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上野治男の名言

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上野治男のプロフィール

上野治男、うえの・はるお。日本の官僚(警察)、リスクマネジメント専門家。東京大学法学部卒業後、警察庁に入庁。広島・福岡県警課長、在米大使館一等書記官、兵庫県警刑事部長、内閣官房危機管理等担当室長、内閣総理大臣秘書官、群馬県警本部長、防衛庁教育訓練局長、松下電器産業顧問・法務本部長・常務などを務めた。著書に『リスクの中に自由あり 市民主役社会におけるリスクマネジメント』『現場で生かす リスクマネジメント入門』。

上野治男の名言 一覧

歴史はいくつもの巨大企業・組織の衰亡を見てきましたが、いずれにも共通する原因は、組織に確たる理念がないか、あっても形骸化して、構成員を結束させる大義名分を失い、時代の荒波に抗し切れなくなったことでしょう。理念なき組織は危うい。不正・不祥事の温床になりやすく、その発覚によるダメージで雲散霧消しかねません。


社会には本来、法律より上位の価値観――道徳律や企業倫理があります。法律の抜け道探しに走る法律家を見続けてきたからこそ、私は、倫理道徳に従って行動すべきだとわが身を戒めるとともに、社内に向けても倫理観の重要性を発信したかったのです。


リスクとは、不祥事そのものを意味しない。環境変化、つまり自社と社会とのギャップの広がりに気づかないことこそが、最大のリスクといっていいでしょう。


西欧の法格言が「悪人に対する慈悲は、善人に対する残酷な仕打ち」と戒める通り、企業が大切にすべきは、陰日向なく、コツコツとまじめに頑張る従業員なのです。不正に厳正に対処し、まじめに働く人々が損をしないように、むしろルールを守れば守るほど、個人も、組織も得をするようなシステムを常日頃から構築しておかなければなりません。


行動基準は社会との「約束」であり、企業としてこれだけのことを実践します、と宣言することに意義がある。だから、私には、(策定した松下電器の行動基準を)公にしないなどという考えは毫(ごう)もありませんでした。


企業が倫理規定を公表するようになると、不祥事が起こるたびにその遵守状況が俎上(そじょう)に載せられ、痛し痒しだという声もありますが、とんでもない。守れないようなことを約束するから、批判されるのです。きれいごとや大言壮語ばかり並べるから、後々、苦労するのです。守れない約束をするのは、約束を守るつもりがないのと同じこと。そうした組織風土では、いくら倫理規定を設けても、不祥事や法令違反はなかなか根絶されません。


大切なことは、経営理念を時代に即してどう解釈するか、組織も個人も自らに絶えず問い直す姿勢と実践です。私は松下時代、創業者の言葉の片言隻句(へんげんせっく)がしばしば本意とかけ離れた解釈で独り歩きし、ともすると変化を拒む人々の口実や怠け者の言い訳に使われる危うさを感じていました。創業者の言葉は、本来、変化対応の秘訣であり、常に前進し、改革し続けるための知恵です。困難を突破しようと苦しみ抜いている人にこそ響く指針です。逆に、そこまでの苦労や思慮もないまま現状に甘んじている人には、本意が見えにくい。どの企業の経営理念にも、同じことがいえるのではないでしょうか。


「正直こそ商売の要」であり、「道徳は実利に結びつく」ことが明らかなのは、ほかでもない、創業者(松下幸之助)が示されている通りでしょう。ところが、松下電器でも残念なことに、私が法務本部長になってからも、法令違反が何度かありました。その内容を見ると、多くは会社のためによかれと思ってしたことが本人の意に反して不法行為となったもので、違反者自身が個人的な利益を得ているわけではないのです。「それが救いだ」という声もありますが、そうでしょうか? 私は断じて違うと思います。むしろ法令違反を庇い立てしたり、そうと知りながら目を瞑ったりする空気の存在が不法行為を助長してしまっていたのです。当時の松下電器には、「任して任さず」という考えが曲解され、時として現場に寛大になりすぎる傾向がありました。


大学で法学を専攻した後、官僚として長く法律関係の仕事に携わる中で多くの法律実務家と接し、法律の「裏表」を目の当たりにしてきました。法律担当者の陥りやすい悪弊の一つは、法律に触れなければ何をしてもいいと過信することです。そして、いつの間にか、綱渡りのような法律スレスレの行為に、むしろそれが儲かる秘訣だと錯覚して手を染めてしまうのです。法律とは元々、社会の最低限度のルールを定めたものに過ぎず、法律が禁じていないからといって社会的に許される行為かというと、必ずしもそうではないでしょう。ましてや、法律に従って行動したからといって、事業で成功するわけではありません。法律は人生の指針を示すものでも、経営の方向づけをしてくれるものでもないのですから。


在任中の最も記憶に残る仕事といえば、新「松下電器行動基準」の策定に尽きます。当時、経営理念にある昔の言葉をそのまま表面的にとらえ、理論的に理解しようとするきらいが社内にもありました。しかし、真に考えるべきは、今日の社会で経営理念を正しく実践するにはどうすればよいか、ということにほかなりません。ですから、私は経営理念が求めているものを誰にでもわかる言葉に翻訳して、説明する必要があると感じていただけなのです。用語一つとっても、時代の流行がありますからね。法令遵守に対する社会の評価も変わりました。喫煙者を見る目の厳しさなど昔とは段違い。外国人の従業員も増えました。今日、松下の人間として守るべきことのすべてを、昔のままの言葉から演繹的に導き出せというのは無理がありますし、社会もそれでは納得しないでしょう。


90年代に入ると、企業不祥事が各社で多発し、それを執拗に取り上げる報道が嫌でも目につくようになっていました。しかし、企業がにわかに悪化したわけではありません。誤解を恐れずに言えば、企業は昔から同じことをしてきました。変わったのは企業を取り巻く環境のほうで、社会全体が敏感になった。市民・消費者・マスコミの企業を見る目が厳しくなったというのが、近年の企業不祥事の特徴です。企業にはそれぞれ固有の伝統や風土がありますが、それは必ずしも外からは見えません。企業としての存在意義を示し、それを実のあるものにするために、企業は何を考え、何のために、何をしようとしているのかを明らかにしてほしい。そして、今の社会で通用する論理に従って行動してほしい、という要求が強まってきたのです。


上野治男の経歴・略歴

上野治男、うえの・はるお。日本の官僚(警察)、リスクマネジメント専門家。東京大学法学部卒業後、警察庁に入庁。広島・福岡県警課長、在米大使館一等書記官、兵庫県警刑事部長、内閣官房危機管理等担当室長、内閣総理大臣秘書官、群馬県警本部長、防衛庁教育訓練局長、松下電器産業顧問・法務本部長・常務などを務めた。著書に『リスクの中に自由あり 市民主役社会におけるリスクマネジメント』『現場で生かす リスクマネジメント入門』。

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