守屋洋の名言 一覧

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守屋洋のプロフィール

守谷洋、もりや・ひろし。日本の中国文学者、中国古典翻訳家、ビジネス書作家。宮城県出身。東京都立大学卒、東京都立大学大学院中国文学科修士課程修了。中国古典の翻訳と、中国古典の知恵をビジネスに応用するための書籍を多数執筆している。著書に『老荘入門 逆境を乗り切る本』『覇者の戦略と決断』『中国人の発想80の知恵 現代に生きる中国古典の英知』『悪党に学ぶ勝ち残りの戦略 中国古典の人間学 ビジネスに勝ち人生に勝つために』『帝王学の知恵 中国古典に学ぶ』『孫子に学ぶ12章 兵法書と古典の成功法則』『右手に「論語」左手に「韓非子」 現代をバランスよく生き抜くための方法』『勝つためにリーダーは何をなすべきか 中国古典の名言に学ぶ』ほか多数の著書、共著、翻訳書を出版した。

企業が主導権を握るためには、業界トップの座を目指す必要がある。二番手、三番手に甘んじていると、どうしてもトップ企業の戦略に振り回されて、受け身の経営になってしまう。主導権を発揮するためには、どんな小さな業界でもいいから、トップの座を目指したい。


先に主導権を握ったからといって、決して安心できない。相手もなんとか挽回しようと必死になっているのだ。そんななかで、主導権を手放さないためには、常に二の矢、三の矢(第二第三の策)を用意しておかなければならない。


孫子もこう語っている。「敵より先に戦場におもむいて、相手を迎え撃てば、余裕を持って戦うことができる。逆に、敵より遅れて戦場に到着すれば、苦しい戦いを強いられる」。余裕を持って戦えることが大きいのかもしれない。心に余裕があれば、判断力も冴えてくるし、あらゆる事態に対して冷静に対処することができる。


先着の利、これを活かして先手必勝と行きたい。「先んずれば人を制し、後(おく)るれば人に制せらる『史記』」という有名な言葉もある。戦いに際しては、何よりもまず先手を取ることを目指さなければならない。


「善(よ)く戦う者は、人を致して人に致されず」。人とは敵を指している。戦上手な者は、相手の作戦行動に乗らず、逆にこちらの作戦行動に載せて振り回すのだと孫子は言う。わかりやすく言えば、相手のペースに乗るな、こちらのペースで戦えということだ。主導権がこちらにあれば相手を振り回すことができるし、相手に渡してしまえば、相手のペースに巻き込まれて苦戦を余儀なくされる。


強大な相手は、自らの強大を頼んで、こちらをなめてかかり、十分な備えを怠っていることが多い。それがこちらにとっては付け目なのである。敵の手薄に付けこみ、敵の意表を突く。当然、こちらから積極的に仕掛けて、敵を手薄な状態に追い込むような策も考えられてよい。


敵の戦力の充実しているところは避けて、手薄なところに攻め込んでいけ、そうすれば勝てる可能性が高くなるのだと孫子は言う。たしかに、敵が守りを固めているところに正面突破を図って攻め込んで行っても、いたずらに死者の山を築くだけで、苦戦を免れない。どんな強大な相手にも必ず手薄な部分がある。そこを見つけて食らいつけば、弱小な戦力でも勝機を見出すことができるかもしれない。


企業にしても、いまや世界に展開している。現地の工場や営業所は、たんにものをつくったり売ったりするだけではなく、情報収集の最前線でもある。一級の人材を投入して、情報の収集に努めなければならない。それらの現地からあがってくる情報を活かして使うことができれば、経営判断の誤りを少なくすることができるだろう。


情報には必ず裏を取る必要がある。ひとつだけの人脈ではなく、できれば複数のルートをつくっておくことが望まれる。


情報収集で重視したいのが人と人とのつながりである。このつながりを通じて、そっと囁いてもらえる情報に貴重なものが多いのである。そのためには、普段から信頼してもらいえる関係を築いておく必要があり、そのための人脈づくりを怠ってはならない。


いまは孫子の時代と違って、巷に情報があふれている。出版物、インターネットなどを駆使すれば、居ながらにしてかなりの情報を手に入れることもできる。しかし、それで十分なのかといえば、決してそうではない。世の中にあふれているのは、じつはどうでもいいような情報が多いのである。いざというとき役に立つ貴重な情報を入手するためには、現代といえども、それなりの手間暇をかけなければならない。


戦争には、いつの時代でも莫大な費用がかかる。それに対し、情報の収集にかかる経費は、ごくわずかな金額にすぎない。わずかな経費を出し惜しんで情報の収集を怠るとは馬鹿げた話だと孫子は力説している。また、それほど重要な仕事だから、情報員には第一級の人材を投入すべしとも語っている。


孫子も言うように、撤退もまた生き残るための有効な戦略だと心得てかかりたい。情勢は常に変化している。チャンスはまた来る。形勢不利だと見極めたら、無理をしないでひとまず撤退し、戦力を温存し力を蓄えながら情勢の変化を待つべきなのだ。


五分五分でも、現実には戦わざるを得ない場合もある。その際には、次の二つの前提が満たされなければならない。

  1. 始める前に、五分しかない勝算を六分、七分まで引き上げる。最善の努力を尽くす。
  2. 半分の確率で負ける可能性があるのだから、負けたらどうするのか、そのときの対策くらいは事前に用意してかからなければならない。

勝算のない戦いはするな、戦いを始めるなら、これなら勝てるという見通しをしっかり立ててからやれと孫子は言う。では、どの程度の勝算があればよいのか。勝算ゼロ、話にならない。そんな戦いは何としても避けなければならない。勝算十割、人間のやることだから、もともとこれはあり得ない。微妙なのは五分五分である。孫子に言わせれば、これは博打なのだ。当然、博打はするなということになる。


百回戦って百回勝ったとしても最善の勝ち方ではない。戦いわないで敵を屈服させるのが最善の勝ち方なのだと孫子は言う。なぜだろうか。二つくらい理由を上げることができる。

  1. 武力で相手を屈服させようとすれば、相手だって負けたくはないから必死で反撃してくる。そうなると、どんなにうまく戦っても味方に必ず損害が出る。損害が大きければ勝ったとしても褒められない勝ち方である。できれば、損害ゼロで目的を達する。そんな勝ち方が望ましい。
  2. 状況が変われば、今日の敵は明日の友となる可能性がある。そんな相手を当面の敵だからといって、散々痛めつけて屈服させるのは、長い目で見て得策ではない。

人を騙したり陥れたりする駆け引きは、悪い駆け引きであって、これを使うと、いっぺんに信用を落としてしまう。できれば使わないに越したことはない。ただし、こちらが使わないからといって、相手も使ってこないという保証はない。相手の駆け引きにはまらないためには、駆け引きの手口くらいは一応心得ておく必要がある。


とくにリーダーに仕事を成し遂げるための駆け引きが欠けていたのでは、リーダーとしての責任を果たすことができない。


戦略戦術とは、わかりやすく言えば、戦いの駆け引きである。駆け引きなどというと、高潔な人は眉をひそめるかもしれないが、実はこれには二つの種類があるのだ。ひとつは人を騙したり陥れたりする駆け引き。もうひとつは、仕事を成し遂げるための駆け引きである。自分を活かし人も活かすための駆け引きといってもいい。これは社会人として世の中に立っていくためには、ぜひとも必要な駆け引きといってもよい。


私ども日本人は戦略戦術という言葉が好きなのだという。しかし、言葉が好きな割に、いざ使う段になると、世界の民族の中で一番ヘタクソだとも言われる。たぶん、日本人は真面目なタイプが多いので、逆にそれが禍して、上手く使いこなせないのではないかと思う。いずれにしても、これでは世界の海千山千の相手に苦戦を免れない。


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