財部誠一の名言 一覧

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財部誠一のプロフィール

財部誠一、たからべ・せいいち。日本の経済ジャーナリスト。東京出身。慶應義塾大学法学部卒業後、野村證券に入社。その後、出版社勤務を経てフリーライターとなる。当初社会派のノンフィクションライターを目指していたが、経済記事が好評を博し経済ジャーナリストとなる。書籍や新聞、雑誌だけでなくテレビやラジオなどでも活躍した。

日本のものづくりが現在置かれている状況を考えると、いまあるものを「改革、カイゼン」していくという発想だけで、この先の発展はとても望めない。


世界に前例のない、圧倒的な魅力や完成度を持つ商品を創ることができるかどうかは、経営者あるいは担当者が「こういうものを実現したい」という強い思いや前向きなマインドセットを持てるかどうかにかかっている。


よくいわれる精度などの細部に対するこだわりだけでなく、商品トータルとしての「圧倒的な完成度」に対するこだわりが、多くの日本メーカーに欠けてはいないだろうか。


残念なことに、日本は、法的規制もしくは失敗を恐れるあまりの自己規制などの形で、技術の新たな発展を阻害する要因を社会に内在させている。


仮にデザインや技術を真似をされたとしても、圧倒的な完成度を持つ商品が世界市場で勝つことは間違いない。「他社が技術を真似をする頃には、わが社はすでにその先を行っている」という気概がほしいところだ。


個々の企業にすれば、「国の関与」に頼って生きていくことはとてもできない。日本企業が、自主自立の精神を持って行なっていくべき大切な事柄はほかに数多くある。


スティーブ・ジョブズ氏は、部下たちが「できないこと」を前提にして発言したことを、逆に「そういうものができたらいいのではないか」と、アイデアとして採り入れていたという。世界を驚かせるような感動的な商品を、ふたたび創り上げることができなければ、日本企業に明日はない。その中で、私たちが日本の強みを活かしていけるかどうかは、ジョブズ氏のような前向きなマインドセットと志が持てるかどうかにかかっているのだ。


日本企業は、掃除ロボットにしる介護ロボットにしろ、従来にない斬新な製品を開発しても、「この製品を市場に出して、人間にケガをさせたらどうしよう」と、リスクを過度に恐れる。開発段階で製品の安全性について十分に検討したにもかかわらず、常に、「製品が何か問題を起こしたらどうしよう」ということばかり考えているから、技術力はあっても、クリエイティブな製品を創ることがなかなかできないのだ。現実の世界に「100%の安全」というものは存在しないにもかかわらず、わずかなリスクをも許容しない日本社会の弊害がここにある。


日本企業の場合、あえて「メイド・イン・ジャパン」にこだわるべき部分もある一方で、自分たちの「目利き」によって、「この部分では、海外のこの企業の技術を利用するほうが有利だ」という場合もあるはずだ。国内の技術も大切にしつつ、グローバルスケールでプルーブド・テクニック(実証された技術)を集積し、「圧倒的な完成度」を持つ商品を創っていくという発想が必要である。


企画力よりも上位にあるトップマネジメントの「経営構想力」の真価が問われている。かつて東海道新幹線の開発を指揮した島秀雄氏は、同新幹線について、「旅客列車の専用線である」「自動列車制御装置(ATC)などの運転保安装置を具備する」「踏切を排除する」などの開発コンセプトを掲げた。つまり次世代の鉄道、それも世界に例のない時速200kmの高速鉄道はどうあるべきかという明確なビジョンが、島氏にはその時点で見えていたのだ。実際、その開発コンセプトにしたがって「必要なプルーブド・テクニック(実証された技術)を吟味し、それらを新幹線というひとつのシステムへと組み上げていった」という指摘がある。


「G-SHOCK」のアメリカ版CMのエピソードが興味深い。アメリカ販社の機転で、「アイスホッケーのパック代わりにしても壊れない」というCMがつくられたという話だ。ところが、これが誇大広告ではないかとの意見が寄せられたため、テレビ番組で検証を行なったところ、プロのアイスホッケー選手がシュートをしても壊れなかったことが証明され、アメリカ国内で大いに人気を得た。アメリカ市場における「G-SHOCK」の成功をもたらしたこのエピソードを、偶然の産物とする見方もある。だがこれは、ある意味で想定内の出来事ではなかったか。テレビCMの規制が厳しいアメリカで、あのようなキャッチコピーを大々的に打ち出して、何も起こらないはずがない。かりに、それがアメリカのマーケッターの戦略だったとすれば、大いに評価されるべきケースである。


素材そのものの開発が、新幹線のボディを形成する構体の構造に大きな革新をもたらしたわけだが、素材の段階から手をかけて良いものをつくり上げる姿勢の大事さは、新幹線の話に限らず、あらゆる分野の製品開発において本質部分で共通したものがある。日本人が本来持っているものづくりの資質を形づくる、中核的な要素とはそういうものではないだろうか。ところが最近、こうした日本的なものづくりの本質に迫るような議論が倭小化され、個別の作業や技、「改革、カイゼン」ばかりに話が収斂してしまっていることに危倶を覚えるのである。


よくいわれる精度などの細部に対するこだわりだけでなく、商品トータルとしての「圧倒的な完成度」に対するこだわりが、多くの日本メーカーに欠けてはいないだろうか。


商品の優れたデザインは、たんに「絵を描く」ことだけで完成するものではない。素材そのものの開発から始めて、商品をいかにつくり上げていくかという級密な検討や作業が必要になる。もちろん機能も大切な要素だが、商品の美観、見栄えという面も、実は高い技術力によって支えられているという事実を、日本企業は再認識しなければならない。


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