小林一雅(小林製薬)の名言 一覧

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小林一雅(小林製薬)のプロフィール

小林一雅、こばやし・かずまさ。日本の経営者。「小林製薬」社長・会長。甲南大学経済学部卒業後、小林製薬に入社。米国でマーケティングを学んだのち、取締役、宣伝課長、製品営業部長などを経て社長に就任。ブルーレット、サワデーなどの開発を主導した。そのほか大阪家庭薬協会会長などを務めた。

破壊が創造につながる。その創造の報酬が利益となる。


有能な社員は自己否定できる人である。それが創造性を生み、自分の成長、人生の成功をもたらす。


商品の改善・改革はメーカーの使命です。


マーケティングの基本は買い手の期待に応えること。


商品開発では「この商品が誰向けのものなのか」という分かりやすさが重要です。


売られたケンカは買う。一方で、自らケンカは仕掛けない。これが小林製薬のポリシーです。


マーケティングの第一歩は、顧客の潜在的なニーズを把握することです。


モノが売れる理由、売れない理由は必ず存在します。


私の商品開発の基本は対象顧客を絞ってニッチを狙うこと。また、特定の季節にしか使えない商品など間口が狭いものは逆に思い切って広げていく。


継続していること、永く続いていることが正しいとは限らない。敢えて継続していることは悪いことである、非効率であると割り切って、これを見直す活動を善としたい。


自社の存在を脅かされず、かつ健全な競争を生み出す相手。これは市場や企業の活性化には必要不可欠な存在です。


我々人間や組織も、固定概念や思い込みを持たないように、絶えず現状を否定して新しいことにチャレンジしていくことが必要であると考えています。


私がベストと考えるシェアは6~7割。3~4割はライバルに開放する。「小さな池の大きな魚は捕るが、小さな魚はほかの会社のために残しておくべきだ」が口癖です。


逆境に置けば、その社員はもがき苦しみます。そこで厳しい状況を抜け出す術を考える。この瞬間こそ社員が伸びる時なのです。


社員全員が「さん」付けで呼び合う制度を作ったときのキャッチフレーズは、「今日から私も『小林さん』です」。当時の私は社長でしたが、導入してからは社長と呼ぶことを禁じました。


トップがきちんと理解できていない事業の成功は難しい。だって、詳しく知らなければ、当社の原動力であるマーケティングや開発、技術のすべてを生かせないですから。「トップが詳しくないとアカン」ということです。


当社はたとえ黒字の事業であっても売却してきました。その際のモノサシはシンプルです。長期的な視点で自社の将来像を考えた時に、その事業が会社の描くビジョンや夢にはまるかどうか。これに尽きます。


小林製薬には、ユニークな社内制度がいくつもあることで知られていますが、その多くは社員の士気を高めるためのものです。たとえば「ホメホメメール」。会社に貢献した社員に、私や社長などトップが直々にメールする制度です。


社員としても、何が会社のコア事業なのかが明確でないと、会社の目指すべき方向が見えづらく、社員がバラバラに別方向へ走っていってしまいます。そうすると結束力がなくなり、会社としてのブランドも、アイデンティティーもなくなってしまう。


工場の不満を聞くのも、経営陣に聞く耳があり、実際に不満を改善する意思があると社員が理解することで、組織の風通しが良くなると思うからです。


褒めるも叱るも、簡単なことではありません。バランスも難しい。ただ、基準を明確に決めるのが最優先です。何のために叱るのか。それが大事です。


当社の商品のネーミングは特徴的だと言われます。「のどぬ~るスプレー」「ナイシトール」「ハレナース」など、当社の商品はコマーシャルやパッケージを見ただけで効能を理解できる。その原点にあるのは「分かりやすさ」です。


新商品の開発は、社内の数少ないヒットメーカーに頼ってはいけません。


競合商品が多いときは、その中で違いを際立たせるために対象をぐっと絞る必要がある。逆に競合商品はそれほど多くない用途限定型商品は間口を広げた方がいい。たとえば「アイボン」や「ブレスケア」には目薬やガムなどの競合商品が多くあるので対象を絞る。「熱さまシート」や「カイロ」は競争商品はそれほど多くなく用途限定型商品なので暑さ解消や、腰痛肩こり対策などに対象を広げるのです。


「スケベ心を出したらアカンで」と社員にはよく言っています。たとえば「ブレスケア」のキャッチコピーは「ニンニク料理・アルコールの後に」です。この2つを明確に打ち出すことで、ガムや清涼菓子など口臭ケアの商品がたくさんある中でも選ばれるようになる。売れたからといって一般の口臭予防の商品を出しても、競合商品とバッティングしてしまう。ブランドの力を大きくするため、あえて対象を絞るんです。


コンタクトレンズ使用者用の目の洗浄液「アイボン」が大ヒットした後、企画が「メガネの人向け」「裸眼の人向け」という横展開の商品提案をしてきました。私は担当者を厳しく叱りました。横展開で拡大して売上を増やすのもひとつの手段ですが、それで商品のコンセプトが薄まってしまうようでは何の意味もありません。コンタクトを着けている人が目を洗いたいと思った時に、必ずアイボンを手にする。それぐらい浸透している中で、裸眼の人向けなどを出せば、ブランドの軸がブレてしまいます。


小林製薬のヒット商品のひとつに「アイボン」があります。コンタクトレンズを使用する人が、レンズを外した後に使う目を洗浄する医薬品です。目を洗うという商品自体は当社がオリジナルではありません。既に、あるメーカーが出していました。ただ、薬局の片隅に置かれて、あまり売れているとは言えませんでした。その中で、後発の当社が勝つにはどうすればいいのでしょうか。ここで、「コンタクトを使う人向け」にターゲットを絞って商品化しました。その結果、爆発的に売れたのです。


提案を現場に対して押しつけるだけではいけません。管理職や経営陣は、社員からの提案をきちんと読んでフィードバックします。良ければ次の商品や会社の運営に改善が盛り込まれます。提案はポイント化され、成績優秀な社員はトップが開く夕食会に招き、ねぎらう。この繰り返しが商品を生み、会社を改善していくのです。


社員提案制度によって製品化された商品のひとつに、傷痕を目立たなくする効能がある「アットノン」があります。ある女性社員が自転車で転倒して傷を負った時に、「若い頃はもっと早く治ったのに……」という気づきから商品開発が始まりました。商品化の際は開発担当者の提案が採用されることがほとんどです。ただ、それでも全社員が経営に参画するつもりでアイデアを出さなければなりません。それが開発先行型である小林製薬の原動力となるのですから。


小林製薬では毎月社員に提案を促す制度を30年以上にわたって実施しています。新たな商品のアイデアや既存商品の改善点、会社の改善点など何でもいい。気づいたことを書いて提出する。その数は年間4万件を超えます。この提案制度から様々な商品が生まれました。


ブルーレットがそうであるように、当社が出す商品は世の中に存在していないものばかりなので、売れるかどうかは全く分かりません。それだけに、きちんとしたマーケティングが必要になります。


生活水準が変わったり、技術革新で生活そのものが変わったりする中で、時代に合わせた新しいアイテムを提供すればビジネスの幅は広がる。


小林製薬はもともと小さな薬問屋で、そこからメーカーへと転じました。ただ、製薬会社の本社が集結する大阪の道修町(どしょうまち)において、問屋時代の当社は極めて存在感が薄かった。ライバルと呼ぶのもおこがましいような大手製薬会社がひしめいており、まともに戦っても勝負にならない。悔しい思いをしたことは多々ありました。その中でも自分たちが唯一無二の存在だということは証明したい。そのためにはどうするか。そして、「同業他社がやらないことをする」をモットーにした商品開発に行き着きました。


当社のスローガンは「あったらいいなをカタチにする」です。心がけているのは、一般的な製薬会社とは一線を画し、かゆいところに手が届くような商品の開発です。その根本には、徹底的な消費者目線でライバルが考えつかないような商品をいち早く生み出すという思想があります。


私自身、マーケティングを「市場創造のための活動全般」と捉えており、商品開発や人事、ライバルとの競争やM&A(合併・買収)など、あらゆる局面でマーケティングの視点を活用しています。


自社の社員がどのような強み、弱みを持っていて、将来の会社の利益に対してどのような貢献をしてくれるのか。市場の分析だけでなく、社員の分析も企業には必要不可欠です。


メーカーを主業としてからは長期視点の人材が必要になりました。時間をかけて、お客さんが欲しいと思う商品を考えて、売り出す。長期的な時間軸で、創造性、革新性、差別化を考える人材が必要になったのです。


たとえ失敗しても、挽回の機会は必ず与えます。その際も、生易しくクリアできるような仕事を与えない。逆境に身を置き、悩んで反発して成功へと導く。そして成功したら褒める。アメとムチのバランスが重要です。


当社の場合、監督者ほど処分が重くなる。執行役員が処分され、部長や課長は処分なしということも少なくありません。これが任せて任さずの極意です。それだけに、監督者はしっかりと部下を見て育て、部下はきちんと監督者に現状や悩みを報告する。そのサイクルが必要です。


当社では現場の担当者に権限を与えて任せてしまいます。もちろん、きちんと報告はさせますが、問題が発生した場合は上司が責任を背負います。権限委譲に似せた無責任は許しません。


仕事の調子が良い時は、それまでの仕事の進め方が通用している証し。つまり、革新性がない。こういった考え方から、調子が良い社員にあえて徹底的に仕事を振ることもあります。愛のムチです。そこでの反発に大いに期待してのこと。うまくいけば大いに褒めてあげます。


叱り方にもコツがあります。ここでも「お客様のため」を意識して、何がダメなのかをきちんと伝えないとダメです。ただ理不尽に怒られたと曲解されかねませんから。自分をなくし、お客様の立場に立って叱る。これが鉄則です。


上司が間違った判断を下した場合、反省して謝るのも小林製薬の特徴かもしれません。私もそうですよ。かっとなって怒った後に、今のは間違いだったと気づいたならば、翌日でもいい。きちんと「悪かった」と素直に謝る。そこでメンツを気にしてしまうと、部下はついてこなくなる。そして、会社のまとまりがなくなることで魅力的な新商品が出なくなり、お客様の期待に応えられなくなります。


「おべんちゃらはアカン。ごますりも厳禁。そんなヤツは会社を去れ」と言い聞かせています。おべんちゃらやごますりをする動機は、会社や自分のためであって、お客様のためではない。そこが一番の問題です。さらにしょうもないのが「メンツ」。自分のメンツや経験を基準にして判断すると、大概失敗します。


現場の社員一人ひとりがきちんと理解しなければ、制度は経営者や経営企画の独り善がりになってしまいます。そのためには、トップ自らが社員に向かって手本を示し、広めて浸透させていかなければなりません。


よく制度が長続きするコツを聞かれることがあります。確かに、制度を作っても長続きしない企業は少なくないようです。それは、社員が制度の意味を真に理解していないからでしょう。


新しく導入した制度や仕組みは組織に定着するまで粘り強く周知徹底させています。


消費者が求める商品を開発し、実際の購買行動に至るまでのストーリーを紡ぐのと同じように、何をすれば社員が意欲を持って働いてくれるのかに思いを馳せる。お客様のことを考えるように、社員のことを想像する――。その姿勢がトップには欠かせません。


肩書が何かを生み出すわけではありません。むしろ、権威をかざせばかざすほど官僚化が進み、言いたいことが言えない空気が生まれてしまう。そういったリスクをなくすためにも、さん付け呼称を導入する必要があると思ったんです。


トップが社員をメールで褒めるなんて大したことじゃないと思われるかもしれませんが、トップがきちんと見てくれていると思えば、社員の士気は必ず上がります。


今でこそ導入する企業も多くなりましたが、当社は1995年以来、20年近くにわたって全社員が「さん付け」で呼び合っています。導入のきっかけは、あるメーカーさんの工場を視察したときでした。その工場の従業員が「工場長」を「○○さん」と呼んでいて、とても新鮮に感じたんです。その工場は活気があって、現場の風通しの良さを感じました。当社の信条は階層の区分なく、自由に意見を交換して新しいものを生み出していくというものです。口では「皆平等」と言いながら、実際には役職の権力を振りかざすのは矛盾すると思って、「さん」付け呼称を導入しました。


当社には「LA&LA(ルッキング・アラウンド&リスニング・アラウンド)」という制度があります。全国に散らばる工場や研究所などの現場を含め、会長や副会長、社長が1年中飛び回り、現場の不満を徹底的に聞きまくるのです。年に10回以上、様々な場所を回ります。


マーケティングをかみ砕いて言えば、消費者のニーズを調べ、商品を作り、消費者に認知させる活動のこと。そのために、価格や売り場、広告宣伝などを組み合わせていくわけです。


一般的に、マーケティングは対顧客視点の活動を指すので、人事のような社内的な活動はマーケティングの対象ではありません。ただ、マーケティングを「市場創造のための活動全般」と定義づければ、社員は商品開発で重要な役割を果たしており、市場創造の連環のひとつと考えることができます。同様に、社員の士気向上や人材育成などもマーケティング的な発想で捉えています。


小林製薬の強みは、現場から生まれたアイデアを形に変えていくところにあり、そのサイクルを回すには、人を育てる人事戦略が欠かせません。


本音を言えば、競争相手がいない方が楽です。ただ、独占すると競争環境がなくなり、切磋琢磨もなくなる。すると市場全体が縮小し、結果的に商品寿命も短くなってしまう。ライバル会社は必要悪。適切な競争と共存のバランス。これが長寿商品を生む秘訣です。


シェアを守るために無意味な戦いを仕掛ける社員は叱ります。過剰な値引きや問屋への押し込みなどの泥仕合も厳禁。名目上の数字が作れたとしても、それが会社にとって幸せなのかというと、そうではありません。


シェア100%という独占状態は健全とは言えません。市場に魅力がないという状況かもしれないですから。市場が魅力的で、拡大が予想されるならば、必ずライバルが参入してきます。そこで競争が生まれれば、自社の強みや弱みを把握するためのベンチマークにもなる。競争の中にも、必ず共存の意識は必要だと考えます。


相手を刺激する不要なケンカは仕掛けない。それが結果的に自社のシェアを守ることにもなります。


市場が拡大し始めた際の注意として、ライバルをつぶしにかかってはいけません。特に、いじわるはダメ。問屋を介して圧力をかけたり、原材料メーカーを通じて供給を止めたり、といった妨害は、法に抵触するだけでなく遺恨も生まれます。「窮鼠猫を噛む」というように、いまは小さな存在だとしても、いずれ自社を脅かす存在になるかもしれません。


マーケティングの基本は買い手の期待に応えること。市場創造や既存商品の機能改善も期待に含まれますが、「時間」もまた潜在的な期待に含まれる。ライバルが次の一手を打つ前に先手を打つ。「買い手の期待に応える」という原則を多面的な視野で実践する。これが小林製薬のマーケティングです。


当社の場合、一般用医薬品を除いた商品の開発期間は約13カ月。ゼロから企画を始めて製品化まで半年以内の商品も少なくない。通常、企画から研究、試作品の製作など段階を踏んで進めますが、当社はこれらの工程をほぼ同時並行で手がけることで期間を短縮しています。


商品の軸は変えず、そこで生じる不満や不安を解消して分かりやすく打ち出していく。そうすることで、ライバルが参入してきても、新たな機能を持った商品を先行して提示できる。機能を改良しても、お客様は次なる不満を抱くもの。この宿題にいち早く気づくことがカギです。


「ブルーレット」そして「ブルーレットおくだけ」を発売したのち、トイレの芳香洗浄剤市場はいったん成熟しました。そこで、「液体ブルーレットおくだけ」を投入しました。固形だったブルーレットを液体にすることで、香り立ちと泡立ちを良くして洗浄力を強化したんです。このセグメントで圧倒的な強さを誇っているのは、こうした改善の結果です。


発売当初のブルーレットは世の中にない商品だったため、多少不便でもお客様は満足してくれましたが、商品が日常に浸透していくにつれて、わざわざトイレのタンクを開けて薬剤を投入するという手間に不満を感じ始めた。そういった「声なき声」を拾い上げ、「ブルーレットおくだけ」を商品化したんです。


「ブルーレット」が新しい市場をつくりじわじわと売れ始めると、競合が似たような商品を出してきました。となれば、次の戦略商品を投入しなければなりません。そこで考えたのが、「ブルーレットおくだけ」です。当社が需要拡大型商品を投入する際には、「次なるお客様の不満解消」という視点を大事にしています。従来のブルーレットはタンクのふたを開けて設置しなければなりませんでしたが、「ブルーレットおくだけ」は名前の通り、タンクの上に置くだけで同等の効果が出せるように改良しました。爆発的なヒットになったのは、消費者の煩わしさを解消したからです。


新市場を創造するときと、他社が参入してきたあとの需要拡大のときでは、商品に持たせる機能やブランド、売り出し方について全く異なる視点が必要です。新市場を創造する際は、その商品自体がお客様の不満を解消するモノであるはずなので、商品の魅力は訴求しやすい。ただ、競合の参入で市場に競争が生まれると、類似商品とは異なる魅力を消費者に伝える必要があります。


新市場を創出した後、先行者は手をこまぬくのではなく、ライバルが出してくる商品よりも先を行くモノを投入しなければなりません。


新市場を創造すればシェア100%の独占状態が謳歌できますが、それが売れる市場だとわかった途端にいろいろな会社が参入してきます。ライバルの参入でシェアを失うのは悔しく感じるかもしれませんが、それは逆でむしろ歓迎すべきことです。他社が参入することで競争が生まれ、市場全体が活性化します。そうすると、社会全体にその商品やサービスが認知され、それまでほんの小さな池だった市場が大きな湖に、または海にまで広がるのです。


ライバルとの競争をいかに勝ち抜くか。市場経済において企業が常に考え続けなければならない命題です。自社の強みと弱みは何か。自分の会社がお客様に最もメリットを提供できるビジネスモデルは何なのか。それを熟考するところからすべてが始まります。


開発・生産・マーケティング・営業、全ての面で同じことを、同じように長い期間続けることがないようにして、「小林製薬は何をするかわからない」ということを小林製薬の魅力としたいと考えています。


「本業とのシナジー(相乗効果)があるか」。買収の際によく聞く言葉です。もちろん、本業との相乗効果が大事です。ただ、それだけをモノサシにして買収相手を決めてはいけません。事業や企業を売る、買う。その目的は、売上や利益を単純に足すのでは意味がありません。強みを生かして事業を磨き、どれだけ成長させていけるかが醍醐味です。そのためには、トップが会社の未来を長い視点で見て針路を決める覚悟が必要不可欠です。


小林製薬のビジネスモデルは「小さく生んで大きく育てる」です。商品開発だけでなく、M&Aでも同じ考えです。なので、高額な企業や事業などは買いません。小さい額ながら、未来がある事業や企業を買う。未来があるならば、赤字でも問題ない。買うのはその会社と夢。小林製薬が買ったらどうなるのか――。そういう伸びしろが大きい会社や事業を買うのです。


買収を検討する会社には、磨けば光る部分が必ずある。それまで人材や資金の投資に限りがあって伸び悩んでいただけかもしれませんから。2005年に販売権を取得した「命の母A」という商品があります。更年期障害に悩む女性向けの薬で、販売権を持っていた笹岡薬品時代の売上高は約2億円程度でした。それが今では、約26億円にまで拡大しています。この商品には潜在力を感じましたが、笹岡さんは命の母Aの広告宣伝に十分なお金をかけられませんでした。そこで、当社が販売権を買い、効能が分かりやすいようパッケージを変更し、更年期障害に悩む人向けに宣伝を打ったら、商品が蘇ったんです。同種の商品で、積極的な広告宣伝を仕掛けている会社がなく、患者さんからすれば、オンリーワンの存在になり得たのです。


極めて魅力的な企業が売りに出されたとしても、トップに据える人材が社内にいなければ、当社は買収を決断しません。それだけ、買収後のトップ人事は大事なんです。


買収した直後は成長したように見えても、買収後、持続的に事業を成長させなければM&A(企業合併・買収)の意味はありません。


企業は存続をかけた激しい戦いに勝ち続けなければなりません。競争は国境を越え、商品やサービスの開発期間もどんどん短縮されています。その手段としてM&A(企業合併・買収)は効果的です。


買収した会社を小林流のビジネスモデルに転換させるためには、中途半端な人材を送り込むわけにはいきません。管理職だろうが現場社員だろうがエースを送り込む。ただ、エースを送り込むと、既存の現場が打撃を受ける。要するに、エ-ス社員を引き抜いてでも買う価値があるのかを徹底的に見定めるのです。


小林製薬では、買収する際にあるルールがあります。それは、買うと決める前から、誰をトップとして送り込むのかを決めるということ。買ってから決めるのではダメ。買収した会社にそのまま任せるのもダメです。


詳しくない事業であれば、その分野に詳しい人にトップは任せてしまう。報告を受けても、きちんと理解していなければ問題のタネが発生していても分からない。気づいた時には大きな問題へと発展し、もう手遅れ。これでは、買収した事業を大きくしていくことなどできません。


これまで、いろいろな企業や事業を買収してきました。成功したものもありますが、失敗したものも少なくありません。何が悪かったのかを振り返りますと、トップが深く知らない事業は、成果が出ていないことが多かった。


規模の拡大とともに不必要な事業も出てきます。その中には、過去に業績で多大な貢献をした事業もあるかもしれない。ですが、会社の将来像を考えた時に幹とならないものならば、事業譲渡を早期に決断すべきです。


取捨選択は経営者にとって大事な視点です。会社を強くするためには、主力となる事業の幹を太くしていかなければなりません。投資は無限にできるわけではない。バッファーは必要ですが、将来の柱にならないものに投資をする余裕などありません。


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小林一雅(小林製薬)の経歴・略歴

小林一雅、こばやし・かずまさ。日本の経営者。「小林製薬」社長・会長。甲南大学経済学部卒業後、小林製薬に入社。米国でマーケティングを学んだのち、取締役、宣伝課長、製品営業部長などを経て社長に就任。ブルーレット、サワデーなどの開発を主導した。そのほか大阪家庭薬協会会長などを務めた。

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