曳野孝の名言 一覧

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曳野孝のプロフィール

曳野孝、ひきの・たかし。京都大学経営管理大学院准教授。大阪出身。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。ハーバード・ビジネススクール上級研究員、マサチューセッツ工科大学国際関係研究所研究員などを経て、京都大学経営管理大学院准教授。そのほか、東京大学社会科学研究所併任助教授、ロンドン大学東洋アフリカ研究所研究員、スタンフォード大学京都研究センター併任助教授、コロンビア大学京都日本研究センター併任准教授等を歴任なども務めた。専門は、国際経営、経営戦略、企業統治、経営史。

他社と差別化が難しい状況の中で、ブランドをいかに確立するか。それが利益を確保し続けるカギです。ユニクロのブランドコンセプトは、「手ごろな価格でファッショナブルな商品を提供する」です。ユニクロは価格競争を促す側で成長しましたが、ブランド確立後は低価格に依存しない体制を築き、事業を展開しています。


ブランドは独占的で他社は使えません。競争的な市場でもブランドが確立できれば差別化して価格を上げることができます。アメリカでは、ブランド戦略で成功した養鶏農家が実際にいます。1970年代フランク・パーデューという農夫が鶏肉に「フランク・パーデューズ・チキン」と名付けて、他より少しだけ高い価格で売り出しました。同時に本人自らが出演するテレビCMも流し、味は他のチキンとほとんど変わりませんが大当たりしました。ブランド名を冠し、プロモーションすることで競争力をつけ、売上を伸ばすことができたのです。


価格から原価を差し引いたものが利益ですが、価格競争が始まって価格が下がれば、原価を下げて利益を出すしかありません。競争的な市場でも、1社または複数社だけ大規模な設備投資を行えば、コストダウンは可能です。しかし、規模の経済が有利に働く産業ばかりではありません。たとえば養鶏農家では鶏舎を大規模化しても生産コストの削減には限界があります。もちろん価格を上げれば利益が増えますが、養鶏業ではイノベーションも難しく、実質的な値上げは不可能です。いやおうなく価格競争に巻き込まれ、利益を削れるだけ削って対応している農家が多いはずです。


経営学の理論では、市場が完全競争下では経営学上の企業の利潤はゼロに近づきます。ここから抜け出すためには、独占的な要素を持ち込む必要があります。決定的に競争的な現在の市場では、イノベーションによる差別化が大切です。


ある産業に投資(企業買収)などで参入する場合、大切なのはその企業が利益を出せるかどうかにあります。市場全体が儲かるか、あるいはひとつの製品が利益を出しているかどうかに固執する必要はありません。成長が頭打ちになっている成熟市場の成長は、競争相手が参入してこないところにあります。競争相手が少ない市場ならば、ひとつひとつの企業の価値をじっくりと見極められる余裕も出てくるでしょう。


私は、リーマンショック後の「モノづくりこそ日本経済の生命線」論に違和感を覚えます。むしろいまこそカネづくりとモノづくりを連携させ、頭打ちの現状を打破する道を探るべきでしょう。モノづくりの枠内だけで戦略を立てても、市場の縮小は乗り切れません。カネづくりによるサポートを得ることで戦略はグンと広がるはずです。


成熟期にある日本企業が学ぶべきなのは、中国ではありません。日本より早く成熟したアメリカにこそ、ヒントがあるのです。アメリカ経済をけん引してきたのは、ウォール・ストリートを舞台にしたカネづくりかもしれません。しかし、その一方でメイン・ストリートともいうべきモノづくりが脈々と受け継がれているのも事実です。アメリカの製造業は、早い時期に成熟しただけに頭打ちになるのも早かったですが、それでも構造的不況を乗り越え、いまも経済を支えています。


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