長谷川武彦の名言 一覧

このエントリーをはてなブックマークに追加

長谷川武彦のプロフィール

長谷川武彦、はせがわ・たけひこ。日本の経営者、技術者。ヤマハ発動機社長・会長。名古屋大学工学部卒業後ヤマハ発動機に入社。オートバイのエンジン開発担当しながら世界グランプリの監督を務める。名車と名高いトヨタ2000GTや、バイクのヒット商品パッソル(初代)の開発などに技術者として携わった。

7月1日は当社の設立記念日なのですが、昨年は「ヤマハチャレンジ展」と名付け、過去に開発の途中で挫折したり、商品化できなかった製品を会場に展示したのです。チャレンジ展を開いた理由は「過去の失敗に学んで次に生かす」という以上に、当社が持つチャレンジ精神をいま一度鼓舞したいと思ったからです。


創造の「創」という字の「倉」には傷という意味があるそうです。確かに創傷、槍などと、「創」には傷関係のある言葉や字が多い。創は砥石に刀を当てている様子を描いたもので、傷口が盛り上がって元に戻る生命力を示しています。こんなことからも、傷を恐れずチャレンジすることこそ創造の源だと解釈しています。


昨年1月、社長だった私は、赤字を理由にガスヒートポンプ事業からの撤退を決めました。売上で200億円以上になった事業をやめるのは大きな決断でした。しかし、そんな規模になるまで撤退しなかったのは、判断が遅れたと言われても仕方がありません。どこかに失敗を認めたくない、メンツにこだわる部分があったと反省しています。


最近は、トレンドに敏感、環境変化への即応、といったことが重要視されています。これも正しいとは思いますが、一方でひとつの志、価値観に長期間こだわる姿勢も忘れてはなりません。個性や本物は長いチャレンジが育むものだと思います。もちろん、ただ闇雲に突き進めばよいというものでもありません。一歩後退二歩前進と失敗を生かすには、迅速な後退の判断も必要です。


ヒット商品になっている当社の電動ハイブリッド自転車「パス」は、94年の発売まで10年以上もかかりました。最初は補助動力としてエンジンを使ったのですが、快適な自転車にはとてもならなかった。モーターに切り替えてからも、ギクシャクとした感覚を解消し、違和感のない乗り物にするのはとても困難な仕事でした。それでも製品化でき、ヒット作に育ったのは、人力をアシストする乗り物、との発想には自信があり、そこにこだわり続けたからです。


失敗しても志を持ってチャレンジし続ける。ひとつの事業分野や技術をモノにするのは、この精神がなにより重要だと思っています。10年くらい試行錯誤を続けると覚悟したほうが良いでしょう。


1992年に発表した一億円のスーパーカー「OX99-11」。すでにバブル景気は終わっていましたが、スーパーカーの需要はそこそこあると考えたのです。だが、甘かった。商品化を断念せざるを得ませんでした。しかし、F1やスーパーカーつくりの過程で培った技術は現在、トヨタ自動車さんへ提供しているエンジンや足回り部品に活かされています。


他社が左へ行くのなら、うちは右へ行って成功しようと考えるくらいの余裕がなければいけない。ビジネスモデルは一つではありません。みんなと同じ方向へ行けば、横並びから抜け切れないし、同じ軸の上で競争していては、最後は資本力の勝負になりますから、いくら本物を持っていても勝負することはできません。


中国でビジネスをするのであれば、現地の感覚や価値観を理解しなければいけない。彼らには彼らの考え方があることを勉強しました。コピーしてけしからんと繰り返していても仕方ないんです。市場が違えば、求められるニーズも異なる。他社が一斉に中国に進出したとしても、あわてる必要はない。


私は中国から学んだことがあります。彼らはバイクをコピーして半値以下で作ります。最初、私はこんな半値以下の製品はバイクとは呼べない、そのうち駄目になると思っていました。ところが一向に駄目にならないんですね。なぜか。我々が考えているCS(顧客満足)と中国のCSは異なるからです。安いコピーバイクは品質が良くないから簡単に壊れます。日本人だったら不良品だと文句を言うでしょう。ところが中国では最初から高品質の壊れないバイクなど期待していない。壊れたら直せばいいと考えている。


短いサイクルで目標管理をし、給与体系も成果主義を導入する企業が増えています。成果主義とはいえ、エンジニアは与えられた課題を愚直にこなすだけではなく、みずから課題を創造していかなければなりません。たとえ、上司が理解してくれない課題であっても、自分自身がプライドを持って取り組める目標を持つべきです。それは、なかなか評価されにくいかもしれない。でも、三年後には、きっと上司は私に感謝するだろう。と心の中で思っていればいい。それがエンジニアのプライドだし意地だと思います。


人事にしても、会計にしても、基準のとり方がグローバル・スタンダードの方向へ行っているのは確かです。日本国内だけでなく、世界を相手にビジネスをしている以上、会計基準などを国際基準に合わせることは必要です。ヤマハも売り上げの八割は海外で上げていますから、海外の投資家に理解を求めるために、国際会計基準の導入は不可避です。マネジメントの透明性や情報開示も、当然実行すべき事柄です。


私は、和魂洋才が日本企業の生き残る道を見つける際のヒントになると思います。日本人はある種の完璧主義、潔癖主義を持ち、細かいところまで神経が行き届きます。そうした日本人の特性をモノづくりに活かすことです。そうすれば、日本独自の製品が必ず生み出されるはずです。


日本は落ち着きを取り戻すべきです。勝ち組競争に翻弄されて、仮に勝ち残っても次の展開が保障されているわけではないという認識を持つべきだと思います。


国際会計基準やグローバル・スタンダードの導入は国際競争を勝ち抜くための「必要条件」ではあっても、「十分条件」ではない。必要条件だけを懸命に実行して満足しているようでは、横並びの域を出ないと思います。必要条件は当たり前のこととして迅速に取り入れたうえで、もっと上の本来の目的を追求しなければ次の時代を勝ち抜くことはできません。


創造という言葉を考えてください。創造の「創」には、「つくる」という意味と「きず」という意味がある。時代劇にあるように、刀で切られた刀創(かたなきず)は焼酎をパッと吹いてサラシを巻き、死んでたまるかと言っているときれいに治ります。死んでたまるかという思いが、生命力になり、肉を噴くのです。


傷がなければ、人は楽で痛みもありません。けれども、傷を負わなければ、そこからは何も発想することはないし、何も創造することはできないんです。うまく機能していた既成の秩序に傷(問題)が入ると、こんなにうまくいっていたのに傷が入ってしまったとみんな落胆します。しかし、傷が入ることはこれまでのやり方を見直すきっかけになってくる。


傷が入るからこそ物事を深く考えるようになるし、そこに知恵が生まれる。安住せず、自ら傷を入れる勇気が求められていると思います。豊かで平穏無事の日本では、チャレンジする気持ちが失われても仕方ないのかもしれない。しかし、自ら傷を負わなければ未来はない。いまこそ、経営者は自分の責任において傷を負い、チャレンジしなければいけないと思います。


人名ランダムピックアップ


経営・ビジネス・投資・仕事・お金・経済的な分野で成功を収めた人たちの名言を収録しています。

ページの先頭へ