渡辺捷昭の名言 一覧

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渡辺捷昭のプロフィール

渡辺捷昭、わたなべ・かつあき。日本の経営者。トヨタ自動車社長。三重県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、トヨタに入社。人事厚生課、総務部広報課、購買部、秘書部、経営企画部などで実務経験を積み、取締役、常務、専務、副社長を経て社長。そのほか財団法人道路新産業開発機構会長、慶應義塾評議員なども務めた。

プレゼンは、自分が社長になったつもりで提案しなさい。
【覚書き|社員のプレゼンを聞きながら語った言葉】


細かいデータも結構だが、米国市場に投入している全モデルの車種について、それぞれ○、△、×で評価しなさい。当然○、△印が多ければ1600万台を維持できるだろうし、×印の方が多ければ1500万台を割ることも視野に入れなければならないと判断できる。潮目が大きく変わる波乱のときこそ、一目瞭然で示す方が結果的に役立つのです。
【覚書き|サブプライムローン問題直後の北米での戦略を決める会議での発言】


成功体験が続くと人間は考え方が保守化します。「いまのやり方を変えたくない」「新しいことをやりたくない」と思うようになり、新しい課題や問題には目が向かなくなる。こういった例を防ぐ一番の手立ては、夢や志を持つことです。


問題や課題がゼロの組織などというものは必ず衰退します。だから組織には問題発見能力が問われます。では、問題発見のためには何が必要かといえば、常に問題意識を持つことであり、問題意識を持ち続けるために必要なのはやはり現地現物主義なのです。


なかには、自動車業界でナンバーワン企業になったとか、23兆円企業に入ったと思う新入社員もいるかもしれない。しかし、問題や課題はまだまだあります。「質の向上なくして成長なし」というキーワードで見渡すと、やることはいくらでもあります。


問題や課題の見える化は職場の基本であってほしいと思います。そして個々の社員は自分の夢や志と実力とのギャップを意識して、そのギャップを埋めるためにどうやって努力するかを考えるのです。


問題が見えればいいのです。現状と目標のギャップを白日の下にさらせば、皆で知恵を出してそれを埋める方法も出てきます。問題を引き出しにしまいこんだら、知恵は出てこない。


夢や目標があれば、いまの自分の実力がどれくらいで、目指す夢や目標とのギャップがどれくらいあるのか推し測ることができます。実現するために何をすればいいか、課題を自分で見つけることもできる。夢や志や目標がなければ、いまの自分の身の丈を測ることもできず、これから何をしていいかもわからない。空虚なものです。だから、私は全事業体に対して、地域別、開発から生産までの機能別、あるいはプロジェクトごとに「志と身の丈の間にあるギャップを見える化せよ」と常々言っています。


これからのトヨタが求める人材は、自分がやりたい夢や志や目標をしっかり持つことのできる人です。かつては、よいクルマづくりだけに徹していればよかった。しかし、いま求められるのは、クルマづくりという枠組みだけではなく、クルマを走らせる理想的な街づくりにまで踏み込んで考え、これを実現に導くことだと思います。


いまはパソコンのパワーポイントを使えばカラーで補足資料満載の立派な書類が簡単につくれます。手直しもあっという間です。パソコンを使うのは構いません。しかし、まずはA4紙1枚の上で自分の考えを整理して、起承転結を書き出してみる。そういう作業を通じて思考が練りこまれてゆくし、提案力やプレゼン能力も磨かれてゆくと思うのです。


私たちの時代は、「よいクルマを生産し、消費者に喜んでもらう」といったようなわかりやすい目標があって、組織のベクトルをひとつにできました。しかし、いまは自ら目標を作り出さなければならない時代です。


組織のリーダーは夢を語り、その夢に部下やチームのメンバーが共感、共鳴し、またその人たちが夢を持つ。そういう循環がとても大切なのです。


やれることは3つしかありません。自分でやるか、自分の力だけでは足りないから誰かと協力して一緒にやるか、とても自分ではできないから誰かに任せるかです。いまの自分に何ができるのか、社内や社外のメンバーシップをどう活用するのか、現地現物に徹する現場目線と問題発見能力に、そうした課題解決能力が備わった人材を一人でも多く育てることが、私の大きな仕事だと思っています。


私たちの時代は提案書や企画書はA4サイズ1枚の紙に収めて書いていました。簡潔かつ説得力がなければ受け付けてもらえないということで、限られたスペースに一生懸命、起承転結を盛り込みました。それでも上司に赤字を入れられて書き直しを命じられました。「書類が軽いぞ」などと言われて紙飛行機にされてポーンと飛ばされたこともあります。「クソー」と腹も立つのですが、愛のムチだと思ってまた頑張って書くのです。


OJTが機能するためには「課題があったら遠慮なく言いなさい」という組織風土づくりが必要です。「新入社員のくせに生意気言うな」と言われたら、その社員は次からは提案しないし、課題を見つけようとはしなくなります。


部下にどんどん課題を提案させる。その提案がダメだったら、上司はそのときに「ダメだ」と言えばいい。時には食い下がって、上司と部下が仲良くケンカすればいい。


私は、入社直後に人事厚生課に配属されて給食係をしましたが、くさりかけた私に当時の上司は「現場に行ってごらん。何か感じるものがあるから」と声をかけてくれました。社員食堂に通って見つけた課題にも聞く耳を持ってくれました。「新人が偉そうなことを言うな」と一蹴されていたら、とっくに会社を辞めていたでしょう。


私の教育、とくにOJTがとても大事だと思っています。どんな仕事でも事実を見つめると課題が見つかる。自分に与えられた仕事を通じて、現地現物を実践し、そこから課題を抽出していくのです。


現地現物の行動力や問題発見能力というのは、個人の資質や素養に由来する部分と、教育による部分とがあると思います。誰にも資源や素養はあります。しかし、それを発揮できる企業風土になっていなければ、その能力は磨かれないし、悪くすれば発現しない。


「走れば走るほど空気がきれいになるクルマ」「ドライバーも歩行者も傷つけない。絶対事故を起こさないクルマ」など、私が社長就任時に挙げた夢のクルマはまだできていません。品質問題でも、コスト競争力でも、課題や問題は山のようにある。謙虚な気持ちを忘れて現状に満足してしまったら、それらはすべて見えなくなってしまうのです。


問題意識を持つためには、謙虚さも必要です。問題意識の原点というのは、現状に満足しない気持ちです。対して慢心や傲慢さというのは問題発見能力を著しく減退させます。「ナンバーワンになるのは目前」と持ち上げられて「ひょっとしたらそうかもしれないな」「うちがナンバーワンだ」と社員が思うようになったら、トヨタという会社はもう終わりだと思っています。


いまも昔も変わらない大事な要素のひとつは、現地現物の目線です。頭だけで考えるのではなく、現地を見る、現場を見る、現実をきちんと確認するということです。事実や現実は頭の中にも机上にもない。現場で実感するしかないのです。現地現物を徹底すると問題点がいくらでも浮かび上がってきます。


私は常々、愚直に地道に徹底的にがトヨタのテーマだと言っています。環境や安全に配慮した車作りに徹していけば、必ずお客様から受け入れられ、自ずと数字もついてくるはずです。順調に業績が伸びているからといって、浮かれている暇などありません。


課題は無数にあります。さらなる技術革新。コストの低減。開発から製品化までのリードタイムの短縮。そして販売・サービス網の拡充。つまり、やみくもに販売台数で世界一を目指すのではなく、地道に目の前の課題の克服を目指すことこそ、第一義だと思います。


燃料電池車や、ITを駆使した安全制御装置を搭載した車、そういった車を少しでも早く、安く、世界のあらゆる市場に提供できるだけの体制を本当に組めているのか。それを客観的に診断して、何が足りないかを見極めることこそ、まず私が考えるべきなのでしょう。これがくるま作りの足元を固めるということです。


私は夢を持って仕事に取り組むよう社員にメッセージを伝えたいと思っています。社長としての夢は、たとえば走るほど空気がきれいになる車、あるいはドライバーも歩行者も傷つけない夢のような車を作ることです。より具体的に言えば、燃料電池車や、ITを駆使した安全装置を搭載した車を実用化する。


何かをするときは命をかけろと言っています。命をかけなければ、いいものはできない。途中で妥協したら、ろくなものはできない。それからあの人の意見を聞き、この人の意見を聞きとやっていたら角が取れていく。角を取っては駄目なんです。徹底的に尖っていてもらいたい。むしろ角を付けて大きくなってほしい。三角形の角を取って丸くしたらどんどん小さくなってしまうではないですか。


「仲よく喧嘩」をしないと妥協の産物が生まれかねない。進化もない。スピードも生まれない。「仲よく喧嘩」をするには、議論の接点を設けることです。その接点を高いレベルに設けるのか、低いレベルに設けるのか。レクサスでは「高級の本質」という高いレベルに接点を向けて、妥協せずにベストの選択をしてきました。


デザインに欠陥があるなら設計部門に指摘する。製造方法に注文があるなら生産部門に掛け合う。サプライチェーンに問題があるならそこにも改善を求める。こうして企画段階から部品メーカーさんも交えて開発するスタイルは他社にはあまり見られないトヨタの強みだと思います。


2000年から導入した原価低減活動でおよそ30%のコスト削減の目標のめどがつきましたが、これも設計部門や生産部門、さらには部品メーカーも含めたサプライチェーンを構築し「あらゆる部門で原価低減を図る」ことを目指して激しく意見を闘わせた結果が実を結んだものです。


技術開発は日進月歩で進んでいるのだから、まず何よりもスピード化が大事です。リードタイム(作業着手から完了までの所要時間)を少しでも短くすることが不可欠となる。そのためには各部署がバラバラに動くのではやっていけません。開発、設計、生産技術、製造、サービスという各部署が結集してチームとしていかに機能させるかがマネジメント上最も重要になるでしょう。


チーム力を高めるにはどうすればいいのか。それにはまず、お互いが言いたいことを言うことが大切です。トヨタは実際にそうしています。たとえば、新車を開発する場合、製造部門の担当者は「なんでこんなに製造工程が多いのか。こんなややこしい設計にする必要があるのか」という不満を設計部門に直接伝える。それに対し設計部門は「いま、お客様が求めているのはこういうデザインなんだ」と言い返す。こうして各々の部署の担当者がコストについてもデザインについても製造についても、自動車づくりのあらゆることについて徹底的に討論する。大部屋に担当者を集めて激しい議論を繰り広げるのです。


意見と意見がぶつかり合い、火花が散ることも珍しくありません。しかし、議論をしているうちに問題意識が次第に共有され、部署ごとの垣根を越えてチームとしてベストの選択をすることができるのです。これを私は「仲良く喧嘩する」と呼んでいます。役員も常日頃からこの「仲良く喧嘩する」をやっています。常務や専務が大部屋に集まって侃々諤々(かんかんがくがく)議論を展開するのです。


私が昭和39年の入社、奥田(碩)にしても昭和30年入社ですから、労働争議そのものは生で経験していません。でも、若いころに諸先輩方たちから辛酸をなめた時代の話を集中豪雨的に聞いていますから、身にしみついているんです。ただ、いまは豊かな時代に育って入社した世代ばかりです。苦労性と言われるかもしれませんが、語り部として危機感を後進に語り継いでいるつもりなんです。


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