井上達彦の名言 一覧

このエントリーをはてなブックマークに追加

井上達彦のプロフィール

井上達彦、いのうえ・たつひこ。日本の経営学者。早稲田大学商学部教授。神戸大学大学院経営学研究科修了後、広島大学社会人大学院マネジメント専攻助教授などを経て、早稲田大学商学部教授に就任。その他、慶応大学総合政策学部講師なども務めた。専門は経営組織論、経営戦略論、経営情報論。主な著書に『キャリアで語る経営組織 個人の論理と組織の論理』『事業システム戦略 事業の仕組みと競争優位』『情報技術と事業システムの進化』など。

私は意思決定力というのは、胆力だと見ています。あらゆる情報があって、こちらが正しいということなら、誰でもできる。たとえ不確定要素があっても、胆力で意思決定するのが経営者です。それを持った経営者がいれば、成熟期にあっても、新しいビジネスを立ち上げたり、夢のある発熱する組織をつくれるのではないでしょうか。


いままでの伝統的な境界が崩れ、人材や組織にかかる負担は増す一方です。「ボトルネックを制した者が優位をつかむ」という言葉がありますが、現代のボトルネックはまさに組織と人材の動かし方です。そこを掌握した者が時代をリードできます。


人間は怠け者なので、ものごとを勘で評価するのが楽でいいのです。しかし、見える化された情報をシステムとやり取りしながら考えて再配置することが必要です。


セミナーなどで「競争戦略の本質は?」と問うと、みなさん「いかにして競争に勝つか」と考えがちです。しかし、実際は逆で「いかにして競争を避けるか」が重要です。日々の努力で「非競争の状態」をつくりだす。その方法として、他社との差別化戦略が出てきます。


暗黙知としてとらえていた資源をシステムに一度落としてみる、客体化してみることで、いままでとは違う側面が見えてきます。資源の再定義、人材の再定義をするのです。これまで苦手と思っていたものが、見方を変えれば得意なんじゃないかというケースも出てきます。


ビジネスモデルが安定していた時代に比べ、人材に求められる能力が大きく変化しています。多様性に対応できる人材、従来とは違うやり方で収益を考えられる人材が必要になってきているのは間違いないでしょう。


企業の差別化には2種類あります。ひとつは性能・品質・価格など「製品・サービスの差別化」です。もうひとつは「仕組みの差別化」です。前者が華々しいわりに他社が追随しやすいのに対し、後者は組織運用による差別化なので、強みが組織に埋め込まれ、一朝一夕には真似ができません。人材・組織戦略に裏付けされたものは、なかなか模倣されないというのが、経営学の教えるところです。


「世の中に不必要な人間はいない」など、私も本田宗一郎さんの言葉は好きです。昔は日本の組織も懐が深かった。しかし、現在は短期に処理しなければならない情報が増えすぎて、アナログ的な人材把握のやり方は、もう限界に来ています。


フランスの作家、シャトーブリアンは「独自な作家とは、誰をも模倣しない者ではなく、誰にも模倣できない者である」と言っています。ピカソもゴッホも模倣が上手い芸術家でした。彼らは模倣から始めて、やがて自分だけの独創性を生み出し、誰にも真似できない画風を確立したのです。


模倣と聞くと、創造性や独創性とは程遠い行為だと思ってしまう人は多いでしょう。けれども「学ぶ」の語源は「まねぶ」であり、模倣は創造の母とも言われます。


過去に失敗経験を積んだ企業、それも大きな失敗を経験したところほど、ほかの企業の失敗からよく学べる一方で、逆に失敗経験の少ない組織ほど、ほかの組織の成功や失敗から効果的に学習できない。


「代理学習(他者から学ぶこと)」には、コストとリスクが低く、幅広く学ぶことができるといった長所がありますが、学習の程度が浅くなりがちです。一方、「経験学習(経験し学ぶこと)」では、コストとリスクは高くなりますが、深い洞察が得られます。ただし、自分の経験ばかりに固執すると視野が狭くなるという短所があります。


多くの実践経験を積んでいる企業は、他社の経験をあたかも自分たちの経験のように吸収し、その本質を模倣することができますが、実戦経験の乏しい企業は、他社のやっていることを見ても、どこか他人事のようにとらえてしまったり、模倣を試みても本質をつかめず猿まねで終わったりするのです。


他社のやっていることをしっかり観察し、反面教師からも幅広く学び、自社でも経験を多く積んで深く学べば、それがイノベーションの実現につながります。


同業のライバル他社を模倣しようとしても、もともと情報は限られていますし、たとえ模倣できたとしても同質競争に追い込まれていくだけです。そういう「近い世界のお手本からの模倣」ではなく、他業種や海外企業から学ぶ「遠い世界のお手本からの模倣」、あるいは時間をさかのぼり、過去の初心にかえって学ぶ「原点回帰」が有効でしょう。


英語には「エイプ(ape)」と「イミテート(imitate)」というふたつの言葉があります。「エイプ」は「猿まねをする」という意味があり、ものごとの本質を理解しないまま、単に外形的な真似をすることです。これに対し「イミテート」は、ものごとの本質を理解したうえで行う知的な行為です。日本語の「手本にする」「鑑にする」にあたるのがイミテートです。


研究者は学術論文で独自性を打ち出そうとしますが、それは既存の論文との対比によって出すしかありません。そのパターンは3つしかありません。ひとつ目は先行研究へのアンチテーゼ。ふたつ目は先行研究をベースとしつつ、違いを出すこと。三つ目はいくつかの先行研究を組み合わせて新たな知見を提示することです。いずれのパターンにおいても模倣は欠かせません。アンチテーゼも「反転模倣」という一種の模倣です。


良い模倣をする上では、何の目的で、どこの、誰の、何を、いつ、どのように模倣するかという「5W1H」が問われます。「人のふり見て我がふり直せ」というように反面教師から学ぶ姿勢も大事です。


トヨタ自動車の「トヨタ生産システム」は、生みの親の大野耐一氏が米国のスーパーマーケットの仕組を人づてに聞き、そこにヒントを得ました。トヨタ生産方式のイノベーションは、生産の流れにおいて前の工程が後の工程に部品を供給するという従来の発想を逆転させ、後の工程が前の工程に「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」引き取りに行く形にした点にあります。この発想は、スーパーマーケットとそこで買い物をする客の関係を生産における前工程と後工程になぞらえたところから生まれたものです。


模倣は実践を伴わなければ上手くいきません。学問的にいえば「代理学習」と「経験学習」の組み合わせが必要です。代理学習とは他者から学ぶこと。経験学習とは自分で実践してみることです。


私は模倣には2つの側面があると思っています。それは「よい模倣」と「悪い模倣」です。「美しい模倣」と「醜い模倣」と言ってもいいかもしれません。


人名ランダムピックアップ


経営・ビジネス・投資・仕事・お金・経済的な分野で成功を収めた人たちの名言を収録しています。

ページの先頭へ