鈴木敏文の名言 一覧

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鈴木敏文のプロフィール

鈴木敏文、すずき・としふみ。日本の経営者。セブン&アイホールディングス会長。中央大学経済学部卒業後、書籍取次大手のトーハンに入社。その後、イトーヨーカ堂へ移り、創業者伊藤雅俊の右腕として活躍し、セブン-イレブン・ジャパンを設立。コンビニエンスストアという形態を全国に広め小売業界を激変させた経営者。

株式市場における真実は何なのか、私が株式投資を行って一番実感したのは、株価がずっと上がり続けることはなく、上昇が続いた後には必ず下降に入る。同様にずっと下がり続けることもなく、下降が続いた後は上昇に転じます。


株式投資をする人は、株価が上がっているときは、いつまでも上がっていくものだと思い込み、下がると始めはそんなに下がるはずがない、必ず戻ると考え、それが下がり続けると一転、もっと下がるだろうと弱気になります。これが株式投資家の典型的な心理です。


最近は自由をはき違えたような事件が多いでしょう。昔はみんなが共通で分かっている規律があったけど、それがなくなって価値観や社会がバラバラになった。身勝手を許しすぎたら、結局住みにくい社会になる。だから今は、昔よりも規律が大事になったと思う。


防空壕を掘ってた頃からすれば、自由や平和が当たり前にある時代なんて想像もできなかった。それと同じように、これからもきっと、今では思いもつかない時代が来るはずです。


セブンイレブンを作った時も、銀行を始めた時も、業界内やマスコミから総スカンを食った。うまくいくなんて誰も言わなかった。でも私はそれをやってきた。人間は自分の頭の外のことは「無理」と思いがちだ。だが重要なのは世の中の矛盾に気づき、その壁に向かって挑戦できるかだ。成功体験にすがらなければ、人口減も成長の糧になる。それ以外の細かなやり方については、次のリーダーが私と違う手法でも構わない。


その業界の経験年数が長いと、風土を変えるのは難しい。バレーボールの選手にサッカーや野球のような別の球技をやらせるようなものだからだ。


大事なのは革新力だ。完全に自己否定しなくちゃならない。日本でセブンイレブンを作る時、当時はスーパーが伸びていたが、絶対にヨーカ堂のMD(マーチャンダイジング=商品政策)のマネをしてはいけないと思った。スーパーはこれから成熟期に入ると思っていたからだ。だからヨーカ堂の人間をセブンイレブンには持ってこず、素人集団でやってきた。


社内的には、9月にグループ幹部を米国視察に行かせたことがひとつのきっかけになった。実際に米国の進んだ部分を見せた方がいい。たった1週間の訪問だったが、一斉に行かせたことで、ひとつのことを皆がディスカッションする環境が自然に生まれた。相当理解が深まったように思う。米国で同じものを見て、同じ釜の飯を食う。これまでグループでお互いの顔は知っていても、ひとつの仕事について議論することは少なかった。今回は強制ではなく、一緒に行って話し合うことができた。


ニッセンには時間をかけて築き上げた通販のシステムなど、様々なノウハウがある。セブン&アイにもネット通販の経験はあるが、お互いが持っているものを融合させていくことで競争力を高める。
【覚書き|カタログ通販のニッセンを買収したことについての発言】


これまでリアルとネットは別々に動いていたが、今後はそれを融合させた「オムニチャネル」への対応が絶対条件だ。従来とは違うステージに入っていく。


ネットとリアルが融合される世界では、これまで以上にリアルの「近くて便利」という価値が威力を発揮する。リアルの店舗の網の目を細かくしていく重要性は、これまでとは異なってきている。例えば、米国のセブンイレブンには米アマゾン・ドット・コムが、宅配ボックスの「アマゾンロッカー」を置かせてほしいと言ってきている。ネットで強力な力を持つアマゾンでさえ、最終的にはリアルの力を必要とする。彼らもそれがなくて困っているのだろう。


お客様の心に訴えるような新しいものを開発した部門というのは衣料でも食品でも全部伸びている。ところが、ただ値を下げたというようなものはなかなか伸びていない。


伸びている企業は、みんなお客様の視点に立って、お客様が欲しいと思う商品を自分たちでつくっている。だから、その時代、その時代にマッチした商品を開発し続けることが大事。


会社が伸びるか、伸びないかということは、もちろんそのときの情勢や運というものに大いに関わってくるけれども、もうひとつ大きいのは謙虚に取り組んでいるかどうかが大事。


目の前の道に木が倒れていて、他の人は避けて通ったり、見て見ぬふりをしていても、私はそれをどけないと気が済まない。自分でも損な性分だと思うが、それが自分だから仕方がない。


普通のPB開発は委託先の1社でつくることが多いけど、当社は最高に良いものをつくるためには外部の力を積極的にお借りする。11社で一つのものをつくるなんていう発想は他社にはないと思います


私はイトーヨーカ堂で人事や新事業開発のような仕事ばかりだったから、自分でモノを仕入れたり、レジを打ったり、販売した経験がない。だから別の言い方をすれば客観的に物事が見えたし、格好よく言えばお客様の立場で判断することができた。


石垣のように、基礎からきちっと積み上げているからこそ、上質さと手軽さを両立させた商品を投入し、新たな需要を掘り起こすことができるのです。セブンイレブンの平均日販の高さは、基礎からの積み上げと未来を起点にした発想の産物にほかならないということです。


集中出店は、商品の質や鮮度を高められると同時に、顧客に対する心理的な影響も大きいといえます。地域でのセブンイレブンに対する認知度がある時点からブレークし、売上の力-ブが急速に上がるからです。実際、仙台エリアもセブンイレブンは最後発ながら、今は圧倒的なシェアを持っています。


セブンイレブンの場合、総店舗数は約1万6000店近くあり、日々の生産量は膨大です。弁当やパン、総菜などのデイリー商品の生産を担うのは共同開発するベンダーと呼ばれるメーカーの工場です。その専用工場率は90%以上で、他チェーンとは圧倒的な開きがあります。この高い専用工場率が質の高さを支えているのです。そしてドミナント方式なら、出店エリア近くに専用工場をつくっても経営が成り立つのです。


質を追求し、新しいものに挑戦すれば、リスクもともないます。ただ、顧客ニーズに的確に応えられれば大きな成功を得られる。今の時代、挑戦せず、自ら変化しないほうがむしろリスクが高いと思うべきです。


顧客は常に新しいものを求める。これはわかりきったことのようにも思えます。でも我々は、いったん売り手の側に回ると、顧客の心理を忘れて、過去の経験をもとに同じことを繰り返してしまう。それは、同じことをしたほうが楽だからです。結果、顧客に飽きられる。どの局を見ても同じような番組が流れるテレビ業界などはその典型でしょう。


モノ余りの時代であっても、顧客は常に新しいものを求めます。例えば、ネクタイはなぜ売れるのでしょうか。日本のサラリーマンなら、タンスの中に何十本とネクタイを持っているでしょう。「首に巻く装飾布」というネクタイの本来の役割は昔から変わっていません。それでも、新しい柄が出たり、幅が変わったりすると、また買います。つまり、ネクタイの本質的な役割は「新しさ」にあり、顧客はそれを買おうとするのです。


商品開発には、上質さを追求する方向性と、値段の安さなど、手軽さを追求する方向性があります。上質さと手軽さはトレードオフの関係に見えます。トレードオフというと「二者択一」と訳され、どちらか一方をとり、もう一方は切り捨てるというとらえ方が多いようですが、これは正しい理解ではありません。上質さか、手軽さかのトレードオフの場合、上質さなら上質一辺倒ではなく、そのなかにどれだけ手軽さをちりばめるか、逆に手軽さなら手軽さ一辺倒ではなく、どれだけ上質さをちりばめるか、そこに価値が生まれます。ポイントは上質さと手軽さという二つの座標軸で考え、手つかずの「空白地帯」を見つけることです。すると、どこにもない商品が生まれます。


我々が目指したのは、「どこにもない商品をつくる」ということでした。そのために、「金の食パン」では、大量生産にもかかわらず、手でこねるという手間のかかる常識はずれの工程まで取り入れました。


自社と他社とを比較して、「自分たちの商品は90点、他社は80点程度だから自社のほうが勝っている」と思っても、それは売り手側の勝手な思い込みであって、顧客から見れば評価は大差なく、どちらも70点程度かもしれません。


日本では、来年4月に消費税率が8%へ引き上げが予定され、その影響で消費の落ち込みが予想されています。それをカバーするには消費税が上がった分、値段を安くする発想に傾きがちです。しかし、本当は逆で、財布のひもを緩めるには、より上質な商品を提供するという発想に切り替えるべきなのです。


おいしいものほど続けて食べれば飽きる。だから、飽きられる前により味をよくしたものを投入する。顧客は味が変わったことに気づかないかもしません。飽きずにおいしいと感じてもらえればそれでいいのです。


顧客は期待した以上の価値を感じて初めて満足する。その期待度は一定ではなくつねに増幅し、以前は「おいしいもの」のレベルが次は「当たり前」になり、やがて「飽きるもの」に変わる。だから、ロングセラーの冷やし中華もざるそばも毎年、レベルを上げる必要があるのです。


顧客はつねに100点満点のレベルを求めます。売り手側がそれを上回る120点の商品を出せば十分満足してもらえます。しかし、顧客の欲望はつねに増幅するため、求める100点満点のレベルは、次は売り手にとって120点の水準に上がります。そこで、140点の商品が提供されて満足するようになるのです。


組織内でつねに緊張感を求めるのは、顧客の心理に対応するためです。顧客は満足より不満足のほうが強く印象に残るため、外れが20%でも顧客はそれ以上に大きく感じる。一度失望されたら、積み上げてきた信頼も一気に失いかねません。失敗したら妥協せずに挑戦を繰り返し、成功しても手を緩めない。緊張感が成功確率を高めるのです。


以前、大阪出張時に人気商品のメロンパンを試食したところ、いつもと味が違いました。すぐ商品本部長を大阪まで呼んで調べさせると、原因は熟成時間不足。即刻改善させました。


一歩踏み込んで新しいことに挑戦しても、すべてが成功するとは限りません。創業以来、挑戦のDNAを持つセブンイレブンでも、顧客ニーズを探って開発した商品の80%は当たっても、20%は外れることがあります。このとき、80%当たっているから良しとするのではなく、外れた20%の商品についても、妥協せずに成功に至るまで挑戦を繰り返します。


重要なのは、自分たちの固定観念を否定し、どこの店舗だろうと、同じ値段で販売しても価値を感じてもらえるような、かつてない上質の商品を開発することではないか。


数値目標は「一人歩きをする目標」にもなれば、「自分の殻を破る目標」にもなる。重要なのは、何のための目標なのか、意味合いが組織の中できちっと理解されていることです。


セブンイレブンでも、重点商品のキャンペーンが始まると、意欲的な店舗は「シュークリームの販売数300個」「恵方巻の予約1000本」といった高い目標を掲げます。陳列方法から、顧客への声かけ、POP広告等々、一丸となってあらゆる方法を駆使します。意図的に高い目標を掲げて、いつもとは違う取り組みに挑戦し、店舗経営を活性化していくのです。


困難な課題であっても、目標が明確になれば、それを目指して従来のやり方を見直し、新しい発想を模索する。このとき過去の経験から離れられれば、先入観なしに自分本来の好奇心や感性を発揮し、自由に考えることでさまざまな制約条件が排除されていきます。高い数値目標の意味合いはここにあります。


実力以上の目標を無理して設定すべきではありません。マラソンでも実力が伴わないのにスピードを上げると、一時的には先頭に立てても必ず失速します。ただ、安全圏内に目標を設定しているかぎり成長はあり得ません。無理ではないが、これまでの限界を超えるレベルに目標を置いてみることが大切です。


目標は設定の仕方にもよりますが、単に上から数字をあてがうだけだと一人歩きを始め、「その数字さえクリアすればいい」「未達ならペナルティを払えばいい」といった本末転倒した意識が生まれがちです。目標を達成するため、楽に数字を上げられる安易な方法に流れ、新しい可能性を切り開くという挑戦には目が向かなくなってしまうこともあります。自分を振り返って、いつのまにか数値目標が一人歩きをしていたら、何のための目標なのか、意味合いを明確にすべきです。


避けなければならないのは、「目標○万店」のような目標を掲げたことで、意味合いが不明確なまま数字が一人歩きを始め、最後は数字のつじつま合わせに陥るパターンです。数値目標は達成できても店の質が低くなり、顧客の支持を失っていきます。


年間の出店計画は立てますが、以前、途中で不振店が多く出た年は計画をすべてストップし、店舗開発担当者を店舗に入れ、建て直しをさせました。そうして店舗の質を高める努力を積み重ねた結果、現在では新店の不振店割合は1~2%と驚異的な低水準になっています。


セブンイレブンは今年2月に国内店舗数が1万5千店を突破しました。ただ、「○○年までに店舗数1万5千店達成」といった目標を掲げたことは一度もありませんでした。1万店突破時も同様です。顧客にとっての利便性を高めるという本来の目的を実現するため、店舗数よりも、一店一店の質を高めることを第一の目標に据えたからです。1万5千店という数字はその結果として出たものです。


一歩踏み込んで挑戦していくとき、必要なのは目標です。とくに難しいのは数値目標です。その数値は自分たちにとってどんな意味を持つのか。意味の不明確な数値目標は、目標そのものが一人歩きを始める恐れがあるからです。


同じ「気温20度」でも、真夏と真冬では感じ方がまったく違ってくるように、数字は見方次第でいくつもの読み方ができます。そこで仮説を立てることによって、数字の持つ意味が明確になり、それが次の仕事につながる。


品揃えも、顧客の心理を読んで行ないます。たとえば、猛暑の夏はコンビニでは冷やし中華が飛ぶように売れます。その数字の伸びを見て、多めの発注を続けると、一転してあるときから売れ行きが落ちます。おいしいものほど飽きるからです。その心理を読み、途中から、同じ冷やしめんでも、味付けや具材が異なる冷やしラーメンなどに切り替えていくと、売上げを落とさずにすむのです。


最近、「消費税還元セール」といった広告や宣伝の禁止を盛り込んだ法案が成立しましたが、1997年に消費税率が5%に引き上げられた際、このセールを発案したのは、他でもない私です。当初、社内では「普段のセールで10~20%引きでも必ずしも売れるわけではないのに、実質5%引きでは魅力を感じてもらえないのではないか」と反対されましたが、私は「理屈ではそうでも、顧客の心理には消費税増税に対するアレルギーがあるから、必ず反応があるはずだ」と考えた。それはひとつの仮説でした。結果、売上げは60%も伸び、この仮説の正しさが立証されました。


コンビニ業界について、マスコミは「国内総店舗数が5万店を突破し、飽和が懸念される」などと、店数を示して市場飽和説を唱えます。もし、どのチェーンの店舗も同質であれば、飽和するかもしれません。しかし、質が違えば弱いところは落ち、強いところは残り、飽和はあり得ない。重要なのは、コンビニの店数ではなく、どういうコンビニがあるかなのです。


セブンイレブンの創業時、ヨーカ堂の幹部も業界関係者も学者もみな、セブンイレブンの創業に反対しました。その根拠として挙げたのは、商店街や小型店が衰退しているというデータです。大型店の進出が原因とされていました。しかし、本当にそうか。私は人事や販促などの管理部門を担当していたため、商店街の凋落の原因を別の視点で捉えていました。ひとつには生産性の低さ、もうひとつは市場の変化です。小型店でも労働生産性と商品の価値の両方を高める仕組みがあれば、大型店との共存も可能ではないか。そう考えて決断したのが、セブンイレブンの創業でした。


以前、こんなことがありました。セブンイレブンでおにぎりを1個100円に値下げしたところ、好調な売れ行きが半年間続きました。社内からはさらに90円に値下げする案が出ました。「安くすれば売れる」と考えたからです。一方、私は別の顧客心理を読んでいました。もの余りの時代でも、顧客はつねに新しいものを求めます。100円おにぎりのヒットも、130円台のものが100円で買えることに新しい価値を感じたからであって、それを90円に下げても、もう新しさは感じない。そこで私は、ワンランク上の高級素材を使い、100円台後半と従来の常識外れの値段で売るおにぎりを発案しました。この「こだわりおむすび」は大ヒットし、ヒット商品番付にもランク入りしました。


私のパソコンにはグループ企業の最新の数値データが入っています。自分の時間があると、あっちの数字、こっちの数字を引っ張り出しては、この売上が落ちているのは、どういうことなんだ、この数字はどういう意味を成しているんだと考えます。イトーヨーカ堂のデータでも、同じ商品なのに、ある店は値段が高く、ある店は低かったとき、なぜこっちは高いのか、理由は何だと追求していくと問題が出てきたりする。


トップ以下、現場に至るまで、日々問題を明確にすることで、誰もが数字に関心を持ち、敏感に反応するようにする。私が指示を出さなくても、担当部門は対応に動くでしょう。


天気が悪い場合、セブンイレブンの店舗では、客足が落ちて廃棄ロスが出るのを恐れて、発注が消極的になりがちです。しかし、棚に並ぶ商品の量が少ないとアピールカが下がり、売れ行きが落ちるという悪循環に陥りがちです。同じロスでも、商品があれば売れたはずの「機会ロス」のほうが大きい。


お客様の立場に立つというのも不変の真理だ。セブン銀行を作った時も同じ。銀行の営業時間は平日の午後3時まで週末は休み。金をおろしたりするのはきっと不便だろう。だから、24時間使えるATMをやれば必ず成功するだろうと考えただけ。要はお客様の立場に立った時、便利に使っていただけるかどうかを考えた。金融機関の人たちには絶対に成功しないと言われたが。


少子高齢化や人口減少の話題になると、明日にも日本の国が破綻するような論調が聞かれますが、私はそうは見ていません。仮に人口が今の半分になったとしても、半分になったりに新しいニーズが必ず生まれる。変化に対応さえできれば、日本の経済は持続していきます。


同業他社さんのやっていることに興味はないですね。社員たちにも以前、「他店見学をしてはならない」と禁じたこともあります。人間はよその店を見て、どこかいいところがあると、まねしたくなる心理が意図しなくても働いてしまう。ものまねではけっしてその上にいくことはできません。ただ、単に「ものまねはするな」といっても、実感としてなかなか伝わらない。そこで、「他店を見るな」という厳しいいい方をしてまで、自分たちで「顧客の立場で」考える視点を徹底させたのです。


常に「顧客の立場で」考えることを徹底するため、「真の競争相手は同業他社ではなく、絶え間なく変化する顧客のニーズである」といういい方もよくします。実際、私自身、ローソンさんやファミリーマー卜さんのお店には一歩も入ったことがありません。


今考えてみて幸いだったのは、セブン-イレブン設立時に集まったのが素人同然の社員たちだったことでした。これが小売業の経験者だったら、日本でコンビニエンスストアのチェーンを立ち上げるなど無理だと考える。でも、社員たちは、私がこうやろうといったことに対して素直に応じてくれました。


世の中の数字はただ連続的に動くのではなく、必ず不連続な爆発点を持っていると知っているからリスクが取れる。数字の動きをつかみ、数字の変化を仕掛けることができる者こそが、大きな成果を得られることを肝に銘じるべきでしょう。


我々がとかく目を奪われがちな数字があります。全体の平均値です。人間は、一番大きな数字や平均値にとらわれやすい傾向があります。平均値はある対象をある時点で断面にし、量的に捉えるにはひとつの目安になります。A社とB社を比較するときには、それぞれの平均値を取ればいいでしょう。しかし、個別に何かの課題に対して手を打つとき、平均値と自分の数字を比べても意味がありません。コンビニチェーンのA店は、人口が過疎な地域にありながら、宅配などのサービスを積極的に行なって、1日当たりの売上が50万円だったとします。一方のB店は、人口密度が高く、なおかつ競合もほとんどない恵まれた環境の店にもかかわらず、売上がA店と同じく50万円だったとします。そして、チェーン全体の1日の売上の平均も50万円だった。A店とB店は同じ売上でも、まったく意味合いが異なるのに、どちらも平均値と比べて同じである、などと考えるのは意味があるでしょうか。


コンビニなどは1年で7割の商品が入れ替わります。販売の数字を追うときは、売れた量と時間(期間)の関係に着目しながら、仮説と検証を繰り返す。これが変化の激しい時代の販売データの活かし方です。


商品の販売データの数字を見て、売れ行きのカーブが立ち上がる兆しが表われたら一気に大量に投入し、落ち始めたらすぐに売り場から排除していく。対応が遅れると、立ち上がり時に機会ロスが生じ、落ち始めてから廃棄ロスが生じる。市場の販売データは(販売数が一気に上がって一気に落ちる)ペンシル型に変化することを忘れてはなりません。


商品の売上の推移をグラフで表わすと、以前は徐々に高まり、ピークに到達後、徐々に落ちていく「富士山型」でした。それが1990年代以降、売れ始めると一気にピークに達し、しばらくするとピタッと売れなくなる「茶筒型」へと変わり、最近ではピーク時期が短い「ペンシル型」になっています。「金の食パン」も、おいしいぶん、飽きられる度合いも高い。そのとき、すかさず新しい商品を投入できるよう準備を始めています。


「もっとおいしい食パンを作ろう」と私が指示し、発売した「金の食パン」は一斤6枚入りが250円。従来のPB(プライベートブランド)商品のおよそ2倍、NB(メーカーのブランド)商品と比べても5割以上高い値段にもかかわらず、おいしさが支持され、発売2週間で販売個数65万個を突破し、売上が計画を5割上回る人気商品になっています。その数字を見て私は、すぐに次の食パンの商品開発に着手するよう指示を出しました。おいしいものにはもうひとつの裏返しの意味があって、それは飽きるということです。おいしければおいしいほど顧客は飽きる。しかも、最近はひとつの商品のライフサイクルがどんどん短くなってきています。


人間の欲望は無限です。人より新しくて良いものを求める自己差別化心理や、人が持っている新しくて良いものを自分も持とうとする同調心理は常にあります。


市場のデータを見て、商品の価格の低さに価値を感じる顧客と、質を重視する顧客がいて、その割合が6対4だったとき、どちらをターゲットにすべきか。通常は、より大きな6割のほうに目を向けるでしょう。しかし、もしそうしていたら、セブン&アイグループの大ヒット商品であるプライベートブランド(PB)の「セブンプレミアム」は生まれませんでした。私は不況の中にあっても、グループ企業の販売データを見ながら、価格の安さだけでなく、質の良いものを求める顧客が増えていることを見抜いていました。現代はもの余りの時代で、誰もが慌ててモノを買おうとはしませんから。


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