上野和典の名言

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上野和典のプロフィール

上野和典、うえの・かずのり。日本の経営者。玩具会社大手バンダイの社長。神奈川県生まれ。武蔵工業大学(現:東京都市大学)工学部卒業後、玩具メーカーのポピーに入社。ポピーがバンダイ吸収合併されバンダイに移る。自販キャンディ事業部、ライフ事業本部、キャラクター・トイ事業ゼネラルマネージャーなどを経て同社の社長に就任

人は同じ場所にいると変われなくなる。成功体験や業界の慣習に縛られ「本来の当たり前」ができなくなる。


「お客様の視点が必要」って誰でも知っているはず。でも大切なのは「知っていること」じゃなくて「動けるか否か」なんですよ。


僕はいつもシンプルに物事を考え、決断してきた。ごちゃごちゃ余計なことを考えるから、失敗しちゃうんだ。シンプルに本質に迫ることは解決への近道。


趣味は料理です。経営と料理って似ているんですよ。仕事も味付けもシンプルに、食べる人の視点でつくると。


ガムシャラに働く時期は絶対に必要。僕自身そうだった。でも5年も経ったら、意識的に時間をマネジメントしないとね。


自分の目標を設定して逆算してみることが大切。意外にも時間って無いよ。


「必ずウケる」との決めつけは、発想を縮小させる元にもなる。「昨日良かったから今日も、明日もいいだろう」と考えてしまうと必ず失敗する。


引き際も即断することが重要。難しいと思ったらすぐにストップ。中途半端な修正案など出さず、すぐ引き上げます。


売上げ予測を大きく下回る商品は、少々の修正ではリカバリーできません。ならば、振り出しに戻すのが一番です。


良い企画は強いインパクトを持ちつつも、周囲を置き去りにはしません。情熱と新規性、そして周囲を見る視点とを兼ね備えています。


とことんアイデアを絞り出すことで、初めて良いものが生まれる。


放置しておくと、みんな去年の続き、安全パイの仕事しかやらなくなる。経営者から見れば、守りばかりやられても困る。


僕は、説得で変わる人間なんていないと思っているんです。だから部下に対する会話でも、頭ごなしに命令するのではなくて、自分で気づくように持っていくことを意識しています。それにはやはり、相手のペースに合わせるのが一番なんです。


「これをやろう!」と決断したときにすぐに投資しないと他社に持って行かれます。資金的には常に余裕がある状態を保っておきます。


人にはそれぞれ長所と短所があります。それが個性なのですが、考えてみると私は短所を直すことより、長所を伸ばすことでここまで来ました。ですから相手の長所も尊重しようと考えています。たとえそれが自分のこだわりと違っていても、思い切って任せる覚悟が必要です。


若いころは無駄に思える仕事も積極的に引き受けていました。一見無駄でも、実際にやってみると自分の幅を広げてくれることが多いからです。


仕事の中の無駄をどうやって浮かび上がらせるか、それにはできるだけ残業しないことがひとつの効果的な手法だと思います。私は部長になったころから、家族と過ごす時間を増やすために極力残業をしなくなりました。よく、仕事が早いから残業せずに済んだのかと聞かれますが、実際は逆です。リミットがあるのでポイントに絞って仕事せざるを得なくなり、仕事の中の無駄がよく見えるようになったのです。


人に仕事を任せるときは、自分のこだわりを棚上げする割り切りも大切です。仕事をする際にこだわりは必要ですが、任せた仕事に関してこだわりを発揮すべきは、自分でなく相手の方です。にもかかわらず自分のこだわりを押し付けると、相手は振られた仕事に楽しみを見いだせずやらされ感が増していきます。


いい企画を生み出せるかどうかは、情報量に左右されます。情報には、言葉や数字で明確に示せるデジタル情報と、言葉では伝えられないアナログ情報があります。このうち大ヒットする可能性を秘めた企画のもとになるのは、アナログ情報のほうです。上手く説明できないけど売れそうな気がするというアイデアは、アナログ情報の集積の中から紡ぎだされます。とくに人の感性に訴えかけるエンターテインメント業界では、この傾向が顕著です。


世の中は会社ではなく、お客様の都合で動いています。ですから、会社を一歩出たら、一人の消費者としてアンテナを立てます。これでアナログ情報に対する感度もぐっと高まります。とくにマネジメント層は、会社のロジックが体に染みついているものです。意識して自分をリセットすることが重要です。


私は定時に仕事を終えると、好奇心のおもむくままに街をぶらつきます。行列ができている店があればとりあえず並び、隣に座った人に話しかけたりもします。社長になってからは車で移動する機会が増えたので、ときにはわざわざ帰りのラッシュの電車に乗ることもあります。とにかく社内にいてはわからないことを積極的にやっています。


2009年の夏、東京お台場に登場した実物大のガンダムが話題を呼びました。動員は415万人。目標は150万人でしたから、予想を超えたヒットイベントでした。成功した理由を後付けで説明することはできます。しかし、それを事前に説明することはできません。というのも、お台場ガンダムは直感でひらめいた企画だったからです。発案当初の企画書にはもっともらしいことを書きましたが、本当は企画趣旨をロジカルに説明することすら難しかったのです。


定時までに片づけなくてはいけないと思えば、否が応でも集中力が高まります。とはいえ、いきなり残業をゼロにするのは難しいかもしれません。ですから最初は無理をせず、残業しない日を段階的に増やしていけばいいと思います。


時間がないと思えば集中力も増すものです。社長になってから、私は社員の子供の誕生日に直筆の誕生日カードを送っているのですが、その数は月平均50通です。私はスキマ時間を活用して、1日か2日で一気に書き上げています。会議と会議の間の15分でもトップギアで集中できるのは、これが締め切りのある誕生日カードだからです。誕生日までに発送できなければ受け取る相手に失礼です。差し迫った状況を自分でつくることで、エンジンをかけているのです。


基本的に向こうからやってくる仕事の中に無駄なものはないと考えています。なんでも引き受けていると大量の仕事を抱えることになりますが、結果的にそれが仕事のスピードを上げることにつながりました。仕事自体を断るのではなく、仕事の中に潜む無駄を省きつつ、短期集中で次々に片づけていくスタイルが身につきました。


いま私は日本玩具協会の安全環境委員会で委員長を務めています。専門知識がかなり必要な仕事であることから、正直なところ最初は気が進みませんでした。ところがちょうどそのころ、海外で鉛入り玩具が問題になり、あるメーカーの会長が記者会見で答弁をしていました。それを見てトップがこうした問題に鈍感ではいけないと思い、前向きに取り組むようになりました。幸い、いまは委員長の仕事を引き受けたことで、専門知識が身につき、非常に役に立っています。もしあのまま無駄な仕事だと考えて敬遠していたら、必要な知識を得るチャンスも逃していたでしょう。


私は普段、仕事の優先順位を意識することはほとんどありません。目標に向かって必要なことだけをやるようにしているので、それに合致しないものにはそもそも手を付けないのです。


仕事を他人に任せるとき目標が難解だと、相手が迷ってしまいます。自分が課題を克服するときと同じで、重要なものを3つ共有できれば、あとは放っておいたほうがいいでしょう。


部下の個性に任せると、自分の意図と正反対の方向に行ってしまうのではないかと心配する人も多いでしょう。しかし、最終的に同じ海にそそぎながら、川の流れは曲がっていてもいいのです。河口で待っていれば、川の流れを無理に変えようとしなくても、いずれ水は流れ込んでくるからです。ただし、きちんと同じ海に向かって流れてもらうためには、目標がシンプルでなければいけません。


仕事で周りの協力を引き出すには、いくつか条件があります。まず頭をパラレルに動かすのではなく、毎回切り替えることです。普通は複数の案件が同時進行しているので、前の会議の内容を引きずったまま次の会議に臨むと、的確な指示ができません。


社長を含め、管理職の仕事の半分は、誰に何をやってもらうかを決めることで占められています。私が自分で実務を担当しているのはCGO(チーフガンダムオフィサー、最高ガンダム責任者)くらいです。管理職はたくさんの案件を抱えているものなので、周りに協力を得なければ仕事を処理できません。仕事のスピードは人を上手く巻き込めるかどうかにかかっています。


難しい交渉の場面では、「NOと言われない話し方」を意識します。「ここまではいいでしょうか」と、どこまでが合意できるのか、その確認を目標にするのです。結論を急いでYESをもらおうとするから、お互いが「白か黒か」という心理状態になって話が続けられなくなるんです。そうではなく、たとえ繰り返しになってもお互いが了解できる事柄について話をした方がいい。そうすることで、徐々に「何を譲歩すればいいか」が見えてきて、次につながる有益な対話ができるようになるのです。


熱意といっても、自分の考えを押し付けるような、独りよがりはダメです。「お客様をどう満足させるのか」という発想からスタートしていなければ、ヒットする商品は作れません。


バンダイでは、企画を立てた「言いだしっぺ」が実行する決まりになっています。企画書はいわば当人のやる気を示す「宣言書」なのです。よって「私が責任を取るので、勝負させてください」という熱意が伝わってこない企画は、まず通りません。


最近の当社のヒット商品に、大人向けの仮面ライダー変身ベルトというものがあります。これは「ウエスト110センチの変身ベルト」というキャッチコピーから生まれたものです。このキャッチは、コンセプトと使用機会が一言で明示されており、これが商品のメインターゲットである30代後半から40代男性の気持ちをつかんだことでヒットしました。


企画の第一段階では、大多数を対象に考えるのではなく、まず自分の子供など身近な人物をイメージして考えた方が、アイデアがより具体的になります。次に、そこから一歩引いて、これがマジョリティ(多数派、多数者)にも通用するかどうかを検討します。そして仲間とのブレスト(ブレイン・ストーミング、自由に意見・アイデアを出し合うこと)を繰り返します。もとのアイデアが良いものほどブレストも活発になり、どんどん意見が出てきます。


いい企画書には、読者の共感を得る工夫が端的に示されている必要があります。そうした商品は企画の段階から成功の筋道が見えているものです。


当社の優秀な企画マンは、自分の考えのみに固執せず、人の考えを噛み砕いて、再構築し、見事に自分のものにしています。


なかには企画したらしっぱなしで、売上に無頓着な人もいますが、仮にもビジネスマンなら、自分の担当する仕事の規模や会社の貢献度について把握しておくべきです。


失敗には必ず原因があります。失敗することで自分の弱点が見えると思えば、ラッキーだったと思いこそすれ、悔やむことではありません。そうやってポジティブに考えれば、失敗を恐れる必要はないと思います。


当社では、社員が失敗したとしても、「損を出した分を返せ」と上司からしつこく責められることはありません。かといって、そのまま放っておいていいわけでなく、自分の失敗は自分で返すしかないのです。それもすぐにです。3年もかかって返すのでは遅すぎます。社長でさえ、会社の業績が悪くなったら、2~3年で回復させるくらいのスピードが必要とされているのに、ミドルポジションのビジネスマンなら、失敗は瞬時に返すくらいの意識がないといけません。ですから、トライ&エラーのサイクルは短ければ短いほどいいんです。


自分が主体となってトライ&エラーを繰り返すことは、自分の実力値を知ることにもつながります。「自分の企画した商品がこれだけ売れた」「結構儲かるものだな」といったように、自分が稼げる範囲がわかるのです。自分の実力値を知ることで、「これくらいの失敗だったら、次で挽回できそうだ」といったリスクヘッジの能力も身につきます。


私は「失敗は天命」だと思うことがよくあります。最初に部長に就任したとき、取引先の大手問屋が倒産しました。倒産が会社に与えた損失は大きく、私は自分がクビになるのではないかと思って落ち込みました。でもよく考えたら、自分がその問題に疎いからそうなったわけで、「これは天命だ」と思ったわけです。そのあとは社内の経理の人に教えてもらうなどして必死に勉強しました。1週間後には、まるで管財人かのような豊富な知識が身につきました。


成功の見込みがないと判断したら、速く見切りをつけるのも重要です。私自身、現場を担当していたころは、とにかく速く切り替えるようにしていました。撤退しながら次のプランを考えるんです。失敗を瞬時に返せる人は、代替のアイデアを豊富に持っています。


失敗を打ち返すスピードの速い人は、当然のことながら仕事のスピードが速い人です。彼らと他の人との違いは何かというと、「できることはすぐさま実行に移す」ということです。たとえば、プロモーションにお金がかかりすぎて実現不可能だとしたら、落胆するのではなく、お金をかけずにできる方法を考えてみる。代替案が思い浮かんだらすぐに実行する。その違いです。


我々の業界では、ひとつのヒット商品が出ると、すぐそれを真似た類似商品が市場にあふれますが、当社ではなるべく類似品はつくらないようにしています。新人のころは他の商品の真似でもかまいませんが、必ずそこに自分たちの強みを乗せることで、オリジナリティを出すようにしています。


失敗から学べる人は、ここが重要なポイントですが、自分の考えが起点となって仕事やプロジェクトに挑戦できる人です。実際は、なんとなく流されている人が意外に多いものです。たとえば、「いまはこれがブームで他社もやっていますから、うちもやりましょう」というのは、巻き込まれている人です。こういう人が失敗しても、「競合他社の方が強かったから負けました」という結論になりがちで、失敗の根本的な原因に気づくのは難しいでしょう。


明らかに危なっかしいと思うことでも、たいていのことは社員にチャレンジさせています。その結果失敗しても、許そうという雰囲気が社内にはあります。もちろん失敗の規模にもよりますが、多少の損は仕方がないと思っています。失敗を奨励しているわけではありませんが、なぜ失敗したのか、自分の仕事のプロセスでどこが間違っていたのかに気づくことの方が、メリットが大きいし、自立心を育てられると考えるからです。


「私はこれが面白いと思うから、これをやりたい」という熱い思いが商品開発の原点です。本に書かれたマニュアル通りにやっていても成功しないし、そもそも成功のセオリーなど存在しない。ヒットする確率は良くて3割、という世界です。トライ&エラーを繰り返しながら、自分のやり方を見つけていくことが、唯一の成功の道なんです。


我々のようなエンターテインメント業界では、トライ&エラーを繰り返していくしかヒット商品を生み出す方法はありません。もともと人に楽しさや感動を売る商売ですから、世の中の流れを客観的に分析したり、リスクとリターンを詳細に検証して商品開発をするだけでは、人の心に響くものはつくれません。


バンダイには、「やりたいことは失敗を気にせずにやってみよう」という社風があります。成功するに越したことはありませんが、成功も失敗もしない、つまり何もしないのが一番よくない。社員にはいつも「自分でリカバーできる程度の失敗なら、失敗してもいいよ」と話しています。


月一回、各事業部の代表が集まり報告会を開きます。普通は事業部が異なれば仕事が重なることはさほどありません。そのため、他の事業部が報告を行っている間は、身を入れて聞いていない人が多いでしょう。しかし、会社全体の動きは必ず目の前の仕事につながってきます。それをきちんと吸収しようとする姿勢が必要です。


会議をすることで情報を共有する相手は他人だけとは限りません。会議で発言するには事前の資料づくりが必須です。資料づくりとは、自分がいま手掛けている仕事の目的や進捗状況を、わかりやすくまとめ上げる作業です。それを終えたうえで資料を読み込み、会議の場で発表すれば、仕事の目的や状況、課題がより整理された形で自分の中にしみこんできます。


ブレーンストーミングのあと、ひと眠りすると、何を話し合ったか忘れてしまいます。だから、どんなプランが出て、どんな反対意見が出たのかをきちんと書きとめておく必要があります。


ブレーンストーミングは、セレモニーとしての会議や情報共有型の会議とは正反対で、時間制限を設けずに、体力が続く限り何泊でもしてアイデアを煮詰めるものです。ここにはなるべく職位の上位者は参加しない方がいいでしょう。理由は簡単で、時間無制限の会議だから年長者は先に参ってしまいます。しかもその人がリーダーであれば、自分が疲れたところで「この辺でいいだろう」とまとめに入ってしまいます。メンバーのアイデアが最後まで出尽くさないうちに会議が終わってしまう恐れがあるのです。


情報収集や意見交換型の会議の鉄則は「結論を出さないこと」です。会議を切り上げるために、じゃあ結論を出そうとなりがちですが、無理に結論らしきものを出しても意味はありません。このタイプの会議で大事なのは、議論の中でどのような情報が出たかということです。途中経過を記録した議事録をつくり、それを各々が現場に持ち帰るべきなのです。


バンダイの情報共有型会議では異論や質問を一切受け付けません。聞き手が疑問を持つのは当然ですが、それをいちいちその場で解決していたら、会議はいつまでたっても終わりません。だから質問があれば、会議のあとで個人的に聞きにいくことになっています。そもそも質問とは、説明や報告に対して「自分がどのように納得したか」を確認する作業です。つまり公開の場でやり取りする性質のものではないのです。


報告会議で注意すべきなのは、「わかりやすく話せ、しかし相手のレベルに合わせすぎるな」ということです。話の中身を伝えるのは、わかりやすく話さなければなりません。しかしその一方、聞き手の事情に配慮しすぎて必要以上に懇切丁寧に語ろうとすれば、かえって会議進行の妨げになります。


バンダイでは半年に一度、事業部長が集まり、方針発表会を開きます。自分の事業部は何をやりたいのか、一番やりたいこと、ポイントは何かを語ります。そのため、持ち時間は一人10分とし、時間が来たら「チン!」とベルを鳴らすルールにしています。ところが、持ち時間を超過しているにもかかわらず、事業計画を事細かに説明しようとする人がたまにいます。話のポイントが整理できていないせいです。


部下から悪い報告を受ける際も、まず言いたいことを全部話させます。言い訳があっても、途中で遮ることはありません。そこで話を遮って何か言うと、今度は部下が聞く姿勢ではなくなってしまうからです。表面的には黙って聞いているように見えるかもしれませんが、内心では混乱してますます弁解を重ねることになって、こちらからの言うことはまったく伝わらないのです。


部下の報告で話したいことすべてを話させれば、部下は頭の中をスッキリと整理することができます。そうなれば、「このように改善します」と自分から言ってくれるものです。あとは「じゃ、そうすれば」と背中を押すひと言を伝えればいい。


相手が初対面の人なら、まずその人がどんなタイプかをよく考えます。相手の人となりを知っている人が身近にいれば、事前に聞いておくということもします。もしその人が論理的に考えを積み上げる人なら、まずは相手の主張をじっくり聞きますし、結論を出してからプロセスを考える人なら、自分の結論に対する意見を聞きたがるので、こちらも結論をすぐに話せるように準備します。


異なる意見に対して「一理ある」と思えないという人は、周囲から敬遠されているようなちょっと変わった人と積極的に話してみるといいのではないでしょうか。個性的な考え方の持ち主と付き合うことで、自分の考えにもだんだん柔軟性が出てくる。そうすることで、より多くのタイプと会話が続けられるようになるはずです。


人は自分のペースで話すのが何より心地よいのです。そうして、自分の話したいことをひとつ残らず話し切ればとてもスッキリします。それを許してくれる相手には、「この人は話しやすい人だ」と自動的に好印象を抱くわけです。


自分のペースを乱されると、人間は猛烈に腹が立ちます。その意味で最悪なのは、相手の主張を先回りして言ってしまうことです。相手の話が要領を得ないと、つい「つまり、こういうことですね」と口を挟みたくなりますが、たとえその内容が正しくても、相手はいい気はしません。もうそれ以上話す気を失ってしまうでしょう。


人の話を聞くとき、共感のリピートを入れるとより効果的です。「僕もこういう経験があるんですが、それはいまおっしゃったことと同じですかね?」と、いま聞いた内容を確認しつつ、共感を伝えるわけです。こうして相手に寄り添う形でペースを保てば、会話は自然と盛り上がっていきます。


相手の意見に共感できない場合もありますが、「僕とは違う意見ですが、一理ありますね」という気持ちを伝えれば、相手には「共感」と映るものです。


子供のころから相手をよく観察する癖がありました。「なるほどこういう人か」と心の中で思っておくと、落ち着いて話を進めやすいのです。極端にいえば、心のどこかに「話が続かなくても別にいい」という割り切りもあるので、それがかえって態度の余裕につながって、「話しやすそうな人」に見えるのかもしれません。


会話の口火を切るための質問はしますが、相手が話しはじめたら、ほとんど質問はしないですね。反論することもありません。ほぼずっと聞きっぱなしです。相手の話が明らかにひと段落つくまでは、次の質問はしないようにしています。相手のペースに合わせて会話を続けるためです。


質問は得てして、相手のペースを乱すことにつながりやすい。変な質問をされて、自分が言いたいことを途中で遮られたら、気分を害しませんか?


失敗したくない、と思って自分を押さえ込むのは禁物です。アイデアを何百も絞り出し、世に問い、失敗したらそのつど原因を考え、知識として蓄えればいい。


楽しいことが好きで、それを追求し続ける熱意を持つことがまず大事。しかし思いこみだけで突っ走ってはいけません。世の中に受け入れられるものは何かを、客観的に考える冷静さも必要です。


「冒険、大いに結構」と常々語っています。社員は、「思い切り奇抜でないと企画が通らない」と思っているかもしれませんね。そうして彼らの前に高いハードルを置くことによって、アイデア力を喚起しています。


冒険性の低い企画は、通常なら「安全策」でしょう。しかしエンターテインメント業界では、当たり障りのないアイデアは陳腐さを意味し、逆にリスクを増大させることがあります。


当社ではアイデアコンテストを部門対抗で行なっています。これにより参加者に責任感が生まれ、真剣度が増します。お蔵入りにしていたアイデアを引っ張り出してくる社員もいて、良いカンフル剤になっています。


世の中の流行や話題に多く触れておくことが大事です。玩具やキャラクターに直接関係ないものでも、人気スポットや話題の映画には必ず行きます。世界各国の展示場にも、できるかぎり足を運びます。その積み重ねが「瞬時に考えて答えを出す」ことにつながっているのです。


アイデアを2本出せと言われて、2本しか考えない人の案が良かったということはほとんどありません。良い案を出す人は、その良い案1、2本の裏で100本は考えているはず。その作業を通して、発想力そのものが鍛えられていく。


去年売れたものを、マイナーチェンジしてもう一度出す、といった方法は3回が限界。それ以上やると飽きられます。定番となっているコンテンツを扱う際は、とくに意識して新規性を出すよう努めています。


普遍的なセオリーを見つけることはできなくとも、成功した人自身がその経験を振り返れば、その人だけの勘所、成功パターンをつかめます。私自身も、その方法で「これはヒットしそう」という感覚を養ってきました。個人的な直感ではありますが、これが意外に役に立つ。一度ヒットを生んだ人が次のヒットを出しやすくなるのは、このプロセスを踏んでいるからです。


意見を変えること自体は悪いことではないので気にしませんが、「前に何を言ったか」「なぜ、どのように変えたか」ということは把握しておく必要があると思っています。その振り返りを通して、頭の中も整理できます。


バンダイの半分は定番です。去年『仮面ライダーフォーゼ』をやったら、今年は『仮面ライダーウィザード』にしましょうと。『ガンダム』は30年やってますが、2年に1回程度は新作を出す。1回失敗しても、次でリカバリーできるので大丈夫です。そういう定番が5割あり、事業を下支えしている。実は利益では7割くらい稼いでいる。残り3割をほかで稼いでもらいたいと思っていたら、計画の10倍となり、自分たちがびっくりすることもある。


半分くらいは守り(定番のもの)でベースを作ってもらって、後の半分は損してもいいから勝負してもらいたい。ですから、「何でもかんでも収支を合わせないと前に進めない」というわけではない。趣味性の強い仕事なので、ときには商品の仕様が予想外にゴージャスになってしまうこともある。それが今のバンダイの姿です。管理していないようでしている、逆に管理しているようでしていない。こうした状況が混在している。


会社の仕組みとして、商品化できるかどうか判断するシートもあって、そこに売上予測、費用などを書き込んでいくと、儲かるかどうかわかるような形になっている。ここでダメだったら、まず商品化はされません。


現場ではセンスだけで仕事ができるわけではありません。私も若い時代は失敗しましたし、へこむわけですよ。「会社にいくら損をさせてしまったのか……」というような。しかし、へこむばかりでは能がないですから、「今回はいくらの損で処理し、次はいくら儲ければよいのか」と自分なりに計算するようにしました。


自分で会社を起こしたわけではありません。先輩から引き継いだわけなので、数字の目標はシンプルです。先輩の達成した数字を超えられるかどうか。それが非常にわかりやすい。誰にも言いませんが、内心では「ここは超えたんだ」と納得したり、自信を持ったりしています。


バンダイは玩具を中心とするエンターテインメント企業なのですが、極端な話、売れないとゼロという世界です。もうダダでもいらないというときもあれば、100万個売れることもある。同じ費用をかけたとしても、そういうことが起こりうる。ギャンブル性が高いのです。ゼロになる可能性を頭に入れておくと、資金繰りもギリギリではできない。いざというときに非常に困るので、キャッシュは常に潤沢に持っている。


事業部長になってから、このままではまずいと思い数字のことを勉強し始めました。まず社内で数字に詳しい人にいろいろ尋ねることにしました。「この取引先は大丈夫?」「どこをどう見れば大丈夫だとわかるの?」と質問していました。そうすると、みんな親切に教えてくれる。「もっと早く聞けばよかった」とつくづく思いましたよ。そうこうするうちに何となくコツがつかめてきました。自分が覚えておかなけばいけない部分、知らなければいけない部分が理解できるようになる。大事なのは自分のビジネスに役立つ数字を理解することであり、決して経理用語を丸暗記することではない。


事業部長になった半年後、有力な販売先が倒産してしまった。一応、倒産の気配はあったはずなのです。先方の会合に行くと、何やら資金繰りなどの話をしている。でも、詳しい内容はちんぷんかんぷんなので、「まあ、大丈夫だろう」と担当者任せにしていました。後になってわかるのですが、その販売先を何とか支えようと担当者は努力していた。それがあだとなって、当社側の不良債権が膨らんでいました。ショックは大きかった。自分自身は別に得意技があるので、数字のことは知っている人に任せておけばよいと思っていたのですが、それではやはりまずいな、と痛感しました。


私は実は数字には弱かった。大学時代は絵を描くことが好きで、そういう仕事に就きたいと思って、バンダイに入りました。結局は企画畑が長くなってしまうのですが、経理の仕事にはあまり縁がなかった。それが事業部長になって、いきなり会社の数字を学ぶ必要に迫られたのです。


僕はサラリーマンは、仕事には最高の立場だと思うんです。会社という組織に縛られている……とネガティブに捉えられることも多いけど、違う。会社という枠組みを使い自己実現ができ、煩わしい仕事や苦手な相手と接することで自分磨きができる。ひとりでは知り合えない仲間たちとも出会える。


僕は仕事をスピーディーに終わらせて残業はしないし、あまり飲みにもいかない。その代わりに、オフの時間は家族と一緒に過ごし、買い物に行き、趣味に没頭している。人はどんなときお金を使うか、どんなとき感動するか。生活者の実体験が無いのに、机上だけでいいモノづくりができるはずないからね。


30代半ばでキャンディ事業部というお菓子付き玩具を企画販売する部門の事業部長に抜擢されたんです。もっとも、当時のバンダイは玩具部門が圧倒的な事業の柱だから、キャンディ事業部はいわば新規事業。しかも業績が伸び悩んでいた。だからこそチャンスだと思った。小さくて力がない部署なら、ちょっと頑張れば立ち直せるし、目立つと。


店頭に立つと、自分が開発した商品を子供たちが手にして、それはもう嬉しそうな笑顔で持ち帰る姿に出会えるわけです。子供は皆「うわ~っ!」と、宝物を手にしたような、いい表情を浮かべるんですね。「この子たちの笑顔は決して裏切れない」。きれい事じゃなく、そんな意識が芽生え、根付きました。以来、いつもあの笑顔が、僕の行動指針。まあシンプルな「顧客目線」ですよ。


上野和典の経歴・略歴

上野和典、うえの・かずのり。日本の経営者。玩具会社大手バンダイの社長。神奈川県生まれ。武蔵工業大学(現:東京都市大学)工学部卒業後、玩具メーカーのポピーに入社。ポピーがバンダイ吸収合併されバンダイに移る。自販キャンディ事業部、ライフ事業本部、キャラクター・トイ事業ゼネラルマネージャーなどを経て同社の社長に就任

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