男鹿和雄の名言 一覧

このエントリーをはてなブックマークに追加

男鹿和雄のプロフィール

男鹿和雄、おが・かずお。日本のアニメーション美術監督・挿絵画家。秋田県出身。高校卒業後上京し、デザイン系専門学校に1年間通う。その後、アニメーション背景会社の小林プロダクションに入社。仕事に悩み同社を退職し地方を回る。仙台の看板職人のもとで仕事をしたのち、小林プロダクションに復帰。その後マッドハウスに移籍し、複数の作品で美術監督を務めたのち、宮崎駿監督にスカウトされ『となりのトトロ』ほかスタジオジブリ作品の美術を担当した。挿画や絵本、エッセーなどでも活躍。

この仕事は、絵を描くことが好きでやる気さえあれば、もうあとはどれだけ描くかでしょうね。生活を変えて絵に取り組む覚悟があれば、誰でもいい背景が描けるようになると思います。


知らない風景は、思うようには描けません。実物を知っていれば、サラッと描いても植物の縮尺が多少ズレても「むしろこの勢いがいい」と自信を持てるんですよ。知らないものほど、「せっかく調べたのだから」と省略できないで窮屈な絵になってしまいがちですから。そして、写真では奥行きや立体感や軽重についてはなかなかわからないのではないでしょうか。だから、風景を描く時には、自分の体験した中で一番いい風景を思い出して描くわけです。


じつはどの背景にも細かいところで反省点があって、「トトロ」も夕焼けのシーンで色と暗さの流れがうまく行ってないところがあって。ああ、それをいうなら「もののけ姫」の雲も……あ、そういうのを言い出すとキリがないのでやめておきますけどね。


美術監督を担当した「となりのトトロ」にしても、優れた作品だからこそ背景だってよく見えるわけです。しかも、「トトロ」の仕事ではじめから「これがいい」と自分で描いてそのまま完成というものはほとんどなくて、監督の「もっとこうすれば」というチェックを受けて仕上げたものですし。


そのうちに美術監督としてスタッフを束ねるようになりました。現場を率いるには、あの人があれが得意だろうとか、これは無理そうとか、全体の舵取りが必要ですが、僕の場合はスタッフそれぞれの個性よりも、「こういう背景にしてほしい」という監督の要求のほうを優先させるべきだろうと思ってきました。それをマスターした上で「もっとこうしたい」ということがあれば、監督の要求を壊さない範囲でやれることはいろいろあるんです。これは上達して監督の要求をクリアしてはじめてできることですね。僕の仕事にしても、監督や作品にずいぶん引っぱりあげてもらった結果ですから。


我々の仕事で重要なことのひとつは「たくさん描くこと」だと思うんです。たくさん描いていれば、筆遣いについてもわかってくるわけです。筆をどう置くか。この種類のものを描くならどんな筆遣いができるか。それは上手な人の背景を見て覚えました。


ポイントだけ見せて、ほかは省略して流すんです。びっちり端から端まで描いても人の目はそんなに見られないからラクに流すところも必要で、どこを見せたいかを中心にして周囲は7割がた描くとか、ここは5割がたでいいとか。


一見つまらないようなものも絵としてちゃんと描くなら、材質はどうなっているかとかいったことを、いやでも勉強しなければならない。土の地面ひとつ取っても、その状態がわかっているようで実はわかっていない。石ころが転がりそうに散らばっているよりは少しずつ埋まっているほうがリアリティがあることに、よく見れば気づくんですね。すると、日常の一見つまらないようなところにも興味を持って目が行く機会が増えてくる。


自分の意志でタブローを描くのとはぜんぜんちがいますのでね。要求されていることに少しでも近づいて描こうと思えば、自分の描き方だけではなかなかオーケーをもらえないところもあります。


共同で美術監督を担当した「もののけ姫」では、事前に東北の白神山地や岩手の葛根田(かっこんだ)川の上流に取材に行きました。僕は取材を一人でやりたいほうなんですよね。誰かと一緒に行くと喋っている間に大事なものを見落としてしまうかもしれないし。取材では、どこを見るともなくボーッと目の端で捉えた物事が割と役にたつんです。まっすぐに見るよりも目の端で見ているほうが「何となく」の印象が残っていたりしますから。すると、それは風景の周辺を省略する時の手がかりになるんです。


人名ランダムピックアップ


経営・ビジネス・投資・仕事・お金・経済的な分野で成功を収めた人たちの名言を収録しています。

ページの先頭へ