和地孝の名言 一覧

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和地孝のプロフィール

和地孝、わち・たかし。日本の経営者。テルモ会長。神奈川県出身。横浜国立大学経済学部卒業後、富士銀行(のちのみずほ銀行)に入行。三ノ輪支店、丸の内南支店、本店業務企画部、広報部などに勤務後、アメリカに駐在。アメリカ駐在中にハーバード大学ビジネススクールでAMP修了。帰国後、取締役、常務、情報管理本部長、専務、副社長などを経て社長・会長に就任。日本医療器材工業会会長、日本経団連常任理事、日本医療機器関係団体協議会会長なども務めた経営者。

「人に優しく、仕事に厳しく」が私の方針です。


人は、気持ちをどう持っていくかによって、大きく変わる。


企業は強い経営力がなければ生きられない。だが社会に貢献しなければ存在する価値がない。


全社員が使命感を共有したときに、会社は本当に強くなる。


人をつくらずによい製品はつくれない。


飛行機は、離陸するときも着陸するときも、後輪が最後。前輪が若い人で後輪がきみたちだ。後輪がどれだけ頑張れるかで会社は決まる。
【覚え書き|ベテラン社員たちに語った言葉】


きみたちのことを“従業員”とは呼ばない。主役になり、自立してほしい。
【覚え書き|社員のことを従業員ではなくアソシエイトと位置づけたときの発言】


口だけでいくら「自由闊達にしなさい」とか「みずから使命感を持って仕事をしなさい」と言っても、人は変わりません。仕掛けが必要です。


社員と直接対話するのは大事なことです。


特に医療分野では、社会に貢献するという使命感が重要です。儲かるか儲からないかが先に立つと、会社がおかしくなってきます。


「社長は『全社を回る』と言っていたが、まさかここには来ないだろう」とだれもが思っている場所に行くと、そこでがんばっている人たちが、日ごろ思っていることを話してくれる。


社員の働く喜びややりがいは、究極的には使命感のもと、皆が力を合わせて働くなかから生まれるのではないでしょうか。


厳しい環境では、生き残るのに多大な努力を要する半面、競争相手もなく、繁栄できる可能性も大きいのです。だからものごとに覚悟して取りかかりなさい。新しいことを恐れずチャレンジしなさい。


一番怖いのは、「これはこういうものだ」と決めつけて新しい発想生み出せなくなることです。創業から扱っている体温計ひとつとっても、まだまだ新たな可能性があるはずです。


私自身、日々新しい情報に触れることを心がけています。同業者や財界人に限らず様々な分野の人たち、たとえば画家など芸術関係者などにも会います。異分野の方に学ぶことは大きいですから。


企業経営に携わるうえで忘れてならないのが、異業種、異文化との接点を絶えず求め、視野を広く持つことです。当社は来年90周年を迎えますが、歴史にあぐらをかくだけで、新しいものを発想し、生み出そうとする気概を忘れてしまっては、そこに成長はありません。


優先順位をつけて、手早く進めていくことが重要です。ダラダラやっているのでは、他人の時間を奪うことにもなりかねません。限られた1日24時間を有効に使い、仕事をスピーディに進めていくことは、自分のためだけでなく、他人への親切でもあると私は思います。


仕事に取りかかる前に準備、段取りを決めるのが大事であることは言うまでもありません。建築会社では新入社員に最初に教えて、最後まで教えるのが「段取り」なのだそうです。最初に効率的な段取りを考えてメンバーを徹底し、一斉にスタートする。それをするかしないかで、同じ建物を造るのでも、収益があがるか赤字になるかの差が生じるそうです。それは他の仕事でもまったく同じでしょう。


朝は考えを醸成する時間です。毎朝の起床は原則5時半ですが、そのあと30分ほど時間を取って、自宅周辺を散歩します。この毎朝30分が、一人で考える絶好の機会になるのです。机に向かってウンウン唸ったところで、いい考えが浮かぶことは少ないのですが、山も海も近い環境の中で歩き回っていると、ふと新しい考えが浮かんでまとまっていくものです。この時間に一日のスケジュールも思い浮かべて、会社についたときはすっかりスタンバイができます。


若い社員に「一流のものに触れろ」「仕事以外の話を2時間以上できるようになれ」とよく言っています。仕事だけでいいと思っていると仕事バカになるだけで、新しいアイデアを生み出すことはできません。仕事に生かすためにも、そしてもちろん人生を豊かにするためにも、優れた文化に触れる時間を大事にしたい。そこには気分転換以上の意味があるのです。


社内での仕事は原則6時まで、せいぜい6時半までと決めています。私が帰らないとほかの社員が帰りにくいという理由もありますし、時間を有効に使いたいからでもあります。お客様との会食のほか、好きなオペラやクラシックコンサートの鑑賞にあてたり、絵を見に行くこともあります。


十年日記は仕事を始めて間もなくつけ始めました。ときどき過去の記録を見直して、季節の変わり目の体調管理や、行事のタイミングを図るのに役立てています。メモにはスピーチに使えそうだと思ったことを記録します。


毎週金曜日に秘書室長も交えて翌週の打ち合わせをし、日曜の午後に自宅で手帳を眺めながら次の一週間の予定をもう一度頭に入れるのが習慣になっています。家族には「休みなのに仕事の顔になっている」と叱られますが、こればかりは仕方がない。平日は分刻みのスケジュールなので、その場でいちいち次の予定を確認する暇はありません。だから前もって予定を頭に入れておくのです。


人とお会いするとき、私は何かしら自分の向上にプラスになるものを得たいと思って接しています。そして、話の中で印象深かったことをお礼状で触れるのです。相手も自分の話が役に立ったことを素直に喜んでくれるでしょう。


経団連のミッションでインドに出かけた折、マザー・テレサの活動に触れ、帰国後に注射器などを贈りました。するとすぐに私宛にお礼状が届き、そこにはこう書かれていました。「私を診てくださったすべての医師、看護婦、そして治療に使った薬や医療機器、これらのおかげで私がいま、生かされており、これらを通して、神様はたくさんの愛を示してくださいました」「この感謝の気持ちをテルモの皆さんのための祈りに代えて贈ります」。じつに心温まる手紙です。お礼状で大切なことは、心が伝わることです。


お礼状の大切さは万国共通です。多くの外国の方とお会いしますが、トップクラスの人からは必ずお礼状が来ます。お礼状を出さない人は、グローバルな仕事はできないといっても過言ではないでしょう。


銀行のニューヨーク駐在員時代、日本からお客様の案内や接待をした経験があります。そのとき気づいたのは、社会的地位が高く、忙しい人ほどお礼状をマメに送り、しかも自筆だということです。それ以降おつきあいした方々も同様で、さらに届くのが翌日であるなど、早いことも共通していました。


私は社員に「人は財産だ」と訴えました。人の価値はバランスシートには直結しませんが、人の努力の結果は必ずバランスシート上の数字に表れます。社員の半分をクビにすればたしかに人件費は半分になるかもしれない。しかし、社員のモチベーションが上がれば2倍3倍の価値を生むんです。いってみれば人は固定費ではなく含み資産なんです。


4200人の社員全員と直接対話をしました。社員が社長室の外に出ないで間接話法で話をしたのでは伝言ゲームのように、間違った内容が社員に伝わってしまいます。それに、私が直接現場に出向いた方が、改革に対する本気度が社員に伝わります。社員に私の話を「間違いなく、この社長が言っていることだ」と信じてもらうことが大切なんですね。


テルモ再建にあたってやるべきことが山積みしている中で、まず着手した課題は企業風土改革でした。企業風土が悪いとどんなにいい戦略を立てても組織に浸透せず、経営改革は立ち行きません。企業風土を変えずにリストラだけして、前進させようとしても無理なんです。根本から変えなければ、テルモ再建はできないと思いました。


いまの若い人は完璧な上司を求めてしまうんです。完璧な上司なんているわけがないじゃないですか。この人からはこの部分を、あの人からはあの部分を学ぼうという気持ちでいれば人はみんな必ずいいものを持っているんです。


嫌な上司だと思ってしまうと、そこからは反発心以外の何も生まれません。しかし人は相手の思いを感じるものなのです。私が彼を目標にして学ぼうという気持ちをもったら、不思議と嫌だと思っていた上司の態度が変わりました。そういう心が大切なんです。上司もこいつを育ててやろうという気持ちになります。バカヤロウなどと口では言うかもしれませんけど。


私にも嫌な上司はいました。でも現在の私があるのは、その人から何かを学ぼうと思ったからです。せっかくこの仕事に就いたのだから、いずれ辞めるとしてもこの人から何かを学んで辞めようと思ったんです。そういう視点でその上司を見ると、彼にはビジネスマンとしての洞察力があることに気が付きました。ここを学ぼうと思った瞬間に、ものすごく気が楽になりました。


上司は自分の目標だと思います。いま目標になるような上司が少なくなっているという声が聞かれますが、嫌な上司であれば「ああいう人にはならないようにしよう」という目標にすればいい。どんな上司であれ、自分より一歩も二歩も先を歩いているわけですから、その人から何かを学ぼうという気持ちを持つことが大事なんです。


高麗橋の吉兆から教えられたことがあります。私が下足番の方と一緒に、数人のお客様を出迎えていると、その下足番の方がお客様が乗ってこられた車の運転手に駐車場の駐車スペースを一台一台指示しているんですが、これにはちゃんとした理由がありました。実は会食が終わってお客様が出てくる順番に車を入れるように指示していたんです。「なぜ帰る順番がわかるのか」と尋ねると、「人間というのは変わらない」と言うのです。つまり約束の時間より前に来る人、時間調度に来る人、遅れてくる人の順番と言うのは、会合が終わってぱっと出てくる人、トイレに行ってから出てくる人、まだしゃべっている人というように帰るときも同じだという。それが人間の性格なんです。


おもてなしの感性を持ったプロが上司にいました。大阪の話ですが、ある日、高麗橋の吉兆に会合の下見に行くように言われました。心の中では「前の日にも接待で行っていたので、わざわざ下見に行かなくてもわかっている」と思いながらしぶしぶ出かけて帰って報告すると、「クーラーの風はどの方向に流れていた?」と聞かれたんです。ギョッとしましたね。「最初に言ってくれればいいのに」と思いましたが、いま振り返ればそれが教育なんですね。はじめからクーラーの風の向きを見てくるようにと指示してしまうと、それしか目に入らなくなってしまうわけです。ただ行って見て来いとしか言われなければ、自分で問題意識を持ちます。それが大切なんです。


いまの若い人たちの鍛え方は、やわになっていますね。そもそも私の若いころは「仕事は先輩の技を盗んで覚えろ」という教育でしたから、新人研修などやってもらえませんでした。私は本来、研修のような受け身の姿勢では人は育たないと思うのです。職人さんは先輩から盗んで自ら学ぶから技が生まれる。人から教えられたのでは駄目なんです。いまの経営トップの人たちは実践で学び、自ら向上しようと研鑽を積んできた人ばかりです。


富士銀行は自由闊達が教育方針でしたから、「君はどういう問題意識を持っているのか」ということをよく上司から聞かれました。日中、仕事の場ではどんなに上役の上司でも新人の部下でも、誰もがみんな対等に議論をしました。しかし、いったん仕事を離れて飲みの世界に入ると、年功序列なんです。役席で一番下のものはラーメン一杯とお銚子一本だけ。一番上は飲み放題、食べ放題です。


私は向上心や好奇心のない人は駄目だと思うのです。それから大事なのは、素直さです。多少能力や知識があっても、学んだものをすぐに吸収して自分に活かすことができない人は伸びません。


日本は、世界的に見て、平均して優れた人材がそろっています。これを有効に活用することが経営の合理性の追求を意味するんです。私が「人はコストではなく、財産だ」といっているのは、人情論ではなく、経営の合理性として、これだけ優れた経営資源を持っていながら活用しないのは、経営者の怠慢だと思うからです。


頻繁に人が入れ替わっていたのでは、いいモノづくりはできません。モノづくりをするうえでは、仕事に愛着を持っている、モノづくりの好きな人材の蓄積が重要です。だからこそ、人を財産と考え、長期雇用を維持することが経営の合理性だと思うのです。


人を財産と考え、長期雇用を維持することが経営の合理性だと思うのです。ただし、年功序列は違うと思います。かつては、評価システムも発達していませんでしたし、農耕民族的なマネジメントで会社は成り立っていました。つまり、経験を積んだ年長者のほうが、お天気の読みは上手なんです。しかし、現在のグローバルな経営環境の下では、狩猟民族的な経営が求められるようになりました。狙う獲物はなにかにのって、リーダーを選ぶ時代になったのです。年功ではなく、適材適所でないと生き残れない時代です。


人間を評価することはそんなに簡単なものではありません。私は「アソシエイト経営」と言っていますが、社員一人一人がアソシエイトとして「自立」と「自律」をもって、マネジメントの主役になってください。そして、社員同士が議論しあうことで、新しい価値を生み出していきましょうということです。【覚書き:アソシエイト=仲間。外資系企業では役職なしの基幹業務に従事する従業員のこと】


どの業界でも、国内ナンバーワン企業は上がありませんから世界を見るしかないんです。そのため、意外にもナンバーワンの企業こそ危機感がありますし、社員もそれを感じて勤勉に働くわけです。


私は54歳の時に、富士銀行取締役からテルモに常務として転身しました。そのときのテルモの第一印象は、名前と業種しか知りませんでしたが、最初に感じたのはあまりにも企業文化が違うことと、財政的にギリギリのところまで来ているにもかかわらず、危機感がまったくなかったことです。


どの業界でも、国内ナンバーワンの企業は危機感を持っています。それは、世界を視野に入れているからです。しかし、ナンバーツー以下の企業は自分より一つ上の企業しか見ていない。一つ上の企業に追いつこう、追い越そうということにどうしても意識が向いてしまう。その先のより広範囲を見渡せば、本当はもっとたくさんの敵が存在するのにもかかわらず、目の前しか見えない。あまり危機感がないのです。


会社が危機に直面していたとしても、社内に危機感があれば危機に立ち向かって乗り越えることができるのですが、そもそも危機感がまったくないということ自体が一番の危機なんです。意外にも社内の人間には危機感がないものなのです。内向きの思考では、なにもかわらない。鎖国状態で組織の内部だけ見ていては、危機感は生まれません。


必要不可欠な条件は、社員たちが何を考えるかを感じ取る感性と、彼らの発言を聞いたらできることは必ずやるということです。現場には「経営者が来てくれたのだから、何かが変わるだろいう」という期待感があります。ところが、経営者が現場に来て話をしたものの、実際には何も変わらなければ、社員は意見を言っても無駄だと思います。社長に言って変わらないものを、他の誰が変えられるのかとバカバカしく思うでしょう。


社員から話を聞いたなら「違うことは違う」「できないことはできない」とハッキリ伝える必要があるし、「君の話はいいな」と言ったのであれば、必ず実現しなければいけない。それができないのなら、経営者が現場に行っても意味がありません。


よく現場主義と言いますが、ただ単に現場に行っただけでは散歩をしているのと同じです。だから、経営者は日ごろから自分で本を読んだり、人の話を聞いたりして、問題意識を高めなければいけない。経営は真剣勝負です。会社は経営者一人ですべて変わりますから、トップに適材の人が来れば組織は変わります。


私が富士銀行のニューヨーク支店で働いていたとき、支店長は旧陸軍士官学校の最後の卒業生でした。私が「陸軍士官学校では何を教えていたのですか」と尋ねると、「一に人格、二に人格、三に人格」と答えられました。戦場で先頭に立って「進め」と叫んだときに、部下たちが自分の背中についてきてくれるかどうかが勝負だというのです。いわば「背中で指揮を執る」のですが、そのときに部下を従わせるのは、自分の人格しかないということになります。ひとくちに「人を大切にし、人を動かす」と言っても、それを実践するには、経営者に相当の覚悟が必要とされるのです。


効率第一、収益第一、「人はコスト」だというアメリカ的風潮が広まるのは歓迎できません。アメリカと日本は違うのだし、ヨーロッパもまた、日本やアメリカと異なる文化・伝統を持っています。世界の各国・地域で異なる強みや特徴を引き出し、それらを活かしてどうマネジメントしていくかということが、本来のグローバル経営です。


「経営には、目に見えるものと、目に見えないものがある」と私はよく言っています。目に見えるものは、業績や合理化目標といった、数字で表せる部分。だがそれよりも重要なのは、企業理念や使命感、やる気といった目に見えないもののほうです。こと日本人の場合、これらを大事にするかどうかで、経営の深みがまったく違ってくる。


給料の高さや労働条件のよさだけで、社員たちを引っ張っていくことはとてもできません。そのため、私は社長時代、人をコストでなく資産と考え、高い目標とチャンスを与えることが、意識改革の成功要因だという信念を貫いてきました。


社内には目立たずともコツコツと仕事をしている人たちが数多くいます。「彼には本当に助けられている」とか「彼女のおかげで、私はいろいろなことができている」という話を現場で聞くたびに、そういう縁の下の力持ちと言える人たちにも目を向けるべきではないかと思ったのです。そこで「現場の誇り賞」を創設しました。支店長でも工場長でもなく、本人の周囲にいる人たちが推薦し、皆でその中から受賞者を選ぶというものです。


私はがんばる人を大切にするのであって、怠ける人間を大切にするつもりはありません。そこのメリハリをきちんとつけないと、いくら「人は資産だ」と言っても、仕事を怠けるような“不良資産”をつくることになってしまいます。


いったん降格しても復活してくる社員が多いのはなぜか。本人に対し、なぜ降格したのか、どこが悪いのかを、上司からはっきり伝えるようにしたからです。きちんと伝えれば、本人が奮起する材料になります。


甘えを許さないからこそ、360度評価の結果が3期間連続して悪かった人は、降格させました。1年で20~30人は降格したと思います。ただし、相撲にたとえれば、幕下に落ちたあと、もう一度がんばって大関に返り咲いた人も数多くいる、明るくオープンな制度にしました。


「口だけの社長ではない」ことを社員に理解してもらうには、対話だけでは不十分です。社員の発言の中で、「これはいい」と思ったことを、帰社してすぐに経営会議で取り上げることにしました。逆に、ムリなことは、「こういう理由でできない」と、その場ではっきり伝えることにしました。こうしていくうちに、社員は自由にものが言えるようになり、社内の雰囲気がガラリと変わったのです。


富士銀行の取締役を務めていたとき、テルモに役員として派遣されることになりました。着任して驚いたのは、テルモは3期連続の赤字に陥っているのに、社員に全然危機感がないことです。「これは大変だ」と思いました。


私は経営者として、「人はコストでなく資産である」と訴えてきました。ところが最近は、「ヒト、モノ、カネ」と言うべきところ、「カネ、モノ、ヒト」になってしまっている。おカネが主役でいいのでしょうか。人をつくらずによい製品はつくれないというのが、私の信念です。


先日、ある著名な経営学者が講演で、「なぜ、日本の企業は運動会と社員旅行をやめたのか」と発言されていました。企業にとっておカネはかかるかもしれないが、運動会ならたった一日で、家族も含めて一体感を醸成できる。また、社員旅行であれば、食事やお酒の席などをとおして社長と社員とのコミュニケーションが円滑になる。「日本企業はどうしてこういうノウハウを捨ててしまったのか」という経営学者の指摘は、そのとおりだと思いました。


石垣をよく見てみると、大きな石だけでなく、割栗石(わりぐりいし)という小さな石がたくさん使われている。割栗石は、大きな石が重なる隙間に入って力を分散し、石垣をより強固にする機能を担っています。人は互いに個性も性格も異なりますが、それぞれの持ち味を活かして割栗石になる人もいるし、大きな石になる人もいる。その意味で、日本企業とはいわば城であり、多様な人を活かすのが日本の経営システムです。取り換え可能なレンガから成るアメリカ企業とは違うのです。


定年を控えたベテランたちをモラルアップさせるのは非常にむずかしい。あれこれ考えた末、テルモの研究所に併設されている運動場で、参加者全員を走らせました。私を含め役員も、一緒に走りました。走りの次は綱引き。皆、「この年になって綱引きなんて冗談じゃない」と言っています。ところが、営業部門と工場、工場と開発部門というように、ふだん対立しがちな部署のメンバーを組み合わせてチームをつくると、お互いに対抗意識が働くのか、一生懸命に綱を引くようになります。競技が終わると、皆でキャンプファイアーを囲み、お酒を飲みました。翌日は、NHKの番組『プロジェクトX』で用いられていた曲(中島みゆき「地上の星」)を流しながら、彼らが入社してから今までのテルモの歴史をスライドで見せました。「今のテルモの業績は、きみたちが築き上げてきたんだ」と話すと、感極まって涙を流す者も少なからずいました。そのあとで私がレクチャーをすると、「自分はもう定年間際だから」と冷めていた彼らも、真剣に話を聴くようになります。


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