吉越浩一郎の名言

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吉越浩一郎のプロフィール

吉越浩一郎、よしこし・こういちろう。日本の経営者。千葉県出身。ドイツ・ハイデルブルク大学留学後、上智大学外国語学部ドイツ語科卒業。その後、メリタジャパン設立に参加。同社プロダクトマネジャー経験後、トリンプ・インターナショナル香港に入社。トリンプ・インターナショナル・ジャパン副社長を経て社長に就任し、19年連続増収増益を達成した。日本経済新聞2004年平成の名経営者100人に選ばれた。数多くのユニークな社内制度を導入し、同社を大きく成長させた経営者。同社退社後はコンサルタントとして企業とビジネスマンに助言を与えている。主な著書に『残業ゼロの仕事力』『ムダな仕事はもう、やめよう』『2分以内で仕事は決断しなさい』『デッドライン仕事術』『仕事ができる社員、できない社員』『仕事が速くなる プロの整理術』など。

仕事というのは、計画段階で6割くらい正しいと判断できたら、実行段階に移り、あとは走りながら考えて、決めていけばいいのです。


解決すべき問題に気づいたときは、徹底してやり抜くべきです。


ビジネスではスピードが命です。川があれば、あれこれ悩む前に、まず飛び込む。それから状況に応じて、渡り方を考えればいいんです。


頭の回転自体を早めることは難しいかもしれませんが、思考や仕事のスピードは、工夫次第でいくらでもあがります。


厳しいと感じるようでなければ能力はストレッチしないし、思考のスピードだって上がりません。


社員を残業させなければ業務が立ち行かないなら、そんな経営基盤の脆弱な会社は、早晩、市場から退場させられるでしょう。


長時間のサービス残業に耐えられることは、その人のリセール・バリュー(再販価格)を高めることに何ら関係ありません。


与えられた条件の中でいかに成績を上げていくかを考えることが重要なのであって、自分の環境が悪いから、上司の理解がないからとぼやいても、自分のためになりません。


能力があるからスピードが上がるのではなく、スピードを上げることで、人の能力は上がるのである。


世の中は常に容赦なく変化しており、会社はこうした変化への対応が宿命づけられています。変化に対応せず、同じ状態に留まることは、世の中を無視することにほかならず、それでは経営が成り立たないことは言うまでもありません。


経営とは常に自己更新を行い、変化し続けることなのだ。社是社訓の制定は、自分たちの考えを言葉にして確定することなのだから、経営者や社員の考えを固定化させる面があることを忘れてはならない。


日本人はとにかく勤勉で、頑張る気持ちが強い国民です。ただ、この頑張る気持ちを残業ではなく、効率アップに向かわせられないものか。長く仕事をするのではなく、同じ時間でいかに速く効率よく仕事をするかを考えれば、この国は活性化されるはずです。


トリンプ社長時代、経営を行ううえで、私が意識していたのは、常にスピードを上げていくことでした。多少の拙速は大歓迎。まずは走り出してみて、走りながら考えるくらいでちょうどよい。6割くらいいけそうだと思えば、とにかくやってみることです。


私に言わせれば、仕事の効率を無視し続けてきた日本の悪習こそ、改善すべき喫緊の課題です。残業に追われ続けた人は、寝不足や運動不足になって体力も落ち、気力も萎えて仕事のモチベーションが下がる。社員全員のモチベーションが下がれば、会社も業績が悪化する。その業績悪化をリカバーしようと、経営者が社員にさらなる残業を求めると、悪循環に陥る。近年の日本経済の低迷、生命力のなさは、こうした悪循環が原因です。


優れたリーダーになるには、早い段階から上に立つ仕事をしなければいけない。私は、係長には課長の仕事をさせ、課長には部長の仕事をさせるべきだと考えている。能力がある人を出世させるのではなく、出世させることで人の能力を上げていくのだ。少々無理なように見えてもどんどん難易度の高い仕事を任せて人を育てていくべきで、日本はこうした状態になっていないから、上司の目を気にして「報連相」に依存したまま、自立した「個」にならないのである。


天才経営者ならともかく、私のような凡人には、千里眼のような能力はない。バブルの時は、これが日本の実力だと勘違いしていたくらいだ。そんな私が個別の施策を考える上でとった方針は、TTPであった。TTPといっても何かの化学物質ではない。他社のよいところを「徹底的にパクる」(TTP)ことを信条としたのだ。残業削減、早朝会議、「さん」づけ運動も、元は他の会社の制度をパクったものである。


誤解を恐れずに言えば、会社に民主主義はいらない。会社としてどうすべきかは、多数決で決めるのではなく、現場の声を聞いたうえでトップが決めるべきだ。


信念が弱く、スピードが上がらない経営者は、自分自身を変える覚悟をしなければならない。「君子は豹変す」という言葉があるが、私は「豹変していれば君子になれるかもしれない」と言っている。お題目を墨守したり、会社の構造をいじったりするよりも、まず経営者自身が変わり続けること。これがスピード改革の第一歩である。


日々繰り返す様々な仕事を「仕組化=パターン化=ルーティン化」しておけば、その部分はいちいち悩まなくて済むので、その分大事なことに頭を集中して使えるようになるじゃないですか。実際、仕事が速い人、できる人というのは、仕組化に力を入れているものです。


ツールは何だっていいんです。大事なのは書類の整理やメールの処理、スケジュール管理などはあらかじめこうするというルールを決める。あるいは、ほぼ自動的に進むシステムをつくっておくということです。


私がトリンプにいた20年間で、売上は5倍に伸びましたが、正社員の数はむしろ減りました。つまり、同じ人間でもやりようによっては、いまの5倍以上ものスピードアップできる余地があるということです。みなさんだって、2~3倍のスピードアップは十分可能だと思います。


いまの時代、一人が複数の仕事を任せられるのは当たり前です。それに、どこの会社でも、できる人に仕事は集中しますから、逆に忙しくない人の方が問題だと思った方がいいでしょう。


人に何かを説明するとき、言葉でダラダラ説明するより、シンプルな絵や図にまとめたものを「こういうことです」と見せた方が、より早くかつ正確に伝わります。


「何日まで」というデッドライン(締め切り)は会社や上司、顧客から与えられますが、「この作業は何時まで」という1日のデッドラインは自分で決められます。これを決めると、時間がきたら次の作業に移らなければならないので、集中力は嫌でも高まるし、思考のスピードも速くせざるを得ません。迷っている余裕もないから、判断も早くなります。


デッドライン(締め切り)を引くと、締め切り効果が働き、思考スピードが上がるというメリットもあります。試験のときは制限時間があるから、誰しも頭が活発に働いたでしょ。あれと同じことを日々の仕事でもやるわけです。


私が短時間で決断を下していくことができたのは、目の前の議題に頭を集中的に使えるように、いろいろと工夫していたからです。べつに頭の回転が人よりも何倍も速いというわけではないんです。


どこかでデッドライン(締め切り)を引いて、仕事の仕組化を考えるべきです。たしかに、その瞬間は残業時間が増えるかもしれません。でも、ひとたび仕組みが出来上がれば、仕事は格段に速くなるはずです。


トリンプでは、「緊急性は低いけれど、重要性は高い仕事」に私がデッドライン(締め切り)を設定しました。緊急性を強制的に上げることで、仕組みづくりに社員を取組ませ、残業を減らしていきました。


仕組化というのは、「緊急性は低いけれど、重要性は高い仕事」です。それだけに日々の仕事においては、どうしても後回しにされがちです。でも、それではいつまでたっても残業地獄から抜け出せません。


学生時代の経験を思い出してください。どの試験も、50分とか1時間とか、時間が決まっていましたよね。だから学生は集中して、その時間内で必死に解こうとする。それと同じで、仕事でも締め切りが決まっていれば馬鹿力が出ます。


これはいい習慣だなと思ったら、TTPするといいでしょう。TTPというのは「徹底的にパクる」の意味だそうです(笑)。「これは!」と思う仕事のやり方はどんどん真似て、自分の血肉にする。そうすることで、仕事の成果は目に見えて伸びていくことでしょう。


すべての基本は体力といっていいでしょう。私など、体力を維持するために、トリンプの社長時代も8時間は寝ていました。体力が充実して、やる気が湧き起こって初めて能力を発揮することができます。そのことを忘れてはいけません。


ビジネスパーソンには、しぶとさやしたたかさといった野性味も必要です。慎重なだけでは、仕事はできません。


通常の仕事なら、6~7割くらいいけると思うなら、やってみることです。巧遅であるよりは、拙速であった方がずっといい。間違えたと思ったら、途中で修正して、精度を高めていけばいいんです。


日本人の仕事の仕方は、いまだに精神論というか、力仕事の観があります。でもそれでは、もはや世界で太刀打ちできません。現に、一人当たりのGDPはシンガポールに抜かれることが明らかになりましたから。


時間とコスト、努力をかければかけるだけ、仕事の完成度は高まるかもしれませんが、一方では効率も考えないといけません。あるいは、時間をかけすぎて完成度が上がっても、それは結局、個人のマニアックな領域かもしれません。マニアックな志向をされては、会社はたまりません。


仕事のキャパシティを「能力×時間」で考える人がいますが、それでは不十分です。もしそう考えるなら、能力に欠ける人は時間をかければ成果が高まると思ってしまいます。結果、いたずらに時間ばかりかかって、不健全な生活になってしまいます。ところが、これに「効率」の軸を持たせると、様相は一変します。これまで3時間かかっていた仕事を2時間で終わらせる発想を持って実行すれば、残業は減って、しまいには一切なくなります。


会社のマネジメントというのは本来、社員が正規の労働時間だけで働くことを前提に行われるのが、世界の常識です。残業を容認する、あるいは評価の対象とするような感覚で日本のビジネスマンが世界に出ていったら、笑いものになるだけです。


どんなに理屈をつけたところで、残業は悪です。いや社員全員が残業は悪であるという感覚を持たないといけません。残業を美徳として容認すると、「我々は一所懸命に働いている」という酔った雰囲気の中で、もっとほかにもある是正すべき会社の問題点が見えにくくなってしまいます。


国境なきグローバル時代に価値のあるビジネスマンとは、短時間で問題解決ができる人です。とくに世界一人件費が高い日本という国で、仕事が終わるまで何時間でも会社に残って「竹やり精神」で働いているようでは、今後ますます激化する競争に勝ち抜いていけるはずがありません。


報連相は無駄以外の何ものでもありません。任せる仕事の分野とデッドライン(締切り)が明確なら、あとは結果を判断するだけで、突発事故を除けば、途中で報連相が発生することはあり得ません。要するに、「手が回らないから、この仕事、ちょっとやっておいて」というような、いい加減な仕事の依頼を上司がしているから、「そういえば、あの仕事どうなった」という疑念を上司が持ち、その一言が部下の仕事の手を止めるのです。


誰もいない会議室に潜り込むなどして、集中して仕事をする「頑張るタイム」を1日のうち数時間確保するのもよいでしょう。


朝早く出社して、誰もいない静かなオフィスで集中して仕事に取り組んだ結果、いつもより仕事がはかどったという経験が、誰でも一度や二度はあるはずです。仕事は、本来そういう状態でやるべきものです。そのまま8時間働けば、いま以上の仕事を楽にこなせること請け合いです。


自分の仕事の進め方にまだまだ改善の余地があることは、感性豊かな若いビジネスマン諸君なら気付いているはずです。要はそれを実行するか、しないかだけの話です。


現状より5倍以上の効率で仕事をこなすことは、決して非現実的でもなく、誰にでも達成可能な範囲です。自分の胸に手を当ててみれば、就業時間の中で、自分が本気で仕事に集中している時間がどれくらいあるのか、本人が一番わかっているはずです。日本のホワイトカラーの平均でいえば、おそらく3~4時間くらいじゃないでしょうか。


仕事量というのは能力と効率の掛け算で決まります。ですから、仕事時間を減らしたければ、それ以上に能力を上げればいいのです。そうすれば、現状より5倍以上の効率で仕事をこなすことも十分可能です。


残業をしないといっても、もちろん、上司から指示を受けた仕事を無理やり拒否しろとか、仕事を他人に押し付けろとか、そういう対症療法のようなことを言っているのではありません。根本的に仕事を効率化して、それまで残業してやっていた分も、就業時間内に片づけてしまえと言っているのです。


トップに残業ゼロの考えがない場合でも残業を減らすことは十分可能です。まず、自分自身が勇気をもって残業をやめる。毎日が無理なら、週のうち何日かは定時に帰ると決めて、その日は朝から机に「ノー残業デー」の旗を立てて、周囲にアピールするなどして、そこから徐々に周りを巻き込んでいくのです。とにかく、周囲に意思表示することが大切です。


残業を減らすことでできた時間の使い道は、個人が考えることなので、会社が関与することではありません。ただ、第二の人生を歩きはじめた私の経験からいわせてもらえば、個人の趣味や家族のためにその時間を使った方がいいと思います。人生80年時代においては、仕事をしている時間よりも、それ以降の方が長いのですから、アフターファイブはそのための準備に費やしたほうが、より人生が豊かになるでしょう。


いまどの会社も利益を中心に考えがちで、だからこそ世の中がおかしくなってきているのだと思います。利益以外の判断基準を持つことは非常に重要なことだと思います。


以前、アメリカ企業の社長をしておられたフランス人の方と話したときに、彼に「会社とは何か」と尋ねたら、「利益をあげる組織である」と答えられました。ただし、そこで重要なのは、「誠実さと透明性を持った会社でなくてはならない」と。


私が社員によく言っていたのは、「迷ったら現場に戻りなさい」ということです。現場にすべての答えがあるわけですから。人が判断ミスをする原因には、現場を知らないということが大きいと思います。


判断力の高さというのは、普段から考えている結果だということです。日ごろからものごとを分析して、論理的に考えているからこそ、的確な判断ができるものです。それをやらない人は、判断能力の高さを「運の良さ」だと思いがちですが、優れた判断力の裏には地道な思考の積み重ねがあることを認識すべきだと思います。


迷って決断しないより、やりたい気持ちが強いなら決断して、その後の状況次第で適切な事後処理をしていく方が大事だと思います。もしその判断が失敗だとわかったなら、さっさと撤退すればいいのです。


決断するときの最後の判断基準は「やりたいのか、やりたくないのか」ということです。仕事では何をするにも必ず抵抗が出てきますから、最後は「何が何でもやりきるんだ」という気持ちを持ち続けることが仕事を完成させる秘訣でしょう。私はよく冗談で「成功するまでやれば成功する」なんていっています。


私はだいたい6~7割の確証で決断しています。現場での感覚を大切にしていれば、6~7割の完成度はすぐにイメージできます。でも、それ以上に完璧を目指そうとすると、逆に時間と手間がかかってしまいます。それに、計画段階で完成度を上げても、現場での実施段階で必ず軌道修正が必要になってくるものです。ですから、7~8割の確証が持てれば決断して、実施段階で軌道修正をしながら時間をかけて完成度を高めていきます。


現場に近いところにいれば、どんなに問題が大きくても正しい判断が下せます。迷ったら現場に戻るのが鉄則です。社長時代の私も、それを実践していました。


火事の現場で、どのホースを使いましょう?などと、いちいちトップにお伺いを立てているようでは、あっという間に火が燃え広がり、家が焼け落ちてしまいます。そのためにも、責任と権限と情報を部下に与えて、現場を任せることが重要です。ホウレンソウ(報連相)は指示待ち人間をつくるだけです。上司に説明をするために、パワーポイントでプレゼン資料をつくっているような会社には未来はありません。


完ぺきな計画を立てようとすると、大変な時間とコストがかかってしまいます。だから、企画段階では6割か7割の完成度で十分です。その段階でゴーサインを出して、走り始めます。あとは、走りながら現場で修正を加えた方が効率的です。


「下手の考え休むに似たり」じゃありませんが、いつでもああでもない、こうでもないと逡巡してばかりでなかなか決められなければ、仕事の時間は長くならざるを得ません。日本のビジネスマンにそうした人が多いのは、欧米人のように自分で判断してその結果に責任を負うという訓練を、子供のころからしてきていないからだと思います。


トリンプ時代は朝出社すると、その日の早朝会議で取り上げる議題に関する書類をすべて取り出し、議題の確認と自分の考えの整理を行っていました。そして8時30分になったら、書類一式を持って会議室へ。あとは90分間、その書類を自らのプロジェクターで投影して全員に見せながら、ひたすらロジカルに思考&議論し、答えを出していく。そうした結果、課題が解決したものは書類を破棄。一方、やり直しや再報告が必要になったものは、その場ですぐにデッドラインを再設定。こうしたことを毎日ひたすら繰り返していました。


仕組化をする上で重要なのは反省です。何か失敗したり、効率よくいかないことがあったら、必ずどこが悪かったのかを検証し、再発防止策を講じる。逆に、上手くいったら一人反省会を開き、もっと上手くいく方法はなかったかを考える。私は日々、これを続けています。


独立後、講演を頼まれることが多いのですが、講演後に面倒な仕事を押し付けられて「引き受けない方が良かった」と後悔することが過去何回かありました。そこで、そうした失敗経験を基に、講演を引き受けるときの事前のチェックポイントをリスト化し、秘書に渡しました。こうしておけば、講演を受けるかどうかをスピーディに判断できますし、あとからトラブルが起こることも防げます。決断のスピードアップという意味では、チェックリストをつくるというのも有効な方法です。


アメリカの軍隊では、上司が部下に任務を与える際、3つのことが必要だと伝えるそうです。その3つとは、「分析力」「判断力」「常識力」です。いずれも重要ですが、とくに分析力。何かを分析するには、ファクト・ファインディング(現状認識)がとても大切です。常に現場に目を光らせて、事実や実態に気づき、把握し、ロジカルに考える習慣を持つこと。判断力と常識力は、そのファクト・ファインディングの上に成り立つものです。


残業は悪いことです。理由はいくつかありますが、そのひとつが働く人の健康の問題です。日本ではもう何年も過労死が問題になっていますが、頭を使いすぎて亡くなった人はまずいません。みんな、仕事をしすぎて、体力を消耗して、身体を壊して、亡くなっているんです。


ドラッカーが言うには、レイヤー(層)がひとつ増えるごとに、上に上がる有益な情報は半減し、雑音は倍増するそうだ。下からのボトムアップを行おうとすると、レイヤーごとに都合の悪い情報は消されてしまい、むしろ上に気に入られようとする雑音のような情報だけが増えてしまう。だから経営者は現場に入り、生の情報を直接入手すべきである。


私が他社を真似して導入した「がんばるタイム(従業員全員が自分の仕事だけに集中する時間)」も、本家の会社では定着せずにやめてしまったそうだ。結局その会社では、社長がデッドラインをひいても定期的にチェックを入れずにいて担当部門に任せっきりにしてしまったのだろう。すぐれた制度を思いついても、改革の成否を決めるのは、それを断固として実行する経営者の信念なのである。


多くの経営者がなかなかスピードを上げられないのは、やはり信念が弱いからだと思う。スピードを上げようと思って新しいことを始めたならば、自分を信じて最後までやりきるべきだ。信念の強さによって社員を捲き込み、それを経営のイズムにまで高めることができれば、仕事のスピードは必ず上がるはずである。


個々の仕事は、分野別に担当者に任せることが必要だ。ひとつの分野を任せられた個人は、やる気も出るし、効率も上がっていく。もちろん仕事の進捗状況は上司がチェックし、道から外れそうならば軌道修正させ、締め切りに遅れそうならば後ろからお尻を押す。仕事の軌道が正しく、締め切り通りに進行していれば、原則として上司は何も言わないでいい。


私が理想とする社長は、現場に近いトップである。現場を見て歩き、情報を逐一収集するエネルギッシュな経営者がよい。これは、相当なエネルギーを消費するので、ある程度若くないと務まらない。高齢の人では現場に即した経営はむずかしいはずだ。


トリンプ時代、課長代行制度を設けていた。若手の中から特に優秀な社員を選び出し、資格制度を無視して課長代行に任命し、本来の課長と同じ仕事をしてもらう制度である。最大2年間のうちに、本物の課長になってもらうか、あるいは元の仕事に戻ってもらう。私の持論で「人は教育できない。自ら育ってもらうのだ」と言っているのだが、そのために、そういった立場に早く立たせるのが目的だった。


社員が仕事を任された上で、それぞれ何をいつまでに終わらせなければいけないかを分かっていれば、喧噪は自然に消える。むしろ、私は活気のある会社は、好ましくないと思っている。私語が多く、社員が不必要な動きをしているからだ。


トリンプ時代、午後の2時間、個々の仕事に集中する「がんばるタイム」という制度を設けていた。この間、社員の私語は禁止、電話も取らせず、不要不急の立ち歩きも禁止。総務が職場を回っており、違反した社員に対してはサッカーのホイッスルを鳴らしていた。この時間を設けてからは、社員の仕事の効率が目に見えて上がった。さらにこの時間以外でも、社員はあまり私語をしなくなり、会社全体が静かになった。


私の信念は、「人は、同じ情報を共有していれば、必ず同じ結論にいたる」という考えだ。どんな問題にもベストの答えがあり、それは情報を共有することで見いだせる。もし、結論にいたらなければ、一部の人だけが情報を持っていたり、お互いに持っている情報が違っているからである。


情報を共有化するという意味でも、会議は大切である。会社の決定について、なぜこのように決まったのか経緯を知らずに結論だけ聞くと、モチベーションが上がらず、効率が悪くなる。また、何か不測の事態が起きたとき、経緯を知っていれば臨機応変に対処できるが、結論だけ聞かされた人は、言われたことしかできない。


会議で決まったデッドラインが1カ月後だとして、締め切り間際にその仕事を始めたとしよう。そのときにはすでに時間が経過していて、会議で何が指示されたのかあまり覚えておらず、メモを頼りに仕事をするだけで、まったく面白みが出てこない。これに対し、会議の翌日にデッドラインを引いてしまえば、前日の熱気を保持したまま、すぐに仕事の内容に入っていくことができる。こうすれば、第一に会議での内容をよく覚えているので仕事の初速が速く、効率が上がる。第二に新鮮な気持ちのまま取り組めるので、仕事が面白い。人間はスピードに乗って仕事をこなしたほうが、楽しく感じられるということは、ほとんどの人にあてはまることだ。


デッドラインを引くときは、個人の都合よりも会社の都合が優先される。会社のために必要なことならば、多少は無理に見えても、そこに厳しいデッドラインを引く。私の経験では、デッドラインを引いてしまえば、多くの人が仕事の効率を上げて、そのデッドラインに合わせて仕事を終えてくれる。


追いつめられると人間は、「火事場の馬鹿力」とも言うべき力が出る。土壇場になって自分でも驚くような力が出たという話は誰でも聞いたことがあるだろう。次々にデッドラインを引くのは、集中力を高めこの「火事場の馬鹿力」を出してもらうためだ。


会議では、たとえば担当者に対して「この問題について、明日までに解決案をつくってきてください」と述べる。次の日に、その人が解決策を持ってきたら、「わかりました。それをやってください。経費は50万円でできるんですね」と確認し、「完了するのはいつですか」と聞いて、次のデッドラインを引いてしまうのである。それだけスピードを上げられたのは、優秀な部下ばかりがそろっていたからだと考える人もいるかもしれないが、そうではない。人間は、意図的にスピードを上げれば、次第にそれに慣れるものなのです。


仕事のスピードを上げるために行なった具体策は、次々にデッドラインを引くことでした。仕事を細かく分類し、第一段階の締め切りは明日、その結果を見て第二段階の締め切りはその翌日という具合に、締め切りで区切ることによって、作業のスピードを上げるようにしたのである。


トリンプの社長時代、スピードを上げたことによる多少の失敗は叱責しないことにしていました。失敗した人はすでに反省しているのだから叱る必要はなく、むしろ緊急対策を講じるべきです。事態が落ちついたら原因を分析して、再発防止策を考える。さらにそれは他の店舗や部署でも起こりうると想定すべきで、私はこれを「横展開」と呼んでいました。問題が起こっても、緊急対策、再発防止、横展開という手順を踏めばよいので、多少の拙速など気にすることはないのだ。


最初の時点で起こりうるすべての事態を想定すると、それを考えるために多くの労力を浪費する。もし第一段階で4パターン、第二段階でさらに4パターンずつがありうるとすれば、最初に16パターンを検討してから走り出すことになる。これに対し、走りながら考えれば、すでに第一段階の4つのうちの一つを選択し、その課題に直面しているのだから、検討するのは4パターンだけですむのである。


大企業では、9割くらいまで成功する確率が高まらないとゴーサインを出さない経営者もいます。しかしそれでは決断が遅くなり、チャンスを逃してしまいます。確率が高まるまで議論や調査を重ねることは、他社にチャンスを讓っているようなものです。


トリンプ時代に大きな成果をあげることができたのは、オーナーが日本の経営を私に思い切って任せてくれたことが最大の成功の要因だったと思います。オーナー企業のよさは、最近日本でも見直されていると聞く。株式を公開したことにより、無数にいる株主のさまざまな要求に応えるより、少数のオーナーのほうが、経営者もリーダーシップを発揮しやすいからです。私はそうした好運にも恵まれ、効率のよい経営ができたと自負しています。


欧米に比べて日本に一番足りないものは、自立した「個」である。日本では周囲に気を配らなければならない与件が多すぎる。もちろんそれは長所でもあり、日本人のフォロワーシップに表われている。人への気づかいが組織力となり、団結力を生んでいる面は確かにある。しかしその一方で、日本人にはリーダーシップを持った人材が不足しがちだ。リーダーは、自立した「個」でなければ務まらないからだ。


たとえ創業者の夢を尊重するにしても、それでもっていまの社員を束縛することは、ダイナミックな経営に資することなのでしょうか。経営とは、変化、創造の営みであると理解するならば、創業者の夢もまた例外ではなく、常に見直されるべきです。本来あるべき経営理念とは、その会社の日々の経営からほとばしるようなものであり、そのように表現せざるをえないかのようなものです。


仕事には担当者がいるのだから、担当者に思い切って仕事を任せるべきであり、そうしないと担当者も育っていかない。上司は会議で部下の動きをチェックすればよいのであって、いちいち「報連相」を義務づけていては、効率が上がらない。


仕事をあくまで人生の一部とし、遊びも重要だと考えるべきだ。一所懸命に働くことによって、多くのお金も得て、より楽しい遊びができ、楽しい遊びをすることによってリフレッシュし、集中して仕事ができる。定年後の遊びを楽しみにしているからこそ、それまで勤勉に働けるし、後進に道を譲られた会社も若々しさを保てる。


人生から仕事を抜いたら何も残らないような人ほど会社にしがみつきたがる。さまざまな肩書きで会社に残り、本人も気がつかないまま「老害」となる。私は会社に影響力のある人ほど早く引退すべきだと主張しているが、私の持論に賛成してくださる方でも、いざ自分が引退すべき年齢になっても、個室と秘書と車を用意されると、つい会社に居座ってしまう。その結果、古いやり方と前例が踏襲されて、若い人のやる気と創造性をそぎ、会社も時代に取り残されてジリ貧になっていく。


会社の理念とは、生きた経営の「イズム(主義)」でなければいけない。いまの日本経済には、こうした「イズム」が感じられない。いきいきとした生命力が失われており、日本全体が年老いて枯れているかのようだ。


行うべき行動を言葉にして紙に記すと、それは書いた時点で形骸化が始まってしまいます。野菜は収穫した瞬間から腐り始めるように、理念も文字にした瞬間から腐り始める。やがて理念は陳腐化し、過去のものとなり、遺物となる。会社においてあるべき理念とは、現に生きて動いているべきであって、経営者の仕事の仕方や生きざまを含めたものでしょう。


会社に経営理念はいらない。こう述べると顔をしかめる経営者は多いが、私はあえてそう明言しています。とくに日本の会社は、経営者が自分で考えたものではなく、何かの本を読んで拾ってきたような言葉を理念として掲げている場合が多い。学校の作文の宿題ではあるまいし、私に言わせれば、そんな理念はもう最初から落第です。会社において肝心なことは、作文の出来不出来ではない。現に行われている経営の出来不出来が問題なのです。


分かりにくいことほど、図にして説明するのが一番。明瞭で議論の余地のない図を示せば、相手はすっきりと納得し、「それはそうだ」と思うでしょう。


スキルアップの手段としても、読書は有効です。本は、WEBサイトで検索して調べるのとは違い、著者が一冊の中に重要なエッセンスをまとめてくれています。しかも金額はそこそこ安い。つまらないと思って、読むのをやめても惜しくありません。自分への最高の投資になります。


ビジネスで成功するためには、「根性」も大事な要素の一つ。「失敗しない方法は成功するまで続けることだ」とよく話をするのですが、物事を徹底してやることがそれだけ難しく、重要であるということです。


まず興味のある本を、とにかく多く読むことが大事。


日頃からさまざまなものに好奇心を持つことが大切。いつどんな場面で、自分の好奇心をくすぐるものと出会えるかわかりません。そういった機会はどこにでも転がっていますから、いつでもアンテナを張っていることが大事。


本を読んだらデッドラインを決めて、とにかく仕事に生かしてみること。そうすることで今まで見えなかった気づきを得られることも多いんです。


吉越浩一郎の経歴・略歴

吉越浩一郎、よしこし・こういちろう。日本の経営者。千葉県出身。ドイツ・ハイデルブルク大学留学後、上智大学外国語学部ドイツ語科卒業。その後、メリタジャパン設立に参加。同社プロダクトマネジャー経験後、トリンプ・インターナショナル香港に入社。トリンプ・インターナショナル・ジャパン副社長を経て社長に就任し、19年連続増収増益を達成した。日本経済新聞2004年平成の名経営者100人に選ばれた。数多くのユニークな社内制度を導入し、同社を大きく成長させた経営者。同社退社後はコンサルタントとして企業とビジネスマンに助言を与えている。主な著書に『残業ゼロの仕事力』『ムダな仕事はもう、やめよう』『2分以内で仕事は決断しなさい』『デッドライン仕事術』『仕事ができる社員、できない社員』『仕事が速くなる プロの整理術』など。

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