小笠原清忠の名言 一覧

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小笠原清忠のプロフィール

小笠原清忠、おがさわら・きよただ。弓馬術礼法小笠原流31世宗家。東京出身。慶應義塾大学商学部卒業後、医療金融公庫(のちの福祉医療機構)に就職。父の死去に伴い、弓馬術礼法小笠原流31世宗家を襲名。国内外で礼法の指導、流鏑馬の披露、礼法の普及を行う。そのほか、東京都学生弓道連盟会長、財団法人姿勢研究所評議員、日本古武道振興会常任理事、儀礼文化学会常務理事、慶應義塾大学非常勤講師、國學院短期大学客員教授、池坊短期大学客員教授などを務めた人物。

立ち居振る舞いはその人の品格を表し、相手への誠意を示すもの。立ち居振る舞いを見れば、その人の誠実さや、己を厳しく律して鍛錬してきた人かどうかがわかります。


当教場には、「時、人、場所に合わせて当たり前のことができればいい」という訓があります。サラリーマンに当てはめれば、商談に行った先でも、変に構えたりせず普通に振る舞うことができれば、自然と商談も上手くいくということにあたるでしょう。


基礎がしっかりわかっていて肉付けの部分を変えていくのはかまいません。しかし、基本がわかっていない、あるいはきちんとできていないのに「形」を崩すと、それは礼儀作法ではなくなります。移り変わりの速い産業界であっても、決して変えてはいけない基本があるのではないでしょうか。


礼儀作法では、日常の心がけが一番大切です。玄関やトイレのスリッパを見ればその家の生活ぶりがわかります。これは会社にとっても当てはまるでしょう。玄関や受付の人の態度を見れば、その会社がわかるというものです。


会社員の礼儀作法の基本といえばおじぎがあります。しかし、ただ取引先に頭を下げればいいというのは「型」でしかありません。相手に対する尊敬が伴ってこそ、きちんとしたお辞儀の「形」ができるのです。


私は小笠原流の家元であるだけでなく、政府系金融機関の職員でもあります。当家は江戸時代までは、将軍家に武術や礼法を教えることで収入を得ていましたが、明治時代から生業は別に持って、礼法は余暇で教えるという決まりになりました。礼法はすべての基本だから、それを教えることを生活の糧にすると、ついつい金持ちに媚びへつらい技がいやしくなるというのがその理由です。


小笠原流の礼法の教育は、本当に基本的な動作から始まります。ですから、最初の免許の取得まで10年もの時間がかかるのです。


小笠原家は鎌倉時代にはじまり、代々将軍家の指南役として仕えてきました。礼法を教える家はたくさんありましたが、武士にとって最も大切な武術まで教育できるのが当家しかなかったことが、常に政権に重宝されてきた理由でしょう。


小笠原流の礼法も、時代時代に合わせて少しずつ変わってきました。土足から板の間へ、そして畳や椅子の生活へと、日本人の生活様式が変わってきたのですから礼儀作法が変わるのも当然です。ただし、「立つ」「座る」といった礼法の基本動作は決して変わることはありません。


現代の作法やマナーは、体の使い方よりも、手順が重視されています。お辞儀の仕方も、上体を傾ける角度が何度、頭を下げているのは何秒間という具合に数字で教えられます。しかし、手順だけを身につけても、基本の体の使い方ができていなければ様になりません。相手を敬う心も伝わらない。そこが伝統的な礼法と現代の作法の大きな違いです。


礼法とは「身を修める」ことです。身を修めるとは、「心正しく、体(たい)直(なお)くする」こと。心正しくとは、文字通り常に心を正しく保つこと。体直くするとは、常に体を真っ直ぐにしなさいということです。小笠原流礼法では立つ、歩く、座るという日常の姿勢や動作が最も重要な作法の基本とされていますが、そのときに大切なのがこの「体直く」、すなわち体を真っ直ぐにすることなのです。


小笠原流礼法の真髄は「実用・省略・美」。日常の行動として役に立ち、無駄なく、ほかから見て美しくあるということです。


礼法と聞くと、決められた動作を覚えるだけの堅苦しい行儀作法だと思われるかもしれません。しかし、武家を中心に伝えられてきた小笠原流礼法の本質は、日常生活の中で行う心と体の「鍛錬」です。初めて参加される方は一様に戸惑います。話を聞くお勉強ではなく、体を使う鍛錬から始まるからです。基本である歩き方の練習だけでも、始めて5分もすると汗だくになります。筋肉痛にもなるし、思惑違いからすぐにやめてしまう方もおられます。


礼節は、その外見こそ国や社会によって異なるものですが、大もとにあるのは、いずれも人を思いやる心です。そして、自国の伝統に根ざした作法は、どの国へ行っても通用するもの。ですから、国際化が進む現代にこそ伝統的な作法を学ぶことが必要ですし、それが日本という国を世界にアピールすることにもなると私は思います。


正しい姿勢をとることを基本とするのは、武家の礼法に特有のものではありません。ヨーロッパの騎士道に由来する貴族の作法にも、同じ考え方があります。それは乗馬とダンスに象徴的に見られます。いずれも貴族の嗜みとして、必ず身につけなければいけないものですが、正しい姿勢を取れないとできません。「体(たい)直(なお)く(真っ直ぐな姿勢を保つこと)」を基本とする生活は、洋の東西を問わず、上流階級の作法として重視されていたものと思われます。


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