田中辰巳の名言 一覧

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田中辰巳のプロフィール

田中辰巳、たなか・たつみ。日本の危機管理コンサルタント。愛知県出身。慶應義塾大学法学部卒業後、アイシン精機を経て、リクルートに入社。秘書課長、広報課長、総務次長、業務課長、業務部部長、などを経験し、ノエビアに移る。その後独立し危機管理コンサルティング会社のリスク・ヘッジを開業。主な著書に『そんな謝罪では会社が危ない』『企業危機管理実践論』『企業こころの危機管理』『危機にあいやすい人の心理と回避術』など。

信用は何年もかけて取り戻すしかありません。信用を失うのは一瞬、取り戻すのは10年かかると心得るべきです。


職場や家庭でもちょっとした思慮不足が失言につながることはおおい。直属の上司の前で派閥の違う上司を持ち上げてしまったり、言葉足らずな物言いで夫や妻を怒らせてしまったり。そういうときのリカバリーでも、間に人を立ててワンクッション置くのは有効です。


配慮が足りないひとことで取引先を怒らせたような場合は、自分より上位の責任者、つまり上司に帯同してもらって解毒するのが一番です。上司から「私どもの配慮が行き届かず、大変申し訳ありませんでした。こいつは本当に気が利かなくて……」とガス抜きしてもらうのです。そのうえで当人が「これから勉強してゆきます」と頭を下げます。


認識不足による失言の場合、傷ついた相手の心に届く謝罪の言葉を誠心誠意に述べるのが一番の解決策です。


不可抗力による失言は、人間的な可愛さを前面に立ててフォローするしかありません。私の場合、「申し訳ございません。本日は大変厳しいご指摘をいただく覚悟をしてまいりましたので、緊張して「は」と「も」の順番を間違えてしまいました」と正直に頭を下げました。相手はプッと笑って「そんなに緊張するな」。不可抗力とわかれば許してもらえます。


本来ならいち早く情報を開示して、顧客の被害を最小限に食い止める努力をしなければならないのに、被害者の視点しか持てずに自らが犯した罪に気づくのが遅れてしまう。そういうときに危機管理に失敗するのである。


危機管理の4つのフェーズがある。

  1. 知覚…まず何が起きたか事実を正確に掌握して、そのうえでそれが危機であることを感じ取る。
  2. 解析…どういう罪なのか、どのくらい重い罪なのかを分析して判断する。今後の展開の予測もする。
  3. 解毒…謝罪の言葉、厳しい処分、再発防止策を行う。
  4. 再生…傷ついた人間関係や失った信頼を回復するための活動をする。

「こいつは本当にわかっているんだな」と心に響く謝罪の言葉。不祥事を起こしたときの記者会見しかり、被害者のところへお詫びに行くときもしかり。これがあってはじめて許してもらえるのだ。政治家や経営者は「遺憾」という言葉を使いたがるが、「遺憾」というのは「残念」という意味である。「慙愧に耐えない」というべきだといつも思っている。


危機管理にはまず何が起きたか事実を正確に掌握して、そのうえでそれが危機であることを感じ取る。多くの場合、ここからできていない。たとえば、事故が起きたときに、過去の事故事例も調べないで記者会見に臨む。何が起きたかきちんと調べていないので「わかりません」を連発して顰蹙を買う。事態を直視したくない心理も働くのだろうが、感知が遅れれば事態はさらに悪化する。


危機管理にとって極めて重要なのは、今後自体がどう動いてゆくかという展開予測である。自体の本質と展開を見極めずに、対症療法的な危機管理をすると必ず失敗する。


罪の変化(合法だったものが違法になること)がわかっていないと、自らの罪を軽く考えてしまう。ひとたび問題が起きると大変なバッシングを受け、信頼を失い、商品が売れなくなる、ということへの認識が甘くなってしまう。多くの企業が窮地に陥っている一番の原因がそこにある。これを防ぐには他社の事例を「対岸の火事」にせず、疑似体験や仮想演習をして「他山の石」にするしかない。


いまの時代は法律の条文を眺めていただけでは危機管理はできない。大きな社会の流れを見ておく必要がある。キーワードは「公平・公正・安心・安全」。社会が成熟し、民主主義が浸透すればするほど「公平・公正・安心・安全」の確保が求められるようになる。


罪というものは基本的には法の改正と施行によって大きく変わる。しかし、法の改正・施行は突然起きるものではない。改正せざるをえないような状況にあるから、改正されるのである。つまり摘発が増えてきて社会問題化し、いよいよ待ったなしの状態になると法が改正されたり、施行されたりするのだ。


法の下の平等という憲法の大原則は、じつは時を超えると当てはまらない。いままでは大丈夫とされていたものが、あるときから罪に変わってしまうのだ。


なぜ企業の危機管理がうまくいかないのか。最大の理由は、人が「見えにくい罪」というものに引っかかるからである。自分が罪を犯していることをなかなか自覚できないのが「見えにくい罪」だが、これに足を取られるパターンは大きく分けて二つある。(1)悪意がないまま加害者になってしまっていたり、自らに被害者の側面があるために加害者になっていることを見落としてしまう場合。(2)従来は合法だったものが違法とされた場合。


いまは危機管理やコンプライアンス(法令順守)、内部統制といった概念はビジネスマンの間で着実に浸透してきている。しかしながら、言葉の定着ぶりとは裏腹に、危機管理の在り方が進化してきたようには感じられない。むしろ企業の存続を危ぶませるような事件や不祥事は年を追うごとに増え続け、同じような問題が何度も何度も繰り返されている。危機管理のシステムが正しく機能しているとはとても思えないのだ。


調査の際は「現場は必ず嘘をいう」と考え、必ず原本に当たらなければなりません。情報を耳だけで取ってはいけません。しっかり原本を見て、目で情報を取り、事態の全容をしっかり把握するのです。


ビジネスパーソンなら最近の企業不祥事を対岸の火事とは思わず、「もし自分があの経営者の立場だったら、どう謝罪すればよいだろうか」としっかり考えておくとよいでしょう。危機管理の実例を疑似体験しておけば、思わず逃げたり戦ったりする言葉が出そうになっても呑み込むことができ、仕事も家庭もうまくいくようになるはずです。


日本社会における危機管理、とりわけ謝罪は非常に簡単で、非常に難しいという特徴があります。日本人の国民性には、『論語』に書かれている「過ちて改めざる、これを過ちという」があります。そのため小さな過ちでもきちんと改めないと、みんなから徹底的に攻撃されてしまいます。同時に「判官びいき」という言葉があるように、弱い状態に陥った人をひいきする傾向もあります。ですから、問題を起こしてもきちんと改めれば驚くほど簡単に許してもらえる一方、どんな小さな問題でもきちんと謝罪しなければ「わかっていないぞ」と徹底的に攻撃を受けます。危機管理とは人間および人間社会への洞察力に尽き、そうした社会心理を理解しておかないと適切な対応ができないのです。


自分たちの起こした問題に対して謝罪せずに逃げる、あるいは「これは誤表示だ」といい張ってメディアと戦ってしまい、謝罪に失敗する。その根底には「逃走」と「闘争」という二つの「とうそう本能」があります。


起こした問題に対して謝罪できないのは、被害者の顔が見えていないからです。危機管理では常に、被害者の顔を思い浮かべなければなりません。


不祥事の調査はどこまでの範囲で行われていたのかと、過去いつから行われていたのかという水平と垂直の2軸で調べる必要があります。これらは記者会見で必ず質問される項目です。


2013年10月、阪急阪神ホテルズが「メニュー表示と異なった食材を使用していた」と発表したのを皮切りに、食材偽装をしていたホテルや飲食店が次々に名乗り出て謝罪する事態になりました。実は6月にもプリンスホテルで食材偽装が発覚していますが、そのときはあまり大きな騒ぎにはなりませんでした。率直にいえば、プリンスホテルに対する世の中の期待がそれほど高くなかったからだと思われます。ところが高級なイメージのある阪急阪神やザ・リッツ・カールトン大阪で食材偽装が行われていたので、みんなびっくりしてしまいました。料理の値段も阪急阪神やリッツは高い。期待値と値段が高ければ高いほど消費者は驚き、腹が立つものです。


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