仲暁子の名言

仲暁子のプロフィール

仲暁子、なか・あきこ。日本の経営者。ビジネスSNS「ウォンテッドリー(Wantedly)」創業者CEO(最高経営責任者)。千葉県出身。京都大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券、フェイスブック日本支社などを経てフューエル(のちのウォンテッドリー)を設立。

仲暁子の名言 一覧

世の中は「多様」です。いろいろな視点、角度から物事を検証する。働き方を考えるうえでもそんなスタンスが大切なのではないでしょうか。


海外の経営者たちは見ている世界や思考のスケールがとにかく大きい。逆に目先の売り上げばかりを気にする、日本人がなかなか世界で勝負できないのは、そんな視野の狭さにも大きな原因があるように思います。


何か指示をする際、理由も示さず「とにかくやれ」では彼らは動きません。逆に、目の前の仕事が世の中にどんなインパクトを与えるか、なぜ今その仕事をしなければいけないのかと、筋道を立てて丁寧に説明すると、納得して動いてくれる。


私自身は、会議などの場で「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」の視点で聞くように意識しています。新入社員の意見でも、それが納得できるものなら、きちんと受け入れます逆に、ロジックが通っていない意見や、背景にあるデータや引用が曖昧な場合は、誰の意見であろうと採用しません。


本を選ぶ際、重要視するのは信頼性。研究やデータに墓づく、定量的裏付けのあるものを選びます。信頼性の高い情報を知識として蓄えることが、仕事をするうえでも有意義だと感じています。


私たちの普段の行動は常識に強く影響されがちですが、実はその常識は、地球誕生からの長い歴史に照らせば、ほんの一瞬の間にたまたま作られたものに過ぎません。貨幣や資本主義、国家といった概念でさえ、人類が生きる知恵の1つとして生み出した人工物に過ぎないと思えば、常識を疑うことに躊躇はなくなります。


「言葉の使い方や言い回し」「人間の思考や行動パターン」など、自分の中の引き出しを増やすうえでも、読書はとても役立ちます。会社の仲間たちにも、どんどん本を読み、引き出しを増やしてほしいから、会社のロビーにも本棚を設置しています。


読む本は、いわゆるノウハウ書より、生物や歴史、宇宙などについて学者や研究者が書いたものを選ぶことが多いですね。ビジネスとは異なる世界について知る方が、自分の「物差し」を広げられる気がするからです。


これまで私が目指してきたのは、「結果を出すリーダー」です。嫌われることを恐れず、必要と判断したら、厳しいことも口にする。嫌われることがリーダーの仕事だといっても過言ではないと私は思います。


「ハードワークはもう時代遅れ」という論調が目立ちますが、一方で、「イノベーションは濃密なコラボレーションからしか生まれない」というのも真理だと思います。米アップル社のiPhoneのような世界を一変させた革命的製品は、チームが物理的に同じ空間で濃密な時間を共有し、膨大なハードワークを積み重ねた上に成り立っています。


働き方改革で重視すべきだと思うのは、それぞれの個人が「その働き方でハッピーかどうか」。一律に、「この時間になったら、とにかく仕事を終わらせて家に帰りなさい」という以前に、それぞれが追求する働き方、多様なライフスタイルを実現することが大事だと思います。


特に書店で定番になっているようなロングセラー本は、読み継がれているだけあって信頼が置けます。個人がインターネットで簡単に情報を発信できるこの時代だからこそ、幾重もの編集過程を踏んで作られた本の価値は高い。良書に出会えると、「世の中を読み解く地図」を手に入れたような気持ちになります。


良書を読めば、思考の「自由な物差し」が手に入ります。「○○すべき(○○であるべき)」といった、刷り込まれていた常識から抜け出して、真っ白な状態でものを考えられるようになる。これは「アンラーニング」と言って、思考の柔軟さを維持するうえで、とても大切な学習行動です。読書はアンラーニングのいいきっかけになるということですね。


私が心がけてきたのは、「とにかく地道に言い続ける」こと。歯磨きを毎日きちんと続けていれば、歯は輝きを保つことができるし、虫歯も防げます。社員とのコミュニケーションもそれと同じ。地道にコミュニケーションを取り続けることで、長期的に会社は繁栄する。怠ると、衰退する。そういうことです。


ビジョンやカルチャーを共有するためには、言葉の選択がとても大切です。当社の社是は「シゴトでココロオドルひとをふやす」。「高い生産性で働く人口を増やす」とも言い換えられるかもしれないけど、この表現で人の心に響くかというと、そうではありません。


ネットの世界では、7~10年に1回の頻度で大きな波が来て、何もかもがリセットされると言われています。当時はスマートフォンやSNSが普及する直前で、「巨大な波がもうすぐ来る」と言われていた。「やるなら今しかない!」と、フェイスブックを半年で辞め、実名制のQ&Aサイトを立ち上げたのが、当社の出発点です。


大学に進んでからは、思いついたことに次々とチャレンジしました。立ち上げが得意な半面、育てるのは苦手で、悪くいうとやりっぱなしみたいな感じでもあったのですが、世の中、立ち上げる人の方が希少価値が高いということが分かってきたのもその頃です。


フェイスブックが成功した理由はいろいろありますが、最も大きいのは、ユーザーのことを考えていたからじゃないでしょうか。ユーザーの体験を損なわないように、広告を出すことをギリギリまで遅らせた。ユーザーに嫌な思いをさせたくないという信念が、支持につながったと思います。


いまは共感が情報を統制する時代。ウォンテッドリーが最初に給料を書かないのも、共感の時代だから。最初にお金の話が出ている情報より、「こういうことを実現したい。だからこういう人を探している」といった情報のほうが共感を得やすいです。


優秀な方がまわりにたくさんいて、とても刺激になりました。ただ、仕事をゼロイチ(0から1)とイチジュウに切り分けるとすると、私はゼロイチのほうが性に合っていたので、すでにある仕組みを回すことが中心の仕事に物足りなさはありました。

【覚え書き|ゴールドマン・サックス証券時代を振り返って】


最近、人生100年時代と言われるようになりました。そうなると企業の寿命より人間の寿命のほうが長くなって、終身雇用ではなくなっていく。一社で人生が終わらないなら、社内外でつながりを育てて持ち歩いていくことが求められます。ウォンテッドリーでそれを担保できればいいなと考えています。


育て方としては、「思い切って任せる」のが一番いいと私は思います。主幹事業で派手に転ばれるのは辛いので、まずはサイドプロジェクトから。小さく転べる余裕を残し、自分で気づきを得ながら学んでもらう。言われたことをこなすことより、自分自身で考え、行動し、成否にかかわらず何らかの結果を出すことにやりがいを感じるタイプが多いこの世代には、このアプローチが特に効果的な気がします。


一度手に入れた大企業の席を手放すことに不安がなかったというと嘘になります。毎月振り込まれる給料がなくなって、やっていけるのだろうかと怖かった。でも、考えてみれば高い給料が私に必要かというと、そうではありませんでした。


ウォンテッドリーが他の求人サイトと違うところは2点あります。1点目は、給料や福利厚生が書いてないこと。2点目は、いきなり履歴書を出して面接ではなく、まず会社に遊びにいって、コーヒーとかランチをしながらお互いのことを話してもらいます。恋愛にたとえるなら、いきなり結婚するのではなくて、まずデートから入りましょうと。お金は大事です。でも、給料を入り口にするのではなく、デートして気に入ったら話し合ってもらえばいいかなと。結婚でもお金は重要ですが、最初に年収から入るとやっぱり失敗しやすいですよね。まず相手を好きかどうかで選んで、それから条件のすり合わせをしたほうがいい。


母は心理学者です。学者は基本的に儲かりませんが、母は好きな研究をずっとやり続けて、40代以降になってようやく社会的地位や経済力がついてきた。そういう姿を見てきたので、私も好きなことをやり続けていたら、たとえいまお金にならなくても、いつか報われるんじゃないかと。母というモデルケースがあったおかげで一歩踏み出せました。


学園祭といえばミスコンが目玉の一つですが、いざ入学すると京大にはなかったので、1年生のときに自分で企画しました。結果的には開けなかったんですけど……。会社やウエディングドレスの会社から協賛をとりつけました。そうしたら、学園祭を取り仕切っている全学連から「資本主義の介入だ」と反対されまして。さらにフェミニストの団体からも「コンテストは性の序列化だ」「性の商品化は許さない」と抗議が。話し合いをしたのですが、断念せざるをえなくなりました。多様性ですね。世の中いろんな視点があるんだなと勉強になりました。


ゼロからイチをつくるのは昔から好きです。大学でもミスコンを企画したり、フリーペーパーをつくったりしていました。慶應義塾大学の友達から、「うちの大学では、楽勝科目の履修情報をまとめた『リシュルート』という雑誌が500円で売られている」という話を聞きました。それは面白いと思って京大版をつくりました。ただ、京大は慶應と比べて学生数が少ないので、販売しても元は取れない。だから地域の居酒屋などにスポンサーになってもらって、クーポンをつけて配りました。リクルートの『ホットペッパー』と同じビジネスモデルなので、名前はそれをもじって『チョットベター』。ありがたいことに、いまでも続いています。


クチコミの速度も加速度的に高まっています。いい仕事をすれば、さらにいい仕事につながるチャンスに恵まれやすいという意味では良い時代になったと言えるのですが、こうした流れは個人にとっては諸刃の剣でもあります。なぜなら、マイナスのクチコミも広まりやすいから。いくらマーケティングだけ頑張っても、提供している商品やサービスの品質が劣るなど顧客に価値を提供できないモノは、悪評がすぐに広まります。真の意味で「日々の地道な努力がモノをいう」時代がやってきています。


米国の社会学者、グラノヴェッター博士は、日頃から密に接している同僚や親しい友人といった「強い紐帯」より、知り合いの知り合いなどの「弱い紐帯」の方が、魅力的な転職先情報など、新規性が高くて価値ある情報を提供しやすいという仮説を発表していますが、実生活でも腑に落ちる人は多いのではないでしょうか。「弱い紐帯」をうまく構築できるかどうかが、今後のキャリアアップの成否のカギとなっていきそうです。


人の寿命が100歳まで延びると言われる「人生100年時代」には仕事に対する価値観も変わっていくはずです。仕事人生が60歳で終わるなら、ストレスが多い職場でも何とか耐えられるかもしれません。ただ50年、60年と長く仕事を続けるには、我慢やストレスは大敵。給与の多寡より、自分が心から納得できて、心躍る仕事を本気で追求する。そんな価値観がメインストリームになっていくのではないかと予測しています。


最近、こんな出来事がありました。当社では、サービスの改善スピードを上げるために、現場のメンバーにかなりの部分まで裁量権を与えているのですが、ある日、サイトの一部の色使いが大きく変わりました。私が「ユーザーにとっては見辛いのではないか」とマネージャーに伝えたところ、担当した20代のデザイナーが部屋に来て、どういう意図でそういうデザインにしたのかをしっかり説明したのです。説明はロジックが通っていたし、会社が目指している方向性とも合致していた。そこまで勝手に考えてやってくれたことに対し、私はうれしくなりました。結果的に、新しいデザインは一部修正しつつも、基本的にはデザイナーの意図を踏襲することにしました。


仕事はアウトプット、読書はインプット。週末は時間を取って本を読み、新たな知識を得ます。経営者は未来や方針を語ることが大切な役割の一つなので、最新の情報に触れることも不可欠。シリコンバレーなど、海外の先端的な拠点で話題の本はだいたい読みます。一方、「古典」も大事にしています。と言ってもそれは何世紀も前の本ではなく、刊行から10年、20年経ても書店に並ぶ現代の本のこと。『影響力の武器』は、そのひとつと言えますね。


母は土日も自宅で作業をすることがありました。朝食後に数時間書斎にこもり、午後になってみんなで出掛けることも多かったのですが、家の中にも仕事を持ち込む、そんな働く母の姿は私にとって自然な生活の一部でした。母が仕事をしている間、私も同じ書斎でパソコンで絵を描いたり、段ボールや紙、テープなどを使ってもの作りに没頭したりしていました。何が言いたいかというと、「子育て中は、仕事を家に持ち込んではいけない」というのも、必ずしも真でない可能性があるということ。使命感を持ち、やりがいを感じながら仕事に打ち込んでいれば、自分が仕事をする姿を見せることは、子供にプラスの影響を与える場合もあると思うのです。


人間は本来、「言葉」以外にも、相手の表情や空間の温度、ニオイなど五感を駆使してコミュニケーションをしています。メールやチャットだけだと、どうしてもコミュニケーションの情報量が格段に落ちます。チームメンバー同士が直接顔を突き合わせながら話すことで生まれる情報量はとてつもなく大きく、付加価値もそこから生まれます。そのことを忘れてはならないと思います。


リモートワークが生産性を向上させる、という論調も画一的なステレオタイプに陥っている気がします。当社も創業期、創業メンバーがそれぞれの自宅でシステム開発を進め、リモートでやり取りしていた時期がありました。でも、どうしても意思疎通が不十分になるため手戻りが多く、毎日オフィスに出勤するスタイルに戻しました。途端に手戻りは激減し、生産性は格段に上がりました。米国は日本よりもリモートワークが一周早く普及していて、今は米IBMや米ヤフーなどを中心に、「フェース・トゥー・フェース回帰」の動きが目立っています。


本人が希望していないのに長く働かせるようなブラック企業はご法度ですが、ワークライフバランスを追求したい人はそうすればいい、思い切り働きたい人は、そうすればいい。何にせよ、大切なのは自分の信念にマッチした環境や企業を選び、自分の好きな仕事をすること。時間の制限を設けようと設けまいと、人は面白くて夢中になれることには集中できるし、高い生産性を保つことができる。アウトプットも良くなるから企業の業績も良くなるという好循環が起こります。


少し残念に感じるのは、日本ではビジネスパーソン同士で「本について語り合う」ような場面があまりないということです。海外では大人が数人集まれば「あの本、読んだ?」「あの一節は最高だった」と盛り上がることがしばしば。特に経営者の集まりなどでは、地球温暖化や人類の未来といった、壮大なテーマについて書かれた本が話題の中心になることが多いですね。


本からインプットしたことや、読んで考えたことなどはエバーノートにメモし、いつでも引き出せるようにしています。こうして書き留めた読書メモが特に役立つのは、本の内容を思い出そうとしたとき。一般に大人になってからの記憶の衰えは激しいといいますが、私、身も本を読んだ後、1年もすると細かい内容をすっかり忘れてしまうことがしばしばあります。その時にこのメモが本当に重宝します。


意外に思われるかもしれませんが、私は本をデジタルではなく、完全に「紙で読む派」です。全体のボリュームや構造を物理的に感じられる「紙の本」の方が、著者の思考をより立体的につかみ取れるように感じるからです。週に1度は書店に行き、好奇心をかき立てられるタイトルを見つけたら買って帰って、週末にゆっくりと読みます。腰を据えて集中して読みたいから、「今週の土曜は読書に充てる」といった具合にあらかじめ時間を確保したうえで臨みます。


会社が成長するとともに、自分が動かせる物事の範囲も広がり、起業当初は100万円の決裁をするだけでもドキドキしていたのに、今は億単位の決断にも慣れました。見える景色も変わり、世の中に対して大きなインパクトを与えられるようになってきた今、新たに意識するようになったのは、社会の課題を解決できるリーダーになることです。よりよい社会を実現させるために、今、私たちがやるべきことは何か。そうした視点で高い目標を設定し、社員たちを適切に導いていけるリーダーになりたいと考えています。


学生時代の私はもっとナイーブで、「人にどう思われているのか」を気にするタイプでした。でも、会社が成長していくにつれ、「どれほど人に好かれようと、結果を出さなければリーダーとして責任を果たしたことにならない」と思うようになりました。高校野球でも強豪校の監督は、選手に厳しいことも言える人が多いそうです。その時は嫌われても、10年後にみんなから感謝されるような監督が絶対に正しい。みんなと仲良くしワイワイ楽しむことが目的なら、単なるサークルだと思います。


例えば日本人なら、玄関に入った時に靴を脱ぐべきか否か、瞬時に判断し、実行できますよね。それは日本文化という「カルチャー」が共有されているから。それと同じで、組織においてもビジョンやカルチャーが明確なら、「うちの会社は、これやらないよね」「こう来たら、こっちでしょ」と、一人ひとりが瞬時に判断できる。リーダーが不在でも高速で自走する組織になります。すると、各自がオーナーシップを持って自律的に仕事を進められるので、やりがいを持ちやすい。「どこに向かって」「どういうふうに」走ればいいかを全員が分かっている組織って、本当に強い。


週に1回、様々な部署の社員3人と私がミーティングルームでランチを食べながら話をし、社員たちの質問に答える、という「カルチャーランチ」を実施しています。経営陣やマネジャーとメンバーの間の「縦の断絶」、そして、異なる部署問の「横の断絶」を解消するという2つの狙いによるものです。組織の問題って、意外と勘違いによるものが多いので、コミュニケーションの総量を増やせば問題は必ず解決できる。そう信じ、いくら多忙でも続けている習慣です。ビジョンやカルチャーが浸透していくとともに、組織の意思決定スピードが格段に上がってきたのを実感しています。


「やってよかった」と心から思うのは、「何のために仕事をするのか」を言語化し、会社の方向性を明確にしてきたことです。まず、ウォンテッドリーという会社が成し遂げたいこと(ビジョン)と、ウォンテッドリーはこうあるべきという「カルチャー」を明確に定めました。そして、ビジョンやカルチャーを浸透させることにエネルギーと時間を費やしてきました。


組織で何かに取り組むのは私の苦手分野でした。私には大きな組織を率いる自信はありませんでした。学生時代に仲間と起業したものの、うまくコミュニケーションが取れず組織が崩壊してしまった挫折感が尾を引いていたのです。「自分にはリーダーシップがない」。そんな苫手意識を持っていた私は、起業して1年くらいはマネジメントを避け、コードを書いたりデザインしたりと、手を動かしてプロダクトを作る作業に徹していました。このままでは会社は成長しない、と意識を変えたのは起業から3年目。以来、プロダクト作りからはいったん離れ、経営に関する本を読んだり、同時期に起業した同世代から話を聞いたりして情報を集め、私なりのリーダーシップの発揮の仕方を模索してきました。


当初は、どんな分野の質問でもできるサービスを想定していましたが、「何を聞けばいいか分からない」という声が上がり、本や飲食店など、分野を狭めていく形で、最終的に「人に関する質問」に特化することに。それがさらに進化して、人を探している組織と仕事を探している個人をマッチングするウォンテッドリーを正式にリリースしました。


私が入社した当時のフェイスブックジャパンは、オフィスはマンションの1室で、メンバーは代表・副代表の日本人2人と、米国から来た3人のエンジニアの5人のみ。私はそこに雑用係として参加し、お茶出しから、ガラケー向けのユーザーインターフェースの再設計といった大きなことまで関わり、ネットビジネスのイロハを学ばせてもらいました。何より収穫だったのは、急成長中の組織のカルチャーを目の当たりにできたこと。フェイスブックはエンジニアが中心の会社で、新しいアイデアが出たらすぐにサービスに反映させて世に問う意思決定の速さに衝撃を受けました。


「自立する手段は何でもいい」と考え、高校に入ると時給制のアルバイトを経験したのですが、すぐに違和感を抱きました。時給とは、費やした時間に対してお金が支払われるということだから、どんな仕事をしたかより、経過時間にばかり意識が向いてしまいがち。「早く仕事が終わらないかな」と思いながら1日を過ごすのは、突き詰めると「早く死にたい」と思うのと同義ではないかと。「人生の時間をムダにするような働き方」ではなくて、もっとオーナーシップややりがいを感じられることに時間を費やしたい。そんなことを考えるうちに、起業にも興味を抱くように。京都大学に進んでからは、思いついたことに次々とチャレンジしていきました。


両親は子供にむやみにお小遣いを与えない主義でもあったので、欲しいものは、人形でもオセロでも自分で作りました。「早く独り立ちしたい」という自立心が早くから芽生えていたのは、そうした環境によるものだったと思います。


物心ついた時から、「ゼロイチ(何もない状態から新しいものを生み出すこと)」に夢中でした。両親は大学で働く研究者で、家の中ではゲームは禁止。テレビも1週間に1度しか観ることを許されず、代わりに推奨されていたのが「モノ作り」でした。はさみ、のり、色鉛筆、クレヨン画用紙、段ボールといった創作のための道具は惜しみなく与えられ、壁に絵を描いてもOK。私は炊飯器にも絵を描いていましたが、一切怒られませんでした。おかげで絵はとても好きになり、小さいころの夢は「漫画家」でした。


弱くつながっている人が困っている場合、自分にできる範囲で助けようとする姿勢が大切です。たとえば、自分がメッセージを1本送れば相手が助かることが分かっている場合などは、基本、やるべきだと思います。そしてその際、すぐの見返りを期待するのではなく、純粋な気持ちで人を助けるべきです。こうして、関係を維持していれば、何かあった時に助けてもらえる可能性が高い。たとえば新規の企画を立ち上げた時に、即座に「あの人が助けてくれるかもしれない」と、キーマンの顔が浮かぶ人は強いですよ。いざという時に頼れる「自分のチーム」を構築していくイメージですね。


労働市場の流動性が高まっていくと、雇用の保証は見込めなくなります。だから「転職が当たり前の時代になるのは怖い」と感じる人も多いかもしれませんが、転職が一般的になるということは、自分の能力を生かすことができ、自分が求めているワークスタイルにぴったりの職場を見つけやすくなるということでもあります。日本の企業の数は400万社にも及びます。自分には400万通りもの「出会いのチャンス」があると考えれば、ちょっと楽しい気持ちになりませんか?


仲暁子の経歴・略歴

仲暁子、なか・あきこ。日本の経営者。ビジネスSNS「ウォンテッドリー(Wantedly)」創業者CEO(最高経営責任者)。千葉県出身。京都大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券、フェイスブック日本支社などを経てフューエル(のちのウォンテッドリー)を設立。

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