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伊坂幸太郎の名言

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伊坂幸太郎のプロフィール

伊坂幸太郎、いさか・こうたろう。日本の小説家。千葉県出身。東北大学法学部卒業後、システムエンジニアとして働きながら小説を執筆。『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞、『死神の精度』で日本推理作家協会賞短編部門、『ゴールデンスランバー』で山本周五郎賞を受賞。

伊坂幸太郎の名言 一覧

みんなが持っている先入観がいつも気になるんですよね。先入観が世の中を面白くするし、難しくする。何か事件やスキャンダルが報道されると、「あんな人とは思っていなかった」とか「あいつが悪いに違いない」とか声が上がります。僕自身も大いに影響されてしまう方です。でも、背景の事情を知って思い込みが変化することもある。


悲しいことが起きてもトータルで見れば読後感が暗くならないようにしたい。それが僕の構成というか、小説としてのやりたいことです。あとは、やはり物事がフェアであってほしい、という気持ちが作品に影響するんですね。


たしかに僕は「いやー、これはわかんないですね」というのをよく書きますね(笑)。「わからない」という言葉ばかり出てくる。僕の場合、長編小説は自分のためのカウンセリングみたいなところがあるから「自分は今こういうことに関心があるんだ、わからないんだ」というのが出てくるんだと思います。


僕は新作の度に試行錯誤をしているんですけど、その末にゴールがあるとも思われている節もあって。いつか伊坂幸太郎にとっての完全な小説ができるんだろうと思われると、けっこうつらい。毎回、今度は赤色で塗ってみよう、次はこういうふうに切ってみよう、と。その試行錯誤自体が、僕の仕事であり、作品で、小説を書く喜びでもあるから。その末になにか大きな到達点があると思われてしまうと、申し訳ない気がしてしまいます。


小説の中で描かれたような事態についてどう考えればいいのか。実は、僕自身答えが出せていないんですよね。ただ、その難しさをそのまま受け止めた方がいいとは思っています。一件ごと、一人ずつ見て「この場合はどうなんだろう」と考えた方がいい。それをひとまとめにして「これはいい。これはダメ」と言い切っちゃうことには恐怖と抵抗を感じますね。


いまの僕には、直に伝わる温かみのある反応が一番のモチベーションになるので。この前も5歳になる息子が、仙台の本屋で僕の本に気づいて、どこでどういう判断をしたのかわからないのですが、「ふーん、けっこう売れてるんだね」と言っていたとか(笑)。お父さんは一応、書く仕事をしているというイメージはできているみたいで。僕としては、子供がもう少し大きくなるまでは頑張っていたいなと、切に思います。でも、妻は「すごい父親ってのは鬱陶しいだけだから、思春期の時は落ちぶれているぐらいがちょうどいいと思うよ」って(笑)。「お父さん、こう見えて、昔は作家だったのよ」「ウソだ」と言う中学生の息子の前に、本を引っ張り出してきて「ほら」みたいな。そんな妻のビジョンを裏切っていきたいですね(笑)。


『バイバイ、ブラックバード』も、僕にとって新たな試みでした。「ある日、小説がポストに届いてたら、届いた人は楽しいに違いない」という編集者の思いから発案された「ゆうびん小説(執筆した連作小説を章ごとに読者の自宅に郵便で届ける連載方法)」。企画を最初に聞いたのは、2年半ぐらい前のこと。すぐに、それはすごくいいなと思ったんです。最近、家に帰って郵便ポストを開けた時、ワクワクすることって少ないですよね。今日もチラシとダイレクトメールばっかりかと思うことも多い。もし、そこに好きな作家から小説が届いたら、すごくハッピーだな、と。その人が「今日はいい日だ」と思ったら、その日1日ぐらいは周りにやさしく接するかもしれないじゃないですか。世界は普段通りに動いていても、封書の届いた家だけは温かな雰囲気が漂う。そういう変化は、小説を書いて100万部売れたとしても、そうそう起きるものではないと思うんですね。抽選で50名に書き上げたばかりの短編小説を届ける。この50人という規模にも意味があったと思うし、世の中的には全然影響がなくとも、小さい宇宙では何かが起きていくかもしれない。僕は、この企画のそんなところに惹かれました。そして、実際にやってみると、思った以上に楽しかった。送った小説には感想用ハガキが封入されていて、読者から直に感想が届くんです。月刊誌の連載なんかだと、ほとんど反応は見えないので、このゆうびん小説は書くモチベーションを保つのによかった。


幸い、いまは読者の数も増えて、新作を出すたびに多くの人が買ってくれて、「今度は良かった」「今度のはつまんない」と返してくれる。でも、いまもどんな反応があるか怖いですよ。デビューして10年が経ち、永遠に不安や怖さは変わらないという意味では慣れてきましたけど。それでもたまにアマゾンを覗いて、「面白かったけど、伊坂幸太郎にはもっと期待しているから2つ星」なんて書いてあると……いやいや、勘弁して下さい。面白かったならいいじゃないですか、と(笑)。ここ数年、周囲の期待がインフレ的に高まっているような、被害妄想を抱いています。でも、僕よりもよっぽどスゴい小説を書いているにもかかわらず、読者の反応が少ない人もいるわけで。この状況は幸せだと理解しています。


会社を辞めたのは『重力ピエロ』を書いていた頃。「この作品を満足のいく形に完成させないと一生後悔する」「これを書き上げれば作家としてなんとかなるんじゃないか」と。あやふやな直感を信じて、賭けてみました。でも、辞めてすぐは先行きはまったく見えないし、不安で心細くて。朝は必ず仕事へ行く妻と一緒に外へ出てました。そうしないと仕事をしてない自分は、社会と接続していないんじゃないかと不安で。サラリーマンだったので、一定のリズムで生活し、仕事をしているかのように外出するっていうのは自分にとって、大事なことでした。当時の仕事場はドトールと図書館。とはいえ、お金もないし、1杯180円のコーヒーでどれだけ粘れるか……みたいな。図書館に通う日は、朝から浪人生と一緒に並んで場所取り。エアコンの効いている席で書きたいなと思う一方で、オレの人生どうなるんだろう? と我に返ったり。不安だけが先行して、胃腸を壊した時期もありました。そんなふうに仙台の街をぐるぐると歩きながら書いた『重力ピエロ』は出版されると、徐々に評価されて発行部数も伸びて、これで作家としてやっていける、というわけではなかったですけど、本当に嬉しかった。


結局、会社には7年勤めました。仕事は楽しくもあり、きつくもあり。僕はプログラマーを勘違いしていて、人と接する機会は少ないと思っていたんです。ところが、実際はお客さんとの交渉や折衝、内部のプログラマーとの調整……むしろ人間関係は濃厚で。本当に勉強になりました。漫画に出てくるようなイヤな人って、世の中にいるんだなと実感したり(笑)。平気で嘘をつく人とか、まったく仕事をしなくても罪悪感を持たない人がいるんだなとか。納期も過ぎたのに、平気で帰っちゃうし、とがめても「何か悪いことした?」みたいな感じで。小説のキャラクターに投影したことはないですけど、社会人経験を積めたのは大きいと思っています。学生時代はイヤな人とはつき合わなくてよかったけど、仕事をする時には絶対に必要。いい経験でした。しんどかったですけど(笑)。


これは作家によると思うんですが、僕は(登場人物の)履歴書を準備しないし、小説の中では「見えているところだけ見えていればいい」と思っています。だから作品を映像化されたときに、自分が書かなかった設定ができたり、スピンオフのエピソードを作りたいと言われたりするとすごく違和感があります。それが嫌なわけじゃないし、つじつまを合わせようとしたらきっとできるでしょうが、省略された部分も作品の一部ですから、ない部分を書かないことも大事だと思っているんです。


「いろいろあったけど最後は幸せになりました」だと、僕は辛くなってしまうんです。フィクションだから全部嘘の話なんですが、ちょっと綺麗すぎる。死んだ人は生き返らないし、会えない人はやっぱり会えない。人生はそういうものなのだけど、それでも上を向いて生きていくことはできる、みたいな話にしたいというのはありますね。


伊坂幸太郎の経歴・略歴

伊坂幸太郎、いさか・こうたろう。日本の小説家。千葉県出身。東北大学法学部卒業後、システムエンジニアとして働きながら小説を執筆。『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞、『死神の精度』で日本推理作家協会賞短編部門、『ゴールデンスランバー』で山本周五郎賞を受賞。

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