山田昭男の名言 一覧

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山田昭男のプロフィール

山田昭男、やまだ・あきお。日本の経営者。電気資材メーカーの「未来工業」創業者。旧制中学卒業後、父の経営する電線メーカーに入社。同社在籍中、劇団を旗揚げし、昼はサラリーマン、夜は舞台監督や裏方全般として活躍。劇団に熱を入れ過ぎたため、勘当され未来工業を創業。独自なコスト節約法と、スイッチボックスのようなシェア8割を超える強みを持つ商品をいくつも生み出し、高収益体質の企業をつくった。

世の中には、「適任者がいない」「人材が足りない」などと嘆く経営者がいると聞くが、よく周りを見てほしい。目の前にいるじゃないか。猿ならいざ知らず、人間なら自らの立場に応じて仕事ができる。一度そう信じて会社の人事を手掛けてみたらどうだろうか。


経営者は悲観論にとらわれずに、「こうしたらうまくいくんじゃないか」と知恵を絞ったほうが、よっぽど生産的だと考えている。


まず社員を感動させ、次にお客様に感動していただく。そして儲かっていない会社の反対をやる。そうした姿勢が未来を切り拓くのだと思う。


会社というのはお金を儲けるために存在する。儲けられないのであれば、存在する価値はないと思う。それならば、「未来工業では儲からない会社と反対のことをやってやろう」という発想のもとで、これまでいろいろなことに取り組んできた。その結果、後発でローテクの岐阜県の小さな電設資材メーカーでありながら、不思議なことに何十年も倒産せずにすんでいるんだ。


成果主義やノルマを禁止した。そんな重荷を社員に課すと、無理をしてしまい、かえって契約内容の質が下がってしまう。ノルマを課さず、人の管理もしていないが、そのほうが自由なので社員は喜ぶ。喜んでやる気が出るから、自分で目標をつくって積極的に仕事をしている。


残業をすると、その分の残業代は25%割増にしなければならなくなる。おまけに残業は夜にするものだから、電気代もかかる。企業はコストダウンを徹底しなければいけないのに、残業なんかしてしまったら、かえってコストが高くなる。コストが高くなるということは、それだけ儲からなくなるということ。つまり残業ばかりしているから、日本の企業は儲からないんだな。


私はかつて、「残業をすると解雇するぞ」と話したことがある。そういうと、幹部社員は、「そこまでやったらかわいそうだ」と反論してきた。そこで私は、「残業をしたいのは君たちの勝手だが、残業をするなら、そのときかかった電気代を、残業した人間が負担してくれ」といった。するとその後はだれも残業しなくなった。


そもそも商売とはお客様を感動させることで成り立つ。お客様を感動させることができれば、品物を買ってもらえる。品物を買ってもらえば、その会社は必ず発展していく。どんな会社でも、お客様第一主義、お客様のニーズに応える、顧客満足など、いろいろな言葉で表現しているが、要は「感動」という一言で言い表わせるのではないだろうか。では、お客様を感動させるのは誰か。これは社員にほかならない。ならば、経営者たるもの、お客様よりも先に社員のほうを感動させなければいけないはずだ。まず社員が自分の会社に感動していなければ、お客様を感動させるような働きができるわけがない。


基本的には、電気設備の工事に携わる建設会社の職人に喜ばれるような工夫を心がけている。たとえば、「従来取り付けに10分かかっていたものを、1分で取り付けられるよう改良する」「従来両手で組み立てなければいけなかったものを、片手で簡単に組み立てられるようにする」「従来品よりも格段に使いやすくする」「きれいに作業できるようにする」といった観点で、規格にのっとった商品でありながら、まったく新しい価値を生み出していく。


工夫により、職人が感動し、未来工業のファンになってくださるようになる。ファンが増えることによって商品がたくさん売れる。たくさん売れることによって会社が発展する、という図式が成立する。


人を雇えないから残業させるというのは間違い。25%の割増金を払って利益を出せる会社がどのくらいあるのか。


特殊な品物を買ったら、仁義を感じて定番のものも買ってくれる。トータルで黒字になればいい。


常に考えろ。世間や業界とは反対のことを常に考えろ。


かけるべき良いコストがある。売れるものほどコストをかけるべきだ。


人のいない机の上をわざわざ照らしておく必要はない。席を外す際には、必ず自分の机の上の蛍光灯を消す。それを徹底させる狙いで、個々人が責任を持って管理する蛍光灯をはっきりさせている。


以前、茨城県に新工場を立ち上げる際、5人の部長がそれぞれ自分の部下を工場長に推薦してきたことがあった。皆、自分の部下は優れていて、相手の部下は「協調性がない」「上役の言うことを聞かない」などと批判して、なかなか議論がまとまらなかった。そこで私は推薦された部下5人に円陣を組ませて、その中心で鉛筆を倒すことにした。倒れた方向の人を工場長にするという寸法だ。それぞれ一長一短あるのだったら、誰が工場長になっても同じと思ったんだ。人選を「重力」に任せたら、鉛筆は5人の中で一番経験の浅い若い奴を指し示した。茨城工場の従業員は数人からスタートして、その後、100人ほどの規模に拡大したけれども、その若い社員は立派に工場長の職務を果たしてくれた。


私は基本的に誰に何のポストを与えても構わないと考えている。頭が良くなくてもいい。それなりの立場を与えさえすれば、誰だってそれなりに仕事をこなす。私はそうした考え方に基づいて人事に采配を振るってきた。


経営者が知恵をしぼって従業員が働きやすい環境をつくり、従業員が意に感じて一生懸命に働くという、ごく当たり前の経営のあり方が、残業問題のみならず、全国の7割にものぼる赤字企業の、黒字化への何よりの処方菱になるだろう。うちはべつにユニーク経営をしている会社ではなく、普通の会社なんだよ。


生来のアマノジャク気質もあって、いつも人と違うことで驚かそうという山っ気がやる気の源だろうね。クールビズなんて私は十数年前からやっている。実用新案で認めて欲しいくらいだ。


好きな言葉は「小さな倹約、大きな浪費」。必要な無駄と不要な無駄を見極めろということ。数年前に全額会社負担で600人の従業員を連れてラスベガスに社員旅行にいったときは、マスコミがかなり取り上げてくれた。とてつもない宣伝効果があったと思うよ。


残業の原因は、経営者が知恵を絞っていないことと、弱気によるもの。「お客が逃げたらどうしょう、売上がいかなくなったらどうしょう」と、経営者がダメになったときのことばかり考えるから、社内の雰囲気が悪くなる。従業員も帰るに帰れなくなって残業が増える。事実、日本の全企業の7割以上が赤字企業。25%の割り増し残業を払い続ければ、そりゃ赤字にもなるし、大企業みたいに100億円近いサービス残業を隠さないと経営の帳尻が合わないのは当たり前。


「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」は禁止。極力、現場で判断してもらったほうが効率的だし、たいてい、どうでもいいような相談が多い。先日、ある部長が私のところに相談にきたから、「お前、今後、相談にきたらクビにするぞ」って脅かしてやった。いまの私の肩書きは相談役だけど、日本の会社で相談したら怒る相談役は私だけやろうね(笑)。


役員の乗用車ももってのほか。ウチは天皇陛下がこられても、ライトバンで迎えにいくよ。乗用車を買う金があれば、そのぶんを従業員に還元したほうがいい。基本的にランニングコストは全部原価にボディブローで跳ね返ってくるから、意外とバカにならない。


「毎日忙しくて、残業させないと追いつかない」という管理職には、「残業させるだけの仕事が大量にあるなら、新たに1人雇え」といっている。元をとれるはずだから。でも、そういって新たに人を雇った部長はいないね。だいたい、時間内でできるようになる。1人分の仕事量なんて、全員で工夫すればなんとかなるということだよ。


いつも私は、「残業するくらいなら、お客によそで買ってくださいとお断りしなさい」っていっている。お客が逃げてしまうなことはないよ。消費者は短期的にはチラシでみて安い店の卵を買うことはあるにしても、中長期的には、気に入った店に必ず戻ってくるもの。その理由は日本人だから。荒唐無稽な話じゃない。本当だよ。だいいち、残業地獄でくたびれた顔をした社員がいる会社から、永続的にモノを買いたいと思うだろうか。規則正しい生活を送っていつも元気がよい社員が多い会社とつきあったほうが、その会社にとって長期的なメリットになるはずでしょ。


手厚い福利厚生もそのひとつだけど、ウチの経営陣は絶えず従業員のやる気をどうやって上げるかに知恵を絞っている。たとえば、社内の改善提案コンテスト。生産部門だけでなく、間接部門も参加して知恵を出すように指示した。でも、ただ知恵を絞れといっても出るものじゃない。じゃあ、報奨金を出そうと。どんな些細なアイデアでもいいから、アイデア一件につき、500円出すことにした。それが正式に採用されれば、さらにプラスαで出す。最多提案者は、176件。その人は8万8000円の臨時収入を得たことになる。しかも現金で渡した。最近は、給料が銀行振込みで母ちゃんに財布を握られている父ちゃんが多いから、こっそりあげることにしたんよ。


いま派遣労働者の労働条件の改善が社会問題になっているけど、ウチはすべて正社員。そういうと、「いまは転職の時代だから、正社員を雇うのは古い」という人がいる。アホかといいたい。それはマスコミが勝手に煽っているだけやと思うね。最初から会社を辞めようと思って入社する人間が、どれだけいるのか。私には疑問に思えてならない。会社を転々としてステップアップしたいと考えている人間なんて、全労働人口からすれば、ほんのひと握りでしょ。それに、転職した人の大半が、むしろ転職先で労働条件が悪くなっているケースが多い。それを、「いまの若者はすぐ辞めるから」なんていうステレオタイプの悲観論を経営者がもってしまったら、それこそ従業員は、不安で仕事に身が入らないよ。基本的に経営者は、定年まで勤めたいと考えている大多数の真面目で純粋な従業員の思いをすくい取ってやるべきでしょう。


規定時間内で成果を出すには、従業員の仕事上の不満や不安をギリギリまで減らすことに尽きると思う。


給料を払っているから従業員をできるだけこき使え、という発想。そういう発想では、いつまで経っても残業はなくならないよ。


いまはどこの会社の経営者も、従業員の残業を減らすことに躍起になっているけど、残業を減らすなんて簡単なこと。8時間働いたら帰ったらええだけでしょ。従業員にそれ以上の仕事をやらせなければいい。それじゃ、ノルマを達成できないって?じゃあ、残業すればノルマが達成できるのか?そもそも会社経営というのは、従業員が8時間働けば黒字が出るように計画を組んでいるはずでしょ。残業をしないと会社が傾くと考えるのは、経営そのものがおかしいのではないか。


未来工業のいろいろな取り組みは、すべて社員の不満を解消するとともに、社員を感動させるためにやっていることばかりだ。感動は人を喜ばせる。喜んだ社員は一生懸命に働いてくれる。会社のためにやってやろうという気持ちになる。そうして頑張った結果が、お客様を感動させ、事業を発展させることにつながるのだ。


当社では、コンセントの差込口やスイッチボックス、電線を通すパイプなど、電気設備に関するさまざまな部品・器具を製造している。大部分の製品は法律で規格が定められているため、寸法や材質はどの会社がつくっても同じ。要するに、なかなか差別化しにくいものを扱っているといえるだろう。しかし私どもは、商品を開発する際、他社がまだやっておらず、他社の特許も侵害しない工夫を必ず込めるようにしている。当然、新しい工夫を思いつかなかったら、商品として発売することはない。つまり、差別化しにくい分野でありながら、何らかの差別化が実現できた新製品だけを世に送り出しているのである。


世の経営者に対して、ひとつ意見しておきたいことがある。一般的に、会社で一番給料が安いのは、入社したての女性社員だろう。その女性社員でも、自動車は自分の給料で購入している。そんなのは当たり前のことだ。「ウチは給料が安いから、社員には自動車を一台ずつ買ってやろう」などと考える社長は一人もいない。ところが、会社で一番高い給料をもらっている社長は、自分の金で自動車を買わない。必ずといっていいほど会社の金を使い、女性社員よりもはるかに高級な自動車を購入する。そして会社の金でガソリンを入れ、会社の金で車検を受けて、その車をプライベートの遊びにも使っている。そんな社長の姿を見た社員が、果たして会社のために頑張って働いてくれるだろうか。私は絶対に一生懸命働いてくれなくなると思う。普通の人間ならバカバカしくなって当然だろう。たかだか4000万円の所得を上げられない、つまり儲かっていない中小企業の社長が、会社の金で高級車を買うのは、すぐにやめるべきだと思う。そうではなく、社長も自分の給料の中から、身の丈に合った自家用車を購入すれば、それだけで社員を感動させることにつながるはずだ。


「提案制度」もつくっている。これは世の儲かっていないほとんどの会社でもやっているので、実は私は気に食わない。しかし、提案制度がないと、せっかく提案をしたいと思ってくれている社員に不満を抱かせることになる。つまり、当社が提案制度を設けたのは、社員の不満を取り除くことが第一の目的だったわけだ。提案制度をやるからには、儲かっていない他社とは違うやり方をしなければ気がすまない。ということで、当社では、一つ提案を受け取るごとに、提案書の中身を見る前に現金500円を払うことにした。社員にしてみれば、どんな小さな提案でも一回500円もらえるからうれしい。20回提案すれば1万円になるから、これもまたいい小遣いになる。喜んでたくさん提案してくれるから、結果的にいい提案も集まるようになる。これまで実際に、社員の提案で大幅なコストダウンや能率向上が図られてきた。もちろん素晴らしい提案には、内容に応じて1万円、2万円、3万円といった報奨金を出している。中身を確認しないで500円支払う、という当社独自の提案制度は、手前味噌ながら、なかなか効果を発揮しているといえるだろう。


給料以外にも、社員に臨時収入を与える独自の仕組みがいろいろある。当社では、作業着を貸与しておらず、仕事中に作業着を着るか着ないかは社員の自由にした。そもそも社員全員がおそろいの作業着を着る意味が、私には分からない。きちんと仕事ができれば、服装などどうでもいいと思っている。もちろん、なかには作業着を着たいという社員もいるから、作業着を買えるだけの現金を全員に支給している。作業着を着るかどうかは自由なのだから、何に使おうと社員の勝手。ポイントは、銀行振込ではなく現金を直接手渡すということだ。妻帯者のほとんどは奥さんに財布を握られているから、小遣いが乏しい。作業着代は個人的な小遣いに回しても構わないから、社員は喜ぶ。喜べば、またさらに頑張って働いてくれる。


社員への給料はいくら払えばいいのか。これも大事な問題だ。業界や地域によって、ある程度の相場はあるのかもしれないが、その相場自体、なかなか把握しにくい。一番大事なのは、社員が、友だちや同級生がもらっている給料の額を聞いたとき、「ウチはまあまあもらえているな」と思えるだけの給料を払うことだ。友人よりも給料が少ないと感じたら、社員は絶対に働かなくなる。もちろん払える額には限度があるが、「まあまあの額」であれば社員は納得する。納得すれば一生懸命に働いてくれる。では、たくさん払えばいいかといえば、それはそれで私は感心しない。仕事の内容に対して、適正な給料の額というものがあるはずだからだ。


未来工業の会社の門には鍵がない。門衛用の小屋はあるが、門衛は雇っていない。さらに警備会社とも契約していない。つまり、泥棒がとても入りやすい状況だ。そのため、当社を訪問する人の多くが、「無用心だから門衛を雇ったほうがいい」とか、「警備会社と契約したほうがいい」などと忠告してくれる。しかしよく考えてもらいたい。たとえば門衛を雇ったら、ウチは正社員しか採用しないから、年間750万円のコストがかかる。警備会社と契約しても、それなりに経費がかかるのは間違いないだろう。仮に当社に泥棒が入ったとしても、不要な電灯を常に消して、一日中社内が薄暗くなっているような「ケチケチ経営」を徹底している会社だから、金目のものなんて何も置いていない。せいぜい古いパソコンが何台かある程度だ。つまり泥棒に入られるほうが、門衛や警備会社にお金を使うよりも安くすむ。実に単純な算数の計算だ。ついでに門の鍵を購入したら、それだってコストアップにつながってしまう。それなら門の鍵なんて買わなくていい。冗談のように聞こえるかもしれないが、コストダウンとはそのように考えるべきだと私は考えている。


社員旅行には毎年行っていて、費用はすべて会社が負担している。5年に一度は海外へ旅行していて、これまでオーストラリア、パリ、ハワイなどいろいろなところに旅行し、社員たちに喜んでもらっている。数百人の社員を海外に連れて行くには億単位の費用がかかるが、社員たちが一生懸命働いてくれて稼いだお金だから、社員が喜ぶように使う。もちろんこれも仕事へのモチベーションアップにつながる。


お客様に対しても、「たくさん注文をいただいたときは、割増料金をいただきます」と宣言した。お客様からすると、すぐには理由がお分かりにならない。一度に大量に購入したら、値段が安くなるのが世間の常識になっているからだ。しかし、大量に注文が入っても、製品をつくるスピードを極端に上げることはできない。だから、どうしても残業をする必要が生じる。残業をするということは、その分社員の給料が25%割増になるからコストが上がる。さらに夜勤などしてしまったら手当は5割増になる。だから大量注文は、お客様から割増料金をいただかなければ、コストが合わないのである。ごく単純な計算なのだが、これを理解していない人がほとんどなのに驚かされる。これに対して流通業は、トラックに1000個積んでいたのを10000個に増やしたからといって、ドライバーは1人だからコストはほとんど上がらない。しかし製造業の場合、残業が必要になるほど注文を受けたら、製造にかかるコストは必ず上がる、したがって商品の単価も上がるということを、世の経営者に知ってほしいと思っている。


製造業の一般的な勤務時間は8時間。朝の8時から夕方の5時までで、途中1時間の休憩をはさむというパターンだ。しかしこれは、日本の大部分の儲かっていない会社がやっていることだから、未来工業で同じようにやるわけにはいかない。そこで、出社時間を朝の8時30分、退社時間を午後4時45分にした。勤務時間は1日7時間15分。残業は禁止しているので、年間の労働時間は正味で1600時間となる。これは日本で一番短いそうだ。一日は24時間しかない。朝7時に家を出て、午後7時に帰宅し、8時間睡眠をとったら、残りはたったの4時間だ。これを残業なんかに使ったら、食べて働いて寝るだけの人生になってしまう。そんなつまらない生活ではなく、もっと人間らしい喜びを感じられることに時間を使ってほしい


私には、社員のアルバイトを禁止する理由がまったく分からない。おそらく多くの中小企業が、大企業の就業規則をマネているのだろう。しかし、我々のような規模の会社が社員のアルバイトを禁止するのは、絶対に間違っていると思う。以前、当社の社員がよくアルバイトをしている温泉宿の主人が訪ねてきた。そのとき、「お宅の社員は本当によく働いてくれて、年末年始は非常に助かっている。ものは相談だが、できたらもっと休みを長くしてくれないか」と、冗談半分に話されたことがある。未来工業は休みが多い。いま以上に休みを長くすると、お客様をさらに怒らせることになるから、さすがにそれはできないけれど、休みを多く与え、アルバイトを自由にしたことで、社員たちがみな喜んでいるのは間違いない。


未来工業は休みが多い。ゴールデンウイークは例年10日程度まとめて連休にする。飛び石連休で休みの合間に出勤したら、仕事の能率はかえって下がってしまうからだ。同じ理由で、木曜日が祝日の場合は木曜日から日曜日まで、火曜日が祝日の場合は土曜日から火曜日まで、いずれも四連休にしている。合間に一日だけ出社しても、やはり仕事の能率は上がらない。能率の低い仕事しかしないのに、電気代やお茶代を使ったら、そっちのほうがもったいない。


バブル経済が崩壊したあと、多くの製造業ではパート従業員や派遣社員を採用するようになった。おそらくその影響だろうが、昔では考えられなかったようなリコールが多発している。リコールといえば格好よく聞こえるが、要は「不良品」のことだ。パートや派遣は15万円しかもらっておらず、ボーナスも少なく、いつ解雇されるか分からず、退職金ももらえない。つまり、将来の保証も何もない。そのためやる気がなく、サボりがちで、技術を覚えない従業員が増えた。極論だが、たぶんそのせいで不良品の発生率が高まってしまったんだろう。


定年は七十歳に設定した。しかも定年まで給料を下げない。多くの会社では、六十歳を過ぎると給料を半額にしたりしているが、ウチはそれをやらない。おそらく日本では当社だけだろう。これによってどうなるか。三十代、四十代の働き盛りの社員が「おれたちを七十歳まで働かせてくれる。この会社のために頑張ろう」と思って、一生懸命に働いてくれるようになるんだ。


未来工業では800人の従業員全員が正社員だ。派遣やパートを雇うことはない。これも社員が喜び、一生懸命に働く動機になっている。正社員として雇用し、30万円の給料を払ったら、社員はみなモチベーションが高まって、必ず30万円分以上働いてくれるものだ。世の多くの経営者は、パート従業員を15万円で雇ったら、正社員を雇っよりも15万円節約できたと思っている。しかし、15万円の従業員は、「安月給で働かされている」と思っているから、まず15万円分働いてくれることはない。社長や管理者が見ている前では働いているふりをするが、見ていないところではできるだけ働くまいとするのが人情だ。つまり生産性や仕事の質は著しく下がってしまう。


女性社員には、子どもを生んだら三年間の育児休暇を与えている。これも日本で一番長いはずだ。ルール上、三年ごとに六十七歳まで出産し続けたら、会社にまったく出社しないで退職金をもらうことができる。これも女性社員が喜んでくれる。だから子どもを生んだあとも、ほとんどの人が復帰して働いている。


どこの会社でも「報・連・相」、つまり報告、連絡、相談をするよう指導されている。私の会社ではこれを禁止した。なぜなら、儲かっていない会社が必ずやっていることは、ウチではやめなければいけないからだ。もちろん、役所や大企業なら、組織を束ねるために「報・連・相」を行わなければならないだろう。しかし我々のような中小企業でそんなことをする必要はない。むしろ時間や労力や経費のムダになる。いちいち上司や社長に報告などしなくても、現場を一番知っている社員に判断を任せればいい。そのおかげで、ウチでは社員が自主的に考えて動くようになった。


多くの会社は「いいものを安く」を標傍する。確かに日本の製造業はいいものをつくっている。自動車、カメラ、時計などさまざまな分野で世界トップクラスの製品をつくり、最近中国に抜かれたが、長い間世界第二位の経済大国だった。しかし、いいものを安く売ったら、当然利益は薄くなる。それが現実の数字にも表われている。とにかく日本の企業は儲けることができないんだな。


未来工業ではホウレンソウを禁じている。現場のことは現場の社員が一番知っており、上司にいちいち相談する必要はない。その代わりに「常に考える」というスローガンを社内のあちらこちらに貼って、社員に考える癖をつけさせ、自分で動ける社員を育てている。手前味噌だが、未来工業ではホウレンソウなどせずとも利益を出し、法人税を納めている。


私は、ホウレンソウ(報連相)などをしても時間と労力と経費の無駄になるだけだと考えている。「報告などしなくてもいい。判断は任せる」。人の上に立つ者には、それぐらいのことを言える度量を見せてもらいたい。また、その期待に応えられる部下が育っていない会社はもともと成長など望めない。


赤字企業は、一体どこに問題があるのだろうか。日本の大半の企業が赤字だとなると、産業界を支配する常識を疑うべきではないか。つまり、多くの企業が善かれと思って導入している制度や習慣は成果につながっていないと考えるのが妥当だ。


未来工業では、昔ながらの年功序列を貫いている。年功序列の下、頑張っても頑張らなくても、給料は同じとなれば、社員は頑張らなくなると思われがちだが、日本人の国民性から言ってそんなことは断じてない。むしろ、成果主義の下、頑張ったのにそれが正当に評価されない方がよほど意欲を引き下げる。


本当に産業界が日本経済の成長を憂いているのなら、法人税の引き下げを政府に要求するより先に、やるべきことがあると私は考えている。赤字企業を減らすことだ。


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