あなたの実力に比べて、「自己評価が異様に高い」可能性はありませんか? 2つのギャップが大きい人は、「会社の評価」を理不尽だと考えます。

イラッときたら、まず深呼吸。ワンテンポ遅らせてから叱る。もちろん、それでも怒りは静まらないから、声が震えたり、どこかムリが見える。部下には、自分が怒っていることがバレます。でも、それでいい。ヘタな演技より「俺のために怒りをこらえて、伝えようとしてるんだ」と部下に察してもらえるからです。

信頼関係があってこそ、叱り言葉は部下に届く。雑談やプライベートの悩みもオープンに話せる「1対1」の関係を築くことが大切。意識して数か月に一度は、部下の話を聞く場を設けましょう。

最近、企業の不祥事がよく起こるのは、社会貢献という鉄則を忘れてリーダーたちが自己の利益ばかり考えるようになってしまったからです。人間性がなく信頼もない。それは心の奥底にあるべき真摯さ、誠意が欠如しているからだと思います。

人は何のために働くのでしょうか。それは自分を成長させ、ひいては社会に何らかの貢献をするためです。たくさんのお金を得るとか、地位を得る、名誉を得るといったところには、本質的な幸せはありません。それはあくまでも自分自身の欲を充たすという部分的な快感でしかない。しかし、人のため、世のために貢献するというところには、全人的な点から非常に大きな喜びがあります。自分が少しずつ成長し、世の中への貢献度を高められる喜びほど大きいものはほかにない。

基本的に性善説の人であり、みんなに期待の眼差しを注いでいる。トップに立つ人がこういうスタンスだと、組織は間違いなく明るくなります。

ともに幾多の試練をくぐり抜けてきた私の家族は固い絆で結ばれ、今はとても仲がいいのです。困難は家族を不幸にしないものです。

困難や逆境というものを否定的に考えてはいけません。むしろ成長するチャンスが与えられたと前向きにとらえるべきです。人生何がいつ、何をきっかけにどう福に転じるか分かりませんから。

困難や逆境をダフにくぐり抜けてきた人というのは、いいリーダーになりやすいものです。順風満帆な人生を送ってきた人より一回りも二回りもスケールの大きなものの見方ができますし、自分が苦労をした分、人の気持ちが分かるからです。逆境は本当に人間を大きくしてくれます。

私の知人に、サラリーマン人生の約半分を本社からの出向で子会社を渡り歩いていた人がいます。そこの本社の社長が後継者探しをしていたとき、これはと思う人材が本社の中で見つからなかった。それでふと子会社に目を向けたところ、面白いやつがいると目に留まった。これまでの経歴と実績を調べたところ、行った先々で優れた経営手腕を発揮していることが分かった彼は定年寸前に本社に戻されて、2年後に社長になりました。まさに真摯に努力をしていると運命は変わるという好例です。

自分の置かれた状況を受け入れ、それでもそこでがんばっていく道を模索し、最大限の努力を惜しまない人にこそ、挽回や飛躍の門戸が開かれているのではないでしょうか。

私は講演でよく、「左遷を左遷にするのはおのれ自身だ」という話をしています。組織に所属していれば異動は付きものです。栄転するときもあれば左遷のときもある。肝心なのは、それを受けとめてどのように行動するかです。不本意な左遷ととらえてくさってしまう人は、はっきり言ってダメ。そこから先の人生は好転していきません。

苦しいとき、つらいとき、それを悲観的に考えてみたところで、何の解決にもなりません。それよりも、運命なのだから自分が引き受けざるをえないではないかと考えると、肚が据わります。自分の中で覚悟が定まることで、真摯に事に取り組む底力のようなものが湧いてくる。

まわりがサポートしたくなるのは、自分の弱さから目を背ける人ではなく、弱さを認めたうえで改善しようと頑張る人。うまくいかないときにまわりの目を気にして格好つけても、事態は良くなりません。自分の弱さを素直にさらけ出すことで人は共感し、手を差し伸べてくれるのです。

他人を気にしてストレスを溜めていたら、決してその人は幸せになれません。他人が何を言おうと気にせずに粛々と仕事をこなしていくほうが、結果的に社内での評価も高まるし、自分の幸せにもつながるのは明らかです。

苦手な人でも嫌いにならず、うまくやっていければ、自分自身がラクに生きられるようになる。つまり、自分の幸せにつながるのです。

よくよく探してみれば、どんな人間にも良いところがひとつやふたつはあるはず。そこに目を向ける努力をするのです。そうすれば、相手を好きにはなれなくても、「嫌ではない」くらいには自分の気持ちを変えることができます。

会社という組織で働く以上は、毎日のようにつらく理不尽なことが降りかかってきます。でも、世の中とはそういうもの。嫌な上司の言うことも聞かなくてはいけないし、仕事ができない部下の面倒も見なくてはいけないし、偉そうなお客にも頭を下げなくてはいけない。生理的に合わない人とだって、同じチームになった以上は協調しながら淡々とやっていくしかありません。それが会社で働くということなのです。

実は離れているほうがお互いを知り合えるという側面もあるのです。私も単身赴任中は妻や子供たちと頻繁に手紙のやりとりをしました。一緒に暮らしていたら家族に手紙を書く機会なんてありませんが、私は手紙を読むたびに、「あいつはこんなことを考えていたのか」とこれまで知らなかった一面を知って驚いたり、感動したりしたものです。普段の会話ではなかなか言えないことも、手紙なら素直に書いてしまうことも多く、むしろ家族間のコミュニケーションの密度はそれまで以上に高まったとさえ思えたほどです。

私は課長時代に、部下と対話の時間を1人につき2時間ほど取っていました。その際、8対2で相手の話に耳を傾けます。ダメな上司は逆に自分が8割話すから嫌われる。とくに、威張ったり、自慢話をすれば、部下の心は離れて当たり前。

仕事のタイムマネジメントに長けるだけでなく、人生のタイムマネジメントも考えて欲しい。家庭や趣味など、ほかのトータルな生き方でも、部下の見本となるように心がければ部下も自然に尊重しはじめるはずです。

家族ときちんと向き合えない人間が、会社で部下と向き合えるでしょうか。私はそうは思いません。父として、夫として、家族にも責任をもたなければいけません。だから、仕事も家庭も徹底的にマネジメントして時間を作り、必死の思いでやり抜いてきました。それが私にとってのライフ・ワーク・バランスなのです。

取り返しのつかないセクハラの多くは酒席で起こります。酒の席での失敗は高くつく。私は口が酸っぱくなるほど、部下に何度もいってきました。酒に弱い人や飲んで乱れがちな人は飲むなと。飲めると思う量の半分に抑えなさいと。

付き合いづらかったり、嫌われているなと感じたりする上司でも、絶対に疎かにしてはいけない。査定や異動も上司のさじ加減ひとつで決まるから、上司といかに付き合うかは会社員にとって最重要課題です。

仕事の考え方や方法論について悪い噂が出たとき、それが事実と違うのであれば、グズグズせずにすぐ手を打つこと。噂の発信源がわかれば、その人に面と向かってきちんと説明します。出所がはっきりしなくても、経路に心当たりのありそうな人に尋ねれば、大抵は原因が見えてくるものです。

組織の中で朝から夕方まで毎日働いていれば、自分の人生観や価値観、生き様などが、毎日の仕事ぶりにすべて表れてしまいます。ちょっとやそっと取り繕っても、どうせ本性はバレます。それならいっそのこと、予断を持たずに自然体で振る舞うほうがいい。そうすれば案外バカにされることはありません。

「部下に教えを請うのは恥ずかしい」とか、「上司たるものかくあるべし」と肩に力の入った態度こそがバカにされる。わからないことがあれば知っている人に聞くのは、仕事のうえでも当たり前です。

目下の人に教えを請うのが苦手な人は、人間関係を「上下」でとらえるクセがあるのでは。たとえ上司と部下といえども、上下関係だけで押し通そうとすると失敗する。「上から指示を出す」のではなく、対等な仲間として「いいアイデアがあればください」という姿勢で臨む必要がある。

企業組織の論理を地域コミュニティに持ち込んだら必ず疎まれます。マンション管理組合のような住民組織でリーダーシップを発揮できるのは、人の話をよく聞いて、周りの人たちの力を引き出せる人。そういう人には皆協力したくなるもの。

ビジネスの状況は刻一刻と変わりますから、状況に合わせて対応を変えざるをえないのは当然のこと。初めに計画を立てる重要性に変わりはないが、柔軟に段取りを変更しなくてはならないことも多い。結果的に朝令暮改となることも必要。

働き方イコール生き方。日本の経営者には「仕事が忙しくて、子供の進学も就職も結婚も全部家内に任せきりですよ」と自慢する人が多かった。たしかに仕事は大事ですが、誰もがいつかは会社を離れます。人生には仕事以外にも大事なものがあるのです。

仕事に限らず、およそ人が生きていく上で大切なことは、難しいことではなく、「人に会ったら挨拶する」「みんなと仲良く遊ぶ」「嘘をつかない」「間違ったことをしたら勇気を持って謝る」といったごく単純な原理原則です。

チームのリーダーが部下に対してやらなければならないのが、仕事を通じて自分が成長したことを納得させることです。自分が伸びていることを実感させることができれば、さらに高い目標に向かっていきます。

若いころの業績は、イノベーションではなく、イミテーション(模倣)でいいと考えています。がむしゃらに前を向き、周囲の優れた事物に学びながらイミテーションを繰り返すことが、やがて独自のイノベーションの土台をつくるからです。

私のビジネスマン人生も、まさにマズローの言う通りに欲求の五段階を上っていきました。働き始めたばかりのころの私は「安全の欲求」の段階にとどまっていたと思います。それが30代になると「所属と愛の欲求」や「承認の欲求」が満たされるようになり、40代になって「自己実現の欲求」に達したようです。逆に言えば、今はまだ若くて「生活のために仕事をするだけで精いっぱい。仕事のやりがいや面白さなんてまだ分からない」という人でも、真摯に仕事に向き合っていけば、こうした欲求の階段を上がっていけるということです。

子が親を大切にするのは、親に大切にされてきたからではないでしょうか。家族のように大切にされていると部下が感じるほどに、信頼感が生まれ、モチベーションが高まります。結果として、組織全体のパワーを底上げしてくれました。

人間が自分ひとりの力でできることなど高が知れている。難度が高いものになればなるほど、協力する人、ともに志を持って目標に向かう人の存在が重要になる。

いじめっ子というのは、相手が嫌がったり泣いたりして反応するから、面白がってさらにいじめてやろうと考えるのです。何をしても平気な顔をしていれば、そのうち何も言わなくなります。

40歳で課長になったのとほぼ同時に、妻が病気で入退院を繰り返すようになり、二人の子供の面倒や家事は私が一手に引き受けることになりました。朝は5時半に起きて朝食と子供のお弁当を作り、他の人より1時間早く出社して仕事をこなし、夕方6時には退社して、夕食作りや家事をこなす毎日が続いたのです。もちろん最初のうちは、周囲からあれこれ言われました。長時間残業が当たり前の時代でしたから、課長の立場にいる人間が定時で帰るなんてとんでもないというわけです。しかし、私が他の誰よりも高い成果を出すことがわかると、文句を言う人はいなくなりました。そして私自身も、家事や子育てを言い訳にするつもりは毛頭ありませんでした。あったのは、課長としての責務を全うしようとする覚悟のみです。

仕事を任せてほしいなら、相応の覚悟を持たなくてはいけません。

企業経営に女性の視点が入れば、男性とは違った発想を取り込めます。ノンアルコールビールやななめ式ドラムの洗濯乾燥機などのヒット商品が生まれたのも、家事や育児をしている女性ならではの発想。女性の視点を経営に持ち込めば、その企業が強くなるのです。

男性だろうと女性だろうと、その人に実力さえあれば、多少時間はかかっても、必ず周囲も認めるようになります。目の前の仕事に集中し、成果を出すことだけを考えればいいのです。

言いたい人には言わせておけばいいのです。私だって、会社員時代は同期の中で一番出世が早かったので、おそらく裏では妬まれたりもしたと思います。でも、「自分に実力があるからそうなったのだ」と考えて、まったく気にしませんでした。

人間というものは、嫉妬する生き物です。出世をすれば嫉妬されるのは当たり前だし、仕方がない。世の中は、ある意味で敵だらけなのです。いちいち取り合っていたらきりがないので、あなたは何も気にせず、自分のペースで淡々と仕事をやればいい。

現代は、教師や上司から言われるままに動いたり、誰かの真似をしていれば、成功や幸せを手に入れられる時代ではなくなっています。自立した人間として自分の頭で考え、主体的に行動する必要があります。

リーダーは一定の能力があるからリーダーになれたわけですが、テーマや分野によっては、自分よりも部下のほうがずっと高い知識や知恵を持っているというケースはたくさんあります。彼らの知識や知恵を引き出しながら、シナジーを創り出していけるリーダーが必要なのです。

一人の人格を持った人物として相手を認め、接するようにすると、相手も私のことを信頼し、私の言葉に耳を傾けてくれるようになります。お互いの間に信頼関係が築かれ、だからより良い成果も生まれやすくなる。これは職場でも家庭でもまったく同じです。

初めての仕事は不慣れだから大変だし、面白くないように感じる。でも、これも続けるうちに面白くなるのです。

もし社長が社員にいちいち気を遣っていたら、何も決断でないし、仕事にならない。会社はすぐに潰れてしまいます。つまり「目下の者が目上の者に気を遣う」のが組織のルールであり、もっと言えば、社会のルールでもあるのです。

出世はしないよりしたほうが良いに決まっています。課長より部長、部長より取締役、取締役よりも社長のほうが面白いに決まっているんです。だって、社長になれば、誰もが自分の命令を聞いて、誰よりも高い給料がもらえるんですよ。こんなに良い仕事は他にないでしょう。

管理職になれば仕事を選べます。上から与えられた仕事は部下に任せ、新しい仕事やより大きな仕事に取り組んで、自分をいくらでも伸ばすことができる。それなのに、多くの管理職が部下に仕事を任せずに自分でやろうとしている。それは、自分の成長の機会をみすみす放棄する行為だと自覚すべきです。

「自分を成長させたい」という思いは、働くうえで最大の動機づけになります。昨日より今日、今日より明日のほうが自分は成長している。そのことを幸せだと感じるから、人は仕事を頑張れるのです。

管理職になったとき「プレーヤーの仕事のほうが自分に向いている」と感じるのは、単にあなたがその仕事に慣れていて、ラクにこなせるからにすぎません。そこに留まって抜け出したくないと考えるのは、「自分は成長したくない」と言っているのと同じこと。

管理職とは、人を管理するのが仕事です。これまでは自分が成果を出すことに喜びを感じていたかもしれませんが、今後は部下が成長する喜びを感じるようになります。

仕事というのは、最初は誰だって面白くないのです。新入社員の頃を思い出してください。会社のことは何もわからず、上司から与えられる仕事の意味もよく理解できず、それをやることに苦痛を感じていたはずです。ただ、その仕事を続けていくうちに段々と面白くなってくる。ついには家庭やプライベートも顧みずに仕事に没頭するビジネスマンが続出するわけです。

長時間働かないことは、私自身の出世や評価にも、何のデメリットにもなりませんでした。夜遅くまで残業している人たちより早く、同期で最初に役員になったのは私ですから。限られた時間しか働かなくても、上は結果さえ出せば文句は言わないということです。

私は「働き方とは、生き方である」と考えています。本来はまず「自分が幸せになるにはどう生きるべきか」という人生設計があり、そのためにどう働くのかを考えるべきでしょう。ところが多くの人は、生き方を考えずに、働くことばかり考えている。それでは日本人の働き方が変わることはありません。

日本人が休めないのは、本気で「休みを取りたい」と思っていないからです。とくに中高年以上は、高度成長期の価値観をいまだに引きずり、長く働くことが美徳であると信じている。若い世代の意識は随分変わりましたが、頭の固い50代以上の「粘土層」が古い考え方を捨てない限り、会社全体を変えるのはなかなか難しいのが現実です。

人間は常に感情をコントロールすることなど不可能。私だってときには爆発するし、部下を怒鳴りつけることもある。しかし根底に、「この人を育てるために」という気持ちがあるから、叱られた部下も納得してくれるのだ。

会社なんてところでは、演技をしたって始まらない。長い時間を一緒に過ごすのだからすぐにボロが出る。地のままでいくのが一番だ。いつも明るく前向きであらればと演技をするから、鬱などメンタル面での問題が出てくる。

部下に頭を下げるなど言語道断と思うだろうが、それで関係がよくなれば業績が上がる。そして成果というフルーツを得て、幸せになるのは自分である。つまり部下との信頼関係を築くことで得をするのは、ほかでもない自分自身なのだ。こう考えれば、いくらでもこちらから歩み寄れるはずだ。

もしどうしても手を焼く部下がいれば、本人に聞いてみればいい。「俺は一生懸命やっているつもりだが、なぜ信頼してくれないのか」と。聞かれれば部下も悪い気はしないので、教えてくれるはずだ。「部長はあのとき、私の話をろくに聞きもしないで一方的に責めたじゃないですか」などと過去の遺恨が出てきたら、そのときは謝ればいい。

優秀な部下はあまり成長の余地がないが、出来の悪い部下はまだ3~4割は伸びる余地がある。ということは、出来の悪い部下の面倒を重点的にみることで、チーム全体の業績を大きく伸ばせるということだ。

部下にもいろいろなタイプがいる。何も言わなくてもどんどん仕事をする人もいれば、性格的にひねくれた人もいる。どうしてもウマが合わないタイプもいるだろう。だがどんな部下でも、一人ひとりが貴重な戦力である。

私はいつも、部下は家族に近い関係だと思っている。親は子供がどんな子であっても、無条件の愛情を注ぐ。それと同じような気持ちで部下に接することだ。そうすれば、こちらに少々欠陥があっても、部下は信頼してくれる。

「部下は上司の命令を聞くのが当然」という思い込みを捨てること。自分が部下だったときを思い出してみるといい。上司の権力だけで部下が動くというのは完全な間違い。互いの信頼関係がない限り、部下は動かない。組織運営というのは全人格の勝負なのだ。

大量の仕事を抱えた部下に急ぎの仕事を命じたり、優先順位をあいまいにしたまま複数の仕事を頼んだりすると、部下はたとえ指示に従いたくても従うことができなくなる。そういうときは部下の現在の状況を把握するように努めたり、仕事の背景や重要度を丁寧に説明したりすればいい。

指示を出しても部下が言うことを聞かないと嘆く上司は多い。このような場合、原因は2つ考えられる。ひとつはこちらの指示の出し方が下手なこと。もうひとつは部下との信頼関係が築けていない場合。

日頃から直属の上司とのコミュニケーションをとって信頼関係を築くように心がけましょう。これはもっとも大切な仕事のひとつです。直属の上司を味方につけることで、仕事もスムーズに進んでいくようになります。

部下の心を動かすだけの高い志と情熱をもたなければ、まわりは決して動いてはくれない。志は簡単には手に入りません。壁にぶつかって悩んで、考えてやっとつかみ取れる。

真のリーダーとはまわりの人を元気にさせる人。その人がそこにいるだけでまわりが自然とヤル気になる、この人とまた一緒に仕事がしたいと思わせる。そんな資質をもった人がリーダーといえる。

私自身は8割褒めて、2割叱るようにしていました。基本は褒めるのですが、ときに叱ることをしないと緊張感を失ってしまうからです。ただ、褒めるにしても叱るにしても、本気で部下と向き合わなければ、部下の心は離れてしまいます。

職場を変えるために必要なのは、「制度より風土、風土より上司」です。いくら男性の育休制度を作っても、「男性社員も育児のために休むのは当たり前」という風土があり、それを部下に勧める上司がいなければ、誰も休もうとはしませんよ。

人間としての基本的なことが出来れば立派な営業マンになれる。それが私自身も現場で実感した営業の極意です。

継続的に学びを得られるような人間関係を作っておくことは、自分を成長させるために大事なことです。

私が初めて営業に配属になったのは40代になってからでした。しかも課長という立場での着任でしたから、部下たちから「営業をやったこともない人間が課長だなんて」とバカにされるのは目に見えていました。そこで私は、社内で営業の神様と呼ばれる優秀な先輩5人にアポイントを取り、「営業とはどういうものか、教えてください」とお願いしたのです。多忙な人ばかりでしたが、全員が快く時間を作ってくれて、私に営業の極意を語ってくれました。ですから、目標とする人がいたら、遠慮なく本人に教えを請えばいいのです。相手も迷惑だなんて思いません。むしろ「自分を高く評価してくれているのだな」と嬉しく思うものです。

どんな仕事でも、担当を引き継げば前任者と比べられるのは当然のこと。もしあなたの仕事のレベルが低ければ、「前の人は優秀だったけど、今度の人はダメだね」と思われるのは当たり前です。それが悔しければ努力して腕を磨くしかない。前任者に負けないくらいの評価を受けられるように、自分を成長させるしかありません。

私には障害のある息子がいます。同じ境遇の家族が集まる会に参加すると、「どうしてうちの子は障害を持って生まれてきたのか」と嘆く人が必ずいます。でも、今さらそんなことを言っても何も始まらないでしょう。「障害のある子を与えられたことは自分の運命なのだ」と受け入れ、その運命とともに生きていったほうがよっぽどラクだというのが私の考えです。

私はよく講演などで「運命を受け入れなさい」という話をします。たとえ理不尽な運命でも受け入れて、いったん腹をくくってしまえば、そのほうが生きやすいからです。

お金を借りるほうも、銀行は自分たちの利益を優先して動くものだという事実を前提として考え、行動しなければいけない。

「お客様は神様です」という言葉がありますが、まさにその通り。経営者の多くが顧客第一主義を口にするのは、ビジネスの世界では顧客がすべての決定権を握っているという事実をよく理解しているからです。

奥さんと一度じっくり話し合って、お互いの気持ちや考えを確かめたほうがいい。「家族だからわかっているはず」と思い込むのではなく、きちんと目を見て話す時間を持つべきです。

もともと優秀な人は、上司がいろいろとサポートしたとしても、実力が伸びるのは2割程度。しかし、できない人は、上司が手間暇かけて指導をしてやれば、3割くらいは伸びるもの。だから、組織が全員の力の和を最大にしようとするなら、できない人を引き上げるのが最も効率的なのです。

どんな組織にも「できる人」と「できない人」がいます。そして、組織として大事なのは、「できない人を引き上げること」だと私は考えています。

巷では「すぐやる」がブームのようですが、仕事に取りかかる前に「そもそも、この仕事は本当にやらなくてはいけないのか」と考えることも大事。やらなくていい仕事は、皆さんが思う以上に多いからです。

従業員を幸せにするのも企業の重要な役目ですし、部下を教育するのは管理職の仕事です。あなたの部下が遅くまで残業をしていたら、こう言わなくてはいけません。「こんな働き方をしていたら、奥さんとの関係が悪くなるぞ」「家族との会話が減って、子供が不良にでもなったらどうするんだ?」とね。

SCSKが残業削減に成功した理由は、「早く帰ることが格好良い」という文化を作りあげたこと。社員たちは毎朝、「今日は18時に帰ります」「私は17時半に帰ります」などと宣言します。そこで一人だけ、「20時に帰ります」というのは格好悪いわけです。「あの人、仕事ができないんだ」と思われますから。

働き方とは、すなわち生き方です。「自分はどのような人生を送りたいのか」を真剣に考えない限り、残業を減らす意味も理解できないでしょう。いくら会社が残業削減のための制度を整えたところで、働く本人が「残業をしないことが自分にとってプラスになる」と思わなければ、何も変わるはずがありません。

肩書きや上下関係だけの結びつきは、いつか会社を辞めれば消えてしまうものです。定年後も残るのは、信頼によってつながった人間関係だけ。

人を階級や地位で差別すると、結局は自分が損をします。上司にだけ丁重に接していると、周囲に下心が見え見えです。「あの人は上にだけいい顔をする」と思われれば、信頼は得られないでしょう。

私は昔から、上司や部下の誕生日をすべて手帳に書き込んでいます。そして当日になったら、「おめでとう」と声をかけるのです。すると相手は、「私の誕生日を覚えているなんて」と感激して、こちらに好感を持ってくれるようになる。何十人分もの誕生日を手帳に書いて忘れずに声をかけるのは、なかなか大変な作業です。でも、その努力は必ず報われる。人間関係は努力があってこそ培われるものだということを肝に銘じるべきです。

人に嫌われないためには努力が不可欠。とはいえ、それほど難しいことではありません。にっこり笑って「おはようございます!」と挨拶をすれば、それだけで相手は気分が良くなる。逆に、何も言わずに通り過ぎれば不快に思う。人間なんて単純ですから、相手が気持ち良くなるように振る舞えば、こちらに好感を持つようになります。

私が長い会社人生で学んだ教訓のひとつは、「ケンカをしてはいけない」ということです。誰かに不満を持ったとき、それを相手にぶつければ、確かに溜飲は下がるでしょう。しかし、後味が悪いし、間違いなくその人とは険悪な仲になる。ますます自分の悪口をあちこちで言いふらされたりしたら、社内での評判がさらに下がり、仕事がやりにくくなるでしょう。社内の人間と仲違いをしても、良いことなどひとつもありません。

人間の幸せは多様なのだから、これ以上の昇進を諦めざるを得ないなら、それ以外の幸せを見つければいい。私だって、出世だけを考えて生きていれば、東レで社長職に近いところまで行けたでしょう。しかし、私は自分なりの真摯さを貫くことを選び、「経営とはこうあるべきだ」と、上とは異なる主張をしたために、子会社に出されることになりました。しかし、出世と引き換えに得た周囲からの信頼や部下たちとの結びつきは、今の私に大きな幸せを与えてくれています。

目標を持って努力を続けることは大事ですが、それによって得られる成果は出世だけではありません。周囲の人たちに信頼されたり、好かれたりすることも、非常に大きな人生の成果です。

真面目であることとか勤勉であることは、ひとつの才能なのです。人間は生きているといろいろな誘惑があって、つい悪いことをしたがるものです。よく政治家や企業の経営者が、金銭問題や色恋沙汰で週刊誌の誌面を賑わせることがありますが、そうした報道を見ると、いくら社会的には偉い肩書きがついていても、果たして人間性はどうなのだろうと疑問符がついてしまいます。当然、その人は周囲からの信頼もなくしてしまうでしょう。そうした問題を起こさず、真面目さを貫き通せるというのは、すでに立派な才能なのです。

はっきり申し上げておきたいのは、「出世できなかったら、すべて終わり」というわけではないということです。実際には、出世した人よりも、出世しなかった人が部下から好かれるケースはいくらでもあります。残念ながら出世はできなかったとしても、自分に与えられた仕事をきちんとこなし、部下たちの面倒をみて、常に周囲に気配りをできる人であれば、上司として信頼されます。

『論語』では「五十にして天命を知る」とされますが、現代のサラリーマンの多くは「五十にして己の限界を知る」というのが現実です。そのときに、残りの仕事人生でどのように自分の使命ややりがいを見つけるか、というのは、組織で働く人間にとって大きなテーマかもしれません。

これ以上の昇進がないと思った時点で、部下から成長を諦めた人間と思われて当然。悔しかったら、組織や人事のせいにしないで、昇進のための努力を続けなさい。

お局様タイプの人は、総じて寂しがり屋です。寂しいから仲間と群れをなして、その一番上に立ちたいと考える。だったら、その寂しさを解消してあげればいいのです。たとえば「今日の洋服は素敵ですね」とひと言褒めてあげればいい。それだけで相手の心は満たされるはずです。褒めるだけならダダですから、いくらでも褒めたらいいじゃないですか。どこかへ出張したときに、お土産を買ってくるのもいいでしょう。口では「気を使わなくてもいいのに」などと言いながら、内心は嬉しくて仕方ないはずです。

飲みに誘っても部下がついてこないのは、上司にも問題があるのです。飲みの席で、上司が部下に小言を言ったり、自分の意見を押しつけたり、そして挙句の果てにワリカン。これでは誰もついてきませんよ。

普段の職場では上司が話をすることが多いのだから、飲みの席でくらい、上司は部下の話を聞いてやらなくてはなりません。話を聞いてくれる上司とは、部下も一緒に飲みたいと思うもの。部下との距離が縮まります。

世の中には何時間も仕事をしても疲れない人がいます。先日ノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏は、朝から晩まで実験していても疲れないと言います。それは、仕事を楽しんでいるからでしょうね。疲れを溜めない最も良い方法は、仕事を楽しむことです。

仕事で結果を出すには、選択と集中によるタイムマネジメントが大事です。すべてに全力投球していては、時間が足りず、身体ももたないので、手を抜く部分は手を抜きながら、大事な仕事に集中すること。

疲れを溜めないコツは仕事以外の楽しみを持つことです。会社にいれば、嫌な上司やお客とも顔を合わせなければなりません。会社とはそもそも不条理な組織であり、会社に勤めていれば必ずストレスが溜まるものです。それを解消する方法を自分なりに持っておくことが大切です。

自分本位で自らの利益を最優先して行動する人の中には、それを表に出さないように取り繕っている人もいますが、ほとんど意味はありません。周囲の人は気づいているものです。人が社会で生きていくということは、ある意味、全人格をさらけ出すことですから、隠しようがないのです。

上司たるもの、部下に対して「いざとなったら、俺は刀を抜くぞ」という怖さを部下に教えなくてはいけません。

サラリーマンにとって、上司は自分を評価し、異動の決定権を持つ人です。普通はそんな人に逆らったりはしません。もし、部下が平気で上司に逆らうとしたら、あなたがそれを許してしまうような態度をとっているのでしょう。要するに、部下になめられているのです。

仕事の世界では、結果を出した者が勝ちです。「理論的におかしい」と反論してくる部下を教育したいなら、上司のあなたが実力を磨き、仕事で結果を出せばいいのです。そして、部下が「論理的におかしい」などと反論しても、「私のやり方で実際に結果が出ているのだから、君は私が指示する通りにやりなさい」とはっきり言ってやればいい。これ以上に説得力のある言葉はないはずです。

先に昇進していく同期を見て、嫉妬するなとは言いません。嫉妬するのは悪いことではない。それをバネにすれば、「自分ももっと頑張ろう」と思えるし、今まで以上に努力できるからです。でも、「どうしてあいつばっかりが」と不平不満を言っているだけでは、何も変わりません。

出世には運が左右する部分もあります。しかし、私は出世とは、「能力」と「努力」と「人間性」のバロメーターであると考えています。出世ができるかどうかは、この3つの要素の総合力で決まる。その人の全人格をかけるくらいの真剣勝負をして、初めて出世ができるのです。だから、出世をしている人には必ずそれなりの理由があるし、出世できる人とできない人のあいだには明らかな差がある。

他人のことは「仕事ができない」と決めつけ、自分は「仕事ができる」と思い込む。これはダメなビジネスマンの典型的な例です。正しく自己認識ができていないのです。

上司が高く評価するのは、何でも言うとおりにする部下ではありません。上司も間違うことはありますから、ミスを寛容に受け入れ、適切な対応をしてくれる部下こそ、頼りがいがあると感じるのです。

情報が足りていないために上司の判断がブレて、言うことが変わるというケースもあります。その場合は、足りない情報を補足してあげるのが部下の務め。指示された瞬間に反論すれば、上司は不快に思うでしょうが、いったん席に戻って必要な情報を揃えてから、「調べてみたらこんな情報もあるようなので、別案も検討してはどうですか?」と提案すれば、上司も「自分を助けてくれてありがたい」と感じるでしょう。

あまりに上司の振る舞いがひどい場合は、「自分の二段上の上司」をうまく使うことをお勧めします。私は昔からこれが得意でした。小さなことならともかく、チームや会社の運営に関わる大きな問題で「上司の指示はおかしい」と感じたら、二段上の上司に相談に行くのです。ただし、それを報告するときには、直属の上司のプライドや立場が傷つかないように配慮することが大切です。「昨日、廊下で偶然部長に会って、例の件について聞かれたのでお答えしたら――」とさりげない報告にとどめるのが得策です。

私が若手だった頃は、上司に指示されても、「どう考えてもこの仕事はやる必要がない」と判断したものは、わざとやらずに放っておきました。部下から見ても必然性のない指示は、言った本人もたいてい忘れてしまうんですよ(笑)。結局、そのあとも何も言われず、「やらなくてよかった」ということがほとんどでしたね。

上司が部下の行動を変えることだって相当に難しいのですから、部下が上司に「言うことをたびたび変えられては困ります」などと言ったところで、相手が反省するわけがないのです。ですから、上司の言うことがコロコロ変わるなら「上司は言うことを変える」ということを前提に仕事をする必要があります。日頃から上司をよく観察し、「この口ぶりだと、あとで言うことを変えるぞ」と予測して、変わっても対処できるよう仕事を進めるのです。

大事なのは、上司が「部下に成長してもらいたい」という志を持っているかどうかです。それがあれば、たとえ少々厳しいことを言ってしまったとしても、相手は「成長してほしくて言っているんだな」と、あなたの思いを感じ取ってくれるはずです。

人間は誰もが「成長したい」と望んでいます。たとえミスが多い部下でも、本人は好き好んで失敗しているわけではないのです。だから、日頃から部下の行動をよく見て、少しでもうまくいったら褒めてください。すると、部下のモチベーションが上がり、もう一段上のレベルを目指そうとするはずです。

部下に注意したいことがあれば、まずは「この前の君の仕事ぶりはすごかったな」と褒めてから、「ただ、ここは改善したほうがいい」と言えば、相手も素直に受け入れるはずです。

部下に信頼されるためには、良い習慣を持つことが必要です。たとえば、業務に優先順位をつけて、最短コースで目標を達成するための戦略的な計画を立てる。自分の力だけで解決できないことがあれば、より優れた人に教えを受ける。こうした良い習慣を実行している人は、部下から見ても信頼できるし、「この人が言うのなら、そのとおりにやってみよう」と思うものです。

厳しく注意をしても部下の態度が改まらないということは、部下の心に言葉が響いていないということです。だから、上司が何を言っても、真剣に耳を傾けようとしない。これは、上司と部下のあいだに信頼関係が成立していないということです。

私が課長だった頃は、部下たちに「業務計画書」を提出させていました。「どの仕事を優先するか」「納期はいつか」「完成度はどのくらいにするか」などについて計画を立てさせ、私がチェックするようにしたのです。そして、「この会議に3時間もかける必要はないから、1時間で終わらせなさい」「この件は、先方に出向かなくてもいいから、電話で済ませなさい」などと指導をします。これを繰り返せば、確実に残業を減らすことができます。

部下が結果を出せていないとすれば、それは上司が部下の目標管理をしていないからです。上司が部下に対し、「どの仕事をいつまでに、どの程度の完成度でやるか」を提示できていないのです。それどころか、たいていの管理職は、部下がどれだけ仕事を抱えていて、どの作業にどの程度の時間を費やしているかを、把握すらしていません。

リーダーになった人には、自分の志を「ミッション・ステートメント」として文書化し、部下たちと共有することを勧めます。私も40代半ばくらいから、毎年1回、年末年始の休暇を利用して、自分の志を書き出すのを習慣としています。「今年はこういう信念や考えに基づいて、こんな仕事をやります」ということをA4一枚にまとめて、年明けの仕事始めの日に、部下全員へメールで発信するのです。毎年、文章は変わりますが、その根底にある私の志はずっと変わりません。ひとつは、仕事を通して自分を成長させること。もうひとつは、世のため、人のために貢献すること。人が働く理由は、突き詰めればこの二つしかありません。

自分は何者であるのか。どんな生き方や働き方をしたいのか。その軸がブレることなく、明確であるからこそ、みんなが勇気と希望をもらえるのです。志がない人間には、誰もついてきてはくれません。あなたがまずやるべきは、そうした志が自分の中にちゃんとあるかを問いかけ、明らかにすることです。

私が考えるリーダーの定義はシンプルで、「その人と一緒に仕事をしていると、勇気と希望をもらえること」。簡単に言えば、「その人と一緒に働いていると幸せを感じられる存在」がリーダーなのだと思っています。部下に勇気と希望を与えられるのは、真摯な人間です。

部下というのは、新しい上司にすぐ慣れるものです。みんないい大人なのだから、「上司が変われば、仕事の進め方や方針も変わって当然」と、冷静に受け止めているはずです。

リーダーには「こうあらねばならない」という型は存在しません。前任者が部下を従わせるスタイルだったからといって、同じことをしなくてもいいのです。自分を変えようとしたり、格好をつけたりする必要はまったくありません。地のままの自分でやればいいのです。

タイムマネジメントという言葉がありますが、これは決して時間を管理するという意味ではありません。「仕事を管理する」というのが本当の意味なのです。ですから、早く退社する部下がいたら、「どうしてこんな時間に帰るんだ?」と理由を聞くのではなく、「今日が締め切りの仕事があったはずだが、それはできたのか?」というように聞くべきです。その部下がきちんとやるべきことをやっていれば、そのまま帰せばいい。

管理職が考えるべきはただひとつ、部下に結果を出させることです。こちらが求める結果さえ出していれば、部下が何時に帰ろうが関係ないはずです。管理職の多くが、長時間働く部下を見て「頑張っているな」と褒めますが、「結果を出すか、出さないか」で評価するのが組織として正当なあり方でしょう。

いま50代の人に勧めたいのは、人智を超えるものとの触れ合いだ。年を重ね経験を積み、肩書がつくようになると、人はどうしても傲慢になる。そんなときは即身仏のような偉大な存在や、大自然、芸術といった人智を超えたものに触れると、謙虚な気持ちになり、等身大の自分を取り戻すことができる。

どんなに太い絆もほったらかしにしていたらやせ細り、いつかは切れてしまう。そうならないためには手入れが不可欠。億劫がらずに定期的に連絡をとることが肝心。

人生には仕事以外にも大事なことがたくさんある。ただ、それが何かをきちんと理解するのは容易ではない。だから棚卸しが必要なのだ。これまで歩んできた道を振り返り、自分は何を成し遂げてきたのか、どんな人たちと出会ってきたのかなどを整理してみる。あるいは身近な人に、自分はどう映っているかを尋ねてみるのもいいだろう。これをやることで、自分にとって大切なものは何かが見えてくる。

20代前半で社会に出た人が平均寿命まで生きるとすると、50代はちょうど折り返し点だ。いったん立ち止まってこれまでの人生の棚卸しをし、残りの30年をどう生きるか目標を定め、その準備を始める大事な時期。

本を読んでいて「良いな」と思った言葉などを手帳に書き写しています。手帳は常に持ち歩いていて、電車の中など、ちょっとした時間に開く。人間は忘れる生き物ですから、何度も確認することで初めて頭の中に定着し、行動にできるようになるのです。

よく「佐々木さんは誰をお手本にしてきましたか?」と聞かれるのですが、私は「全員です」と答えます。どんな人にも良い面と悪い面がありますから、どんな人についても良い面に目を向け、そこに好意と尊敬を持ってきました。

母は27歳で夫を失い、働きながら4人の子供を育てたのですが、いつも笑って、愚痴ひとつこぼさない人でした。そして、よく「運命を受け入れなさい」と語ってくれました。確かにそのとおりで、個人の努力でどうにもできない運命は受け入れるしかありません。

鈍感力は人生を生き抜くうえで欠かせないと思います。他人に何をされても気にしない。失敗してもいちいち気に病まない。他人と自分を比較して悩まない。そうした「鈍さ」が、些細なことで揺るがない強さにつながるのです。

私たちが仕事をする意義は、自分の幸せをつかむことにあると納得できればいい。そのように働く意義を自分事化して捉えることができれば、困難に直面してもエネルギーが湧いてくるものです。図太い人でも、小心者であっても心を支える土台は変わらないのです。一方、この大前提がボヤけていると心が折れやすくなります。

知っておいて欲しいのは「私たちは何のために仕事をするのか」ということ。仕事を通じて成長することと、自分のチームや顧客、地域社会に貢献すること。人間は、この2つに喜びを感じ、モチベーションが高まります。もちろん好きな女性に格好いい姿を見せたいとか、仕事をする理由は人それぞれで構いません。

仕事は初めが肝心です。計画を立てておくと仕事の無駄がなくなります。でも、無計画なまま仕事をしている人が多い。だから、必要ない仕事までしたり、非効率な仕事の進め方をしたりして、勤務時間内に仕事が終わらず、残業が増えてしまうのです。

始業前のオフィスには、社員がほとんどいません。会議もないし、電話もかかってこ液いので、時間を自分の好きなように使えます。逆に勤務時間中は、いろいろな会議や打ち合わせがあります。上司や取引先からも呼びつけられるし、部下の相談も受け厳ければならない。私の場合、自分の時間はせいぜい3割程度しかありませんでした。仕事に集中できる自分の時間は貴重なんです。

私は朝早く家を出て通勤電車を「車中オフィス」にしています。「駅に着くまでの一時間は、フルに仕事に使えます。会社の書類をチェックしたり、仕事についての考えを巡らしたりします。資料は業務別に4種類に分けてファイルにはさみ、常にバッグに入れて持ち歩いています。電車のなかでは、文章は書きづらいのですが、メモを取ったり、携帯電話のメールを打ったりすることはできる。結構いろいろな仕事ができますよ。

「自分はこうなりたい」という夢に固執すると、そうなれなかったときの落ち込みがひどくて、精神衛生上良くありません。「これも運命だ」と引き受けるほうが、ずっと生きやすくなるのではないでしょうか。

サラリーマンとして生きるかぎり、思いがけない異動や出向を命じられることは避けられません。課長や部長になっても、上に人がいて、その指示に従わなくてはいけない。社長にならないかぎり、フォロワーとして生き続けなくてはいけないのです。だったら、「自分の行く先は会社が決めれば良い」と腹をくくるしかないし、そのほうがずっと気楽です。

世の中には、ひとつの部署で、ずっとキャリアを積む人もいます。会社には、そういう人材も必要だからです。一方で、私のように、「いろいろなことを少しずつ知っている」という人間も必要です。多様性のない会社は成長できませんから、いろいろな特徴を持つ人がいなければならないのです。「スペシャリストとゼネラリストのどちらが有利か?」などと不毛なことは考えず、与えられた仕事で成果を出すことだけを追求してください。

何度か異動を経験したということは、会社はあなたを評価しているのだと思いますよ。会社が社員を異動させるのは、さまざまな経験を積んで成長し、会社に貢献してもらいたいからです。つまり、社員を異動させるのは会社のニーズであり、戦略なのです。だから、辞令が出たら、「これは会社が自分に求めていることなのだ」と素直に受け入れて、その波に乗っていけば良い。すると、結果的に、会社に必要とされる人材になれるはずです。

資格を取得しても、会社の仕事に直接役立つことはほとんどありません。向上心から勉強がしたいのなら止めませんが、「資格を取れば専門性が高まる」などと期待をしてはいけません。それよりも、目の前の仕事に真面目に取り組み、成果を出すよう努力していれば、心配しなくても、必要な程度の専門性は得られるはずです。

それぞれの部署で仕事をしていくうえで、一定の知識は必要でしょう。でも、業務の中で知識が求められるのは、ほんの1割か2割程度のもの。それよりも圧倒的に求められるのは「人間性」です。仕事はコミュニケーションと信頼関係の連続で成り立っています。それは、営業だろうと、総務だろうと、経理だろうと同じです。経理の知識がいくらあっても、コミュニケーション能力に欠けていて、他人から信頼されないようでは、仕事になりません。

私はいつも、「リーダーになるのは、幼稚園で教えてもらったことがきちんとできる人だ」と言っています。「嘘をついてはいけません」「仲間外れを作ってはいけません」「間違ったことをしたら、ごめんなさいと言いなさい」といった教えを守れる人であれば、たいていの仕事はやれてしまうということです。

そもそも不測の事態と思うこと自体が間違い。ビジネスは予測のゲーム。常にあらゆるケースを予測して、予測の精度を高めるよう努める必要がある。真に不測の事態を減らしていくことが大切。

上司は志を持つべき。部下が仕事にやりがいを持てるロマンを語るんです。向かうべき方向性を示す。私が課長になったときは「課全体が定時帰宅」です。言葉だけでは人は動かない。そのためには、業務を極限まで効率化させる努力をしました。「長時間労働はプロ意識の欠如」など仕事の進め方をまとめて、部下に発信し、徹底するように努めたんです。その志にみんなも従ってくれ、定時帰宅を実現しました。

きちんと釈明するときにもコツがあります。大慌てで否定したり、取り乱したりして火消しに走らないこと。上手にやり過ごすためには、噂のピークが過ぎるのを待ち、ワンテンポ置いてから淡々と落ち着いて説明するのが得策。そのほうがはるかに信頼されやすく、ムダな火の粉を浴びずに済む。

今の若い世代には「媚びるのは嫌」という人が増えています。上司にゴマをするなんて、みっともないし品もないと思っているようです。でも私はそうは思いません。そういう人は、何のために仕事をしているのか考え直してみるといい。究極的には自分のため、自分が幸せになるために汗水流して働いているはずです。そうだとすれば、仕事をうまく進めるために上司のご機嫌取りひとつもできない人は、要は自分の幸せを追求していないのだといえます。

私は営業課長に着任する前、当時社内で「営業のプロ」とか「営業の神様」といわれていた5人の先輩社員にお願いし、事前に営業の心得を学ぼうと努めました。そのとき諸先輩方から教わった「心得」は、意外にも自分の前職とも共通する話が多かったのです。お客様との約束は必ず守るとか、クレームが発生したら直ちに連絡するとか、基本的なことばかり。営業といっても、ビジネスパーソンとして大事にすべきことは何ら変わらない。

長い会社人生の中で、私を最も引き上げ出世させてくれたのは、当初は私をひどく嫌っていた上司でした。その人はとにかく気難しくてとっつきにくい。でも仕事は抜群にデキる人でしたから、文句のつけようがありません。その上司に嫌われていたのは、私が上司に対しても物怖じせずに直言するタイプだったから。要は仕事の流儀の違いです。定期的な業務報告はもちろん、徹底的にコミュニケーションを図り、上司が何を望んでいるのか把握するよう努めました。こちらが必死になって食らいつき、上司の意に沿う働きぶりを見せれば、さすがに徐々に認めてもらえるようになります。

上司に嫌われないに越したことはありませんが、仮に一度嫌われてしまっても、ぶつかっていけば挽回も十分可能です。まずは「私のどんなところが悪いのでしょうか」と、嫌われている原因を探りましょう。「一緒に仕事をさせていただくのに、嫌われていたらやりにくいのです。教えてください」とバカ正直すぎるくらいで構わない。思い切って懐に飛び込み、真摯に向き合えば、何かしら突破口が開けてくるものです。

私は入社以来20年問、企画や管理業務に従事した後、いきなり営業の課長に任命されました。着任前、私に対する悪い評判が聞こえてきた。新たに部下になる社員たちに「営業を何も知らない課長が来るらしい」とバカにする気持ちがあったのでしょう。そこで私は着任するなり部下たちにいった。「営業のことは皆さんのほうがよく知っているはず。教えてください」と。

もしも身に覚えのない疑惑をかけられた場合は、きちんと弁明しておかないと大変なことになります。ただし、周りの全員にわかってもらおうとしなくてもいい。たとえ「何かやらかしたらしい」と噂されても、直属ともうひとつ上の上司にだけは理解してもらえるように努めること。それ以外の人は大して影響力を持っていませんから。

私は30歳を過ぎた頃から、目下の人でも必ず「さん」付けで呼ぶようにしてきました。新入社員に対してもそうです。若い人でも私より優れたところがある。年を取っていても、私のほうが得意なこともある。それぞれに違う得意分野を持っているわけですから、業務で成果を挙げるには、相手をリスペクトして、強みを引き出してあげないといけない。

部下にバカにされていると感じたとしても、自分の思い込みということも多々ある。あまりに縦の関係に縛られるあまり、上司が過剰反応しているのです。裏を返せば「上司なんだから尊敬されて当然だ」という驕りともいえるでしょう。部下も対等な人間だと思っていれば、バカにされているなんて疑心暗鬼になることはないはず。

日本の製造現場では生産性を上げるための工夫が日々こらされ、マニュアル化も進んでいます。ところが同じ企業でもホワイトカラーにはマニュアルはなく、新人が入ってきても、先輩が「おれのやり方を見て覚えろ」と言うだけ。これでは若い人は育ちません。みんなでもっと議論して、それぞれの会社の実態に即した仕事マニュアルをつくり、生産性を高める意識を共有すべきなのです。それは誰よりも経営者が考えるべきことです。

もともと私は課長になってからは仕事のやり方を工夫し、残業はほぼゼロに抑えていました。自分はもちろん、部下にもいい習慣を身につけさせることで、時間あたり生産性を高めたいと考え、新しい部署に着任するたび、自分でつくった「仕事の進め方の基本」という10か条のマニュアルを配布しました。まだ管理職になる前、「自分が課長になったら、絶対にこれをやろう」と考え、何年もかけて練ったものです。

出世の妨げになりかねない家族の問題を、会社に申告すべきかどうかの判断からして大変難しいものでした。最初は言い出せずに一人で抱え込んでいましたが、周囲に打ち明け会社に申告したら、とたんに物事がスムーズに運ぶようになりました。職場の協力、親族や地域のコミュニティの助力がなければ、仕事と介護は両立できません。まずは問題をオープンにして、周囲に協力を求めるべきなのです。

私は部下だろうと後輩だろうと社内の人間はすべて「さん」付けで呼ぶようにしていました。会社で部下を持つようになると、名前を呼び捨てにする上司が多い。けれど職務が上司なだけで、人として偉くなったわけじゃない。本分は、部下に思いっきり働いてもらうようマネジメントすること。なのに上から目線で指示されたら、部下は「この人のために頑張ろう!」なんて思うはずがない。

わざわざ言葉にしなくても「わかっているはず」と都合よく思いこんでいませんか? すれ違いをなくすためには自分の考えをきちんと伝え、相手の話をしっかり聞くことが必要です。そんな簡単なことかと思いますが、実際に仕事の現場に置き換えてみると、そんな簡単なことができていないということに気づくはずです。安易な思いこみはあなたを違う場所に連れていき、ムダを生みます。要所要所で立ち止まり、コミュニケーションをとるという手間をかけることが、なによりも大切なんです。

部下に仕事を頼むとき、ただ作業内容を伝えているだけ、なんてことはありませんか? これでは頼まれたほうは考えることもなく作業をこなすだけなので、実になりません。大事なのは部下が仕事を始める前に、何のための仕事なのかを明確に示した上でゴール(目標)をきちんと設定させること。これを怠ると、部下はヤル気もやりがいも、達成感すらも得ることができません。

課長の仕事とはなんでしょう。人を動かすことです。部下だけではありません。関係部署や取引先を動かすのはもちろん、上司をも動かさなければなりません。そんなとき、仕事に関わるすべての人たちの幸せのため、部下の成長のために本気で取り組んでいることが伝わらなければ、信頼できる味方は得られません。

私は「部下力」をつけることを勧めたい。部下力とは、チームの一員として上司とうまくやっていく能力です。具体的には大きく3つあります。「上司の注文を聞く」「上司の強みを生かす」「上司によってコミュニケーションの仕方を変える」。

上司は様々です。すぐ報告に来ないとイライラする上司や、のんびり構えている上司、文書で提出させる上司もいれば、口頭で連絡してほしい上司もいる。その上司のタイプを把握して、個々に合ったコミュニケーションを取る必要がある。

選択肢と自分なりの意見、理由を添えて、お伺いを立てるといい。そうすれば上司は「それでいけ」とスパッと答えを出してくれます。上司は考えるのが面倒くさいのです。それに部下が一生懸命考えて「Aでいきたい」と言うなら、よほどおかしくない限り、ゴーサインを出しますよ。

上司にもそれぞれ得手不得手があって、誰でも強い分野があります。それをできるだけ活用するのです。例えば、いつも素晴らしいアイデアを出す上司には、「ぜひ私の企画に部長のアイデアを頂けませんか?」と聞く。そう言われたら、どんな上司だっていい気分になります。自分が一番得意とするところを分かっていて、それを利用しようとする部下はカワイイものですよ。結果として、その部下は仕事がやりやすくなります。

上司に報告・相談する時は、必ず文書で持っていくこと。人間というのは、事前に予告されると安心するんですよ。私は営業部の課長をしていた時に、部長に2週間に1度、30分間のアポイントを求めていました。部長が最も余裕のある日時を選んで、定期的に報告と相談をしていた。これ、ほとんどの人はしていませんね。アポを取る際は、必ず用件を文書にして出しました。

チームで仕事をしていれば、後輩や部下がいるでしょう。最初に彼らと「今年、何の仕事をやるか?」を議論して列挙していきます。それを優先順位の高い順番に並べて、上司のところへ行く。「私たちはこのように考えますが、部長はどう思いますか?」すると上司は大抵、別のことを言いますよ。「キミ、これは優先順位が違う。3番目に挙げているのは大した仕事じゃないから10番目に落としなさい。8番目の仕事を3番目に上げなさい。それと、ここに挙げていないけれども、この仕事を入れなさい」とかね。つまり、上司の注文を聞くわけです。それから仕事をスタートすればムダがなくなりますよ。当然です。部下とも上司ともネゴったんだからね。

上司に恵まれているという人は、そう多くないと思います。会社で仕事をしていくということは、理不尽なことを引き受けるということです。会社にいる以上、不愉快なことが山ほど出てくるのは当たり前のこと。ですから、その中でどうすれば楽しくやっていけるかを考えるべきでしょう。

サラリーマンには理不尽なことが多い半面、恵まれている面もたくさんあります。決められた時間だけ働けばいいし、休日もある。月々決まった給料がもらえて、退職すれば退職金までついてくる。農業や自営業の人たちからすれば、うらやましい限りです。そんな恵まれた環境で働いていることを自覚できれば、理不尽さも前向きに受け止められるのではないでしょうか。

サラリーマン人生では、上司とそりが合わずに辛いという困難にもどこかで直面するでしょう。私自身も上司と衝突して左遷された経験があります。当時、同期の中で最初に取締役に選ばれていましたが、いきなり正規ルートを外され、社員30人の東レ経営研究所の社長になれ、という人事がくだりました。当時はトップを目指していたので、とても悔しかった。しかし、左遷先の東レ経営研究所では社長です。ほどなくして、部下に仕事を任せれば、自分の時間がいくらでもつくれることに気づきました。その頃、初めて執筆した本が10万部ほど売れ、やがて次から次へと出版や講演の依頼がくるようになりました。今、私が定年を過ぎてもこうして好きな仕事を続けていられるのは、そのときの人事を真正面から受け止めて置かれた場所で咲いたからです。

自分の考えはコントロールできても、他者の考えをコントロールすることはできません。他者の考えることを、あれこれ不安に思ったり不快に思ったりしても、一向にらちがあきません。ですから職場の噂話も、気にする必要はありません。したい人にはさせておけばいい。あなたが間違ったことをしていないのであれば、自信を持てばいいのです。真実はいつも一つ。たとえ職場で悪い噂が広がったとしても、あなたが真摯な人間であれば、周囲の人たちは「あの人はそんなことはない」とわかってくれるでしょう。

相手からの評価が悪くなったら、評価されるように改める。単純化して考えれば、ただそれだけの話であり、萎縮してやらないことはもったいない。私もかつて東レで営業を担当していた頃に、大きな失敗をしたことがあります。誤って強度の低い糸を出荷してしまい、そのことに気づいたのは、取引先がその糸で製品をつくってしまった後でした。聞いたその日に私は取引先のある熊本まで飛んでいき、正しい糸を無償で提供することと、誤った糸でつくられた製品をすべて買い上げることを取引先の社長に伝えました。すると、その対応の早さを社長に気に入ってもらえて、取引量を拡大することができました。

働く意義がぼやけていると、心が折れやすくなる。本来であれば、社会に出る前に家庭や学校で働く意義を教えていればいいのですが、そのケースは稀。だから、今の新入社員や若手社員は叱られると萎縮し、すぐにダメになってしまう。彼らには、仕事を教える前に、まずは働く意義から教える必要があるのです。そうすれば、ピンチがチャンスであるということにも気づけるはずです。

「社内を見渡せば、自分より能力が優れた人がいるかもしれません。しかし、それを見て凹む必要はない。100メートル走にたとえると、10秒で走れるのは社長クラス。同じ部署の同僚なら、せいぜい14秒で走れるか、16秒で走れるかという程度の違いしかありません。ところが開き直りが下手な人は、2秒程度の差を5~6秒に大げさにとらえてしまい、自分は圧倒的に能力が足りないと思い込んでしまう。これはもったいない話。そこで違いは2秒しかないと冷静に見極めることができれば、けっして追いつけない差ではないことに気づくはずです。

私が残業ゼロ改革を始めた頃は、周囲から「あいつはおかしなヤツだ」という目で見られていました。でもそのうち、「佐々木さんの部下になると、残業せずに早く帰れるし、みんな昇格できるらしい」という評判が広まっていった。私は労働時間の削減だけでなく、部下を昇格させるための社内的な根回しにも全力を尽くしましたからね。すると私がどの部署に異動になっても歓迎され、私が何も言わなくても、部下たちが残業を減らそうと努力や工夫をするようになったのです。だから働き方改革を潰されるどころか、むしろ仕事はどんどんやりやすくなりました。

中間管理職が自分のチームの働き方を変えるには、上司と密にコミュニケーションをとることがカギになります。私は管理職として異動になるたび、着任してすぐ直属の上司のもとへ行き、「私はこのようなやり方で残業を減らしますが、結果はきちんと出します」と宣言しました。さらに、節目ごとに上司への報告を欠かさず、「着任から3か月で残業は60時間から30時間に減りましたが、業績は上がっています。そこで次は、20時間まで減らしたいと思います」とこまめに現在の状況を伝えたのです。すると上司も「残業は減っているが、ちゃんと結果は出ているから、手を抜いているわけじゃないんだな」とわかる。そうすれば、私のやり方にも口を出さなくなります。新しいことをやりたいなら、自分の上司と丁寧にコミュニケーションを取り、信頼関係をつくることが重要です。

仕事しかない人生を送ってきた人は、定年を迎えた瞬間に何もかも失います。その後に待っているのは、寂しい老後です。私はそれが嫌だったから、管理職時代から毎日夕方6時に退社し、病気の妻の看病と3人の子供の世話をしながら、家族ときちんと向き合ってきた。家族だけでなく、会社以外の友人や地域社会とのつながりも大事にしてきました。70代になった今、そうした人たちとの横の結びつきが、私にとって非常に大きな財産になっています。

佐々木常夫の経歴・略歴

佐々木常夫、ささき・つねお。日本の経営者。東レ経営研究所社長。秋田県出身。東京大学経済学部卒業後、東レに入社。繊維企画管理部課長、営業課長、取締役などを務めたのち、東レ経営研究所へ移り、社長を務めた経営者。大阪大学客員教授なども務めた人物。主な著書に『「本物の営業マン」の話をしよう』『そうか、君は課長になったのか。』『部下を定時に帰す「仕事術」』など

ページの先頭へ