染谷光男の名言 一覧

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染谷光男のプロフィール

染谷光男、そめや・みつお。日本の経営者。「キッコーマン」社長。千葉県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、野田醤油(のちのキッコーマン)に入社。海外事業部長、取締役、常務執行役員、専務執行役員などを経て社長兼COO(最高執行責任者)に就任。

他社の商品との違いを知ってもらうには、やはり試食形式で直接食べていただくのが一番早い。このやり方は欧米もアジアでも同じです。


何事も粘り強く取り組まなくてはいけないとは常々考えています。総菜の素についても、今度は洋風版に照準を当て、1つのカテゴリーとして確立させることを狙っています。これらの取り組みが消費者に受け入れられれば、小売り側も価格訴求とは別の切り口でお客様を呼び込むことができます。


生鮮のトマトの横にトマトジュースを置いたところ、非常にうまくいきました。生のトマトとジュースが並んだ棚の前でどちらを買おうかと考え、最終的に、「ジュースの方が便利だし割安だ」との考えに至った人が少なからずいたようです。価格で消費者を吸引するだけでは、流通側にも利益は残りません。だからこそ、違った形で消費者にアピールすることは必要だと思います。


欧州において、ローカル嗜好に受け入れられた商品の一例に、フランスの「スクレソース」という甘いしょうゆがあります。白いご飯にかけて食べるそうです。きっかけは焼き烏にありました。フランスで人気の焼き鳥店を訪れる客の動向を見ていたところ、白いご飯に焼き鳥の残ったたれをかけている姿が目に留まったのです。そこで、「これは商売になるんじゃないか」と。フランスのスーパーの棚にスクレソースを並べることができた結果、しょうゆメーカーとして2番手だったキッコーマンはフランスで1番手になりました。やはり、その土地で受け入れられるものを作ることがカギですね。


私が海外市場を担当していた頃、レシピ開発で失敗したことがあるのです。当時、キッコーマンはインド市場を開拓したいと考えていました。そこで、東京在住のインド人たちとシンガポール在住のインド人たちに話を聞いて、インド市場向けのレシピブックを作ったのです。1冊の中に60種類ほどのレシピを盛り込んだ力作でした。それを持って営業マンが意気揚々とインドに向かったのですが、いざ現地の人にレシピ本を見せたところ、こう言われたのです。「よくできているが、自分たちが使えるレシピは全体の10分の1もない」と。インドでは、使う材料も調理の仕方も地域ごとに違うそうです。せっかく努力して作ったレシピでしたが、実践されないままに終わりました。その時改めて思ったのは、やはりその土地の人に参画してもらって、その人が普段作る料理の中でキッコーマンしょうゆをどう使ったらおいしくなるかを試行錯誤しながらレシピを作ることが重要だということです。


海外で醤油を売り始めたとき、商品の品質や味の良さを実感していただくのと同時に、現地の食生活に合った、しょうゆを使うレシピを広めていきました。レシピブックをお渡ししたり、製品ボトルのネックに小冊子をつり下げたりして、「塩の代わりに使うとまたひとつ、おいしいものができますよ」と具体的な使い方の提案をしていったのです。その象徴例が「テリヤキソース」でしょう。米国市場向けに、しょうゆをベースにスパイスなどを加えたバーベキューソースを発売し、肉料理の新たなバリエーションを提案していきました。この提案が、米国の市場で受け入れられたのです。


欧米でのしょうゆ事業が好調なのは、醸造しょうゆの良さが高く評価されている点が、最も大きな成功要因だと思います。商品の良さを知ってもらうには、実際に口にしてもらうほかに術はありません。キッコーマンは1957年に米国市場に進出しましたが、当時から手がけていたのがスーパー店頭でのデモンストレーションでした。消費者の方々に「やはり本醸造はいい」と納得していただくには、実際に食べてもらうのが一番だと考えての取り組みでした。マスメディアを使えば、不特定多数の人に一気にメッセージを流せます。他方、店内でのデモンストレーションは1日にせいぜい数百人規模の人たちにしかメッセージを送れません。実際に家庭で試してみようと思う人はごくわずかでしょう。それを週末ごとに繰り返すというのは、実に地味な作業です。しかし、海外で根を生やすには、この地道な取り組みこそが重要なのです。それをやらないと深みのない、うわべだけのものになってしまいます。


「うちのごはん」シリーズが数年前に値崩れしそうになったことがありました。しかし、小売り側にきちんと商品特性などを伝え、説得し、店頭での売り方を変えることで値崩れを防ぐことができました。具体的には、スーパーの中で生鮮や野菜売り場と連動しながら総菜の素を販売できる体制を整えました。例えば、キャベツの横にキャベツを使った総菜の素を置く。こうすることで、お客さんが野菜を探している間に食べ物の写真が載った総菜の素が視界に入り、「この食材とこの調味料があれぱ1品できるのか。それなら買ってみよう」と需要を喚起できる。しかも、物によってはフライパン1つで3分もあれば完成します。忙しい台所を守っている人にはありがたいことです。こうして生鮮と加工食品を並べて販売することで、総菜の素のみならず生鮮品の売り上げも伸びたと聞きました。結果的に、小売り側の利益にもつなげられるのです。


価格競争とは一線を画しながら生活を豊かにする商品を展開するには、小売り側の協力も必要です。例えば、10年前に発売した「うちのごはん」という和風総菜のもとがあります。「白菜のうま煮」や「なすの肉みそ妙め」など、今では20種類以上ものレパートリーを持つ人気商品ですが、発売当初は和風総菜の素というカテゴリーが市場に存在しませんでした。営業担当は相当苦労したと思います。それでも地道に種類を増やしていけば、小売り側も和風総菜の素というカテゴリーの棚を作ることができます。棚ができれば、新たなカテゴリーを使って消費者を招き入れやすくもなります。今では他社の参入も始まり、我々は相当気を引き締めてやらなければならないと思うほどになりました。


最近聞いた話ですが、江戸時代も今の日本と同様、人口の増加や所得面で停滞が見られたそうです。しかし、江戸時代の人たちは精神的に豊かな生活をしていたようで、文化的にも浮世絵など後世に残る素晴らしいものが生まれています。今の日本は暗い論調ばかりが目立ちます。だからこそ、もっと楽しく人生を送ることができるのではというメッセージを発信する必要があると感じています。


海外に行くと、若くても日本の代表のような立場に立たされます。若手社員には、社内研修で「自分の立ち位置、考え方をしっかり持ちなさい」と繰り返し話しています。


海外の取引先や友人、知人から「日本の文化とは」「宗教観とは」と様々な場面で問われ、それまで自分がしっかり考えてこなかったものの大切さを思い知らされました。親や先輩の教えを振り返り、本を読んで勉強し直しました。その結果、海外の人と渡り合う度胸が付きました。


中東のある国でスーパーの客にしょうゆを味見してもらおうと提案したら、販売代理店から猛反対されました。そこでは宗教上、試供品を手渡す女性に対し、男性客が質問したくても声をかけられないからとのことでした。そこで試供品にレシピを付けるなど知恵を絞りました。


英語は下手でも、基礎がしっかりできていれば大丈夫。交渉ごとも条件があいまいなままではサインはしません。自分がわかるまでじっくりコミュニケーションすれば、外国語の問題は克服できる。


「勉強しろ、本を読め」というのが新人時代から上司だった茂木(友三郎)さんの口癖。海外経験を通じて、日本を何とかしなければという使命感に燃えていた茂木さんから多くのことを学びました。


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