冨山和彦の名言 一覧

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冨山和彦のプロフィール

冨山和彦、とやま・かずひこ。日本の経営コンサルタント。東京大学法学部在学中に司法試験に合格し、卒業後ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に入社。スタンフォード大学経営学修士(MBA)取得。BCG日本法人社長を務めた。その後、コンサルティング・企業再生会社の社経営共同基盤を創業。以後、数多くの企業再生に携わった。主な著書に『指一本の執念が勝負を決める』『会社は頭から腐る あなたの会社のよりよい未来のために再生の修羅場からの提言』など。

100mを10秒で走る人のコーチは大変だけれど、30秒で走る人は真面目にやれば15秒くらいになる。当たり前のことをやっていればいいんですよ。


構造的な負け戦は、構造的に負け続ける。


事業と機能のポートフォリオ入れ替えが、ごく日常的にできる企業体であることが重要。


改革は外部もしくは、一度ラインから外れた人の方がいいでしょう。子会社や新興国に飛ばされ、外から見て「もたない」と分かるからです。


合理と情理の掛け算が人間力とも言えるのであり、その両方について、どこまで達人になれるかがリーダーには求められている。


瀬戸際になったとき、意外な人が力を発揮することがある。それが企業だ。


頭に血が上ると、冷静な判断は不可能になります。私も頭に血が上っている状態で即断即決し、失敗した経験が何度もあります。


「好奇心を持つ」ことは、ビジネスパーソンにとって欠かせない資質だと思います。好奇心に乏しく、周囲のことに無関心であることは、学ぶチャンスを自ら放棄しているようなものです。


ずっと同じことを考えていると思考が煮詰まってしまうこともあります。そういうときはスパッと切り替えることで、新たな発想もわいてくるのではないでしょうか。


重要なのはリーダーとしての立場で、とことん苦労してもらうこと。とりわけタフな環境の中で、それでも生き残った人をリーダーにすればいい。


ダメな会社ほど政策に期待する声が大きい。利益率の高い中小企業は山ほどありますが、彼らは政策に依存しなくてもうまく経営を行っている。


どぶ板営業の世界で実現しない戦略を語っても仕方がない。どぶ板レベルで起きることについてわかっていないと、いくら華麗な戦略を立てても頓挫します。


意識改革をしようと思うと、改革をして欲しいと言っている人間と、やらされる人間との信頼関係が大事になる。


割と皆さん、AかBかみたいな二項対立で議論することが多いんですよ。しかし、現実の経済の世界は二項対立ではありません。もう二項対立論で議論するのはやめた方がいい。


絶対に譲れないものをはっきりさせないで交渉していると、途中から交渉をまとめることが目的になりやすい。


大型投資のような大バクチができるような組織というのは、トップに権限が集中しているような企業。


大事なことは、間違ったと思ったときにどれだけ早く行動できるか。間違ったときの意思決定は引き算です。やめるということです。


経営レベルの意思決定は、かなりの部分が理性によってなされていると思いがちです。ところが実情とは逆で、理性とは遠い政治や情緒によって動くものです。


いかなる本も批判的に読むことが大事です。情報や考え方そのものを鵜呑みにするのではなく、著者が提示する問題意識や、ものを考えるときの方法論を学ぶのです。


教科書的な答えが存在しない時代です。本に書かれていることも、先人の経験談も、そのままでは通用しないということです。役員はこれまで以上に緊張感のみなぎる中で企業のかじ取りをしていかなくてはなりません。


株式公開は、アウトサイダーからリスクマネーを調達するということです。経営者には、アウトサイダーからの様々な付託に応える責任があります。それが嫌だというのなら、非公開企業にすればいいのです。


独立取締役の法制化は反対です。法律はどうしてもリスクを排除しようとするので、リスクを取らない経営者がよいという評価になりかねないのです。企業の活力を削ぐという両刃の剣のようなところがあります。人間の体で例えるとわかりやすいでしょう。風邪を引くのは仕方がありません。ただ、風邪から肺炎などの重篤な症状にならないようにするのがガバナンスです。ハードロー(法制化して強制すること)はどうしても過保護になり、風邪をひかぬよう無菌室にいろと言いかねないものです。


経営陣の暴走を防ぐ役割を担う独立取締役にとっては、社内の情報にどうアクセスできるかも大切なことです。


会社が傾いてくると、「なぜこの人が」という人物がトップになることがよくあります。本来なら、そんなときこそドラスティックな外科手術をしなければいけないのに、病んだ組織は、いかにも外科手術をしなさそうな無難な人を選ぶのです。社長指名委員会では、独立取締役が多数を占めていると、会社側も「これはあんまりだ」という人は出してこないものです。


名経営者といわれた人でも、長くトップに君臨しているうちに、坂道を転げ落ちていくことがあります。そのときに、社内の人たちは「そろそろ潮時ではないか」とは、なかなか言えないものです。だから、独立取締役が関与したほうがいい。


米国企業のトップであるCEO(最高経営責任者)は、日本企業とは比べ物にならないくらい、圧倒的な人事権、権力を握っています。だから米国では猛烈に強いCEOに対して、外部の独立取締役がまわりを固めて牽制するスタイルが多い。これが日本に合うとは思いませんが、だからといって取締役が内輪だけというのはおかしいでしょう。


日本企業には内輪の恥をさらしたくないというムラ社会的な発想もそうだし、決断できずに不作為を重ねていくという土壌があります。日本企業のコーポレートガバナンスに関しては、ムラ社会という共同体の住人ではない人が、監査監督に強くかかわらないといけません。


戦は失敗すれば死んでしまいますが、ビジネスでは負けても死にません。よく後継者候補を社内で一番強い部署に入れて勝ち戦を続けさせるという話がありますが、それはやってはいけないんです。それよりも負け続けて傷だらけのほうがいい。真っ先に負け戦から逃げる人物かどうかを見きわめるには、実際に負けないと分かりません。経営者候補はタフな環境に置いて、10年くらいかけて育てていく必要があります。


環境が悪ければ負け戦が増えます。でも、負け戦のほうがその人の資質が見えやすい。責任回避に力を注いで、先を争って負け戦から逃げるようではダメ。


これだけ社会環境の変化が激しく、破壊的イノベーションが次々と起きて、強力な競合他社が生まれてくる中では、リーダーはかなりシビアな意思決定をしてその結果を背負わなければなりません。


倒産を恥とする考えは捨てるべきです。ドイツでは経営者が経営不振に陥っているのに、それを隠したまま数多くの会社と取引を続ける行為は詐欺と見なされます。経営者が早めに手だてを打たなければ、従業員や取引先、金融機関など幅広い関係者に迷惑を掛けてしまうのです。


「会社や上司が悪い」とすべて環境のせいにして、思考停止してしまうのは一番よくありません。


やる気の源は「人のために役立っている実感」です。金銭的なリターンだけでは頑張れる自信がありません。


私は、「大企業の管理職は半分に減らしても業務は回る。むしろ減らしたほうがスピードアップする」とよくいっています。管理職の人は「自分たちだって忙しい」というかもしれませんが、その仕事の多くは社内調整のための会議や打ち合わせで、売上アップにもコスト削減にもつながっていません。じゃあなんでそんな無駄なことをやるかといえば、失敗したときに一人で責任を取りたくないからです。


モチベーションが高まるのは、やりたいことをやっているときと、自分の成長が感じられるときです。未経験の苦手な仕事なら、少し何かを覚えただけでも、成長を感じられるので、モチベーションが高まりやすいのです。


「いまの仕事はやりたいことではない」と自分探しの旅をする人がいますが、やりたい仕事とは、出会った仕事に一生懸命取り組んで、初めて出てくるもの。社外で自分探しをしても見つかりません。まして30代後半~40代の人が、そんなことをすべきではない。


最初はモチベーションが低くても、実際にやってみたら、あとから上がった、ということも少なくありません。だからいろいろ試してみるといい。そうして、何かに情熱を注ぎ込んでいれば、必ず得るものがあるはずです。


諸外国のビジネスパーソンと比べて、日本のビジネスパーソンは教養がなさすぎ、勉強不足すぎです。仕事のモチベーションが上がらないなら、自己研鑽に対するモチベーションを上げる時期があってもよいと思います。


出世競争も、かつては一恥度負けたら終わりの「トーナメン卜戦」でしたが、いまや多くの会社で「リーグ戦」、あるいは「敗者復活戦」になっています。トーナメントを勝ち抜いた人が業績不振で排除され、傍流にいた人が大抜擢されることは珍しくありません。そうして再び陽の目を浴びたときに、自己研鑽が役立つのです。


どうせやらなければならない仕事なら、モチベーションを少しでも上げたほうがいい。会社のせいだと嘆く前に、何か自分を奮い立たせるテーマが設定できないか、あがいてみるべきだと思います。


自分自身の実力を客観的にみる視点をもつことが重要です。ただ、自分の姿を客観的にみることほど難しいことはありません。正確に見極めるためには、周囲の同僚や知人に意見を求めたほうがよいでしょう。ただし、冷静な視点だけだと、冒険をしなくなりますから、「この仕事をやりたい!」という主観的な意志をもつことも必要です。その2つのバランスを取ることは、モチベーションコントロールの重要な鍵といえるでしょう。


「自分はこの程度の仕事しかできない」と過小評価をしていると、冒険することなく、簡単にできる仕事しかしなくなります。だから成長している実感が得られず、モチベーションが上がらないわけです。


自分に対する評価の誤りが、モチベーション低下につながっているケースは少なくありません。たとえば、過大評価していれば、「俺はもっと難しい仕事ができるのに、なぜこの程度の仕事しか与えられないのか?」という考えをもってしまいます。すると、腐ってしまい、目の前の仕事に身が入らなくなる。あるいは、自分の能力をはるかに超える仕事を引き受けて失敗します。すると、自分自身がショックを受けるだけでなく、周囲にも迷惑をかけることになるでしょう。


これまでの仕事のなかから、「やり甲斐を感じる仕事」「自分に向いていて、さらに才能が伸ばせそうな仕事」を考え、その2つが重なり合った仕事を見つけましょう。その仕事に集中的に取り組んでいれば、さらに得意になるので、いい仕事ができ、周囲からのオファーもますます舞い込むようになる。そうすれば、モチベーションも上がるはずです。


30代後半や40代にもなれば、選択肢が狭まることは当たり前。それをうじうじと考えていても、時間が過ぎていくだけです。


瞬間的な集中力は、ポストが上になればなるほど必要となります。経営者ともなれば、さまざまなテーマの案件に関して、次々と決断を迫られます。マネジャークラスでも必要になってきますから、若いうちから鍛えておくことをお勧めします。


よく「仕事が忙しくて勉強する時間がない」という人がいますが、そういう人は「勉強は自宅の書斎でじっくりやるもの」と勘違いしています。多忙なビジネスマンにそんな時間は未来永劫やってきません。勉強するには、細切れ時間を使うしかない。そこで、瞬間集中力が役立つわけです。私自身、20代のころ、仕事に家庭に夜遊びに忙しいなか、留学のための勉強をしたのですが、瞬間集中力がなければ、留学は叶わなかったでしょう。


仕事が速くなるために一番よい方法は、自分の処理能力をはるかに超える仕事量を抱えること。これなら、イヤでも身につきますね。そこまでしなくても、「○時○分までに~をやる」と時間を区切ったり、日ごろからすぐに集中するように心がけたりすれば、徐々に変わってくると思います。


「どの選択肢が最も後悔しないか」を基準に考えるのもお勧めです。普通は「どの選択がベストか」という基準で考えるものですが、現実にはどれを選んでも失敗する可能性が必ずあります。すると、「決断しない」という選択に逃げ込みがちになります。一方、「最も後悔しないのはどれか」を選択基準にすると、後悔する選択肢の消去法になり、何かを選ぶことになりやすいのです。


本当に無責任になっちゃダメですが、でも、一瞬でも「どんな結果になろうが俺のせいじゃない」と無責任になると、フラットな立場での結論がみえてくる。それが、決断の後押しになります。


決断が遅い人は、頭の回転が遅いわけではないと思います。おそらく、「ちらつく」ことに弱いのではないでしょうか。決断を誤り、上司や取引先から責め立てられる自分の姿、自分の決断で不利益を被った人が怒る顔……。そんなイメージがちらつくと、頭から離れなくなり、決断ができなくなる、ということです。もちろん、鈍感すぎてもいけませんが、とらわれすぎていては、いつまで経っても判断できません。


仕事が速い人の特徴は、決断に至るまでの速さでしょうね。管理職にかぎらず、平社員の人でも、仕事の大半は何らかの決断が伴うものです。そこまでに至るスピードが遅ければ、仕事はだんだん山積みになりますよね。


若手の方々にぜひやってもらいたいのは、自分の組織を観察し、「なぜこの組織は効率が悪いのか」「何をどう変えれば、効率がよくなるか」を分析することです。部下時代には「ウチの上司は非生産的なことばかりやっている。自分が管理職になったら改革するぞ」と思っていたような人も、いざそのポジションに就くと、前任者と同じ非生産的なやり方を無意識でやってしまうもの。そうならないためにも、部下時代の観察・分析がとても重要なのです。


ワークライフバランスの一番の問題は日本企業の意思決定の方法にあると思います。日本企業の物事の決め方というのは、昔からほとんど変わっていないんですね。いまでも、すべてのキーパーソンから合意を得られないかぎり物事が決まらない「コンセンサス方式」が、圧倒的に主流です。この方式の弊害は、みなさん重々ご存じでしょう。関係者全員に根回しをするだけでも時間がかかるうえ、たった一人の反対で仕事がストップしてしまう。その煽りを受けるのは、一般社員ですよね。手待ちの状態が続いたあげく、期限ギリギリに決定が下され、それでも期日は元のまま。そうなれば、残業せざるを得ません。


会社でも社長や会長だからといって、周りが言うことを聞いてくれるわけではありません。みんな苦労しています。


参謀には一般的に、血も涙もない嫌なヤツのようなイメージがあります。しかし、実際には、アルフレッド・マーシャルが「クールヘッド、ウォームハート」と言ったように、頭はクールでなければならないが、心は温かくないと人はついてきません。


得てして日本人は、何とか家や何々会社のようなムラ組織に入ってしまうと、ムラの空気を読んでそこに合わせるという行動原理になりがちです。


好奇心をわき上がらせるコツは、お金と時間を惜しまずに、なるべくナマで実物に触れること。いまはネットで何でも見られるかもしれませんが、平面になると、100表現されているうちの10くらいしか伝わってこない。ナマで観ると100のまま伝わりますから衝撃も大きい。それが好奇心を刺激して、もっと知りたいという欲望につながっていきます。


教養の源泉は好奇心です。勉強だと思って本を読むとすぐ眠くなりますが、知りたいという欲望があると寝る間を惜しんで読んでしまうものです。


負けから逃げたり責任逃れに終始すれば、周りから信頼を失うだけです。負け戦から逃げたら、敗因分析もできないじゃないですか。負けたときにきちんと敗戦処理までやれば、その経験を次に活かすことができます。しかし逃げたら何も残らない。どのような立場でも、負けを自分のものとして受け止めて学んでいく。その姿勢を持った人はスキルも伸びるし、人間性も高く評価されるのです。


負けを必要以上に恐れる必要はありません。以前ヒットしたドラマ『半沢直樹』で、関連会社に出向になった銀行員が人生終わりだという表情をしていましたよね。でも、失敗して出向の憂き目にあっても、給料や年金は保証されています。日本の大企業に勤めるサラリーマンは、負けてもその程度です。


卑怯な人には重要な仕事は任せられません。とくにダメなのは、保身のために嘘をついて逃げる人。自分が生き延びるためにつく嘘は良くない。それだけで信頼を失います。そういう嘘を一度でもついた人は評判がすぐに広がります。


スティーブ・ジョブズは、未来に向けてドット(点)をつなげるのではなく、現在から過去を振り返ったときに初めて、これまで打ってきたドットがつながるといいました。人との出会いや仕事も同じ。若い頃からひとつひとつドットを打ってきた積み重ねが40代でひとつの絵になるのであって、それが美しい絵になるのか、醜い絵になるのかは、後にならないと見えてきません。だから、「この人は将来、偉くなりそうだから仲良くしておこう」という考え方は危ない。タテヨコ関係なく、誰に対しても誠実であることが重要です。


偉い人に好かれていればいいと勘違いする人がいますが、それは間違いです。偉い人にだけペコペコしていて、そうではない人を軽く扱う人もいますが、軽く扱った人の中から将来すごく偉くなる人も出てきます。その結果、本人は覚えていないけど、昔の行ないで恨まれているというケースが少なくない。実は私も逆の立場で、「あの人には無名の頃ぞんざいに扱われた。絶対許さないぞ」という人が何人かいますからね(笑)。


チャンスというのは誰かが授けてくれるものです。自分で勝ち取ったように見えるチャンスも、誰かが認めてくれたからこそめぐってきたわけです。若い頃、「この仕事はつまらないから適当にやろう」と腐っていた人に、誰もチャンスをやろうとは思いませんよね。その点でも、目の前の仕事に真摯に取り組むことは大事です。


若い頃は、自分の希望と合わない仕事を任されることも多いはずです。でも、一見ダサく見える仕事やつまらなく感じる仕事こそ、OJTの良い機会になると思って取り組んだほうがいいでしょう。


必要なスキルを一気に身につけるというのは無理です。スキルは一朝一夕に磨けないので、時間をかけてひとつひとつ身につけていくしかない。たとえば30歳で留学することを目標にTOEICで800点取ると決めたら、カラオケやゴルフの回数を減らしてコツコツやっていくしかないと思います。


ビジネスパーソンには、大きく二通りの生き方があります。ひとつは、自分でコントロールできる割合は少ないが、ある程度は組織が守ってくれるという生き方です。これは大きな船の乗組員になるようなものです。一方、大きな船より沈みやすいけれど、自分でコントロールすることができるヨットのような生き方もあります。


何歳だからこのスキルが必要という以前に、自分の世界観にあった働き方を考え、それに必要なスキルを身につけていくことが重要ではないでしょうか。


20、30代でいい加減なことをやってきた人は、いくらスペックが高くても、どこかで悪評が立っています。社内外にかかわらず、重要なポジションに就く人を評価するときは必ず照会を取るので、そういう人はすぐにバレる。つまり40代はこれまでに蓄積してきた信頼性を改めて問われる時期と言えるでしょう。


40代の特徴のひとつが、スペックから固有名詞の勝負に変わることです。30代までは、TOEICが何点だとか、何かのスキルを持っているというスペックによる転職が可能です。つまり求められるスペックを満たすなら、どこの誰でも基本的には構わないわけです。しかし、40代に入ると、スペックだけでは通用しません。それよりも大切なのは、「○○さん」「××さん」という一人の人間としての評価。具体的に言うと、「○○さんって知ってる? 信用できる人なの?」という関係性の中で評価が決まるのです。


世の中におけるファクトを最終的に把握する手段は数字であるのと同様に、会社におけるファクトをもっとも客観化できるのは会計経理。したがって、リーダーは簿記会計に強くなければいけない。


自分の見識に自信を持つのはいい。しかし、ファクトは見識とは異なる。要は、雨が降っているときには、雨が降っているという現実を前提にして物事を考えること。雨が降っているのに「今は晴れているはずだ」とがんばってもムダなのである。


人間は「自分の見たい現実」を見たがる動物だから、自分がこれまで手がけてきた事業をはじめ、立場も含めてすべてを忘れて、ありのままに現実を見ることは非常にむずかしい。経験「則」という以上、自分自身の経験を規範化しているので、その色眼鏡をはずしてファクトを静観するのはむずかしく、強い意志が必要である。


誰もが、長年培ってきた経験則や成功体験という色眼鏡をかけている。それをどこまではずし、白地でファクトを見つめられるかが、組織のリーダーにとって最大のチャレンジである。


改革によって、あとには戻れない不可逆的な変化が起きるとすれば、先の長い若い世代の人たちほど、それに適応しようとするものだ。だから一般論で言えば、若い世代を味方につけたほうが、リーダーの権力基盤は揺らぎにくくなると言える。


全社的視点から合理的に見て正しいと思われることが、実は組織の構成員にとって必ずしも喜ばしいものではないことは多々ある。したがって、組織のリーダーにとって、抵抗がないほうがおかしい。組織の全構成員が賞賛するような改革は、絶対にありえない。つまり、改革を試みて抵抗がなかったということは、本質的には何もやっていないことと同じなのだ。


世の中の不確実性やリスクが高い時こそ原理原則に立ち戻る。


自分たちは世界のモノづくり企業のどこに位置するのか、そこで本当に持続的に通用する自分たちの強み、すなわち「稼ぐ力」の源泉は何なのか、全力を尽くして情報を集め、徹底的に突き詰めることからスタートする必要がある。


現代のグローバル大競争下のモノづくり企業には、栄光か死以外に道はない。栄光への命懸けの挑戦に乗り出すか、そうでなければ身売りあるいは廃業を決断するか。いずれにせよ経営者の真の意味での覚悟が問われている時代である。


自社の特徴を「カネ」にする上で足りない機能、例えば自らの真の価値を「正当な価格」で世界の顧客に売り込む機能がないなら、人材スカウトやM&Aを含め、あらゆる手立てを尽くして補わねばならない。


必要なのは、「全員給与一律カット」のような痛み分けではない。何かの事業をやめる、あるいはファブレスにして製造部門を切るというように、思い切ってメスを入れる。多くの日本の電機メーカーは、この「縦にメスを入れる」スピードが非常にゆっくりだった。それが世界のエレクトロニクス、特にデジタルの要素が強い領域のスピードど全然合わなかったのが構造的な敗因です。


企業が大ばくちを打つために必要な条件のひとつは、ワンマン経営であることです。ワンマン経営は松下幸之助や盛田昭夫といった創業者の時代で終わっている。今のように熟議を尽くし、ボトムアップで物事を決める日本企業には、基本的に向いていない。日本の電機メーカーは、パワーゲームではノーチャンスです。


アップルのような買い手は、メジャーな部材の価格は徹底的にたたきにくる。もしこれが接着剤や、フィルムのバックライトで使う蛍光材料といったマイナーな部材なら、値下げ要請もそう強くない。全体の構成比率は小さいが、そこでトラブったら致命的になるデバイスやコンポーネントが一番儲かる。今の時代は「スモール・バット・グローバル」が強いんです。小さいけれど世界を独占できる、そうした部品を100個持っている会社のほうが、メジャーな部材を1個持っている会社より絶対的、安定的に高収入。村田製作所しかり、日本電産、京セラしかりです。


デジタル、ITのビジネスで勝つには、不連続なイノベーションを起こす力が必要だ。しかし、終身雇用と年功制で30年以上の歴史を持つ日本企業には難しい。米国でも同じことで、ゼロックスは要素技術を持っていたが、イノベーションを起こしたのはアップルだった。GEはウェルチの時代にイノベーションをあきらめた。コンピュータや半遺体をやめて、残したのは白モノと重電だった。


日本の電機メーカーでも利益を上げている部門や事業には共通点がある。部品点数が多くて、メカトロニクスで、熱力学がかかわっている。いわばアナログの世界であり、白モノ家電や、住宅設備機器などがそうだ。気象環境によって耐久性が異なるうえ、熱を加えたり水を使ったりとある種、過酷な使い方をする。メカですから、いつかは部品が磨耗し、熱変性を起こして壊れる。こうした分野では、蓄積された連続的なエンジニアリング技術の差をなかなか埋められない。ローテクっぽく見えるもののほうが、意外にテクノロジーとしてはるかに奥が深い。ですから白モノはよその国から入ってくるのが難しい市場であり、ディフェンスの障壁が作れる産業です。


半導体産業の初期は、半導体メモリを造ること自体にものすごく高度な技術が必要で、参入障壁が高かった。ところがデバイスとしてメジャー商材になり、大量生産が始まると、いつしか技術の固有性が希薄になっていった。一流の製造装置メーカーの装置を買いそろえ、技術者を引き抜いてくれば、誰でも同じものが高い歩留まりで造れるようになる。するとパワーゲームが始まる。適切なタイミングで集中的に巨大な投資を、つまりは大ばくちを打てる者が勝つゲーム。このゲームでは、賃金や税金や部材が最も安い場所で造るのが正しい。


経営者の資質は普通にサラリーマンをやっていて身に付くものではありません。海外のボロボロの子会社社長など最高責任者に近い立場で、死ぬ思いをしなきゃだめ。理と情の間に挟まってきつい思いをさせるのです。苛烈で悲惨な戦線に30代から送り込む。従来のノンエリートコースが、エリート養成の最高の場所です。


事業と機能のリシャッフルは早くした方が、その機能しか担えない人たちが仕事を失うリスクが小さくなる。事業価値があるうちに勝ち組に売却すれば、社員はより長く働け、給料も恐らく増える。


ガバナンスの本質は「企業における最も重要な意思決定をどうするか」。


ガバナンスで大事なのは平時。それが利いていないから有事を招くことになる。


本に書いてあることを鵜呑みにはせず、場合によっては「それは違うだろ」とシニカルな視点で読んでいます。司馬遼太郎やマキャベリなど、評価の高い名著にも、遠慮なく突っ込みを入れます。そうやって考えながら読んだほうが、人間理解がより深まっていくはずです。


私はなるべく夜中にメールを打たないようにしています。もちろん、心の中にモヤモヤを残したまま寝たくないので、メールはすべてその日中に処理してすっきりしたいところですが、これが失敗のもと。とくに複雑な案件は、翌朝もう一度考えてから送るようにしています。


一晩かけて書き上げたラブレターを翌朝読んでみたら、思わず赤面するほど恥ずかしいことを書いていたという経験、誰にでもありますよね(笑)。それと同じで、頭に血が上っているときは判断を間違えがち。あえて即断即決せず、一晩頭を冷やす。そして、朝、もう一度考えてみる。そこで昨晩と同じ結論なら、初めてそのアクションを取ればいいのです。


まったく意見の異なる人と激しい議論をする際、お互いに頭に血が上ってしまうと、議論は平行線をたどるばかりです。半分は熱くなりながらも、半分は冷静になり、「そもそもこの人は、なぜこんなに怒っているのだろうか」「ここまで強硬に反対するのは、なぜだろうか」といったことに好奇心を持ってみる。すると、冷静かつ客観的な視点で眺めることができ、議論を優位に運ぶことができる。


私は、昔から集中力が続かないタイプです。数分の集中力には自信がありますが、1時間もすると一気に生産性が落ちる。要は飽きっぽいのです。だから、飽きたら無理に続けずに次の作業に移ってしまう。結局、そのほうが集中力が持続するのです。


日本の生産性の低さはチャンスでもあります。生産性が低いということは、上げる余地が十分にあるということ。それだけ賃金も上昇する可能性があるわけですから。


日本の会社では、村の空気を読んで無茶なことをしない人のほうが据わりはいい。ヘタにトップダウンでやろうとすると、下克上で首を取られます。一時期、いくつかの日本の電機メーカーがトップ人事でゴタゴタしていたことがありましたよね。あれは、織田信長のような手法への抵抗です。現代における「本能寺の変」でした。


なぜ中国人や米国人に日本人が交渉で負けてしまうかというと、理由は簡単。日本人はまとめることを目的にするからです。中国人や米国人はまとめることを目的にせず、自分にとって最大の成果を引き出すことに集中する。交渉は、マイナスの妥協をするのだったら、何もしないでニュートラルでいるか決裂した方がいいんです。日本人はまず交渉する時のマインドを変えないといけないでしょうね。


単にギャーギャー言うだけの人は、交渉で成果は勝ち取れない。そこで何かを得たとしても、あとでいろいろな弊害が起きてきます。ギャーギャー言いながらも、相手の反応を観察し、冷静に状況を見つめているような人でないと、本当に強い交渉者にはなれない。


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冨山和彦の経歴・略歴

冨山和彦、とやま・かずひこ。日本の経営コンサルタント。東京大学法学部在学中に司法試験に合格し、卒業後ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に入社。スタンフォード大学経営学修士(MBA)取得。BCG日本法人社長を務めた。その後、コンサルティング・企業再生会社の社経営共同基盤を創業。以後、数多くの企業再生に携わった。主な著書に『指一本の執念が勝負を決める』『会社は頭から腐る あなたの会社のよりよい未来のために再生の修羅場からの提言』など。

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