中野健二郎の名言 一覧

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中野健二郎のプロフィール

中野健二郎、なかの・けんじろう。日本の経営者。関西経済同友会代表幹事、三井住友銀行副会長、京阪神ビルディング社長。熊本県出身。九州大学経済学部卒業後、住友銀行に入行。本店営業部本店営業第一部長、取締役 証券部長、三井住友銀行執行役員 投資銀行統括部長、常務執行役員 大阪本店営業本部長、専務取締役 法人部門統括責任役員、副頭取 法人部門統括責任役員、代表取締役副会長などを務めた。そのほか関西経済同友会代表幹事、京阪神ビルディング社長、日本総合研究所シニアフェローなどを務めた。

安易に「私は客観的に人を評価しております」と述べるのは間違いで、「なるべく客観的に見るように努力しております」というのが正しい。人間とは基本的に見えないものだと心して、できるだけ多くの意見を集めて評価する。それがあるべき人事だと思います。


経営の原則はやはり、多種な情報と現場を分かっている人間がものを決めるということに尽きるのです。


人間というものは、フェイス・トゥ・フェイスで真剣に話し合えば、必ず通じ合う。なかなか通じ合えない場合でも決してあきらめず、自分の聞き方や話し方に何らかの問題があるのだと思うべきです。


会社があるべき姿から逸脱して不祥事を起こす。そのあるべき姿とは、経営理念と言い換えてもよいでしょう。企業が経営理念を見失って道から外れたとき、必ず業績が悪化したり、不祥事が起きたりする。企業トップは肝に銘じるべきです。


経営のカンを養うには、現場をみずから歩いて五感で知る、それに尽きると思います。現場を知らない経営者を、私は経営者として認めたくありません。自分のカンを磨くには、お客様の声を聞き、現場で働く人の声を聞くために歩くしかない。それが多くの企業を見てきた私の意見です。


経営者が現場に足を運んで繰り返し繰り返し、経営の方針を述べていくしかありません。私は毎朝、支店長を外して職員だけを集めた数十人規模の会議を130店余で続けました。現場職員の眼を見ながら新たな方針を繰り返し訴えたのです。その会議では、上からの一方通行にならず、双方向で話し合えました。多くの企業の現場を渡り歩いた私の経験が、この時は期せずして自分の会社で生かすことができました。


改革をするには企業トップやリーダーがいかに現場の情報を吸い上げるかが重要です。現場に入って密なコミュニケーションをとると、報告書では分からないことが必ず見えてくる。私の経験で言えば、粉飾を行なっている会社の社長や経理担当者の顔をジーッと見て、違うポイントで質問をすると、相手の眼が泳ぐ。そうするとこの会社「何かあるな」という五感が働きます。人間は大抵素直なものです。自分の会社で担当者の話が曖昧、そして「眼が泳ぐ」。そこには大きな課題が存在していると考えるべきです。その眼の泳ぎを見のがさないように、企業トップ、リーダーには現場に入って密なコミュニケーションをとっていただきたいものです。


伸びている企業には、ときには理解しがたいほどの強烈なワンマン社長がいたりします。はたから見てワンマンなのだから、部下から見たらもっとワンマンなのでしょう。しかし、厳しさのなかに人情の機微やハートがあれば、厳しく指導したとしても、部下は必ず前向きに仕事をしてくれるものと信じていいと思います。自分自身をよく知った上で人を使える経営者ならば、必ずや組織や商品の魅力を高め、会社を伸ばすことができます。


伸びる企業は、ほとんどワンマン企業です。ただし、私が言うのは、「健全なワンマン企業」でなくてはいけない。健全なワンマンかどうかは、社長自身では気づきませんから、他の人から厳しく見てもらわないといけない。他人からいろいろと厳しく言われ続けた人が社長になったとき、優れた経営ができるというのは、理に適っています。経営者は、やはり多くの批判にさらされてこそ、自分を客観的に見ることができるのです。


社員の心のベクトルは、扇形が理想です。全員が同じ方向を向くと会社として視野が狭くなりますし、バラバラな方向を向く社員がいても困ります。一定の広がりを持ちつつ、社員がおおよそ同じ方向を向かなければ事業は伸展しないのです。


営業現場を担当する部門で、延べ約4000名の社員が本部に呼ばれました。いくら調査しても、事の真相がなかなか見えてきませんでした。状況が進展しない中、私が担当統括役員でしたので急遽、臨時支店長会議を開催しました。私は、「責任は、一切経営陣で負うから、現場の人には本当のことを報告してほしい。現場には責任は負わせない」と宣言し、さらに人事部長にもその場で、「もし真実を話したことで、左遷や降格を受けることがあれば、私は人事部長を飛ばす」と明言しました。全国の現場の営業職員のモチベーション維持と調査との狭間で苦心しました。
【覚書き|三井住友銀行のデリバティブ商品が独占禁止法違反にあたるのではという指摘を受けて調査を担当したときを振り返っての発言】


すべて成功した事例に共通しているのは、環境の好転や経営者の好運に恵まれていることです。企業トップたるみなさんには、ぜひとも好運をものにしていただきたい。


アサヒビールの場合、住友銀行から村井勉氏が社長に就任したとき、倒産寸前の深刻な状況でした。そのため村井さんは、2年半かけて全国各地の代理店を2回ずつ訪問し、現場を見て回りました。そこからアサヒビールの再生が始まったように思えます。現場に入って五感を働かせると、机上の書類や議論からは決して理解できない何かが必ずつかめるものです。


バブルが崩壊したのち、私もマネジメントの一員として、不良債権処理や他行との合併に忙殺される日々を送りました。不良債権処理をしていて痛感したのは、企業トップにとって重要な要素は3つあるということです。ひとつは、みずからの責任を強く自覚すること。ふたつ目には、状況をよく踏まえて熟慮すること。みっつ目には、何をなすべきか早く決断すること。失敗する経営者は、これらのカンどころがことごとく外れています。


10大総合商社のひとつ安宅(あたか)産業が倒産し、住友銀行は約2000億円の債権放棄を行いました。そのため、事態を打開できる強烈な個性を持つ経営者が待望され、磯田一郎氏という頭取が登場しました。彼は6年間、頭取として誰もが認める最高の経営をして、アメリカの雑誌で「バンカー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたりしました。しかし、頭取・会長として長期間トップの座にいるうちに、あれほどの経営者でさえ、周りが見えなくなり人事も偏りがちになってしまいました。そこで発生したのがあの有名なイトマン事件です。詳細は省略しますが、大小はともかくこの種の事件はどこの会社でも起こりうるものです。トップが一時の成功に酔いしれ、周囲を取り巻きで固めてしまい、自分を客観的に見られなくなり暴走する。磯田氏は、一時は最高の経営ができた人だっただけに、非常に残念な末路でした。


住友銀行ですぐれたリーダーシップを発揮してきた人物と言えば、「堀田天皇」と言われた堀田庄三氏をあげることができます。私が当時秘書室にいたこともあり、彼が会長から名誉会長に退いたときにプライベートな会食でさまざまな話を直接うかがう機会を得ました。その話の中で興味深かったのは、堀田さんは現職役員で嫌いな人がいることに言及していたことです。それも固有名詞をあげて指折り数えていく。その中に私の担当役員も入っていたので少々とまどっていると、堀田さんはこう言ったのです。「嫌いだったけれど、私は彼らの能力を買って使ってきた」個人的には嫌いでも、個人的な感情を押し殺して使う。適材適所と言うのは簡単ですが、生理的に受けつけない人を自分のそばで重職に使うのは、ストレスがたまるはずです。堀田さんはそのストレスに人一倍堪えていたわけで、堀田天皇の天皇たるゆえんを、少しだけ垣間見た気がしました。


私は住友銀行に入行し、2000社を超える企業の取引現場を見てきました。会社には規模や業種の違いがありますが、「経営の本質」とは同じものだと言ってよいでしょう。なかでも、最も重要なことはリーダーシップです。


業績の悪い会社は事務所に入ったとたん、会社の雰囲気やアレッと思う感触を持ちます。現場に入って五感を働かせると、机上の書類や議論からは決して理解できない何かが必ずつかめるものです。


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