佐野恵一の名言 一覧

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佐野恵一のプロフィール

佐野恵一、さの・けいいち。日本の経営者。要介護者向け旅行会社「たびらく」社長。奈良県出身。同志社大学在学中、祖母との旅行をきっかけに要介護者の旅行の現実を知る。キャンパスベンチャーグランプリ全国大会に「温泉旅館への入浴介助者派遣ビジネスプラン」を応募し、経済産業大臣賞を得る。在学中から同事業を開始した。同志社大学大学院総合政策科学研究科博士前期課程修了。要介護者の旅をサポートする活動の傍ら、様々な場所に出向きバリアフリーの重要性を説いた。そのほか、京都市観光おもてなし大使などを務めた。

私たちの事業で強調すべき点は、お客様に旅行を楽しんでいただくことはもちろん、お客様が旅行をとおして元気になるよう心がけていることです。


介助を受けつつも、いままで諦めていたことができるようになった。それが本人の自信につながります。あるお客様は当初一泊旅行をいやがっていたのですが、温泉に入ったら「すごく気持ちいいな」と喜ばれ、帰るころには「また行きたいな」とおっしゃいました。そして、「実は北海道にお墓があって気になっている。あんた、連れていってくれるか」とか「孫の結婚式が今度あるのだけれど、そういうものでも連れていってくれるか」と質問なさるほど、外出することに前向きになられたのです。


旅行の最後にお客様から、「佐野さん、あなたは私たちの希望よ。だから、どんなにたいへんなことがあっても、あきらめずにがんばってね」と、手を握りながらおっしゃっていただくことがあります。こうした方々の願いを裏切ることはできません。


本当は、私たちのような旅行サービスを行う会社が、ライバルになるかもしれないけれど、もっと出てくればいい。からだの不自由な人が旅行に行きたいときに行けるような社会になればいいのです。極端な話、私たちの事業が不要になるような社会が理想です。からだの不自由な人がホテルや旅館に予約電話一本入れれば自然と宿泊できるような社会、宿泊施設単独での対応がむずかしければ地域の人が介助を手伝ってくれるような社会です。


事業を始めた当初、「佐野さん、思いは分かったよ」とか「その理想はすばらしいね」といった励ましの言葉をよくいただきました。しかし、そのあとに続くのはたいてい「でも現実は……」という表現です。しばらくのあいだ「それもそうですね」と話を聞いていたのですが、いまは違います。「佐野さん、理想は分かったからさ」というようなコメントをいただいたら、「これだけは理解してもらいたい、あと5分しゃべらせてください」と堂々と言って、15分くらい話したりします(笑)。そこで黙っていてはダメなのです。押しつけるわけではないけれど、相手にしっかり理念を共有してもらうことが重要です。


私たちが最も気をつけているのは、言うまでもなく、事故です。事故のリスクはサービスの質で決まると考えています。たんに人が付いているかどうかという問題ではありません。大切なのは、同行しているスタッフがお客様のことをどれだけ理解しているか、どれだけ次の行動を予測できるか、といった点です。これができていればリスクはかなり下がる。そのほか、車椅子や杖で移動する際はどこを進めばよいのか、雨が降った場合はどうするのか、倒れたりつまずいたりした場合はどう対処すべきか、などということも考慮する必要があります。


キャンセルにもできるだけ寛大に対応しようと心がけています。わが社のお客様は旅行直前に体調を崩されることが相対的に多いという事情から、若干のキャンセル料はいただきますが、基本的にデポジットというかたちで繰り越し可能なシステムをとっています。


株式会社となって4年を過ぎていますが、その間のお客様のリピート率は83パーセントです。14回ご利用いただいているお客様もいらっしゃいます。リピート客が多いといっても、初めは、これが最後の旅行だと思って申し込まれる方がほとんど。でも、一度旅行を経験すると自信がついて、「また行きたい」という思いがふくらむようです。それに、私たちスタッフがたんに介助をするというだけではなく、第二の家族のように接することを心がけていることも、プラスに働いているのでしょう。私たちが家族のように接するからこそ、安心してお一人で参加される方が大半なのです。


最初は営利事業というより、ボランティアでした。しかし、ボランティアにはいろいろと問題の多いことが、次第に分かってきた。たとえば、事故が生じた際の責任の所在が不明確で、派遣元の組織ではなく、トラブルを起こした個人が裁判で訴えられるケースもある。また、ボランティアとはいえ、同行する人数分の旅費を支払う必要がある。一方、サービスの利用者は、金銭を払っていないからとボランティアに気兼ねして、本当に行きたい所に行くのを我慢してしまうのです。旅行サービスをきちんと続けるには、有償の事業にしなければいけないと悟りました。


私たちのやっていることは旅行業ですが、家族やデイサービス、老人ホームなどの限られた人間関係の中だけで生活している要介護者に対して、社会とのつながりという感覚や非日常性を与えるお手伝い、ひいては家族全体を幸せにするお手伝いをさせていただいているものと自負しています。


旅は最高のリハビリです。「心が動くと体が動く」ということをすごく感じます。不思議なようですが、お客様が元気になっていく様子が、本当に目に見えて分かるのです。ほとんど歩けなかった人が少し歩けるようになる、なかには階段まで上がる人もいる。自力で立てなかった人が一瞬だけれども立つ。ふだん食事をとりたがらない人が懐石をぺろつと平らげる。五年ものあいだ五日に一回、摘便(てきべん)していた人が、温泉に入ったら自然と便が出るようになる。三年くらい声が出なかった人が、最後に帰る際、「ありがとう」と言う。


私たちは六年前から行政に先駆けて京都にバリアフリー観光案内所を設けており、車椅子の無料貸出を行う一方、「車椅子で観光できるお寺や神社」とか「ストレッチャーや酸素ボンベを借りることのできる場所」などの情報を提供しています。こういう情報が分かれば、車椅子の人にとって非常に助かるのです。当初はこの無料サービスに対する理解がなかなか得られなかったのですが、最近は行政の理解も進み、京都市の政策に反映されるようになりました。私は同市のバリアフリー観光相談事業にも協力しています。


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