松波晴人の名言 一覧

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松波晴人のプロフィール

松波晴人、まつなみ・はるひと。大阪ガス行動観察研究所所長。大阪出身。神戸大学工学部環境計画学科卒業。神戸大学大学院工学研究科修士課程修了後、大阪ガスに入社。大阪ガス基盤研究所に配属され、生理心理学、人間工学関係の研究活動を行う。コーネル大学大学院で修士号取得。行動観察ビジネスを開始。和歌山大学で博士号(工学)を取得。大阪ガス株式会社行動観察研究所を設立し所長に就任。そのほか、財団法人社会経済生産性本部サービス産業生産性協議会科学的・工学的アプローチ委員会委員などを務めた。著書に『ビジネスマンのための行動観察入門』など。

人間には価値観に合致することには気づく半面、価値観に反することは過小評価し、場合によっては無視するという傾向があります。それは、自分の思い込みと事実が食い違っていることを認めたくないからです。これを認知的不協和といいます。しかし、それを乗り越えないと新しい気づきは得られません。


問題を客観的に把握してからでないと、有効な対策が立てられないんです。ダイエットと同じで、自分が何を食べてどれだけ運動しているかときちんと認識してからでないと、有効な対策が立てられず結局やせられない。それが、行動観察が重要な意味を持つ点なんです。


人間は、自分で意識している以上に環境に大きな影響を受けている。例えば暑い日は、暴力的になります。殺人事件も圧倒的に気温が高い日に多い。あるいは、うるさい部屋と静かな部屋、双方に人を待たせておき、そこに本をたくさん持った人を行かせて、わざと転んで本をぶちまける。すると、うるさい部屋にいた人はほとんど、拾うのを手伝ってくれません。逆に静かな部屋にいた人の多くは手伝ってくれる。


心理学で言うラベリングというのがあります。子供に「算数が良く出来るな」とラベリングするか「お前はあほやな。頑張らなあかんわ」とラベリングするかで、その後が違ってくる。前者のように良い言い方をしたほうが、圧倒的に成績が伸びるんです。皆さんがよくご存じなのは、血液型です。A型はまじめなどと言われますが、心理学的には、血液型と性格とは全く関係ないものです。でもこれも「A型だからまじめですね」と言われて、まじめになっていくんです。


優秀な営業マンは意識せずともリフレーム(ものごとへの捉え方の枠を変えること)し、考えながら相手を観察しています。しかし、そうでない営業マンは相手をただ見ているだけです。


人間は初対面の印象に強く影響されます。しかし優秀な営業マンは、「このお客様は丁寧なサービスを好む」と最初の印象を持っても、その後も相手を観察し、「本当は丁寧にやるとうっとうしがる人」と気づけば即座に対応を変えます。一方、普通の営業マンは第一印象から頑として離れず、同じ対応をしてしまいます。


以前、営業マンの行動を観察したときのことです。優秀な成果をあげている人と普通の人の違いは、相手がどのような人かを安易に決めつけずに相手を観察し続け、気づきを得て、行動に反映させる点にありました。


ものごとを見るたびに最初からいちいち考えるより、「前はどうしたか」「他の人はどうしているか」といったフレーム(ものごとの捉え方の枠)で自動的に解釈した方が楽です。しかし、フレームが固定されていると、周囲で興味深いことが起こっても、それに気づかず自動的に処理してしまうことになります。


同じ相手と接したり、同じ光景を眺めたりしても気づきを得て成果を残す人と、何も気づかず成果を出せない人がいます。その違いは心理学でいう、「フレーム」を外せるかどうかにポイントがあります。フレームとは自分の見聞きしたものをどう切り取るかというものごとの捉え方を指し、それまでのフレームを外して、新しい見方をすることを利フレームといいます。


人間って基本的に自分のことを過信しているんですよ。客観的に見た自分よりも、もっとすごいと思っている。それが進化の上では正常なんですが、でも、だから周囲から褒められる機会は自分が思っているよりも少ない。だから認めてもらうとすごく嬉しい。ということは「お前、そんな大したことないぜ」と言いたくなっても、言っちゃだめ。人間って、皆自分は論理的に考えて、冷静な判断を下していると思っているけれど、はたから見たらそんなことないんですよ。


僕自身は、観察のために、非常に優秀な人に会いに行く機会が多々ありますが、ものすごく勉強になります。共通項がいっぱい出てきて、僕もそうしないといけないなと思うことがしばしばあります。多くの方が前向きで、かつ冷静に事実を受け止めている、正に行動観察の概念です。ただ理論を分かっているのと、それを実践出来るかというのは別の話でして(笑)。僕もなるべく実践したいとは思っています。取り入れていくのは面白いですよ。


結局、行動観察で何をしているのかというと、現状を適確に把握するということです。仕事をもっと早くするためにはどうすれば良いのか、「上司が話しかけてくるから集中出来ない」なんて言うけれど、本当はどうなのかというのを客観的に見る。そうしたら、思ったほど上司が話しかけていないということも分かるんです。


サービスというのは、勘と経験、つまり暗黙知の側面が強いものです。例えば同じ系列のチェーン店でも、店舗によって差がありますよね。その店独自の工夫や個人の努力に依っているからノウハウが広がらない。成績の良い営業マンに、どういうノウハウがあるのかと聞いても多くの人は「たまたま、お客さんが良い人ばっかりなんですよ」と答える人もいて、言葉として説明出来ないケースが多い。


スポーツクラブを訪れる見学者の入会率について調べた例があります。入会率の高い店と低い店に行って、見学に来た人にどう対処しているか朝から晩までずっと観察したのですが、やはり入会率の高い店には根拠がありました。メモを分析したところ、スタッフが見学者に自己紹介した方が、入会率が高いと分かったんです。そのほかいくつかの点を取り入れた結果、入会率を上げることが出来ました。


ある銭湯で風呂からあがった人たちが集まる待合スペースの自動販売機の置き方を変えたところ、売り上げが7割アップしました。どういうときに飲み物を買うのか、あるいは買わないのか、じっと行動観察をしている中で分かりました。


生ビールの宣伝ポスターってよく見かけるかと思いますが、ある銭湯でそれが残念ながらほとんど見られていませんでした。これではアピール度ゼロ。じゃあどこに貼れば効果的なのか。まず人が見てくれる場所じゃないといけませんし、どのタイミングで見てもらえたら一番効果があるのかと考えた結果、サウナの中に貼り直しました。結果として、その銭湯では生ビールの売り上げが6割増えました。


行動観察で一番大事なのは、仮説や偏見を持たないということです。子供が初めて海外に行った時のように「何だろう。何でこれ、こうなっているの?」という気持ちでいることです。「どうせこうだろう」と思ってしまうと、いろいろなものを見落としてしまいます。だから、ある種意図的に、対象となる業態を勉強せずに現地に行きます。そしてそこで気付いたことを、とにかくメモや、時にはビデオに撮っていく。それらの記録を分析して、その行動が何を意味するのか解釈していくんです。構造的に解釈出来たら、どうしたら良いか自然と分かるものです。


一般的な主婦の調査なら、観察の対象者と朝から晩まで、一日ずっと一緒にいさせてもらうんです。対象が主婦であれば、買い物も一緒に行きますし、掃除、洗濯の時も一緒にいて、その合間にインタビューをさせてもらう。そうやって、今、主婦がどんなところに困っているのか、どういう生活実態があるのか、どういう価値観で、どういう思いで生きているのかというのを、ずっと見ていくんです。


私は行動観察をマーケティングに取り入れているのですが、従来のマーケティングの調査では、例えば製品を開発するにしても、主婦を対象とした新たなサービスを考えようというときも、まずアンケートをしていました。アンケートを取ると、皆さん普段から困っていることはもちろん書いてくれます。しかし、そこに書かれているのは「思っていること」だけ。あるいはグループインタビューをしても、いろいろ話してはくれますが、本人も気付いていないことは、当たり前ですが話せないし、言葉にならない。アンケートで「どう思いますか?」と問うのは、ある意味、表面的であって、もっと深いところまで掘り下げないと、これだけいろいろな価値観があるなかで、本当に良いもの、新しいものは提案できないと思うんです。


イノベーションにより、新たな価値を生み出したり、生産性を向上させたりするためには、まず現場の実態を把握しなければなりません。とくにチームを良い方向に導いていく役割を担う管理職の方には、大事なスキルだと思います。そこで重要なのは、既存の価値観やフレームにとらわれず現場と向き合うことです。そうして初めて、現場に潜む課題やニーズの本質をつかむことができます。


潜在的な問題に気づくために大切なのは、これまで持っていた仮説をいったん横に置いて、ゼロベースで考えることです。課長ともなれば「仕事とはこういうもの」という信念をはっきりと持っていると思います。しかし、潜在的な問題の本質に気づくためには、自分の固定観念はバイアスとして働くことになります。人間には「自分の考え方に合致した事実はしっかりと捉えるが、考え方に合致しない事実は例外として無視する」という特性があるからです。


現場で情報収集をするとき、上司が「私は何でもわかっている。まず私のいうことを聞けばいいんだ」という姿勢でいると、自説に合う情報は得られるかもしれませんが、現場の素の情報は得られません。また、「自分はこう思う」という課長の思いが強すぎると、部下が影響されてしまい、現場の本質を知ることがさらに難しくなります。


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